それでも月は君のそばに   作:キューマル式

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第3話

 時刻は真夜中の12時近く。

 都市は眠らない。繁華街のネオンの光が、昼以上の明るさで夜の闇を切り裂く。そしてそんな光に、1日の疲れを癒そうとする人々が数多く集まっていた。

 そんな中にノイズ出現を知らせるサイレンが響く。

 人々は政府によって設置されたシェルターへ避難しようと急ぐが、酒の入っている人間が多く、まともに走ることができない者が続出。瞬く間にそこは助けを求める声が響く阿鼻叫喚の地獄になっていた。

 

「ひ、ひぃぃぃ!!?」

 

 酒も入り、腰が抜けて立てない中年男性が恐怖の悲鳴を漏らしながら、それでもノイズから精一杯離れようと後ずさる。だが、そんな距離などノイズにとってはゼロに等しい。すぐにノイズはその中年男性に近付こうとするが……。

 

 

 ブロロロォォォォォ!!!

 

 

 夜の闇を切り裂くようにエンジン音が響き渡る。

 そして……。

 

「ダイナミックスマッシュ!!」

 

 突如現れたバイクの体当たりによって、そのノイズは周囲にいたノイズごと轢き潰された。

 ブレーキ音とともに急停車するそのバイクに乗っていたのは。

 

「か、仮面ライダーSHADOW!?」

 

「早く逃げろ」

 

 仮面ライダーSHADOWは中年男性を一瞥するとそれだけ告げて、バイクを降りる。カシャカシャという特徴的な足音とともに前に出ると、ベルトのバックルから緑の光が放たれる。

 

「シャドーフラッシュッ!!」

 

 緑の光が放射状に放たれると、周囲にいたノイズが一斉に弾け飛ぶ。

 

「おぉ!!」

 

「何をしている! まだノイズはいるのだ、早く逃げろ!!」

 

 身近に迫っていたノイズが消え、一時の安堵とともに先ほどまで悲鳴を上げて逃げ惑っていた市民から歓声が上がったが、SHADOWの苛立たしげな一括に慌てて避難を再開する市民。

 その様子を見てため息でもつくように肩を揺らしたSHADOWは、自身を優先目標としたらしく一気に集結してくるノイズに向けて腰を落として構えをとる。

 その時だ。

 

「相変わらず早いね、アンタ」

 

 その声とともに2人の女性がSHADOWの前へと着地した。

 2人とも身体にぴったりとしたインナースーツに各所に装甲のようなものが施された鎧を身に纏い、片や槍を、片や剣を手にしていた。

 この2人こそ特異災害対策機動部二課に所属するシンフォギアの装者である天羽奏と風鳴翼である。

 仮面ライダーSHADOWとこの2人は初対面ではない。とはいえ、ここ何度かノイズ殲滅のために出動した現場で顔を合わせている程度でせいぜいが顔を知っている程度、SHADOWとしては相手の名前すら知らないというレベルだ。

 

「知らん。お前達が遅いだけだろう」

 

「そうかい。その秘訣を是非教えてもらいたいもんだね」

 

 そう言って奏はアームドギアをノイズに構える。

 

「また、とりあえずはノイズを倒す共同戦線ってことでいいかい?」

 

「そう言うなら、そっちの女の殺気を消せ。

 今にも俺に斬りかかろうとしているように感じるが?」

 

「……」

 

 言われた翼は無言だ。その姿からはSHADOWに対する警戒心がありありと感じ取れる。それを横から奏が制した。

 

「悪いね。ウチの相方は心配性なのさ」

 

「俺を警戒しているというのは理解する。殺気を向けるくらいは構わん。だが、降りかかる火の粉は払いのけさせてもらうぞ。

 それが嫌なら行動には移さんことだ!」

 

 そう言うとSHADOWは大きくジャンプしてノイズの集団へと飛び込んでいく。

 

「翼ッ!」

 

「わかってる!!」

 

 奏と翼もそれを追うようにしてノイズへと接近した。

 奏と翼のコンビネーション、そしてSHADOWの圧倒的な戦闘能力によってノイズは瞬く間に殲滅されていく。

 

「シャドーキックッッ!!」

 

 そして最後に残った集団をSHADOWが決め技で吹き飛ばすことで、その日の戦いは終わった。

 すぐさまバトルホッパーで戦場を去ろうとするSHADOWだが、それを奏が止める。

 

