今日は神会。
アウラさん達も発表される二つ名が気になっているらしく、少し早めにダンジョンを後にした。
ま、俺はベルさんのランクアップのお祝いをする為なんだけれど。
リリと共に『豊穣の女主人』へ移動する。
「あ、アルディスさん。いらっしゃい」
「シルさん、こんにちは」
シルさんに案内されて、俺とリリは先に席に着く。
しばらくすると疲れた表情のベルさんが来た。ああ、やっぱり神々に追い回されたか。
助けに行こうかと思ったけれど、下手に神々にちょっかいをかけると目をつけられる可能性がある。
なので、今回はベルさんには助け舟を出さなかった。
「はい、ではベルさんのランクアップを祝して、カンパーイ」
「「「カンパーイ」」」
「か、カンパーイ」
それから、色々と話をして、ベルさんが買い物に行く話になり、シルさんが女将さんに怒られ、ベルさんが一人で買い物に行くことが決まった。
「装備を整えた後、どうするつもりなのか、そう聞いています」
そこからリューさんの説明が入り、あれやこれや話が始まる。
簡単に言えば、パーティを増やそうという話なのだが。
「でも、アルディス様がいるので大丈夫」
「いえ、わたしはしばらく、中層へは行けませんよ」
「「え?」」
リリは俺がパーティに入り、中層へ行くと思っていたようだ。
だが、原作のことを考えて、中層へ行くのはゴライアス戦の後。
「な、何故ですか?」
「わたしにも付き合いがあります。帰りが遅くなる中層は、しばらく無理ですね。それに本当に中層へ行くつもりなら、もう一人欲しいですね。浅いところでもアウラさん達の話を聞いてしまうと」
「そうですね。万全を期すべきです。貴方達は後一人仲間を見つけるべきだ」
うん、ベルさん明日頑張ってヴェルフを見つけてきて下さいね! 駄目なら、俺が紹介するから。
「はっはっ、パーティでお困りかぁっ、【リトル・ルーキー】!?」
とか思っていると、煩い声が聞こえてきた。ああ、モルドだったか。
とりあえず、俺は無視。
モルドがひとしきり騒いで、リューさんが怒って、原作通りクロエさんとアーニャさんがモルドの仲間を椅子でぶん殴って気絶させ。最後はミア母さんがブチ切れて、モルド達を追い出して終了。
あーあ、カウンターが壊れた。
ま、騒ぎの原因だし、金もあるからお詫びの意味も込めて注文を増やすか。
「ミア母さん! 本日のお勧め五人前、それと騒ぎを起こしたベルさんにエールをサイズは特大で」
「あいよっ!!!」
怒りの形相から、即座に営業スマイルになったミア母さん。
ベルさんが「アルディス!?」と驚いていたが、俺はジト目で「ベルさんがあの人達をどうにかするべきでしたよ。男なんですから」と叱っておいた。
男なんですから、と言われてベルさんが落ち込んでいたので、シルさんとリリに慰めるように目配せをしたら、二人は即座にベルさんを慰め始めた。
「ところで」
「はい?」
ベルさん達三人を眺めながら、本日のお勧めをパクついていると、リューさんが俺に小声で話かけてきた。
「何故、あまりクラネルさんとパーティを組まないのですか?」
「理由はいくつかありますが、ベルさんの成長の為ですね」
「成長」
「ミノタウロスを単独撃破、この事を考えればベルさんが特殊だと分かるのでは?」
「…………」
俺はそれ以降何も言わなかった。
リューさんも何も言わなかった。ただ、少しだけ、俺を非難する様な視線を感じた。
これはリューさんの好感度を下げたかもしれない。
けど、俺が参加すると経験値効率が下がる。
ベルさんの為には必要なことだ。
「ベルさん」
「何? アルディス」
「何度でも立ち上がって下さいね。これから、大変ですよ。レコードホルダーになったのですから」
「え? あ、うん」
さて、ヘルメスを捕まえる為の道具と賠償の内容を考えておこうかな。