実は、この話で終わりにしようとしたのですが、もう一話長くなりそうです。
今回はタイトル通りのお話です。
では続きを……
宇宙世紀0123年11月
宇宙連合とコスモ・バビロニアとの1年間の停戦協定が結ばれ、宇宙は静けさを取り戻したかに見えた。
だが、各勢力は水面下では次なる作戦行動を起こし、争いの火種は燻ぶり続けていた。
年が明け宇宙世紀0124年1月
アムロはこの機に一度、火星と地球の間のアステロイド帯で身を潜めているメガロード01へ戻る事にした。
「未沙、こちらの状況は?」
「目立った動きは無いわアムロさん。今の所市民の皆さんも落ち着いてるわ」
「そうか……」
「状況確認のために、太陽系の各所に調査隊を派遣したのだけど」
「どうだった?」
「木星と火星には基地や都市があり、木星の衛星に幾つかのコロニーが存在。資料はこちらに」
「資源基地だけではないな……明らかにコロニー群だ。そこそこの規模だ」
「そうですね。地球圏のサイドと呼ばれるコロニー群に比べれば規模は小さいですが」
「ちょっとした国家レベルだ……この30年でここまで発展したのだろうか?」
「アムロさんが元居た時代ではこんな規模ではなかったの?」
「俺が知る限りだが、これ程の規模とは聞いた事が無い。世間には知られていないだけで、もしかすると昔からこの規模はあったのかもしれない」
「それと、こちらの世界に飛ばされた要因は依然不明のまま。今の所帰還の目途は経ちませんね」
「そうか……すまない」
「……アムロさん、しばらくはこちらでゆっくりしてください」
浮かない顔のアムロに微笑む未沙。
「いや、そうもいかない。早く長距離移民船団を元の時空に戻る手立てを……」
「こちらの事は私達に任せてください。そもそも長距離移民船団は広大な宇宙の中、第二の母星を探すために宛のない旅の真っただ中。それこそ海の底の一粒の砂を探す様な旅です。私達の世代で目的を達成できないかもしれない。この子達、いえ、孫やひ孫の代までかかるかもしれない。そんな道中で少しぐらい寄り道をしてもいいではないですか。考えようによってはこの平行世界も、私達が探すべき第二の地球なのかも知れないわ」
未沙は、自身の我がままで宇宙世紀の地球圏に携わり、しかも自分の存在のせいで長距離移民船団が宇宙世紀のこの平行世界に飛ばされたのではないかと責任を感じているアムロに、優しい微笑みを湛えながら諭す。
「……未沙」
その未沙の言葉にアムロはどれだけ救われる思いがしたか。
「大丈夫ですアムロさん。それにタカトク中将も兵器工場で何かの開発を行っているようで大人しいものです」
「……そうか……そうだといいが」
確かにメガロード01にとってもトカトク中将が大人しく過ごしている事はいい事なのだが……アムロは何らかの嵐の前触れのように感じてならなかった。
アムロは2週間程メガロード01で休養を取り、再び地球圏へと戻る。
宇宙連合では次なる戦略として、宇宙連合に続く第四国であるサイド3ジオン共和国との同盟まで視野に入れた国交樹立を目指すべく、外交開設方法を模索していた。
首相のオードリーの側近であり、政府情報局のトップであるシュトレイはサイド3と外交を開くべく情報収集対策チーム立上げ、ジオン共和国について調査を行っていた。
調査と言っても既に現在のジオン共和国の内情はほぼ把握している。
元ジオン公国の姫であるオードリーに対し、未だに敬意を払い繋がりがある人物達がジオン共和国の政府、議会、軍部と幾人か要職についているため、精度が高い情報が得る事が容易であった。
サイド3、ジオン共和国。
地球連邦とコスモ・バビロニアとの戦争の混乱に乗じ独立を果たす。
宇宙世紀100年に地球連邦に自治権を返還してから23年ぶりに独立国として返り咲いた。
かつてジオン・ダイクンがスペースノイドの自立を促し、反連邦を掲げ独立運動を行い宇宙世紀0058年にサイド3にて建国宣言を行ったのがジオン共和国である。
地球連邦政府としては独立を認めてはいなかったが、事実上この時点でジオン共和国(サイド3共和国)としてサイド3が独立したと、後の歴史家も認めている所である。
