え?蟲師の世界じゃないの?   作:ガオーさん

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忘れた言葉

 それは、鹿神ギンが蟲柱に就任してから二年後のこと。

 鹿神ギンが、胡蝶しのぶを弟子として迎える、一年ほど前のこと。

 

 

 

 

 いつものように各地を旅していたギンは、ある漁村を訪れた。

 透き通るような美しい海と、静かな波の音が響く、のどかな村だった。

 村の人達は皆優しく、よそ者のギンを暖かく迎えてくれた。魚や貝を獲っては、近くの街に卸しているらしい。この村では高級魚である鯛がよく獲れるらしく、美味いと評判があり、高級な料亭によく卸しているそうだ。その評判に偽りはなく、ギンもご馳走してもらった。

 

 

「ん?」

 

 

 異変に気付いたのは、ギンがその村から鬼狩りの任務の為に出立する日だった。

 この地を離れる前に、見納めとしてこの綺麗な海を眺めようと思い、砂浜に訪れた時だった。

 

 静かに砂浜を洗う波の音に混じって、微かに鳥の群れが鳴く声がする。

 けれど、どこから――。

 

 ふと足元で何かを爪先で蹴る感触。

 

 見てみると、そこには貝殻が落ちていた。

 

「こいつは……」

 

 拾い上げて見てみると、掌より小さい貝殻の中の空洞に。

 

 小さな小鳥がじっと潜んでいた。

 

 

 

 

 

 

「ちょいといいかな」

「……はい?」

 

 朝と言うこともあり、村民のほとんどは漁に出ていた。あることを伝える為に村中を歩き回っていたギンは、砂浜に小柄な少女がいたのを見つけた。

 身体は小さく、年の頃は七、八頃の少女だった。この村に数日の間滞在していたギンは、その少女と深く言葉を交わさなかったが、見覚えがあった。確かこの村の出身ではなく、孤児だったと誰かが言っていたか。言葉少なく、時折何かを後悔するかのように思い詰める少女の顔が、やけに印象的だったのを覚えている。村長の話によると、孤児として流れてきた少女を、海女の女性が拾ったんだったか。

 その年で一体どんな悲劇に遭ったか、村の子供達のようにはしゃぐわけでもなく、言葉もどこかたどたどしい。何かを話すこと自体に、恐れを抱いているようだった。

 

「この近くの海に凶兆が出てるから、伝えておく。大人達が漁から戻って来たら、伝えておいて欲しい」

「……きょう、ちょう?」

 

 少女は首を傾げる。

 

「ああ。不吉なことが起こるかも知れない、という意味だ。凶兆と言っても何が起こるかは分からないが、確実に何らかの厄災が近いうちにこの海に訪れる。村中に備えを呼びかけて置いて欲しい」

「……どん、なの?」

「赤潮が発生するかもしれん。嵐が来るかもしれん。それは分からないが、用心するように大人達に伝えておいてくれ」

「……鬼が、出るの?」

 

 怯えた様な少女の言葉に、ギンは眼を見開く。

 

「お前さん、鬼を知っているのか」

「うん……私が生まれた、場所にも……鬼が、来て……」

「……気の毒に」

 

 その言葉だけで十分、この少女の身に何が起きたか察した。親兄弟か、それとも友人か。殺されてしまったのだろうと理解する。

 ギンは懐から香り袋を取り出し、少女の手の平にそっと持たせた。

 

「こいつを渡しておく」

「これ、は?」

「藤の花の香り袋だ。それを持っておけば、鬼に襲われない。近いうちに、藤の花の香も調達してここに届けよう」

「いい、の?」

「ああ。美味い飯と宿を用意してくれた礼だ。村長達にも礼を言っておいてくれ。俺は用事があってもう村を離れなきゃならないが、数日以内に戻ってくる。だから安心しろ」

「……」

 

 少女は何かを思い出すように、その香り袋を大切に抱きかかえた。幸せな記憶なのか、それとも辛い記憶なのかは分からない。だが、少女はそれを噛み締めるようにぎゅっと大切に握った。

 

「ありが、とう」

「何、礼を言うのはこちらの方だ。じゃ――ああ、そうそう」

 

 歩き出そうとしたギンだが、何かを思い出したかのように少女の方へ振り返る。

 

「ど、したの?」

「これは個人的な忠告だが、近くの砂浜の貝殻には気を付けろ」

「貝、殻に?」

「ああ。数が増えたら気を付けろ。凶兆が迫っている印だ」

「分か、った」

「また数日後ここに来る。息災でな」

 

 ギンは今度こそ言い残すことはないと言わんばかりに、その場から去って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ギンが去った後、少女は大人達にその凶兆を伝えた。『蟲師』と名乗っていたあの人が、この海で凶兆があったから備えて欲しいと。