「待った待った。 話を……」

 

「お前たちの仲間になれ、だったか。

 その話なら前に断ったはずだ」

 

 実を言えばSHADOWは今回のように今まで何度か2人に接触しこうしてスカウトまがいのことを受けていたがいつも「断る」の一言で切って捨てていたのだ。

 

「そこを何とか、さ」

 

「断る」

 

 そう言うとSHADOWはバトルホッパーを発進させようとするが、その進路を翼が塞ぐと手にした剣の切っ先をSHADOWに向けた。

 

「……何の真似だ?」

 

「おい、翼……」

 

 奏は翼を止めようとするが、それよりも早く翼から言葉が飛び出す。

 

「それだけの力を持ちながら、何故私たち二課に協力しない!

 お前が正義や人を助けるために戦うのなら、私たちに協力するのがもっとも効率的なのは分かっているはずだ!

 何故それをしない!

 それを拒み続けるのは、何か悪しき企みでもあるとしか思えん!!」

 

 翼はSHADOWの存在そのものを嫌っていた。正体不明の、人類の敵か味方かも分からぬ存在など無秩序極まりない。

 師父である弦十郎は『SHADOWは大切なものを守るために戦う戦士』と称していたが、それなら人類を守るために戦う自分たちに協力しない道理が分からない。

 返答次第ではこの場で斬って捨てると翼は剣を向ける。

 

「……俺が『正義の味方』ではないのは確かだがな」

 

 そんな翼に、表情は分からないのに呆れたような様子のSHADOWは言葉を続ける。

 

「お前たちの協力を断る理由は簡単、それはお前たちが信用できないからだ」

 

「貴様がそれを言うか! 正体不明の怪しげな貴様が!」

 

「それはお互い様だろう。まわりを見ろ」

 

 そうSHADOWに言われると、ノイズがいなくなって安全と思ったのか避難しそこねた人々が遠巻きにこちらを見ている。

 

「お前たちと何度か共闘したが……ネットでもニュースでも『仮面ライダーが現れてノイズを倒した』という話は見ることはあっても、『2人組の美少女がノイズを倒した』という記事は一度も見たことがない。

 こんな悪人顔より『美少女2人』の方がよほど話題性があるだろうに……」

 

「悪人顔だって自覚はあったんだな、アンタ」

 

 奏のツッコミは無視してSHADOWは続ける。

 

「明らかに国家、またはそれに類する組織が情報統制をしているのだろう?

 俺もお前たちの存在は知っていても目的もその力のことも、それどころか名前すら知らん。『正体不明』なのはお互い様だ。

 そんな『正体不明』な相手にホイホイ着いていって、気がついたら全身を縛られてモルモットとして切り刻まれる……そんな最後はごめんだ」

 

「私たちをそんな外道だと思っているのか!!」

 

「思うも思わないも、判断できるだけの情報がないと言っているんだ。

 逆にそこまでして何故自分たちの存在を隠す?

 こちらも一市民としてノイズに対抗する戦力があると大々的に発表してもらった方が安心できるのだが?」

 

「おいおい、アンタが『一市民』ってのは無理がないかい?」

 

「これでもノイズの件以外では平和に暮らしている、ごくごく一般的な一市民のつもりだ。

 とにかく、俺にも事情はある。ノイズを倒すために戦場で共闘することは構わないが、そちらを全面的に信用して協力しろというのはごめんこうむる。

 少なくとも今のところはな」

 

「『今のところは』、なんだね?」

 

「状況は変わるものだ。そういうこともありえるという話にすぎん」

 

「OK、今はそれだけで十分さ」

 

 そう言うと奏は翼の手を掴んで剣を下げさせる。するとその間にSHADOWは方向転換するとバトルホッパーを発進させて去っていった。

 

「奏ッ!」

 

「いや、あいつの言うことはもっともだよ。

 私たちも秘密があって、あっちにも秘密がある。それで一方的にこっちを信じて従えって言ってもね」

 

「でも、私たちは人類を守るために……!!」

 

「それを知ってるのは結局私たちだけ。

 他の誰も、日本に住んでる普通の人はそのことを知らないんだよ」

 

「……」

 