その後、連邦から一方的な経済制裁等などの圧力を受けてきたが、内需に特化した経済成長戦略や連邦との粘り強い交渉を行い、独立国としての体裁を整えるまで至った。
だが、依然と地球連邦政府はジオン共和国の独立国と認めてはいなかった。
そして、宇宙世紀0068年、ジオン・ダイクンは志半ばで死を遂げる。
その後、ダイクンの意志を継ぎ、ダイクンの側近であったデギン・ザビがジオン共和国の実権を掌握し、翌年0069年ジオン公国と国号を変更し、公王デギンを中心としたザビ家による独裁政権が誕生することになる。
ジオン公国は軍事化が進み、宇宙世紀0079年1月3日、ジオン公国は完全な独立国家を目指すべく地球連邦に宣戦布告を行ったのだ。
後に一年戦争と呼ばれる戦争の開戦である。
戦争初期はジオン公国の電撃作戦やモビルスーツザクを擁するジオン公国が地球連邦軍に対し優位に進め、宇宙をほぼすべて掌握し、一時は地球の3分の1以上を抑えるまでに至ったが、如何ともしがたい物量差を覆す事が出来ず、連邦軍に盛り返され形勢は逆転し、不利に陥って行く。
遂には、ジオン公国本国サイド3の最終防衛ラインである宇宙要塞ア・バオア・クーまでもが連邦の手に落ち、更に総帥ギレン・ザビやキシリア・ザビが相次いで死亡し、ドズル・ザビの娘幼いミネバが生き残ったものの、統率可能なザビ家の人間は全て死亡し、壊滅状態となりザビ家による独裁政権は瓦解する。
サイド3本国の中央議会は徹底抗戦を訴える本国に残った軍部を抑え、ザビ家による独裁国家だったジオン公国の名を廃し、再びジオン共和国を名乗り、宇宙世紀0080年1月1日に地球連邦政府と実質敗北を認める終戦協定を結び、ここに世界人口の半数を失う有史以来最大級の戦争が終結する。
そして、同年2月18日に地球連邦とジオン共和国との間で終戦条約(グラナダ条約)を締結させた。
この時ジオン共和国を再び名乗ったのは、独裁者であるザビ家が起こした戦争であり、サイド3もある意味被害者であると地球連邦政府にアピールする目的であった。
特に議会は早期戦争終結を望み、ギレン・ザビ総裁の徹底抗戦を国民に強いる方策には拒否感を示していた。
実際、グラナダ条約では、ザビ家がサイド3を巻き込んで起こした戦争であり、地球連邦政府はジオン共和国に対し戦争責任の不問とし賠償請求権の放棄も盛り込まれていた。
要するに、ザビ家の独裁国家ジオン公国が起こした戦争のつけ(戦争責任)を、民主制へと再建したジオン共和国が払わなくてよいという物だ。
さらには、条件付きではあるがジオン共和国を独立国家として自治権を認めている。
地球連邦政府はかなり譲歩したと言ってもいいだろう。
ジオンは敗戦国ではあるが、独立の体面を保つことが出来たのだ。
戦争では負けはしたが外交的勝利と言っていいのだろう。
サイド3議会上層部の迅速な対応が功を奏したといえよう。
宇宙要塞ア・バオア・クー陥落とザビ家が壊滅したその翌日には、中央議会をまとめ公国から共和国制へと鞍替えし、地球連邦を交渉のテーブルに付かせ、終戦協定を早急に締結させ、サイド3本国への総攻撃を回避し、サイド3本国は無傷のまま終戦へと向かわせたのだ。
さらに最終的にはほぼ属国に近い扱いではあるが地球連邦政府に独立自治権を認めさせた。
これはデギン公王の側近にして元ジオン公国首相、後のジオン共和国初代首相ダルシア・バハロの手腕によるところが大きい。
だが、この事が後々までの紛争の火種となった。
ザビ家を廃しジオン共和国を名乗ったサイド3本国は、終戦と共に宇宙や世界各国に散らばる生き残ったジオン公国軍将兵達に直ちに戦闘行為を停止し投降を促したのだが、ほとんどの将兵らは反発し共和国政府を認めず、軍事力を維持したままジオン公国残党軍として世界各地の闇へと潜む事となった。
因みに混同されやすいがジオン残党軍とジオン共和国が自衛のために再編した軍隊ジオン共和国軍とは全くの別物である。裏で繋がりがある事もあるが、基本的にジオン共和国はジオン残党軍を公式に認める事は無い。
