転生した主人公が正義の味方に憧れる話
目を、開けた。
家で休んでいた俺の眼前には家にあるハズが無いもの達が広がっていた。
──無限大に広がる荒れた荒野に突き刺さる銃の数々。
「…また、ここか。」
ここに来れば記憶は唐突に掘り返される。
最近は見ることは無く、もう無くなってしまえとさえ思えていたモノだがどうやら神は俺の事が心底
朝は布団が血で汚れ穴が開く事だろう。
ここはもう見慣れた光景、ではなかった。
自分が立っている場所からは動けず、ただ知りたくもない知識が必ず頭に流れ込んでくる。
──体は銃で出来ている
唐突に頭に響く
──血潮は空洞で心は弾丸
この人生で一番聞きたくない
──幾度の訂正を得て不敗
体の中に唐突に現れる異物の感覚
「止めろ、聴かせるな…聴きたくない…!」
頭を抱えるように耳を塞ぐ。
──ただ一度の敗走はなく
それでも音は手を通り抜けて聞こえる。
ギチギチ、ギチギチと体の中で異物が詰め込まれる感覚に痛みを感じる
──ただ一度も戦に意味はない
張り詰める異物の数々、そして皮膚を引き裂いて現れるピンク色の鉛と黄金の器。その姿は見るも無惨に血で汚れ、膨らんでいた。
確かに俺は
──故にその生涯に意味はいらず
溢れる異物はついに限界に近づく。
こいつに、この力に俺は…
──その体は、無限の銃で出来ていた
壊されてしまう
ズガァンッ!
膨れ上がった薬莢は限界に達した
何度も、体内で破裂した
肉は耐えられず焼き焦げ吹き飛ばされ
対には何もなくなって
やがて荒野は静かになった
ガバッ!と起き上がる。
記憶は、無い。いつも通りの最悪な夢を自分は見たのだろう。
開幕これかよと気分が最高に最悪だが今日もやることは沢山ある。
ため息を吐き出す。胴体を起こし、自分の体に手を当てて
筋骨正常、筋繊維から血液、臓器以上なし。
いつも通りの健康的な体だった。今日はどうやら運がいいらしい。何故なら
汗でびっしょりだがソレは大体が服についてるだけ
穴が開いて血塗れのズタボロになっていない今日の布団は大変珍しい現象だ。
シャワーを浴びて着替える。いつもの店の制服にエプロンを着け、髪を正す。
二階から降りて店の開店準備を始める。
ウチのモットーは安く、美味しいと言うものだ。
機械類は念のため点検しておこう。
ガスコンロ、オーブンに電子レンジ、ミキサー等々とついでに料理器具。
全部まだまだ現役だ。
仕込んでおいた食材を冷蔵庫、冷凍庫に入れ椅子と机を拭く。端末を一つ一つ調べて店の開店準備は全て終わった。
店の立て札を「open」に変える。
「さぁ、始めようか。」
今日も来客が多い。やはりこの安さはかなり評判がいいようだ。
「お、
「おやっさん!生きてたのか。」
「あたぼぉよ!この俺が死ぬとでも?」
「ハッハッハッ、違いねぇや。」
「「ガッハッハッハッ!!!!」」
俺が仲良く話してるのはいつもこの店に来てくれるおやっさんだ。最近仕事が忙しくて来れなかったらしいがどうやら生きていたようだ。
何故、生きていたか等と言うのか。
理由は世間話とか冗談とかじゃなく、この世界が変わっちまったからだ。
冗談を言えないほどに危険な世界へな。
昔話をしてやろう。昔々、この世界にとある特殊なモノが発見された。
その物質は凄まじく、この全人類の生活を良い意味でも悪い意味でも大きく変化させた。
「コーラップス」と呼ばれる物質がこの世界を、地球を変えてしまった。
こいつは某フ□ムゲー「何にでも使える緑色の美しい汚染粒子」よろしく自然環境に致命的な毒成分が含まれていて、まさに利益あるものに棘があるを体現した物質だ。
世界に漏れ出たコーラップスは世界を破壊し、最早人類どころか生物の住める地域なんて数ヵ所と言えるほどに限られている。
まぁ今でも昔でも人間は替わらない。それにそんなもの、今の俺に必要ではないしな。
俺が何をしているか?そんなものこの時代じゃ決まっているだろう。
「嗣郎!こっちチャーハンよろしく!」
「俺は餃子にラーメンセット!」
「野菜炒めにトンコツラーメン!」
「いつものヨロ!」
「生ビールに枝豆!」
「唐揚げあくしろよ!」
「請求が多い!机の端末に書いて寄越しな!」
「「「「「アザーッス!!」」」」」
あぁそうだ、俺の名前を言っていなかった。
俺の名前は
──所謂「転生者」なのだろう。
なのだろう、と言うのは転生した記憶やその前の記憶がただ"誰かの記録を見ている"と言うだけで俺にとって今が第一の人生なのだ。それにこの力は…
