空からの贈り物を受け取った少年はその日、ヒーローとなった

10を超える様々な姿を持って、凶悪なるヴィラン達を打ち倒せ!


1 / 1
それは宇宙からやってきた!

 ヒーローと呼ばれる者たちがいる。

 

「DETORIT SMASH!!!!」

 

 あるものは受け継いできた超パワーを。

 

「プロミネンスバーン!」

 

 あるものは太陽のような熱き炎を。

 

 突如として発生した『個性』と呼ばれる異能を使って、様々な人を助ける仕事をする者たち。

 暗い闇夜を照らす正義の味方。

 相対するは、悪事を働くヴィラン達、人々を嘆き苦しめ悲しみの底へと月とす者。

 己が欲望を抑えようともせずに、本能のまま暴れる乱暴者である。

 

 世はまさに、混乱極めるヒーロー社会。

 №1と呼ばれたヒーローがかつての英雄と呼ばれ始めたあたりのこと、空より舞い降りる謎の物体が現れた。

 

 それは、地球各国の衛星や観測機器などの科学の眼にはなぜか映らない、事実地球に何らかの物体が落ちて被害が出たとの報告は何一つ存在しなかった。

 たまたま空を見ていた者たちが空に火の球を見たという報告だけが、何かが落ちてきていたのだということをひそやかにネットを騒がせていた。

 

 だがそれも数時間で収まり、大気圏で燃え尽きた宇宙ゴミかなにかだったのだろうという結論が広まっていった。

 

 しかし、”それ”は確かに地球に落ちていた。

 人もあまりいない、山奥の奥底に大きなクレーターを作り出せいてひっそりとそこに落ちてきた。

 人もあまり近づかない場所であるそこで、誰の目にも止まることなく埋もれるはずであった。

 雨に濡れ、土が埋め立て、痕跡が消されて忘れ去られるはずだった。

 

「ん、何だこれ?」

 

 たまたま山奥で、一人キャンプをしていたとある少年がそれを見つけるまでは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヒャハハッ! この銀行はこの俺、アイアンが占拠した!」

 

 都市のとある銀行で、アイアンと名乗るヴィランが銀行強盗が起こしていた。

 2メートルほどの長身とプロレスラーような鍛え抜かれた筋肉が、彼の個性である『鋼鉄』によって大きく強化され、一般人では太刀打ちすることができなかった。

 

 先程、先端が三日月のように曲がっているさすまたで銀行員やお金をおろしに来ていた市民数人が協力して抑えにかかったが、逆に奪われてしまい壁に貼り付けにされてしまった。

 

 逃げ出そうともがいているが、壁に深々と突き刺さったさすまたが抜ける気配はなかった。

 

「ヒーローはまだか!?」

 

「そっそれが、もう少しかかるらしく」

 

「畜生! オールマイトのあんな激しい戦いの後にこれとかふざけんなよ!」

 

 銀行員たちが小声で悪態をついていると、外からは拡声器を使った警察官の声が銀行に響いた。

 

「犯人に注ぐ! すでに銀行は包囲されている。 もうすぐヒーローも到着することだろう、もう逃げ場はないぞ! おとなしく人質たちを解放して投降しなさい!」

 

 と警察官はヴィランにそう告げて、あきらめさせようとするが、

 

「ヒャハハッ! ヒーロー? むしろ望むところじゃねぇか。 のこのことやってきたヒーローをぶちのめせば、俺の名も上がるってもんだぜ!」

 

 逆に火に油を注いだようだった。

 

「だがぁ、このままただ待ってるってのもつまらねな……そうだ、今から五分ごとに人質を殺していくってのはどうだ」

 

 周囲の空気が凍り付いた。

 この男は、時計の針が数字を指し示すたびに人を殺していくと言っているのだ。

 その中には親子連れやご老人なども含まれていることだろう。

 もしここに、№1ヒーローにあこがれ今もなお修練に励むとある少年がいたのであるならば、その顔を憤怒の色に染め上げていることだろう。

 