こうして各地に散らばったジオン残党軍は、宇宙世紀0083年にはエギーユ・デラーズによるデラーズ紛争、その4年後の宇宙世紀0087年にハマーン・カーン率いるアクシズ残党集団がグリプス戦役に乗じ第一次ネオ・ジオン紛争を起こしている。
ジオン共和国は、デラーズ紛争時はデラーズとは同調せず地球連邦に恭順し、グリプス戦役時はティターンズの要請に応じ、ジオン共和国軍を派遣している。第一次ネオ・ジオン抗争時には、地球連邦の方がハマーン率いるネオ・ジオンを名乗るアクシズのジオン残党集団に軍事圧力に負け、サイド3ジオン共和国をネオ・ジオンに譲渡してしまったが、ジオン共和国政府はネオ・ジオンと同調を最後まで拒否していた。
そのような経緯があり、結局ハマーンはジオン共和国政府及び議会を政治的に掌握しきれずに、グレミー・トトによる反乱が勃発し、両者ともエゥーゴに敗れるという結果に終わる。
この時、グレミー・トトはハマーンが本拠地を置いていたサイド3コアⅢサイドにアクシズをぶつけるという暴挙に出て、コアⅢに住まう500万の住民が被害に会う。
ジオン共和国住民の大半にとってジオン残党軍は迷惑でしかない存在としか言いようがなかった。
ザビ家の系譜ともいえるジオン残党軍はサイド3に固執するが、サイド3ジオン共和国住民にとってもはやザビ家は不要な存在となりつつあった。
宇宙世紀0093年1月
シャア・アズナブルがジオン残党組織をまとめ、ネオ・ジオン総裁として地球連邦政府に対し宣戦布告を行ったのだ。
しかし、シャアはサイド3では無く、サイド1スイート・ウォーターを本拠地とした。
それには理由があった。
一つに、サイド3のジオン共和国の殆どの国民に地球連邦に対し戦争を行うだけの支持を得られないからだ。
国家を掛けた戦争を起こすには国全体が戦争に対しての熱量(モチベーション)が必要であるが、サイド3の住民にはもはやその情熱は無い。
一年戦争の敗戦から第一次ネオ・ジオン抗争まで、彼らの精神は疲弊し戦争への拒否感は言うまでも無い。
また、サイド3の住民は前述の通りジオン残党組織に対しても快く思ってはいない。
サイド3は一年戦争後、地球に住む住人からだけでなく他のスペースノイドからも色眼鏡で見られ、後ろ指を指され続けてきたのだ。
ジオン残党組織が騒ぎを起こすたびにその見えない憎悪の視線は突き刺さる。
もう一つは、シャアの戦略として、地球連邦とジオンという対立構造ではなく、地球連邦とスペースノイドという対立構造を作り上げたかったという理由が大きい。
こちらの方が本命だろう。
シャアはそのためサイド3の独立等の言葉を一切語っていない。
その事が逆にサイド3でシャアへの支持が上がったと言える。
そもそもサイド3ではジオン・ダイクンの息子であるシャア個人への拒否感は少ないどころか好感度は高いのも要因ではあるが……。
それはさておき、一年戦争はまさしく、サイド3ジオン公国と地球連邦との戦いだった。
ジオン公国が独立を掛けた戦いなのだから当然ではあるが、開戦当初ジオン公国は地球連邦の瓦解まで狙ってはいない。
地球連邦に力を見せつけ、優位な条件で独立を行う事が目的だった。
途中までは上手く事を運んでいたのだが、地球連邦軍総司令のレビル将軍の激により、戦争を継続せざるを得なくなったのだ。そして徐々に物量で押され敗戦へと……。
だが、シャアの目的は最初から地球連邦政府の瓦解、いや、地球に住む人間への制裁が目的であった。
そしてシャアは父ジオン・ダイクンの息子、キャスバル・ダイクンの名で、宇宙移民(スペースノイド)の代弁者とし、地球連邦に不満を持つ難民や労働者階級を扇動し、地球連邦とスペースノイドとの戦いと名をうち地球連邦に対し、サイド1スイートウォーターから宣戦布告を行ったのだった。
父ジオン・ダイクンを凌駕するかのような凄まじいまでのカリスマを武器に、シャアは地球連邦に強い不満を持つ労働者階級のスペースノイドから圧倒的な支持を受け、さらには財団や各サイドの上層部、又は地球連邦内部にもシャアを信奉する者も現れ、戦争の機運を高め、遂には戦端を開く事になる。
