荒野からやってきました ~死の支配者と荒野の旅人~   作:マガミ

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対ビーストマン戦役終了後

>帝国

 帝都では視察から帰ってきたジルクニフが、なんだか喜色満面のフールーダ翁を見て「うわぁ」となっていた。

 

「ジル、竜王国の戦役が終わりましたぞ」

 

 現地に派遣している調査員の<伝言>による報告だ。あと数日すれば報告書も届くだろう。

 

「ふむ、予想よりは遅いが?」

「新たに育成した戦力と現地戦力、それらを中心に協調行動を取った様子。また傭兵としての参戦故、かのお力は抑えておられたのでしょうや」

「成程な、なら合点がいく。だが爺よ、なぜそんなに嬉しそうなのだ?」

「これが笑わずにいられましょうか! かの竜王国は魔導皇国の保護国となった上、既に国内の整備が進んでいる様子。早ければ数ヶ月以内に、止まっていた竜王国の交易品が帝国にも到着するでしょう」

 

 形のいい眉毛を上げて、ジルクニフは竜王国方面に振り分けていた対ビーストマン用の戦力再編案を考えると共に、自身の影響下にある商会をピックアップ。最高級品という訳でも無いが、茶葉、薬草、一部香辛料、反物が竜王国の交易品の代表的なもので、戦役による影響で価値が高止まりしている。

 文官に渡す指示書をサラサラと書き留めつつ、気になっていた「整備が進んでいる」という話について追加で尋ねる。

 

「既に、戦線の反対側では路、都市、農地、防衛設備の整備が終わっていたとの事。食料輸出は徐々に控え、別の輸出品目を聞き出す必要がありますな」

 

 少し驚いたが、魔導皇国だからな、と納得する。施工は荒野の災厄。風評被害である。

 

「…とんでもないな。王国の路整備と同じもののようだが、あの整った路を用意したのか、それも戦役の最中に」

「速度は無理とはいえ、帝国内の材料で同じ強度の路を作る成分について叡智を頂いております」

「確か、カッツェ平野への道と、魔導皇国、エ・ランテルへの道は整備を開始したのだったな?」

「はい。既存の工法より大掛かりな準備と、工法に知悉する責任者、固まるまでの監視は必要ですが、費用と時間で考えますと数分の一で施工できております」

 

 帝国はこれから黄金期と言っていい繁栄を迎える。ジルクニフは繁栄の先の先、完成形である魔導皇国の首都を見ているので今はまだ道半ばであると感じているのだが。

 

「所で、かの土地の開発状況は?」

「順調過ぎて恐ろしい程ですぞ!」

「お、おう」

「あえて弱い、農業用スケルトンの用意でかなりの面積の開発ができましてな。発生アンデッドも事前浄化で抑制でき、何ら問題もございませぬ。それに整然と並べての麦の作付は、見た目では量が減りましょうが、かの叡智によれば地の滋養が集中する事で…!」

「わかったわかった、そう興奮するな。報告書で改めて確認する。さて…そうさな、アインズも保護国へ援助をするだろうが、此方からも復興事業に必要な物資の都合をつけておくとしよう」

「では現地の調査員に、想定される不足物資について報告をするよう命じましょう。金の臭いに釣られる奴らに悟られないよう進めておきます」

「ああ。生かさず殺さずでおいた連中が余計な力を付けないように」

 

 尚、調査員に命じて連絡が戻る前に、魔導皇国側から竜王国が欲している物資の目録が送られてきて、ジルクニフは「魔導皇国の利益はどこに?」と意図を読もうとして盛大に悩む事となる。

 

 

 

>竜王国の首都近郊上空に静止するAOGのスキーズブラズニルの格納庫

 

 トールは何かの機材をあーでもないこーでもないと嬉々としていじっている。怪我をしたのと不意討ちを受けた落ち込みはどこへやらである。

 モモンガさんは落ち着いた様子で玉露を啜りつつ、会議結果についてトールに直接伝える。

 

「え、暴発待ちするんです?」

「当初計画そのままという奴です。物量と力業で押し潰す案もありますが、スマートじゃないという事で。まあユグドラシル時代よりかは穏便ですかね?」

 

 既にいくつもの襲撃パターンとその対処準備をしているようで、ナザリック三宰相曰く「勉強になります、ぷにっと萌え様」という事らしい。

 対処パターンについては、ユグドラシル時代のPKの襲撃状況を中心に、諜報網と警戒網の拡充と併せ、かの敵対者の思考パターンを解析してあらゆる可能性を潰している最中だそうである。例のアレが出てきたら、口上述べてる最中に完全制圧してNDKするらしい。

 ぷにっと萌えと三宰相は、企業連の目的は資源確保とこの世界の植民地化であると結論付けている。トールが解析した巡航ミサイルの弾頭が通常兵器の範疇であった事や、大々的に侵攻せずに浸透工作と情報収集に注力している点から、次元転移に何らかの制限があるのだろうという予測だ。

 また、常闇の竜王を支配するヨイヤミが簡単に制御下に入っている為、プレイヤーの強さを把握しきれていない可能性がある。侮ってくれるならいくらでも「気づかないままに」追い詰められますねと、ぷにっと萌えは嘲笑った。内容を聞いたギルメン達は「これで穏便なのか」と震え上がった。

 閑話休題。

 