……俺が
今の俺も、昔の俺も、転生前の俺らしき人物も
困っている誰かを必ず助ける
人を助け、時には涙を流して仲間と共に駆け上がるその背中が「綺麗だった」から、「美しかった」から俺はヒーローに憧れたんだ。
だから俺は力を欲した。誰かを助けれる
だが、結果はこの様だ。
俺の故郷は鉄血のクソッタレ人形に簡単に襲撃され、
まるで本家の「衛宮士郎」のようだろう?だが俺は違う。戦う術を持っていたし強大な力を俺は持っていたんだ。
だが俺は戦う"覚悟"を持っていなかった。
俺は躊躇したんだ、引き金を引く事に。
アイツ等にも感情があった。アイツらだって死んだら誰かが悲しむのだろうかと考えて何もできなかった。
とあるアニメの人物は言った。
「誰かを助けると言うのは、誰かを助けないと言う事」だと。
その通りだった。誰も悲しまない世界なんて無い、そんなものはただの妄言だった。
誰かを助けない事で誰かが笑顔になる。それがこの世の理だと言うことを思い知らされた。
……俺は、正義の味方になることは出来ない。
一を切り捨て、千を救う。とんでもなく合理的で、とんでもない外道こそが人々が望んだ本当の"英雄"なのかもしれない。
俺は、今なら敵を殺せるだろう。残虐に、一切の慈悲なく殺せるだろう。だが俺はもう"正義の味方"を張ることはない。
俺にできるのは格安で料理を提供して皆を喜ばせると言うことだけ。
それが今の俺に出来る、せめてもの罪滅ぼしだ。
「……食材、足りなくなってきたな。」
そろそろ食材の在庫も畑の野菜もその量が底を尽き始める。"回収に出かける"か。
「お客さん達。そろそろ在庫も無くなるんでしばらくは店じまいになると思います。」
そう宣言するとお客さん達は皆揃って悲しそうな顔をした。
「そうか、そろそろ保存食生活か…」
「また食いてぇなぁ…」
「お持ち帰り出来る?あ、出来ない…」
等々と嫌々な感じだった。
なんだか照れ臭くなってくる。こんなにも好評なんて最初の頃は思わないだろうな。
ここの生活にも馴染んできたし、皆とも仲良くなれた。俺の料理の腕前なんてまだまだ半人前なのに皆は美味しそうに食べてくれる。
これ程嬉しいと感じたことは、少なくとも俺の人生の中では無かった。
「明日は昼までは営業しますし、最初から半額バーゲンセールですので楽しみにしててくださいね。」
そう言うと皆嬉しそうになった。数名は
「おいおい嘘だろぉ?これ以上安くなっていいのかよ…」
「やっぱり営業向いてねぇよなぁ…」
「このやさしみ…逆に辛い…!」
こちらを心配してくれる人たちもいる。
俺みたいな余所者をここまで思ってくれるなんて昔じゃ本当に考えられなかった。
町の皆と仲良くなれたから知っている。この人達はこの町から出ていくことをいいとも思わないし余所者は招かれざる客として扱うことを。
だから仲良くなれたとき、本当に嬉しかったし受け入れてくれたことに俺は本当に感謝した。俺を最初に受け入れてくれたあのじいさんの事も。
俺も今じゃ"奴ら"は大嫌いだ。
ここは世界中の誰もが行きたがる平和な人生の理想郷、通称
──
世界中の民間軍事会社がこの場所にたどり着くことを目標とされた世界から隔離された
巨大人工大陸に設立された都市施設だ。
この都市は巨大な山々に囲まれ、その山を壁が覆うように設計された大陸は作られた。
貯蔵された膨大な資財に人工生命装置。大陸の大きさは設置された高さ十メートルの壁が距離100㎞にも及ぶという巨大さでその強度も反則的。
空気汚染を防ぐために張られた特殊バリア、さらに知識を持つ敵からこの地を守る擬装鏡面。そのエネルギーを産み出すのは人工大陸の地下深くに設立された三つの最新型核融合炉。そのエネルギーは有りに余り都市の電源を支え、さらには栽培場の栄養にも変えられるほど。
しかし理想郷というのも長続きしない。
2年程前、三つのウチの一つの核融合炉がその機能を停止した。原因は拡散ケーブルまで繋ぐ大型エネルギーケーブルに亀裂が入り、このままでは断裂する恐れがあるからだ。核融合炉事態は無事だがその膨大なエネルギーを運ぶパイプが壊れては自壊してしまう。
核融合炉から拡散ケーブルへと繋ぐ大型ケーブルは交換が効かない貴重な部品だ。運良く設計図は残っていたそうだが重要な材料は生憎と残ってはいないらしい。エネルギー循環効率が良く、熱に強く頑丈な金属は貴重だからだ。