だが、そのシャアもかつての戦友ブライト・ノア率いる独立機動艦隊ロンド・ベルにアクシズ落下を阻止され地球連邦に敗れる事となった。
シャア自身は行方不明と、ほぼ死亡が確定視されていた。
当然ではあるが、サイド3ジオン共和国はこのシャアの敗戦で痛手を被る事はほぼなかった。
その数か月後、一年戦争後からジオン共和国を支えて来たダルシア・バハロがこの世を去る。
ダルシアの死去はジオン共和国にとって痛恨の極みと言っていいだろう。
ダルシアの功績はあまりにも大きかった。
地球連邦との終戦交渉だけでなく、一年戦争後の経済復興はサイド3が地球各地や月面都市、他のサイドの何処よりも早く成し遂げている。
ジオンの国営軍事産業を民営化し株式市場に出し、多量の資金を調達し、資源衛星や資源惑星の確保から、火星や木星航路の再建まで、さらには議会内のザビ家派やダイクン派、民主派をまとめ上げ、その政治手腕をいかんなく発揮する。
そもそも、ダルシア・バハロはデギン・ザビからその政治手腕を買われ、側近となった。
そのデギン・ザビはダルシアと共に政治や経済と行った方面から、ジオン・ダイクンを支え、サイド3独立へ大きく貢献していたのだ。
ジオン公国が連邦へと戦争を仕掛けられるだけの軍事力を得たのは、デギン・ザビや側近のダルシア・バハロがサイド3の経済を大きく成長させ、軍事開発や兵器生産を行えるだけの経済力と資金力を得たからだ。
ダルシア・バハロはジオン・ダイクンやデギン・ザビ等とは比較して派手さは無いが、堅実かつ実直が売りで、決断力と迅速力を兼ね備えた稀代の政治家でもあった。
一年戦争から十数年、曲がりなりにもジオン共和国を一独立国として維持出来たのはひとえにダルシア・バハロのまさに命を削る働きがあったからこそだと言える。
ダルシア・バハロが亡くなった後は、後継者に息子のモナハン・バハロが推しだされるが、有能な政治家ではあるが、父ダルシア・バハロには遠く及ばず、ジオン共和国議会はダルシア政権下では大人しくしていたザビ家派が息を吹き返す等、統率が困難な状況になり徐々にバラバラとなって行く。
因みにここでのザビ家派はザビ家復興を目指しているわけではない。
ジオン公国下の名家による統治、縦割り社会の復興を目指していた。
根本の思想は別にして、貴族社会を目指すコスモ・バビロニアと近しい集団と思っていいだろう。
議会の統率が困難に陥り、モナハン・バハロは自身も自らの力不足だと肯定していた。
サイド3、しいてはスペースノイドをまとめる力のあるシャアの様なカリスマを求め、グラナダ条約を破り、ネオ・ジオン残党軍と結託し、シャアに似せた強化人間を作り出したのだ。
だが、そんな思惑もとん挫することになる。
バナージとオードリーが関わったラプラス事変などを経ても計画は進めていたが、遂に、ジオン共和国に連邦政府が圧力をかけてきたのだ。
グラナダ条約違反……。
最大の違反は、反連邦組織、ようするにジオン残党との接触である。
今迄は少々の事は見逃してきたが、ダルシア・バハロ死後、モナハン・ハバロだけでなく、ジオン共和国議会の一部の派閥議員や有力者もグラナダ条約を破り、ジオン残党軍を動かし、テロ活動をおこなうなど、事件を起こしていたのだ。
ジオン共和国議会も収集が付かず、地球連邦政府はそんなサイド3にここぞとばかり圧力をかけ、ジオン共和国は自治権を放棄せざる得ない状況に陥る事となった。
そして、宇宙世紀0100年1月1日、ジオン共和国は自治権を放棄し、地球連邦に帰属、凡そ建国40年でその幕を閉じる事となった。
その後サイド3は、議会はそのままに、地球連邦政府によるサイド3行政府が置かれ、サイド3は連邦政府の監視下に置かれる事となる。
そして、23年の時を経て宇宙世紀0123年9月この戦乱に乗じ再び独立を果たし、ジオン共和国を名乗ったのだ。
宇宙連合政府情報局局長のシュトレイ・バーンことバナージはサイド3の対応について、宇宙連合軍に協力を求めなくてはならない事案が新たに発生し、情報局と外務省、宇宙連合軍との会議を開く事と提言した。