 上手く言葉を喋れないなりに、少女は必死に言葉を工夫し、大人達に伝えた。

 

「凶兆ねぇ……だが、海は特に異常もないし、近くで誰かが死んだと言う話も聞かない」

「だが、あの先生がでたらめなことを言うかね?」

「そうだなぁ。うちのかみさんの足の痛みも取ってくれるほどの名医だしなぁ」

「ああ。うちの坊主の病気も治してくれたんだ。どれだけ薬を飲ませても治らなかった坊主の喉の病気を、あの人はすぐに治したんだ!俺はあの先生が、嘘を吐くとは思えんね」

「村長、どう思う?」

「あの方は"蟲師"。我らとは違う理を見据える方じゃ」

 

 村長は、この村で一番の年長者だった。ずっと昔からこの漁村で暮らし、海で漁を続けてきた海の男。

 齢七十を超えた現在も、現役の漁師である。

 

「儂の祖先は、蟲師に村を助けられたと曾爺さんから聞かされた。その時も凶兆があると、村人達に忠告して回り、その数日後――大きな地震と津波がこの村を襲ったと訊く」

 

 遥か昔――この土地に一人の蟲師が訪れた。その蟲師はこの土地に現れた凶兆を、村民たちに伝えたと言う。その後、村を飲み込む大津波が起こったが、蟲師の忠告によって多くの者が助かり、今の村と生活がある。

 

「とにかく、十分に備えよ。幸い、鹿神殿は数日後にまた来てくださる。それまで、この村の女子供を守るのは儂ら男衆の仕事じゃ。気を引き締めよ」

 

 津波、高潮、大嵐――

 

 海と共に生きるこの漁村の者達は、海に生かされ、海の気まぐれで命は軽々と吹き飛ばされてしまうことを、身に染みるように良く知っていた。

 海を決して侮らず、尊重し、そして警戒をしてきた。

 食料を蓄え、災害に備えて夜は見張りを立てておくことを決めた村の住民達は、蟲師が再び訪れるまで自分達で守ろうと誓うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 だがしかし、理不尽はいつだって、どんなに備えていても嘲笑うかのように命を奪っていく。

 

 

 その理不尽の名は、"自然"と言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 四日後。

 

 任務を終えたギンは、再び村に訪れた。

 

 村長に会う前に、浜辺を訪れたギンだが――

 

 

「―――いない」

 

 

 浜辺のどこを探しても、凶兆の印である貝は浜辺のどこにもいなかった。

 もうすでに凶兆は去った後なのか?

 念入りに探してみたが、それでも見つからない。数日前までここに蔓延っていたはずなのに。

 

 

「ん?」

 

 

 ふと視線を向けると、浜辺に座って海を呆然と眺めている少女がいた。

 あの時、この村を出る時に自分を見送った少女だった。

 

「よぉ。大丈夫だったか?」

 

 声をかけると、ようやくギンの存在に気付いたのか少女は顔を上げた。

  

「―――」

「ん?」

 

 少女は口をぱくぱくと動かすが、どうしてか何も喋らない。

 声を出そうと必死に、もがいているようにギンには見えた。

 

「声が出せないのか?」

「!」

 

 ギンが確認するようにそう尋ねると、少女はこくこくと頷いた。

 まるで、今まで伝えたくても伝えられなかったことに、気付いてくれたことを、感謝しているようだった。

 

「お前さん、ひょっとしてここに落ちていた貝殻に耳を当てたのか?」

 

 ―――どうして分かったの?

 

 そう言いたげに少女は首を傾げた。

 それを見たギンは、少女が声を喪った原因をすぐに察した。

 

「―――貝の唄を、聴いちまったのか」

 

 浜辺の貝には気を付けろと言ったのに。ギンはそう静かに呆れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その人は不思議な人だった。

 村長のおじいちゃんの話曰く、"蟲"という不思議なモノを見ることができる人らしい。

 白い髪に、緑の眼をした、不思議な男の人。

 いろんな薬を創る、薬師の先生みたいだった。

 その人は村で病気や身体の痛みに悩まされた人達を次々に治していった。

 

 最初、その人離れした姿は恐ろしかったけど、その人はすぐに優しい人だと気付いた。

 

 その人は私や他の人が多くの言葉を伝えなくても、全てを見通すかのように察してくれて。

 私の言葉の拙さをすぐに察してくれた。

 まるで、見えない糸で心が通じてるような人だった。何もかも受け入れてくれる森を思わせる人だった。

 

 無償の優しさ――困っている人を見捨てない、対価を求めないその人は――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あの優しくて泣き虫な、お坊さんのことを思い出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「鱶の大群*1が?」

