それでも月は君のそばに   作:キューマル式

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色々あって小説から遠ざかっていましたが、リハビリをかねて執筆している作品。
不定期更新になると思いますが、気楽にご覧下さい。


原作開始前
プロローグ


 白昼の街に悲鳴と怒号が飛び交う。数分前まで何の変哲もない日常の光景だったそこは、まるで戦場の様相に即座に様変わりした。

 ……否、これは戦場ではない。こんな一方的な虐殺など戦場では断じてない。

 『屠殺場』……これが今の光景にもっともふさわしい言葉だろう。

 

 なんの前触れもなく空間から現れ、人々を炭素の塊へと変えていき最後には自壊する。人間以外には目もくれず、人を次々に殺す作業を繰り返す。

 そこに感情などなく、ただただ人を殺すだけの正体不明の化け物……それが『ノイズ』と呼称される異形たちだ。

 ノイズに対して、人が今まで培ってきた武器は何一つ通じなかった。銃弾もミサイルも、或いは核さえもノイズの前には等しく無力。だからノイズに出会ってしまったときに人ができることはただ一つ、『逃げる』ことだけだ。

 

 我先にと逃げ出す人々。そんな人々に追い縋り、次々に炭に変えていくノイズ。ここは阿鼻叫喚の地獄絵図と化していた。

 

「ああ……」

 

 ほんの数秒前まで生きた人間だった存在が炭へと変わる姿を、目の前ではっきりと見せつけられ、その女性は地面へとへたり込む。

 ガクガクと恐怖で震えが止まらない。逃げなければと分かっているのに、腰が抜けてしまって立つことができない。そんな彼女にノイズがゆっくりと迫る。

 

「誰か……誰か助けてぇぇ!!?」

 

 無駄なことだと頭の片隅で分かっていても生き物としての本能が叫び声を上げさせる。しかし、そんな彼女の声を聞き届けるものはそこにはいなかった。

 神や仏様への祈りも届くはずもない。それが届いているのなら、とうの昔に世界は平和になっていだろう。

 この世に神も仏もいないのだ。

 だが……!

 

「えっ……?」

 

 白銀の風が、駆け抜けた。

 その女性に迫っていたノイズたちが一瞬にして弾け飛ぶ。自壊したわけではない。明らかに何かによって破壊させられたのである。

 そしてそこには、白銀の戦士が佇んでいた。

 まるで西洋甲冑のような、全身を覆う白銀の金属質な外見。深い緑の複眼のような眼。そして黒いベルトの中央には緑の光が輝く。

 

 その姿に脅威を感じたのか、ノイズたちが一斉に白銀の戦士へと襲い掛かる。

 凄まじい数のノイズ、しかし白銀の戦士はまるで動じることもなく構えをとるとノイズへと躍りかかった。

 

「ふんっ!!」

 

 『圧倒的』……その戦いはまさにその一言に尽きる。

 白銀の戦士が廻し蹴りを放てば、まるで稲穂を鎌で刈り取るかのごとき容易さでまとめてノイズが弾ける。運良く接近したノイズが攻撃しようとするが、そこに肘打ちが叩き込まれノイズが崩れ去る。

 今まで人類を蹂躙する立場だったノイズはもはやその立場を逆転させられ、白銀の戦士に一方的に蹂躙されるままであった。しかし、未だノイズの数は多い。残ったノイズすべてが、白銀の戦士を倒そうと集結する。

 視界を埋めるであろうノイズの群れ。しかし白銀の戦士はそれに動じることもなく、腰を落とし構えをとる。

 

「バイタルチャージ……」

 

 白銀の戦士のベルトが、緑色の光を放つ。すると、緑色の光が白銀の戦士の身体を駆け巡り、それが両足へと収束した。

 

「シャドーキックッッ!!」

 

 空中に飛びあがった白銀の戦士は、両足を突き出しながら目にも止まらぬ速さでノイズへと突っ込む。両足でのキックだ。まるで天空から振り下ろされた神々のハンマーのようなそれは、ノイズの集団の中央に突き刺さる。

