時を操る狐面の少女が鬼殺隊で柱を超えたそうですよ   作:たったかたん

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久しぶりにこの作品の詳細みたら後日談が欲しいと言う人が結構いてくれたので、これが本当のほんとに最終話です!


その後の日常

 

 

 

 

ドタドタと、踵を踏み鳴らしながら歩く音がした。その音はどんどんと近づいてきて、最近はよく人が出入りするようになった扉が力任せに開かれる。

 

「おい!大竹雫!嘴平伊之助様が遊びにきてやったぞ!喜べ!」

 

「おはようございます、伊之助君。今日も元気そうですね」

 

そう返事を返すと猪の頭をつけた少年は、満足そうに部屋に入ってくる。

どうやら今日も山からどんぐりを持ってきてくれたらしく、やる!子分へのご褒美だ!と言いながらベットの脇に大きなどんぐりを置いた。

なぜどんぐり?と初めて貰った時から思っていることだが、その事は口に出さずありがとうございますと受け取る。

どうやら満足らしくほわほわした雰囲気が溢れ出ているのを見て、少し可愛く見えてしまう。

 

そう思っているのも束の間、開けられたままだった扉からまた一人。

 

「こら伊之助!雫様の体に障るから騒ぐなと言っているだろう!」

 

髪が伸び、背も高くなった炭治郎だ。その後ろには黄色髪をした少年、たしか善逸君は緊張した様にこちらをのぞいていた。

 

「ば、ばかやろう伊之助!またしのぶさんにシめられるぞ!?」

 

「雫は喜んでる!俺は子分にどんぐりをやって満足!しのぶに文句言われる筋合いはねぇ!!」

 

「だからそんな大声出したらきちゃu「呼びましたか?」ぴぃ??!」

 

扉のところから声をかけていた二人のすぐ後ろに綺麗な笑顔のしのぶが立っていた。伊之助が猪頭を被ってるはずのに目に見えて青ざめている。これから廊下で説教が始まるのは避けられなさそうだ。

 

 

……なんでもいいけど君たち、ほんとに仲良しだね。

 

 

 

 

私が目覚めて、二ヶ月が経った。未だに歩くことも支えがなければできず、日のほとんどはベットに体を起こして本を読むか会いにきた人と喋るかの二択。

最早体の筋肉は痩せ細り、日輪刀を持つことすらままらず、まるで老後の人生のような、にしては騒がしい日々を送っていた。

 

 

説教を受けている声を聞き流しながら本を読み進めていると、新たな来客があった。

 

「雫様、お食事をお持ちしました」

 

「もうそんな時間でしたか?ありがとうございます」

 

私の屋敷にいた唯一の隊士、凛さん。

この屋敷にすみ、私の専属世話係を買って出たらしく、毎日私が一人ではできないことをしてくれる。ありがたいかぎりだ。

 

「今日は風が心地よいので、食後に少しだけ縁側に行きませんか?」

 

そう言われてふと窓の外を眺める。心地よい日の光と葉と葉が擦れる音が外がとても穏やかであることを教えてくれる。

 

「そうですね。日を浴びながら本を読むのも良さそうです」

 

そう言って運ばれてきた食膳へ意識を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「義勇と錆兎が明日雫様に会いにくると言ってましたよ。久々に剣の腕を見て欲しいみたいで!」

 

「…それはまぁ、嬉しいですけどもう私には皆さんの動きなんて目に追えていませんから、ただ眺めるだけになってしまいますけど」

 

「それでも、雫様が見てくれるっていう事実が大事なんです」

 

「そ、そういうものですか?」

 

 

縁側。日が心地よく当たり、適度に涼しい風が体を撫でていた。そこで静かに凛さんと本を読んだり、たまに顔を上げて会話をしたり、のんびりとした時間を過ごしていると、真菰が見舞いにやってきた。

真菰も大人らしくなり、可愛いらしさにも色気のある女性となりつつあった。

 

義勇と錆兎が私の見舞いがてら柱稽古をここでやるとやる気満々らしい。

今の私は千鶴さんの僅かにのこされた余生で生き延びてるに過ぎないので、動体視力も一般人となんら変わらないから見ることしかできないのだが。

 