 そう言われ、翼は黙ってSHADOWの去って行った方を睨む。その胸中はどんなものであるか、窺い知ることはできない。

 

(真面目なのはいいんだけど、融通が利かないのがね)

 

 奏は内心でそう思いながら肩を竦めると、同じくSHADOWの去って行った方を眺める。

 奏としてはSHADOWの印象は悪くない。むしろここ数回の接触で、SHADOWは『正体不明の怪物』ではなく、弦十郎の言うように『話の分かる人間』だと好感を持っている。

 それに……。

 

(アタシには、タイムリミットがある……)

 

 奏は、自分の時間がそれほど長くないことを理解していた。シンフォギアの装者として必要な適合係数、それが低い奏は『LiNKER』と呼ばれる薬品を投与することによって適合係数を無理矢理引き上げているが、その無茶による激しい薬理作用によって確実に身体が蝕まれていっていることを理解していた。

 戦えなくなってリタイアか、あるいは『死』か……どちらにせよ、奏が翼とともに戦場に立てる時間には限りがある。その時間が尽きる前に、翼とともに戦う仲間が欲しいと奏は思っていた。だから弦十郎の言うように、SHADOWには本当にいつか仲間として戦う時が来ると期待しているのだ。

 

「早いところそうなってくれたら心強いんだけどね……」

 

 そう言って空を見上げた奏の視線の先では、今日も月が綺麗に輝いていた。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 今は学校の昼休み、学生にとっての憩いの時だ。俺はアンパンを片手に雑誌を読んでいる。

 

「ツヴァイウィング、ねぇ」

 

 俺の見ているのは音楽雑誌だ。その表紙はツヴァイウィングの2人組、特集記事が組まれており、かなりの紙面が使われているあたりその人気が伺い知れる。

 俺は特に音楽に興味はないのだが、今回はよくノイズと戦ってるとやってきて成り行き上共闘する機会のある2人組について、確認するためにこの音楽雑誌を買ってきていた。

 

(ああ、やっぱりどう見てもノイズと戦う2人組、このツヴァイウィングの天羽奏と風鳴翼で間違いないな)

 

 というか、あの2人は戦闘中は普通にお互いに名前で呼び合ってるし、正体を隠そうという気がないんじゃなかろうか?

 おまけにあのノイズと戦うための装備らしきプロテクター、顔が丸わかりだし、これで間違えろという方が無理がある。

 しかし……。

 

(当然だがノイズ退治のことは書いてないな)

 

 『人気アイドルはノイズを倒すスーパーヒロインだった』……なんて最高のネタだろうに雑誌にはもちろん、ネットやニュースでもそんな話はまったく出てこない。それだけ2人の所属する組織の力は強いのだろう。

 そんな風に思っていると、響と未来がやってくる。

 

「あっ、ノブくんがツヴァイウィングの記事見てる」

 

「まぁ、せっかくの未来のお誘いだからな。

 予習くらいはしっかりしておこうと思ってさ」

 

 やってきた響にそう答える。

 ツヴァイウィングのファンである未来はどうやったのか、今週末に行われるツヴァイウィングのライブチケットを3枚手に入れて俺と響を誘ってきてくれたのだ。

 俺はライブというもの自体が生まれて初めてであるが、こういうものは友達と一緒に行く事自体が楽しい訳で、俺も楽しみにしている。

 

「えへへ、私ライブって初めて」

 

「俺もだ」

 

「楽しみなのはいいけど、時間には遅れないでよ2人とも」

 

「「は~い」」

 

 そんな楽しい幼馴染たちとのやり取り。ふと俺は響と未来を眺めながら思う。

 向日葵のような大輪の笑顔を見せる響。そんな響を『太陽』のように照らす未来。そして俺。

 ああ、なんて光あふれる優しい世界なんだろうか。

 だが……運命の分岐点は刻一刻と迫っていた。

 




今回のあらすじ

防人「この悪人顔めっ!」

SHADOW「いや、元々悪の仮面ライダーなんで当然というか……お前らこそ、その対魔忍みたいなエロいインナーなんなん?
    しかもお前らがゴルゴムじゃないって保証はないし……」

フィーネ「ゴルゴムって何よ?」

SHADOW「えっ?」

フィーネ「えっ?」


毎日投稿は明日辺りが打ち止めです。
次回もよろしくお願いします。

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