「ええ。二日前、鱶の大群が沖を泳いでいたのです。その時、偶然漁をしていた村の者が何人か――」

 

 村長は悔しそうに言葉を沈めた。村の住人が何人か、その鱶に喰われてしまったらしい。

 透明で美しかった海は、鱶に喰われた人間の血で、真っ赤に染まったと。

 

「……すまなかった。俺が村に残っていれば、何かできたかもしれんのに」

 

 ギンはそう言って頭を下げた。

 

「いや。あなたに非はない。警戒はしていた。ぬかりはなかった。じゃが、仕方がなかった。海は気まぐれに我らに牙を剥く。儂ら人間がいくら知恵を絞ろうとも、簡単に食い千切られよう。それよりも、鹿神殿のおかげで犠牲が数人で済んだ。"凶兆"のことを伝えてくれなければ、多くの者が鱶に喰われたかもしれん」

 

 ギンの忠告に従い、村長は漁に出る村人達に銛や網などを小舟に常備させていた。おかげですぐに、襲ってきた鱶達に対応できたと言う。

 

「それよりも、この娘のことです」

 

 村長はそう言って、ギンが浜辺で会った少女をちらりと見た。

 少女は村長の隣で静かに膝を着いて座っていた。その表情は、どこか暗い。

 

「鹿神殿が去った後すぐに、声を出せなくなったのです」

 

 ――鱶に襲われて死んだ海女の中に、少女を育てていた老婆がいた。村長と同じく、海女として何年もここで暮らしていた婆さんで、孤児として流れてきた少女を拾い、数年間育ててきた親代わりだった。

 だが少女は声を出せなくなり、その原因が分からぬ時に、鱶が大量に襲ってきた。

 

 鱶の出現によって、村では漁をしばらくすることができず、出稼ぎをするために若者はしばらく村を離れると村長は言った。

 

「凶兆は既に去っている。もう漁をしても大丈夫だが……」

「いえ。大量の鱶が近海の魚を多く喰ってしまったのです。今朝も網漁を行いましたが、ほとんど魚が取れませんでした。蓄えは備えていますが、このままでは冬を越せないのです」

 

 鱶が襲うのは、人間だけではない。沖を泳ぐ魚の群れも、捕食対象になってしまう。この沖に棲む魚達のほとんどが、食い荒らされてしまったのだ。

 

「この娘を育てていた海女も死に、他の者も自分達の生活に手一杯で面倒を見ることが難しい。できれば儂が引き取りたいが、儂も年。いつぽっくり逝くか分からぬ。この娘にひもじい想いをさせてしまうやもしれぬ。その前に、この娘の意志を聞きたいのです。これから先どうしたいか。鹿神殿、この娘の声を取り戻す術はあるのだろうか?」

 

 ――大正時代。

 

 教育の制度が整ってきたとはいえ、こういった辺境の漁村や村ではまだ識字率も高くない。文字を読むことができる者は学校がある街の住民ばかりで、漁が中心のこの村では、文字をまともに書ける者は多くはなかった。

 

 少女が文字を知っているなら、声を出せずとも意思疎通はできたはずだが、少女は生まれた時から孤児で、文字など知らないのが当然ではあった。

 

「――この娘は、"貝の唄"を聴いてしまったんです」

「貝の唄?」

「ええ。唄と言えど、唄っているのは貝殻の中に棲む蟲でしてね。"サエズリガイ"と言います」

 

"サエズリガイ"。

 普段は海上を飛び回り、藻屑なんかを喰う小さな蟲。

 手の平ぐらいの大きさの、小さな小鳥のような姿をした蟲だ。

 

「その蟲は海で異変を察すると浜へ上がり、貝の殻に閉じこもって災いが去るのを待つんです。そして小さな声で鳴き続け、仲間を陸へ呼ぶ。その鳴き声を耳の間近で聴いてしまうと、人は声の出し方を忘れてしまう。それが、この娘が声を出せない原因です」

「海の異変――ということは」

「ええ。蟲師にとってこのサエズリガイが、海の凶兆の印なんです。つい先週まで、この村の近くの浜辺に大量のサエズリガイが棲んだ貝が落ちていた。この娘は、サエズリガイが仲間を呼ぶ声を聞いてしまったんでしょう」

「では、これは蟲の仕業だと言うのならば、声を取り戻すのは――」

「いえ、大丈夫です。この唄を聴いても、人は声を出せなくなるのではなく出し方を忘れてしまうだけだ。人の声を毎日聞いていれば、直に思い出す。それまで何日かかるか分からないが」

 