宇宙連合首相官邸の会議室では、首相のオードリー、情報局局長のシュトレイ、外務大臣のエルドア・ヒスローと外務次官、軍部のトップであるブライト、さらにはアムロもこの会議に呼ばれていた。
先ずは外務次官が現在のジオン共和国の政府の内情を改めて説明する。
「現在サイド3ジオン共和国では、大きく党派が二つ存在することはご存知でしょう。民主党と改革党です。簡単に説明しますと民主党は労働者層の支持を得ており、改革党はコロニー公社や有力企業等、どちらかと言うと富裕層から支持を受けております。地球連邦統治下からジオン共和国となった今も、民主党が6割程度の議席を確保し、政権を担っており、首相にはモナハン・ハバロが再び就任しております」
改革党という名ではあるが、これはほぼザビ家派である。
要するにジオン公国時代の縦割り社会の統治方法を推進する派閥だ。
コスモ・バビロニアとの同盟を望む派閥でもある。
民主党は労働者からの圧倒的に支持を受けていたが、内部でも大きく派閥が二つに分かれている。
反地球連邦派と現状維持派である。
今回の地球連邦からの独立は、民主党の反地球連邦派と改革党が利害の一致を見て実現したのだ。
但し、民主党の反地球連邦派は独立という一点の置いて改革党と利害は一致したが、基本的には改革党との政策は異なるため、改革党と合流することは無かった。
因みに反地球連邦派は現在でもシャアの信奉者が多数在籍している。
地球連邦との友好関係を重視する現状維持派の筆頭はあのモナハン・ハバロであるが、そもそもモナハン・ハバロは明らかに反地球連邦の思想を持っている。
それは地球連邦政府に目を付けられないためのカモフラージュであり、民主党全体をコントロールするために現状維持派の筆頭となっていたのだ。
外務次官は現状説明を続ける。
「我々外務省は情報局と協力し、サイド3ジオン共和国との交友を模索しております。ジオン共和国の議会も現在どの国と友好を結ぶかが第一の議題に上がっておりますが、議会内で激しくもめている状態です。現在は民主党が政権を担っておりますが、民主党反地球連邦派はコスモ・バビロニアと我々宇宙連合、その両方と割れており、民主党現状維持派は地球連邦もしくはすべての国と友好結ぶ派閥があり、改革党は当然コスモ・バビロニアと、荒れに荒れている状態です。情勢を見るにコスモ・バビロニア派が僅かですが優勢に立っている状況です」
「どこと交友を結ぶかで自分たちの派閥の今後の立場が決まるのだから、荒れて当然ではあるが……他国の事とはいえいかんともしがたいですな」
元サイド1の議長であった外務大臣のエルドアは苦笑気味に感想を漏らす。
元々サイド1も新サイド6と合流し国を興す提案を新サイド6側から伝えられた際、サイド1の議会でも現在のジオン共和国議会と同じような状況に陥っていた事を思い出していた。
「情勢は厳しいという事か」
この場の最年長であるブライトは誰と無しにこう聞いた。
それにシュトレイが答える。
「いや、そうでもないです。状況はマシになっていると言っていいでしょう。元々宇宙連合との友好関係を結ぶ派閥は少なかったが、徐々に増えてきています。ただその背景にはあのモナハン・ハバロが噛んでいるのが気にかかる」
「情報局から軍部に協力要請をというのは?」
アムロがここで今回の議題であるこの質問を投げかける。
「はい、アムロ大佐には是非出向に協力願いたいのですが、その前に現在ジオン共和国では盛んにある噂が出回っており、それについてまずは聞いていただきたい。事の真偽がつかめず、もし噂が本当であれば、今までの対ジオン共和国との対話の進め方を大幅に変更しなければならない」
シュトレイは情報局として軍部とよりもアムロに協力を要請したいようだ。
因みにアムロが大佐という立場を得たのには理由がある。
宇宙連合軍を編成する際、歴戦の元ロンド・ベル組を中枢に組み込むのは当然であるが、元ロンド・ベルの将兵はアムロよりも高い立場など恐れ多いと拒絶を示す者が殆んどであったためだ。
アムロを将軍位をという話も出たが、飽くまでもモビルスーツを率いる立場という理由でとアムロが難色を示し、大佐と言う立場に収まった。