 だがここに少年いないし、ヒーローもいない。

 

 市民たちにはどうすることもできなければ警察にもどうすることもできない、ヴィランの悪意に誰も低擦ることはできはしない。

 

「うわあああああああん!」

 

 恐怖で泣き出してしまった少女の声が銀行何に響く、母親が何とか泣き止ませるようとするが歪んだ顔では泣き止ませることはできない、逆にさらに泣かせてしまうだけだった。

 

「ヒャハハッ! おっと、どうやらそこのクソガキが一番に死にたいらしいな」

 

 ヴィランの眼が泣き叫ぶ少女を射抜くと、ゆっくりと少女の方へと足を動かし始めた。

 

「やめてください! どうかこの子だけは!!」

 

 母親が少女の前に立ち守ろうとするが

 

「うるせぇよ!」

 

「きゃぁ!」

 

 右手で簡単に吹き飛ばされてしまう、そしてヴィランが少女の前に立ち鋼鉄の腕を大きく天井へと上げ

 

「ヒャハハッ! 俺に殺されることを喜ぶんだな!」

 

腕を振り下ろした。 

 市民たちが思わず目をつぶり、やがて聞こえてくるだろうで音に恐怖しながら結果を待っていた。

 

 

 

 

 ……だが、訪れる悲劇は訪れなかった。

 

 

 

 

「ふぃー。 まったく、いい大人がこんな子供殴ろうとするとか恥ずかしくないの?」

 

 

 

 

 市民たちが眼を開くとそこには、青いトカゲのような存在が少女を抱えていた。

 

「ふぇ?」

 

 助けられた少女は、今何が起こったのか理解できていないらしく呆けた表情をしていた。

 

「ヒャハハッ! なんだてめぇ、もしかしてあいつらが呼んだヒーローか?」

 

「なにそれ? 俺はそんなの知らないよっと」

 

 その瞬間、一瞬の残像を残しトカゲの姿が消えた。

 

「は?」

 

 ヴィランが周囲を見渡すと、先ほど吹き飛ばした母親のもとにトカゲは立っていた。

 

「大丈夫ですか?」

 

「えっええ、何とか」

 

「それならよかった。 ほら、お母さんと一緒に待っててね」

 

 そう言って、トカゲはヴィランと向き合った。

 

「ヒャハハッ! 高速移動がお前の『個性』か? ちと厄介だが早く動くだけじゃぁ俺の『鋼鉄』はどうにもならねぇぞ?」

 

 ヴィランは手を鳴らしながらそう言った。

 

「ふむ、確かに個の姿じゃお前を真正面からぶちのめすには力が足りないな、ならこうすればいいんだよ」

 

 トカゲは胸にある丸いマークを手でたたく、すると緑色の光と共にその姿が別の者へと変わる。

 胸にあったマークは左胸のあたりに移動し、全身緑色の宝石のような鉱物の姿へと。

 

「ダイヤモンドヘッド!」

 

 堂々と名乗りを上げると、ダイヤモンドヘッドは突如として姿が変わったことに驚くヴィランへと殴りかかる。

 

「オラぁ!」

 

 急いでヴィランが腕を交差し防御するが、甲高い金属音と共に銀行の外へと吹き飛ばされた。

 地面を転がるヴィランは外にあったパトカーにぶつかることで止まることができた。

 ヴィランはふらふらと何とか立ち上がると、銀行から割れたガラスを踏み砕きながら現れたダイヤモンドヘッドをにらみつけた。

 

「ヒャハハ、突然姿が変わったと思ったらなんて力出しやがる。 それがお前の『個性』のかよ」

 

「うーん……ちょっと違うんだだけど。 まぁいいや」

 

 そう言うと、ダイヤモンドヘッドがファイティングポーズをとり

 

「さぁ、ヒーロータイムだ!」

 

そう言って、ヴィランへと立ち向かっていった。

 

 

 

――これは、空からやってきた不思議な贈り物が生み出したヒーローの物語

 

 

 



▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。