 ギンがそう言うと、少女はほっとしたように胸を撫で下ろした。ギンが来るまで、ずっと声を出せずに不安だったのだろう。一生自分は声を出せないままなのかと、夜も眠れなかったのだろう。唯一の親代わりも鱶に喰われ、泣き叫ぶこともできなかったその悲しみは、ギンには測ることはできなかった。

 

「この村の住民は数が少ない。声を取り戻すには、人の声を、なるべく大勢の声を毎日聞かせるべきです。人が大勢住んでいる町で暮らすべきだが……近くの町に、頼れる人は?」

 

 ギンがそう尋ねると、少女は静かに首を振った。

 村長も顔をしかめるばかりだった。

 

 この漁村は、ギンが国中を周って見てきた中でも、一等豊かな漁村だった。だが豊かだったとは言っても、それは海の恵みによる恩恵が大きかったからだ。だがそれが鱶の大群のせいで奪われてしまった。人口が元々少ないこの漁村は、昔から軍の徴兵や出稼ぎの為に若者が都会に出たきり、帰ってこない。そのせいで人は減り続ける一方だった。

 少女がこの先、暮らしていける方法や伝手がない。

 まだ十歳にも満たない少女。声もサエズリガイによって忘れてしまった。このままでは人買に売られてしまうかもしれない。最悪、空腹で野たれ死ぬ可能性だってある。

 産屋敷の力や藤の家の家紋を掲げている家に頼るという方法もあるが、原則的に鬼の被害に遭った人や、鬼狩りの親族しかその恩恵は与えられないことになっている。

 

 村長はどうしたものかうんうんと悩み、少女はこれから自分がどうなるのか不安そうに、悲しそうに顔を俯かせていた。

 孤児としてこの村に流れ、そして拾ってくれた唯一の親代わりも、鱶に喰われて死んでしまった。

 重なるように襲ってくる不運。

 この少女にとって最もいい選択は――

 

 

 

 

 

 

 

 

「――なら、俺と来るか。沙代」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私は、鬼殺隊であり、お医者さんでもあり、薬師でもあり、蟲師でもあるこのお兄さんに着いていくことを決めた。

 

「俺は方々を旅をする。大きな街を歩くこともあるだろう。この村で暮らすよりは、俺と旅を共にするほうが速く声を取り戻せるはずだ」

 

 村の人達にはたくさんお世話になっていたけど、ずっと迷惑をかけるのも嫌だった。声を出せなければ自分の意志を伝えられない。

 というより、自分がここで暮らしていいのか、不安だったからだ。

 

 ――私を拾ってくれたお婆ちゃんは、本当に優しい人だった。

 

 行き倒れていた私に、たくさんの美味しいご飯をくれた。言葉が拙い私に、いつも優しく頭を撫でてくれた。

 貝の唄を聴いて声を出せなくなった時も、お婆ちゃんは「大丈夫だよ」と言って頭を撫でてくれた。

 だから、これからずっと大丈夫だと思っていたのに。

 

 また、私の大切な人がいなくなる。

 

 あの時みたいに。

 

 私にとって大切な居場所が、大切な人がいつもいなくなる。私だけを遺して。

 自分なんか死んでしまえばいいと、何度も自分を憎んだ。

 

 浜辺で、お婆ちゃんや他の海女の人達の血で真っ赤になってしまった海面を眺めながら、一言も声が出ない口を動かして私は謝った。潮風に混じって流れてくる鉄の匂いが、今でも鮮明に思い出してしまう。

 そして、血の匂いを思い出すたびに、あの寺の出来事を思い出してしまう。

 

「あの人は化け物。みんなあの人がみんなを殺した」

 

 あんなに暖かい場所だったのに。あんなにも大切な場所だったのに。

 私は自分でそれを壊してしまった。

 

 あれ以来、私は上手く言葉を喋れなくなった。私が喋ると、大切な人が傷ついてしまうと恐ろしくて、心が震えて、その震えが伝わったかのように、私の言葉はぼろぼろになって口からこぼれた。

 村の子達はみんな優しかったけど、私のその言葉を上手に聞き取れずに、最初はよく話しかけてくれても、その内私の声が耳障りになったのか、私と話さなくなった。

 

 私は、言葉もろくに喋れず、そして声すらも出せなくなった。

 

 これは、私の罰なのだろうか。

 

 ごめんね、ごめんね。みんな、ごめんね。

 

 浜辺で私はいつも、自己嫌悪に陥った。波の音を聴いてると、波の音が私を慰めてくれるようで、少しだけ心が楽だったから。

 でも、波の音を聞きたくて、ついギンさんの忠告を忘れて、貝殻に耳を押し当ててしまった。

 そのせいで、私は声を出せなくなり――

 

 私は、海にも嫌われたのだと、本気で信じていた。

 

 そんな時に現れたのが、ギンさんだった。

 

「不安か?沙代」

 

 ギンさんはそう私に問いかけた。

 私は胸の奥から湧いてくる不安を抑え込むように首を振った。

 けれどギンさんにはお見通しだったようで、私の頭を優しく撫でた。

 

「大丈夫だ。俺が着いている限りお前を守ってやる。これでも、結構強いんだからな」

 

 ――ギンさんは、鬼殺隊、という鬼を狩る仕事をしていると言っていた。

 

「お前の声が戻るまでは、鬼狩りの任務はない」

 

 なんで?