融合炉が停止した影響は大きく、人工生命装置が使えなくなり栽培場に送る栄養素を生産、変換でなくなってしまった。現在食料は味気ない保存食が多く作られるようになった。
さらには除染フィルター等の除染機器の消耗が計算より早かった。計算では50年ぶっ続けで稼働していられたフィルターが経年劣化が早く、このままでは20年と持たない。
大陸の酸素は木々に任せ壁とバリアーで汚染物質の侵入を食い止める程度に納め、物資を運び込むための門の道から汚染のない安全圏までの道を除染、定期的に
さらにガソリン、灯油に天然ガスもそうだがそれらは無限にあるわけではない消耗品だ。一部の金属のように再利用が効かない者共は外へと集めに出る必要が必ず存在した。
店の半額セール終了後に乗り物の点検を済まし次の日に備える事にする。
時刻は大体午前五時程だろうか。昨日は大繁盛で毎週日曜日のみ営業に変更しようか悩む。
タンクの燃料貯蔵は十分、家に泥棒は入れないしこれからする旅の準備も完了した。
ブーツを履き、外套を羽織る。
バイクを動かし、サイドカーの荷台やエンジンの動作確認をする。
エンジン良好、荷台も準備完了。タイヤの空気OKでパンクも無し。
バイクにまたがり鍵を回し、キックレバーを出して蹴る。
ドルゥルルンッ!!!!
点火された事からシリンダー機構が爆発で稼働し、その爆発の排気ガスがマフラーへと移動し排出される。
エンジンの振動が下半身から心臓へと伝わり自然と笑みが溢れる。
クラッチレバーを握りニュートラルからギア1にレバーを左足で操作する。そしてハンドルをゆっくり回し外へと移動させる。
倉庫から出る。外を眺めるといつの間にやら日ノ出だったようだ。
倉庫に鍵をして再度乗りギアを入れる。
「お?もう出発かい?」
常連客のおっちゃんが話しかけてきてくれた。
「はい、食材をたんまりもって帰るんで楽しみに待っといてくださいね!」
「ガハハハ!そりゃいい!」
おっちゃんは大きく笑い、直ぐに真剣な表情へと変わった。
「いいか?外の人間はここを必死こいて探してやがる。お前も気をつけて人間と会うようにしろ。」
意味は、直ぐに分かった。
ここの住人だと知られれば脳を物理的に覗いてでも情報を吐かせようとするだろう。
だが人類はどこまでいっても変わらない。
「そんな最早死人のような奴らに関わる機会があれば、ですがね。」
そう言うとおっちゃんはニヤリと笑って直ぐにおちゃらけた。
「ちげぇねぇや!」
「「ガッハッハッハッハッ!!!!」」
「やかましいッ!」
「「すんません!」」
その後ハハハ!とまた笑いあってしまった。
門に向かって走らせる。大分スピードが出たらギアを3速に入れてスピードを上げる。
この大陸を守る壁の門に近づく。門は住民ならそのまま突っ込むと勝手に門が開いて住民を進ませてくれる。
監視カメラの兄貴には昨年からお世話になっている。カメラにピースすると後から聞いたがちゃんとピースを返してくれているらしい(兄貴の妻談)。
俺は外の世界へと久々に出た。
しくじった
UMP45は自分の失態に舌打ちした。
鉄血人形に囲まれてしまったのだ。
「普段の私なら、こんなヘマやらかさないンだけど…」
彼女のその優秀な判断能力を落としてしまっている存在が彼女に抱えられて眠っていた
G11、彼女の小隊の狙撃主だ。
いつも眠そうにし、眠っている彼女だが戦場ではオン、オフを切り替えれる少女だ。しかし現在彼女は未知の外敵に攻撃され重傷を負い、スリープモードにシステムダウンした。
そう、彼女達は戦術人形と呼ばれる人造人間のようなものだ。
CNT筋繊維を使い、さらに人工血液に人工臓器からそのコアまで全てが人工的に作られた人間…いや、人類の醜い戦争の道具として作られた戦術人形だった。
彼女達の任務は簡単。
『人類の求める
言葉にすれば簡単だが実行するのは難しい。
なにせここ数十年はあのグリフィンが総力を上げ捜索しても見つからない、まさに『全て遠き理想郷』なのだから。
そして彼女達は廃墟とかした都市にここに居るハズのない人影の捜索と補給に来たが鉄血が数多く存在し、さらにはその指揮官らしき敵に仲間と分断され挙げ句の果てにはG11が重傷に追いやられてしまった。
『ザザ…ザザ…』
「ジャミングまでしてくるなんてね…」
幸い銃声から自分の仲間がまだ生きているのが分かっている。
今はやり過ごし、合流するしかないのだ。
ダダダダダァッーン!