だが、アムロは1人で一個師団と同等の戦力と宇宙連合軍内で数えられているため、少なくとも少将や准将等の立場でもおかしくはないだろう。
そもそもマクロスの世界、宇宙統合政府内では、アムロは一個師団(戦艦約12隻)どころか、複数の分岐艦隊(戦艦約3000隻)から基幹艦隊(戦艦約500万隻)に対応できる戦力としてカウントされているのだが……
「うむ、噂とは?」
ブライトは腕を組み直し、シュトレイの次の言葉を待つ。
「シャア・アズナブルが生きている」
「「!?」」
そのインパクトのある言葉にアムロとブライトは一瞬驚愕の表情を浮かべる。
シュトレイはそんなアムロとブライトの反応を確認した後に、言葉を続ける。
「シャア・アズナブルが再びジオン共和国を率い、宇宙をまとめ、地球連邦を正すと」
「………」
「バカな!?」
アムロは沈黙を守り、ブライトは怒声に近い声を上げる。
「ジオン共和国では、シャアを取り上げる情報番組や、地球連邦に宣戦布告を行った映像がこの頃よく流れております。噂は市中まで回っている状態で、住民の中でもシャアの復活を期待する声がちらほらと上がって来ている状態です」
「シャアは死んだはずだ」
ブライトは声を低くし呻くように声を絞り出す。
「……アムロ大佐はこうして生きています。ならばシャアが生きている可能性も無視できない」
シュトレイがそう言うのも無理もない。
死を確実視されていたアムロがこうして目の前に生きているのだ。
同じ戦場で行方不明死とされていたシャアが生きている可能性を考えてもおかしくない。
外務大臣のエルドアがシャアの生存について私見を述べる。
「シャアが本当に生きていたとしたら、かなり大ごとですな。お恥ずかしい話、シャアがサイド1スイートウォーターで地球連邦に宣戦布告をした際、私はまだ若手議員でして、シャアの演説に参ってしまっていました。私もシャアに賛同しそうになりましたが、何とか思いとどめたものです。あのカリスマ性は凄まじい、今でもあの演説を聞くと震えが止まらない」
エルドアは現在57歳、シャアが反旗を翻した第二次ネオ・ジオン抗争時には、サイド1中央議会に27歳という若さで初当選をはたしたばかりだった。
シャアの演説に魅入られ、賛同し協力しそうになったと自嘲気味に語るが、実際サイド1の議員で若手から大御所までシャアに賛同した議員は多数いたのだ。
当時のサイド1の、民衆がシャアの言葉に大波のように飲まれて行くようなあの熱烈な空気感を、エルドアは思い出し身震いをする。
それほどシャアのカリスマ性は圧巻だったのだ。
「そのシャアがもし本当に生きていたとすれば、唯では済まないでしょう。今度はジオン共和国を巻き込み、再び地球や地上の人々に牙を向くかもしれない」
シュトレイはシャアがもし生きていたとしたら、再び地球に隕石を落とすのではないかと危惧する。
「シャアは危険な方です。当時シャア・アズナブルが大義の為にと嘯く姿がどうしても真実には見えませんでした。あの瞳の奥底には仄暗い感情が蠢いているように感じてならなかったのです。わたくしは当時のシャアの前では恐ろしくて口を開く事もできませんでした」
そう話すオードリーの表情は強張っていた。
当時、ミネバ・ザビであったオードリーはシャアの元に居た。
ミネバの発達しつつあるニュータイプ能力はシャアの裏の顔が見えていたのだ。
シャアは確かに地球連邦政府と地上に住む人々に制裁を与えるために行動を起こしていた。だが、シャアの心奥底ではアムロとの決着を考えていたのだ。
「シャアが本当に生きていたのなら放っておくわけにはいかんか……、今の連邦では奴を止める事は出来ないだろう」
ブライトはさらに目を細め、眼光が鋭くなる。
「シャアと幾度も死闘を繰り広げられてこられたアムロ大佐なら、シャアの噂の真偽について何か感じる物があるのではないかと」
シュトレイはアムロにシャアの生存の噂について聞く。
「……地球圏に奴の…シャアの意志を感じない」
アムロは一息ついてからシャアが生きている可能性を真っ向から否定する。
アムロは宇宙世紀に帰ってからシャアの生存の可能性について考えていた。