 

「お前を守る為だよ」

 

 私が足手まといだから?だったらやっぱり、私を無理に連れて行かなくても――

 

「違う違う。鬼に傷つけられた娘を、どうして鬼の前に連れ出さなきゃいけないんだ。大丈夫だ、お前のことを迷惑だなんて思っちゃいない」

 

 ギンさんはそう言って笑った。私は声を出せないのに、ギンさんは私が言いたいことを手に取るように分かったかのように、私の気持ちをくみ取ってくれた。

 

「だが、代わりに蟲師の仕事を手伝ってもらうからな。ばりばり働いてもらうから、覚悟しろよ」

 

 ――どうしてだろう。

 見た目も声もまったく違うのに。

 この人を見ていると、悲鳴嶋さんのことを、思い出す。

 

 ――私は、生きていいのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 たくさんの場所を歩き回った

 身体が小さな私は、ギンさんに必死についていった。

 

 ギンさんは私の声を戻す為に、たくさんの場所に連れて行ってくれた。

 浅草や、富士山が見える駿河、京都にも連れて行ってくれた。

 大人たちの話でしか聞いたことがなかった大都会や、人がまったくいない辺境の森や、孤島。

 乗ったこともない汽車や、馬、船に乗って、たくさんの土地を歩き回った。

 

 見たこともない町や人や珍しい乗り物は、私の心をいつも感動させた。

 

 ギンさんは行く先々で、私と同じように蟲で困っている人達や怪我や病で苦しんでいる人達を助けた。ギンさんが調合する薬は効き目がばっちりで、ギンさんが薬を処方して治らなかった人はほとんどいなかった。

 私も薬の調合に手伝った。手伝ったとは言っても、簡単に薬草を摩り下ろしたり、混ぜたりする程度だけど。

 

「沙代は筋がいいなぁ。これで蟲が見えたら俺の弟子にしたんだが、将来は看護師か、薬師になれるかもなぁ」

 

 ギンさんにそう褒められた時、本当に嬉しかった。

 私は嬉しくなって、ギンさんの手伝いをどんどん自分からやった。それからギンさんは、時々私に文字を教えてくれるようになった。

 

「声が出せるようになっても、文字を読めるに越したことはないからな。知識や見聞を広める為にも、文字を少しずつ覚えていこう」

 

 ギンさんはそう言って頭を撫でてくれた。

 悲鳴嶋さんや、おばあちゃんと同じ撫で方だと、最近分かった。

 

「偉いぞ、沙代」

 

 優しい人の撫で方や褒め方は同じなんだと、最近知って、私は心が温かくなるのを感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おかしい。もうそろそろ声が戻ってきてもいいはずなんだが」

 

 藤の花の家紋を掲げた家で朝ごはんをギンさんと一緒に食べていると、ギンさんは訝しむように私を見ながら言った。

 私が、あの漁村でギンさんに引き取られて、旅を始めてから一カ月。

 

 私の声は、まだ元に戻っていなかった。

 

 

「ひょっとしてお前さん、このまま喋れなくていいとでも思ってないか?」

 

 

 私はぎくりとした。ギンさんの言葉が図星だったからだ。

 旅を始めて一カ月。ギンさんと一緒に旅をするのは本当に心地が良くて、私が喋らなくても、ギンさんは私の気持ちを察してくれるから。このまま喋れず、ずっとギンさんの旅に着いていきたいと思っていた。

 だって、私が言葉を話せるようになったら。私とギンさんの旅は、そこで終わってしまうから。

 

「沙代。お前が声を出す為に必要なのは、あとはお前さんが"声を出したい"という思いだ。このまま言葉を喋らなければ、一生言葉を話せなくなるかもしれないぞ」

 

 私は俯いて、目を逸らした。

 

「なあ、沙代」

 

 嫌だ。私は、声を出したくない。私が喋って、いいことなんて一つもなかったもの。

 私は、大好きなギンさんと一緒にいたい。だから――

 

「……はぁ。どうしたもんかね」

 

 だから私を、捨てないで。置いてかないで。

 独りにしないで。もう、独りになるのは嫌。

 

「…………ギン」

 

 その声を訊いた時、私の心の臓がどくんと大きく高鳴った。

 どうして、その声が聞こえてくるの。

 