「!?マズイ、見つかった…!?」
突如自分のいる廃墟に撃たれる弾丸の嵐。
(いえ、炙り出しかしら…?)
規則性のない弾にそう考えるがその答えはすぐに出てきた。
「居るのだろう?出てこい人形。」
(…多分カマかけてきてるのね。無駄よ、そう簡単に出てくるほど私は…)
「お前の"大事な仲間"の頭が吹き飛ぶぞ?」
「!?」
一瞬の動揺。揺れた事から音が鳴り、その隙を逃す程鉄血人形はポンコツじゃ無かった。
「ソコじゃな?」
「しまっ、」
ズポンッ!と間抜けな音がする。
ズガァァァーーーンッ!!
しかし次の瞬間撃ち込まれるのは弾丸ではなく爆発するグレネードだった。的確にUMP45の居た場所に投げ込まれた手榴弾より一回り大きいソレはその場を破壊してその牙を向ける。
「く、そ!」
UMP45はG11を背負い走るが万全の状態ではない彼女には鉛の嵐は避けきれなかった。
左足と右二の腕に被弾。損傷は大きく立つことは出来ないだろう。
「追い詰めたぞ、子猫の人形よ?」
「ハッ、この私を子猫に見立てるなんて貴女の目は節穴なのかしら?」
そう罵倒するが倒す力は子猫以下だろう。様々な角度から銃口が向けられており逃げるのは不可能であるのが窺える。
それでも彼女は生きることを諦めなかった
なんとか生き残る術を探すが出ては来なかった
「さぁ、死んどくれ。」
銃口が頭部に向けられ、指は引き金を…
「45ッ!」
引かれなかった。
タタタタッァーンッ!と鳴り響く仲間の銃声に彼女は顔を上げる。
鉄血人形は多数が建物に隠れ、撃ち抜かれた。UMP45の仲間が鉄血が撃ってこれないようにその場所に弾をバラ撒く。
「立ちなさい!早く行くわよ!?」
仲間のHK416に肩を持たれ、妹のUMP9がG11を担ぎ急いで離脱する。
「…で?どこに逃げるのよ?」
「逃げ場なんか知らないわよ!ここ大きすぎるでしょ!?」
しかし状況は最悪。依然として敵に包囲されさらに地図が無いため逃げ道は不明。HK416の悲鳴染みた叫び声が銃声と共に聞こえた。
走り続ける事でなんとか逃げられているがそれも時間の問題だろう。
「クフフフ…どこまで逃げられるかのゥ?」
そんな苛立つ声が聞こえた気がした。
道を探し、時には逃げ道をつくり、さらには丸一日逃げ続けた。腐ったレーションを掻き込みなんとか自身のエネルギーを保たせる。応急修理で動かせるようになった足を見ながら今の状況を45は思考する。
弾薬は無駄撃ちせずに節約し、敵に会わないよう隠密に行動してきた。だが奴はこちらを遊ぶように敵を連れてきたり、時には撤退させたりを繰り返している。ここままではこちらの全滅は火を見るよりも明らかだった。
そしてついに限界が来た。
「…45、残りの弾薬は?」
「ゼロ、撃ち尽くしたわ。」
「9も?」「そだよー…」
「クソッ…」
頼みの弾薬が全て尽きてしまった。唯一の対抗策が最早使い物にならなくなってしまった。
鉄血人形はもう追い付いてきた。食料は運悪く見付からずエネルギーももう底を尽きる。燃費の悪い体に悪態を吐きながら一つの考えが脳裏にこべり付く。
最早「袋のネズミ」だ。
「やァッと見つけたぞ…クソッタレ共。」
前見た奴とは全然違う鉄血の人形。恐らく上位の人形だろうそいつは巨大なブレードを装備しこちらに歩み寄ってくる。
その様は助けに来た天使ではなく、こちらの命を刈り取る死神だった。
もう、逃げ場がない。
「クソッ……」
「さっさと…死ねぇッ!!!!」
振り下ろされる大型ブレード。その角度から全員が死ぬのは最早当たり前に感じた。
最後に彼女、45は呟いた。
「皆と
「だが、その先は地獄だぞ?」
──体は銃で出来ている──
「なッ!?」
突如、鉄血人形共にあり得ない程の轟音と鉛弾が降り注いだ。
ヴァアアアアアアァァァァァァアアァァァァァァアアアアアアアアアァァァァァァッ!!!!!!