「真菰さん。お部屋に飾るお花を摘もうかと思うのですが、ご一緒にどうですか?」

 

「うん、私も一緒に行こうかな」

 

凛さんと真菰が仲良さげに庭の隅に沢山咲いていた花に向かうのを眺めながら、薄い木製の栞を挟んで本を閉じた。

 

 

 

 

 

 

私が目覚めてから最初の1週間は、毎日のように人が沢山訪れた。初日から柱の皆や魁稽古で仲の良かった隊士たち。その後にも隠達や現産屋敷当主、輝利哉まで来てくれた。最初こそ渋滞していたが今でも毎日誰かしら来てくれるので賑やかなものである。

 

「今日は俺が勝つ!!」

 

「かかってこい義勇!」

 

 

そして、動体視力の衰えた私にわざわざ稽古を見てもらおうとする隊士達も結構いる。今目の前で残像しか追えない錆兎と義勇のように。

左で音が鳴ったと思えば右の方からも音が鳴るという、不思議な光景が広がっていた。痣が発現してから動きのキレが格段と上がったようでもはや人ではない。

あの子達の相手をしていた私は一体なんだったのだろうと思えてくるレベルだ。

 

 

「義勇も錆兎も頑張れー!」

 

 

隣で真菰が応援に勤しんでいる。

その真菰には痣こそ発現してないからか、実力差が少しできたようで、二人の継子みたいな立ち位置になっているようだ。もっとも隊士が増えて継子の数も増えているので真菰の下にも結構な数はいるのだが。

 

ふと意識を二人に向ければ刀で押し合ってるところで僅かながら姿を捉えることが出来た。二人ともまた背丈が大きくなり、すっかり大人の男であると思わせられる。

その二人の首から頬にかけて、似たような水の飛沫のような痣が広がっていた。

それを見て、少し顔を顰めてしまう。

 

実の所、痣が過去に発現した者がいたと言う話は魁になったあたりで産屋敷から私に伝えられていた。そしてその痣のメリットとデメリットについても、可能性ではあるとしながらも教えられていた。

だから私の魁稽古では、痣が出ないギリギリの範囲内で稽古を済ませていた所もある。発現すれば25歳で死ぬなど、強くなると言ってもあまりにも代償が大きすぎると、そう思ったからだ。

 

しかし私を狙ってきた蝶屋敷襲撃にて上弦の壱との戦闘でしのぶ、義勇、錆兎が痣を発現させてしまったらしい。

死線をギリギリでくぐり抜ける戦闘は痣の発現率を上げるきっかけになるようだった。

そして私にも、しのぶの話では時計のような痣が発現していたと言われていた。しかしその痣は眠っていたこの一年半の内に、薄れて消えていったらしい。

それはきっと千鶴さんが、もう一つの魂が私の代わりに全てを背負って逝ってくれたおかげなのかもしれない。

と言っても長生きはできないというのは、自分でも実感出来るほどに衰えているのだが。

 

目の前の二人は、あと二年しか生きられない事になるが、そのことに後悔はしていないと言っていたので見守ることにしている。

 

 

そうこう考えている内に稽古が終わったらしく、汗をかいた二人が話をしながらこちらへと向かってきた。

 

 

「……見ていただきありがとうございます」

 

「二年前よりは、俺らも成長したと思うんだが、どうでしたか?」

 

「凄いですね。もう私には残像しか見えませんが…確実に言えることは二人とも剣の腕は格段に上がっている、と言うことくらいですね」

 

そう言うと満足気に微笑みながら日常会話へと移っていく。曰く、痣がある状態でも魁だった私に刀が届く想像ができないらしい。

それはまあ届く瞬間に時の呼吸を使っていたので擦りもしないのは仕方ないことなのだが、言っても信じてくれないので未だに伝えてはいない。思い出話に耽っていると気づけば日がだいぶ傾き始めていた。それに気づくと三人とも、また今度と言いながら帰路についた。

 

 

 

 

 

「雫様雫様!」

 

「あのね!あのね!なほ、きよ、すみでね!」

 

「花冠を作ったの!」

 

「ふふふ、なほちゃん、きよちゃん、すみちゃん、ありがとう。被ってみても?」

 

「「「は、はい!!」」」

 