 だって、あの人は、処刑されたって――。

 お願い、ギンさん、嘘だと言って。私が会いたくて、謝りたくて、でも、この世界で一番会いたくなかった人だと、言って欲しい――

 

「ん、悲鳴嶋さん」

 

 ギンさんは、そんな私の期待を裏切るようにあっさりとその人の名を口にした。

 

 悲鳴嶋、なんて名字、私が知る限り一人だけ。

 

 震える手で持っていた箸をそっと置き、私は後ろを振り返った。

 

 ――ああ

 

 一目見て、分かった。ずっと昔。もう数年も前なのに、あの時よりもずっと大きな身体になったその人は、大きな数珠を首にかけていて。

 

 悲鳴嶋行冥さん。

 

 私がまだ五つの頃。

 悲鳴嶋さんは身寄りのない子供を寺に集め、育てていた。血の繋がりはなかったけど、皆仲睦まじく互いに助け合って、家族のように暮らしていて。

 私や、他の子供達は悲鳴嶋さんが大好きだった。

 お腹いっぱいにご飯を食べれるわけじゃなかったけれど、親はいないけれど、それでも幸せだった。

 

 けれど、ある日、獪岳が皆で貯めていたお金を盗んで。

 みんなで怒って追いだした日の夜、鬼が襲ってきた。

 

 私以外の他の子供達は、鬼に、皆殺された。

 

 助けを呼びに行こうと、寺から飛び出した所を殺された。

 

 目が見えない悲鳴嶋さんが真っ先に狙われると思った皆が、悲鳴嶋さんを助けようと寺から走り出したけれど、皆死んでしまった。

 

 当時寺で一番小さかった私は、悲鳴嶋さんの背中の後ろで震えるしかなくて。

 

 悲鳴嶋さんが、鬼を殴り続けている恐ろしい光景を見たくなくて。目を塞いで、一晩中震えていた。

 

 鬼を殴る音と、血や骨が砕ける音が永遠と続く中で。

 

 夜が明けて、村の人達が来て。

 

 私は、眼を開くことができなかった。悲鳴嶋さんが殴り続けて潰れたであろう鬼の死体や、家族同然だった子供達の死体を見ることができなくて。

 

 目を手で覆ったまま、言ってしまった。

 

 

 

「あの人は化け物。あの人がみんなを殺した」

 

 

 

 ――私は、その言葉を言ってしまったことを、これからずっと先、ずっとずっと後悔し続けることになる。

 鬼が朝陽の光を浴びて塵となって消えてしまったこと。

 私が言った"あの人"というのが、悲鳴嶋さんのことだと勘違いした村の人達が、連れていってしまったこと。

 

 あの後、必死に「違う」と大人達に言ったけれど、大人は私の言葉を聞いてくれなくて。

 

 悲鳴嶋さんは、命を懸けて私を守ってくれたのに。 

 

 あの後、悲鳴嶋さんは処刑されてしまったと、大人の人に訊かされた時、私の目の前は真っ暗になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「む?誰かいるのか?」

 

 悲鳴嶋さんは、相変わらず目が見えないみたいだけど、私がいることにすぐ気付いたようだった。

 私がいる方を見て、私に問いかけてくる。

 

「ああ。俺が保護している子供だ」

 

 私は声が、言葉が出なくて。ギンさんが代わりに私の事を説明してくれた。

 

「鬼による被害者か?最近、ギンは鬼狩りの任務についていないと聞くが」

「いや。蟲患いの患者だ。声を出すことができなくなっているんだ」

「声を?」

「ああ。蟲師の仕事を手伝ってもらいながら、旅について来てもらってる。で、話ってのは、耀哉からか?」

「お館様と呼べと言っているだろう、ギン」

 

 馴れ馴れしくするなと悲鳴嶋さんはギンさんを窘めた。

 

「お館様からの命令だ。そろそろ鬼殺隊の任務に戻れ。蟲柱としての責務を全うしろ」

 

 ギンさんは「はぁ」と溜息を吐いた。

 

「だから言ったろ。蟲師の仕事があるからしばらくは鬼狩りの任務に入れないって」

「時間は十分に与えた。お前の蟲師としての仕事がどれほど重要かは皆が理解している。だが一カ月は長すぎる。これ以上はいくらなんでも待てない」

「…………」

 

 悲鳴嶋さんは、私の事に気付いていないようだった。悲鳴嶋さんは眼が見えない。声を出せない私のことを、あの寺で悲鳴嶋さんに育てられた沙代だとは気付けないようだった。

 私は、内心びくびくしながら、手に嫌に冷たい汗を握りながら、顔を俯かせて息を殺していた。

 