だが、アムロの優れたニュータイプ能力はシャアの存在を完全に否定していたのだ。
「では、火星や木星に逃れていた可能性は?」
シュトレイはそのアムロの言葉に間を置かずに質問を返す。
シュトレイは最初からシャアの生存の可能性についてアムロに聞きたかったようだ。
一年戦争からシャアとの数々の因縁を持つニュータイプのアムロならシャアについて何か感じられるだろうと。
「そこまでは分からないが……」
アムロは心の中では(もしシャアがこの宇宙で生きていれば感知できないはずがない)と続けていた。
だが、ニュータイプ能力ではシャアの生存を否定したが、アムロの感情ではこうも考えていた。
もしかすると、(奴の事だ。どこかで生きているのかもしれない)と……
「わかりました。それと、ジオン共和国軍の一部とまだ共和国軍には合流していないモナハン・バハロと手を結んでいるジオン残党軍の一派の動きが活発化してます。シャアの生存の噂が広がりだすと同時に共和国軍とジオン残党軍の活発化、やはり何かあると思いませんか?」
シュトレイはブライトとアムロの顔を見ながら質問する。
「シュトレイが危惧するのもわかる。確かに意図的に感じられる。シャアの生存の可能性は低いだろう。だが、かつてシャアの再来と言われたフル・フロンタルに匹敵する人物を用意している可能性がある。仕掛けたのは……やはりモナハン・バハロか」
ブライトはシュトレイの質問の意味を汲み取り、こう答える。
27年前のラプラス事変の際、モナハン・バハロはシャアに似せた強化人間フル・フロンタルを使いジオン残党軍をまとめ、ラプラスの箱を利用し、再び宇宙に反地球連邦の機運を高めようとしていた。
「私もブライト将軍と同じ意見です」
「シュトレイが、アムロの派遣要請を出したのは、それだけじゃないだろう」
「コスモ・バビロニアもジオン共和国を取り込むために動いております。現地調査員から、既に軍上層部の人間と軍船が秘密裏に現地入りしているとの情報も……」
「きな臭いにも程があるな。了解した。シャアの万が一の生存の有無も含め、アムロは情報局と協力しサイド3ジオン共和国の軍部の動きを探ってくれ」
ブライトはアムロの派遣を了承する。
「了解した」
アムロの心中は複雑だったが、アムロは自分が行くべきだと判断する。
シャアの万が一の生存もそうだが、シャアを模した人間を世に送り出すモナハン・バハロに嫌悪感に近い何かを感じていた。
アムロにとってシャアとは何度も死闘を演じて来た相いれない存在であり、まさしく強敵であった。
そのシャアを模した人間が再び、シャアと同じ役割を果たそうとする姿を見るにしのびなかった。
シャアは確かにその圧倒的なカリスマで人々を導き、地球の将来のためにと地球連邦を粛清しようとしたが、シャアの本音を唯一本人から聞いたアムロからすると、シャアこそが自身を導いてくれる人間を求めていたことを知り、人の温もりを求めていた一人の人間に過ぎなかったと……。
時を同じくして、コスモ・バビロニアのシアノ・マルティス大佐は、リリィ・ビダン少尉と少数の隊員を引き連れ、サイド3に足を踏み入れていた。
実に28年ぶりの帰還である。
シャアは生きている?
生きているはずがない。
ならば、何が起きているのかサイド3
というのが今回の問題提起でした。
次回、アムロはどう解決するのか!
アムロ無双が実現するのか!
シアノマルティス大佐とは!?
サイド3やシャアについては私的意見なのでご了承を……
モナハン・バハロ
ガンダムUCで出てきた政治家です。
シャアを模倣させた強化人間フル・フロンタルを作り出し、ラプラスの箱を求めたりと数々の暗躍を行っておりました。
ただ、ちょっと悪役としては影が薄い人物です。
モナハンの父、ダルシア・バハロの死亡年月は公式には語られておりません。
ただ、ダルシアがかなり有能な政治家である事は確かで、息子の代では徐々に共和国に力は落ちて行ったようです。
というわけで、ダルシアについては私的意見を交えて、死亡年月等を改変しております。
次回戦闘あるよ。
きっと、次回で一度終了です。