いつものように縁側で本を読んでいると、緊張してるのか少し大声になりながら三人で花冠を目の前に差し出してきた。

花かんむりの作り方を教えたのだろうか、遠くから葵ちゃんと凛さんが微笑ましそうに見ている。

 

たんぽぽでできた冠を頭に乗せる。似合いますか?と問うと、三人とも綺麗な笑顔で残像ができそうなくらい縦にうなづいた。

 

小さい子達に、何かを贈られるという事は前世も含めて経験がない。そもそも人とこうして笑い合いながらやり取りすると言う事自体、この世界に来てから初体験ばかりで、会話が少しばかりぎこちないところはあるかと思う。しかし皆はこんな私の話を聞いてくれるし、話をしにきてくれる。その事実だけで私はこの世界を守りたいと、そう思えたのだった。

 

 

…遠くで善逸くんの血を吐くような声が聞こえたのはきっと空耳なのだろうと、そう思うことにした。

 

 

 

 

 

「む、今日もこちらにいると言う事は、体の調子はすこぶる良いのですか?」

 

花冠を頭に乗せたまま日向ぼっこをしていると、私の病室に向かう途中だったのか、杏寿郎が廊下を歩いてきた。

 

「こんにちは杏寿郎。ええ、やっとですが、庭を散歩するくらいはできるようになりましたよ」

 

「それは良かった。その調子なら二ヶ月程で外出もできそうですね」

 

「それはまあ、しのぶたちが許可してくれるかは分かりませんけどね」

 

この屋敷の皆は過保護なので、きっと誰か護衛という名の付き添いがつくのは目に見えた。

そう答えると、杏寿郎も分かっているのか笑みを浮かべながらそうですねと頷いた。

 

杏寿郎は、私が襲撃されたのと同時に上弦の参と死闘を繰り広げ、左目左腕を犠牲にしながも討ち取ったと聞いている。

今ではその傷も塞がってはいるが、目に見えて痛々しい。それに私の元へその状態で駆けつけたというのだから、自分のことは大切にして欲しいものだ。それを伝えると難しい顔をしていたのを今でも鮮明に思い出せる。

 

今は凛さんも茶を入れに行っているので二人きりになる。風も静かで、当たりには鳥の囀りが響き渡っている。そんな中で杏寿郎と会話をしていると、ふとした時に気付いた。

 

凛さんが戻ってこない。

なにか他のことに手を取られているのだろうかとも思うが、それにしても遅い気がしてならない。といっても特に今は困っていないので問題はないのだが。

 

「あの」

 

「はい」

 

ほんの少し、周りに静けさが漂った気がした瞬間。なぜか緊張したような雰囲気を纏った杏寿郎がこちらを見つめながら、いつもの勢いも抑えて言った。

 

「その花冠、とてもお似合いだ」

 

「ああ、ありがとうございます。屋敷の子達が私のために作ってくれたので、そう言われると嬉しいです」

 

「う、うむ」

 

褒め言葉を素直に受け取り、笑顔でそう答えるとなぜか視線を外されてしまった。

しばらくの間、目を泳がせたかと思うと、再び私と目を合わせた。

 

「もし、外出が許可されるのであれば、俺と二人で、出かけてはくれないだろうか」

 

「いい…ですけど」

 

 

反射的にそう答えると、杏寿郎は急に立ち上がり背を向けた。なにか私に紹介したい所でもあったのだろうかと、そう尋ねようとしたがそこから杏寿郎の動きは早かった。

 

「で、では俺はこれで!雫様の護衛に相応しいよう鍛錬をしてくる!」

 

ではまた、と言い残して足早に去っていった。そのタイミングを見計らったように凛さんが微笑みながら茶を運んでくる。

残念ながら男の人と出かけると言うのも、前世を含めて初めてなので珍しいことを言うなと思う程度で、そこにどんな意味があったのかは私にはわからない。

おめでとうございますという彼女の言葉の意味を理解するのは、もっともっと、先の話になるのである。

 

 

 

 

前半と後半で作風を変えたりしています。原作合流編あたりからの作風に統一しようかと思います。

  • 統一した方が良い
  • 別に気にしない
  • 前半のようなほのぼの要素も欲しい
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