 お願い、気付かないで。私がここにいることを、気付かないで。

 

「鬼は今この時も、のうのうと生き続けている。だが、柱も含めて鬼殺隊は常に人手不足だ。先々月も、最古参の水柱が逝かれてしまった。今や柱の最古参は私とお前だけになってしまった……」

 

 悲鳴嶋さんは悲しそうに「南無阿弥陀仏」と言いながら数珠をじゃりじゃりと鳴らした。昔からの、悲鳴嶋さんの癖。何も変わってない。

 

「水柱は俺の兄弟子がなる。そう急くことでもないだろう。俺が見つけてきた甘露寺蜜璃も、杏寿郎の話によれば柱になれる器の持ち主だ。花の呼吸を使うとか言う美少女剣士だったか?確か、悲鳴嶋さんが見つけてきた逸材だろ。耀哉は次の柱はそいつにすると言っていた。何も問題ないじゃないか、悲鳴嶋さん」

「ならぬ」

 

 びしり、と悲鳴嶋さんが持っていた数珠にヒビが入った。

 

「鬼の滅殺は、私達柱の義務であり、鬼殺隊の悲願だ。私は、私から全てを奪った鬼共を許さない。私が守れなかった子供達に報いる為にも、鬼を滅殺しなければならない。己の心臓が止まるその時まで。お前もそうだろう、ギン」

 

 悲鳴嶋さんのその言葉に、私は息が止まった。

 

「お前と私は同じだ。鬼も、人も、信じ切れない。疑り深い。猜疑心の塊だ」

「……」

「あの日、共に同じ日に柱に就任した時、守ろうとした人に裏切られた私と同じ傷を持ったお前を見た」

 

 お館様に、柱の襲名を命じられた時、隣には自分より年若い剣士がいた。それがギンだった。

 襲名の儀を終えた後、二言三言、言葉を交えた。

 

 ――俺は、別に柱なんてどうでもいいよ。ただ戦うだけだ。鬼も、鬼に与する者も、等しく俺達の敵だ。

 

 あの人間も鬼も、全てを憎むような、狼のような強い言葉を、私は今でも覚えている。

 人に裏切られた、私と同じ傷を持った者だと直ぐに分かった。

 私と同類。鬼に、そして信じたかった、守りたかった人に、信じると言う気持ちを根こそぎ奪われた男だ。

 

「お前が西の方で指名手配されたのは知っている。人殺しと疑いを掛けられたことも」

「耀哉から聞いたのか?」

「ああ」

 

 行冥はかつて、人殺しの罪で牢に閉じ込められた。鬼から子供達を守るために戦った成れの果てが、狭く暗い牢屋だった。産屋敷耀哉が助けてくれなければ、自分はあのまま処刑されていただろう。

 耀哉から、ギンも同じような目に遭ったと。よければ話を聞いてやって欲しいと言われた時、悲鳴嶋は悲しかったが、同時に少し嬉しかった。自分と同じ境遇の者がいたことに。

 

「私もお前も、これから先ずっと人を疑い続けるだろう」

「……」

 

 怒っている。悲鳴嶋さんは、怒っている。

 やっぱりそうだ。悲鳴嶋さんは、あの時の事を忘れていない。今も恨んでいる。私を許していない。守ってくれた私に裏切られたことを。違う、違うの、悲鳴嶋さん。私は、悲鳴嶋さんを傷つけたくてあんなことを言ったんじゃない。

 私はそう言いたかった。でも、それでも声は出なかった。

 どうして、どうして。

 今こそ謝らなければいけないのに。それなのに、私の喉は、「ごめんなさい」の一言も言えない。

 声を出したくないと、私の心は恐怖で震えていた。

 私が今ここにいると悲鳴嶋さんに気付かれたら、どんな顔をされるのか分からない。どんな言葉を言われるか分からない。恐い、恐い、恐い!

 

「一週間だ。それまで待つ。それまでに、蟲師の仕事を一区切りつけるんだ」

「……はぁ。分かったよ。一週間までには鬼殺隊の仕事に戻るよ」

 

 ギンは悔しそうに眉を潜めた。

 確かに、一カ月も鬼殺の任務から離れるのは、いくらなんでもさぼりすぎだとギン自身考えていた。このままずっと沙代の面倒を見るわけにはいかないし、近いうちに藤の家紋を掲げた家に預けるか、蟲屋敷に引き取るべきか……。まあ、それはいい。

 

「でも悲鳴嶋さん。俺はもう、人を憎んじゃいないよ」

「なんだと?」

 

 ギンの独り言のような独白に、悲鳴嶋も、そして沙代も目を見開いた。

 