 その一撃に空間が震えた。直撃を受けたノイズはもちろん、そこを中心として緑色のエネルギーの波が広がり、その場にいたすべてのノイズを吹き飛ばす。つい数分前までノイズによって阿鼻叫喚の地獄と化していたその場所は、元の日常へと帰還を果たしたのだった。

 

「……」

 

 戦いを終わらせた白銀の戦士の元に、一台のバイクが走ってくる。バッタを模したような茶色と灰色のバイクだ。

 そこには誰も乗っていない。まるで自分の意思を持つかのように走ると、主人を迎える名馬のように白銀の戦士の前で停車する。

 バイクに跨り戦場を去ろうとする白銀の戦士に、助けられた女性は思わず言葉を口にする。

 

「あなたは……一体……?」

 

 その言葉に一瞬だけ白銀の戦士は動きを止めた。そして……。

 

「俺は仮面ライダー……。

 『仮面ライダーSHADOW』だ」

 

 それだけを呟くと白銀の戦士……仮面ライダーSHADOWは凄まじいスピードで戦場を後にする。

 

「仮面ライダーSHADOW……」

 

 九死に一生を得た女性はその名を繰り返す。そして自分の命があることを安堵しながら思った。

 

 神にも仏にも祈りは届かなかった。

 この世に神も仏もいない。だが人の祈りを聞き届ける者は……仮面ライダーは存在するのだ、と。

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 ノイズを屠り、そのあとに追ってくる人間を振り切って白銀の戦士こと『仮面ライダーSHADOW』は人気のない裏通りへとやってきていた。

 バッタを模したようなそのバイクを降りると呟く。

 

「まったく……こっちは入学したてで結構忙しいんだぞ」

 

 カシャリと金属質な音を立てながら肩を落とすその姿。そしてその体躯とは明らかに合わない、先ほどまでとは違う少年の声に、ノイズを一方的に屠った強き戦士の面影はない。

 仮面ライダーSHADOWは2・3度辺りを見渡す。何かを探っていたのか、まるでセンサーのようにその緑の眼と額が数度点滅する。

 

「周りには……何もないな。 よしっ」

 

 すると、淡い光とともに仮面ライダーSHADOWの姿がほどけて消えていく。白銀のその姿が消えると、そこには変わりに一人の少年の姿があった。

 着ている学生服は真新しく、見る人が見れば近所の中学のものだというのが分かるだろう。

 

「さて……さっさと帰ろうか、バトルホッパー」

 

 少年がそう声をかけると、『少年の引いたママチャリのかごに入った、バッタのようなオブジェ』が電子音のような声をあげた。 

 少年はそのまま、表通りへとママチャリを引いて出ていく。

 

 これがどこからともなく現れノイズを屠っていく存在、『仮面ライダーSHADOW』の正体だとは、まだ誰も知らないことだった。

 




作者「ムッ! 弟者弟者、唐突に閃いた!」

弟「うん、絶対にロクでも無いことだって分かってるけど、なんだ兄者よ?」

作者「シンフォギアの393って、響にとって『ひだまり』なわけじゃん」

弟「うん、そうだな兄者」

作者「『ひだまり』ってことは……つまり『太陽』、『ブラックサン』なわけじゃん」

弟「うん?」

作者「ということは、『シャドームーン』が響の傍に出てくるシンフォギアSS書いても何もおかしなことはないわけだ!」 

弟「OK兄者、このまま病院に行こう。
  頭は専門じゃないけど見てやるから」

作者「やめろぉ、ジョッカー! ぶっとばすぞぅ!!」


と、こんな感じのやり取りを経て発掘したSSを改造しながら見せれるレベルにしたのが本作です。
シャドームーンって人気キャラなのに、ハーメルンではジオウとかのライダーものはよく見かけるけど、シャドームーンは見かけないなぁと思い、『無いなら俺が書く』のマイノリティー精神が働きました。
うん、私は謝らない。
次回もお楽しみに。

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