「…企業連合とやらと敵対プレイヤーに哀悼の意を表したい。まあ許さないですが」

「俺も許さないです。問題になるのは例のブレス程度で、これも提供してもらった情報から専用の対抗アイテムを全員分で配備して対処します。トールさんも持ってて下さいよ?」

「いいんですか? 材料、熱素石でしょう?」

 

 理論上、二発までのロンギヌスの槍の効果を防ぐ専用の防護アクセサリだ。使い捨てではあるが、死ななきゃ安いという奴であるし、既に守護者の装備まで最高位の物に更新している。その上での余りの転用である。

 トールには主に七色鉱以外の素材は提供していたが、準世界級アイテムとも言える熱素石を素材にしたものはトール自身が断っていた。

 

「いいんです。所で、手元でいじってるそれ、例の襲撃に使われた…」

「ええ、元は電磁速射砲の残骸です。防護措置で減衰しても貫通してきたんですが、元のままだったらあの一帯、クレーターだらけでしたね」

「そんなに!?」

 

 修復してみて解ったが、技術的にはそれ程高い訳でもない。

 ただハイパーベロシティ系に匹敵する弾体加速装置は、着弾で物質がエネルギー化するような速度である。場合によっては空気摩擦でエネルギー化する。核攻撃の数%とはいえ大地と空気が震えるエネルギーが開放される程だが、それをいとも簡単に歩兵火器程度の威力に減衰させた科学と魔法の防護措置がおかしい。

 

「手持ちのガウスライフルより危ない武器ですよ」

 

 某EDF製の火器については考えないものとする。

 

「ただまあ、物理法則下の武器ですから、実はモモンガさんには一切通用しないんですけどね。他の面子もフル装備なら避けるか防ぐかできる程度でしょう」

 

 レベル持ちのロボットや、あるいはトールがオーラで強化すれば別だが、一定レベル以下の攻撃を無効化するモモンガさんには物理法則下の攻撃が通らない。

 

「所で」

「…やですよ、以前、るし★ふぁーさんのイタズラで暴発したレールガンタレット、怖かったんですからね? 痛いのと怖いのは別です!」

 

 レールガンタレット。MOD由来の防衛タレットで、見た目はガウスライフルを乗っけた三脚に見える。この世界では脅威だし、トールも注意する威力であるが、物理法則下の攻撃のため無防備な状態で直撃するなら兎も角、ナザリックのカンスト勢なら避けられるし防がれる程度。ましてやモモンガさんは一定レベル以下の攻撃を無効化するため、レベルが無いタレットの攻撃は直撃しようがダメージが通らない。

 尚、イタズラというのは試作の新型コックローチゴーレムに自動攻撃のタレットを乗せてのテスト。巨大な人間大のG型ゴーレムにタレットがポン付けされたシュールなものだった。

 

「ものすごい派手な攻撃食らって無傷とか、格好良いと思うんですが」

「いや確かにそれ想定した無効化ですけどね? ユグドラシル時代は兎も角、あからさまにド派手な攻撃とか心臓に悪いでしょう!?」

 

 イマジナリー心臓が悪いとかこれいかに。まあ今は人化してるので心臓は脈動しているが。

 

「こほん。竜王国にはペロさんとフラットフットさん、ニグン達、あとはエルダーリッチと防衛用モンスター軍を残して我々は追加の飛行船が到着次第、ナザリックに戻ります。いつまでもアレとかに手間を割いてないで、ドワーフの山脈や聖王国、エルフの森林とかも実際に見に行きたいですよ…」

 

 後顧の憂い無く冒険を楽しむには程遠いと愚痴るモモンガさん。安全確保の為とはいえ、スローライフや冒険が目的なのに戦記物、国家政治物はお呼びじゃないという心の叫びだろうか。

 そんな最中、ブリッジのイマジナリ・ニューの声で短距離通信がナザリックギアに届く。

 

『モモンガ様、リザードマンの集落から緊急連絡です』

「ふむ。内容は?」

『マイスタートールの装備に酷似した格好の人間二名が接触を図ってきたとの事。AOG上層部への取次を希望しています』

「…はい?」

 

 

 リアル世界というか、2100年代ディストピアな地球側では、異世界に力を注いでいた企業連合、複数のメガコーポで構成される勢力の連中が絶賛大混乱中だった。

 莫大な利益をあげるであろう資源の吸い上げと並行して植民地化する大まかな目標を立てていた訳だが、現場からの報告を元に、現場から反対する意見具申を無視して竜王国での攻撃を強行したものの、明確な損害が与えられなかった。

 汚染をしないよう核反応弾頭以外では最大威力の巡航ミサイルを使ったものの、忌々しい事に魔法とやらで迎撃された。企業連の上層部は、魔法については多少危険度の高い超能力の一種だと認識しているが、科学力と物量でどうにかなると勘違いしている。フラグだな?

 

「…未知の世界だ、失敗と責任問題は今の段階で追及するべきではない」

 

 そう言った古株の代表者も居たが、生物資源溢れる別天地の利益に熱を上げる連中は耳を貸さない。

 

 今まで卒なく任務をこなしてきた現場は送り込まれてくるイエスマンの指示に辟易し、企業連合はそこかしこに時限爆弾を製造する事だろう。

 

 失った目を考えると全く割に合わないのが止めだったようで、現地指揮官や司令については更迭案が可決、追加戦力の入れ替えも併せて転移準備に入った。

 

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