「俺を人殺しと、この世の憎しみを全て込めて叫んでいたあの娘は、もう死んでしまった。何を想ってそう言ったか、もう死者の言葉を掘り返す術はない。けど、あの娘にはそう叫ばなきゃやってられない事情があったんだろうと俺は思う」

「…………」

「人の心は目には見えない。過去を見通す目もない。けれど、もしあの娘にもう一度会えたら、俺は恨もうとはもう思わないよ。あの娘が謝れば、俺は許す」

 

 人を憎むのも、憎まれるのも、疲れるんだ。

 謝れるなら、許せるなら、それに越したことはない。

 

「仮に鬼を全部殺しても、肝心の俺達が憎しみに囚われれば、この世は結局、憎しみが増えるだけだ。斬って殺して刺されて恨んでやり返して。そんなことしても意味はないんだ。だから俺は、今度こそ恐れや怒りに眼を眩まされずに、蟲師として、鬼狩りとして生き続ける」

「――そうか」

「来週には鬼狩りの任務に復帰する。心配は無用だ、悲鳴嶋さん」

「そのようだな」

 

 悲鳴嶋はそう言って部屋から出ていこうと襖を開き――

 

「――私と同じでは、なかったのだな」

 

 ギンにも聞こえないほどのか細い声で、悲鳴嶋はそう言って出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 悲鳴嶋さんが去った後。

 

「さて、沙代。悪いが、お前の面倒を見れるのは後一週間になっちまった。早い所お前の声を戻さねえと――」

 

 私は、声は出ないけれど、必死に口を動かして、ギンさんに伝えた。

 

 ――ギンさん

 

「ん?」

 

 

 ――もし、その人が謝って来たら、ギンさんは、許す?

 

 

 ごめんなさいと、言いたい。でも、許されないかもしれないと考えると、恐ろしい。私はそれだけ、ひどいことをした。

 言わなきゃいけないのに、結局言えなかった。

 勇気がない、意気地なし。

 でも、もし許してくれるなら――私は、行冥さんに、言いたい。

 

「許すさ」

 

 ――ほんとに?

 

「許されなかったら、何度でも許してもらえるよう謝ればいい。声を出して言うのが無理なら、手紙を書いて伝えればいいさ。誰か、謝りたい人がいるのか?」

 

 こくりと、私は頷いた。

 

「……さっきどうも様子がおかしかったが、ひょっとして悲鳴嶋さんか?」

 

 ……本当に、ギンさんは察しが良すぎて。涙が出るほど優しくて、哀しい。

 

「だったら、俺が一緒に謝ろう」

 

 ――本当?

 

「ああ。何があったかは知らんが、お互い、生きているんだ。だったら、やり直す機会はいくらでもある。お前さんが勇気を出せないなら、俺が手伝うさ。独りで抱え込まなくていい。頼れる誰かに頼ればいいんだ」

 

 だがその前に、声を出せるようにしなきゃな。

 そうギンさんが笑いながら私の頭を撫でてくれた時。私は嬉しくて、泣き出してしまった。

 

 

 もしも、声の出し方を思い出して、自分の声を出せるようになったら。

 

 行冥さんに、謝れる。大好きな行冥さんに、謝れる。

 

 

 

 自分の声で、謝れるんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ある日、岩柱の屋敷に、蟲柱と少女が訪れた。

 

 蟲柱と少女は頭を下げ、岩柱は優しげに涙を流しながら頷き、それを見た少女はわんわんと大泣きした。

 

 その夜、岩柱とその少女は、今まで喪っていた時間を取り戻すかのようにたくさんのことを話した。そして何度も何度も、あの時はごめんなさいと謝った。

 

「沙代。お前のその言葉で、私は十分報われた。これからは自分の為に生きなさい。私や、子供達の分まで長生きして、幸せになってくれ。それが私の願いだ。いい人を見つけて、結婚して、家族を創りなさい。沙代が幸せなら、私は力の限り戦うことができる」

 

 そう微笑みながら、悲鳴嶋行冥は言った。

 

「なら、悲鳴嶋さん」

「ん?」

「私ね――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数年後。

 

 

 

 元"花柱"胡蝶カナエが運営する蝶屋敷に、ある一人の少女が訪れる。その少女はどこか年季が入った藤の花の香り袋を首から下げていた。

 

 

「ごめんください!」

「あらあら。可愛いお客様。どなたかしら?」

 

 

 

 

 

 ――私、"蟲柱"鹿神ギン様に嫁ぎに来ました!!

 

 

 

 

 

 

 その後、"蟲柱"の弟子である胡蝶しのぶと、元"花柱"の胡蝶カナエが嵐のように荒れたのは言うまでもない。

 

 

 

 

*1
さめ類の特に大きいものの俗称




投稿遅れました。大変申し訳ない。

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