毎分6000発を発射する人が生身で持って撃てる程の代物ではない機関銃
M134機関銃──通称ミニガン。
その圧倒的な火力は奴等が逃げる暇を与えずその原型が分からなくなるまで粉砕したように見えた。
「チッ、逃したか。」
男の声が聞こえた。ブレードを携帯した上位人形は自身の仲間を盾にしながら逃走したようだった。
唐突に静かになる空間。
建物の上に居た男は手に持っていた機関銃を投げ捨て、「ふぅ」とため息を吐くと大きなケースを持ってこちらに近付いてきた。
身長は180を越える巨体。顔は何かを巻き付けて纏っていて口元しかわからなかった。
当然警戒する彼女達、しかし彼は気にせず
「ふむ、大した損傷だ。私の知る君達はもう少し美しいのだがね。」
男は皮肉げな表情を浮かべてそう言い、目の前にそのケースを置いた。
「中に応急修理キットと私特性の弾薬がある。これで傷を少しは癒すといい。変わりに等価交換として私の親切に応じ、私の事は黙って頂けるとだいぶ助かるのだが…」
男はそう言うと顎に手を当ててこちらを見ると唐突にニヤリ、と笑みを浮かべ言葉を放った。
「まぁ、精々生き残る事だな?」
そう言うと男は背を向けて歩き始めた。私達が生き残れるかわからないが、死ねば情報は無くなるのでそうしろと言うかのように。
「まって!」
私は何故か、男を呼び止めてしまった。
たった一つの疑問を晴らしたいがために。
「『その先は地獄だぞ』ってどういう意味なの?あなたはアヴァロンの行方を知っているの!?」
そう言うと男は立ち止まり言葉を置いていった
「自分で答えを得るのだな。」
強く風が吹いた時、いつの間にか男の姿は見えなくなっていた。もう消えたのだろう。
…答えを、得る……
「答え…」
いやはや、我ながら無茶をしたものだ。
そう考えながら痺れた右腕の魔術回路を早急に正してゆく。
詠唱アリとは言え2000発も一瞬で産み出す等、回路に相当負担が掛かるだろうに。
そうまでして助けたかったのか俺は?
足を止めて思考の海に浸る。そして自身に言い様のない自己嫌悪が沸き出る。
「まったく、いつから"私は"
私は英雄ではない、凶悪犯罪者だ。」
自分自身の罪を忘れるつもりか?思い上がるな、たかが数人助けてヒーローになる?そんなものなど言語道断。私が英雄になる事などあるハズがない!
再び足を進める。身体強化を自身に施し自分のバイクの元に戻る。
しかしここで偶然とは言え遭遇するか。
『404小隊』…噂程度だったが、間近で見るのは今回が初めてだったな。随分とズタボロに破壊されていたな。美しい見た目が台無しだ。
…?まて、おかしいぞ。私は何故彼女達の元の姿を知っている?何かを、忘れているような…
その後も私には「何かを忘れている」という感覚が夜まで続いた。
結局原因は分からなかったが。
ギチギチ、ギチギチと張り詰めるナニカ。
ソレは"彼"の中で大きくなる。
ギチギチ、ギチギチと増え続けるナニカ。
ソレは"彼"を蝕み続ける呪詛。
"正義の味方"は、自身の