超次元ゲイムネプテューヌ Re;Birth3&VⅡ Origins Exceed   作:シモツキ

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第五十一話 理想を背負う代償

 神次元において、女神の誕生と国家の発生は断ち切りようのない関係にある。女神が生まれる事で、その女神が望む事で国は始まり、女神の存在そのものが国の成立に結び付いている。

 逆説的に言うのなら、女神無くして、人の力のみで、国家を生み出す事は出来ない。女神の存在を前提としない国は、歴史上一度も正しく成り立っていた試しがない。

 それは、何故か。…それは、土地には人々の思いが、理想の国とそれを率いる長への希望が、地底湖の如く長い年月をかけて積み重なっていくからである。連なった思いはシェアに、シェアエナジーとなり、その土地で成り立つべき国の在り方がシェアエナジーによって定まってしまうからである。そしてシェアエナジーを認知する事の出来ない人間が、その思いに沿った国を造れる筈などない。

 

 しかしそもそもの話として、神次元において、生まれながらにシェアエナジーを、思いを認知する事が出来る存在…即ち女神は基本的に存在しない。

 されど、シェアエナジーと女神もまた、シェアとそれを力とする存在もまた、断ち切る事など出来ない関係。その関係を示すように、積み重なったシェアエナジーは土地を満たしながらも少しずつ一点に集まり、収束し……ある段階を超えた瞬間、形ある物質として形成される。そしてそれを、人は呼ぶ。人々の思いが込められた、女神への渇望が記録された結晶…女神メモリー、と。

 

 女神メモリーは、シェアエナジーの濃縮体。何よりも強い力として、時に奇跡すらも起こすエネルギーが、国と女神を望む人々の願いが一つとなった、謂わば希望を現実とする為の楔。故に、それを取り込んだ人間は、その願いを叶える為の、叶えられる存在へと、シェアエナジーによって昇華する。女神メモリーによって、それを形作るシェアエナジーによって、それに内包された思いによって、人間は女神に生まれ変わる。

 無論、誰しもが女神となれる訳ではない。国を望む何千万もの、何億もの、或いはそれ以上の人々の思いを、誰しもが背負い切れる筈がない。だからこそ、元より国の長足り得る、その可能性のある人間だけが女神となり……背負い切れない人間は、シェアエナジーに耐え切れない人間の身体は、シェアエナジーを制御する女神ではなく、シェアエナジーに飲まれて人ならざる化け物へと変貌する。

 

 女神はシェアエナジーを、その内にある思いを認知する事が出来る。込められた思いに、人の願いに応えたい。それが自然に、思考と心の根元に根付いて行動原理となるのが女神というもの。であれば国を造る事も、統治者として人々を導き、守護者として国民を庇護する事もまた当然の摂理。

 だがしかし、ここで思い出してほしい。人に国は興せないのである。その最たる理由はシェアエナジーを認知出来ない事ではあるが、『人々の望む国の長』と、『実際に国を興そうとした人間の在り方』とが合わない為に、シェアエナジーが味方とならない事もまた理由の一つ。そして、これもまた当然の話だが……女神メモリーに適合し得る、国の長足り得る人間の在り方が、必ずしもその土地に積み重なった思いと合致するとは限らない。何故なら人によって、地域によって、時代によって望む国と女神の形は違うのだから。

 

 ではどうするか。仮に適合したとしても、その元人間の在り方と、望まれている形とが違った場合、国は成立しないのか。元人間の在り方に合わせて、望みが形を変えるのか。

 違う。そんな事はない。そんな事がある筈がない。幾ら国の長足り得る精神の持ち主であろうと、何億もの人の、何十年何百年何千年と積み重なった思いを、飲み込み切る事など出来はしない。

 

 だからこそ、変わる。思いではなく、元人間の側が…女神となった存在の在り方が、変わっていく。思いに、願いに、望みに影響されて、干渉されて、侵食されて……心もまた、望まれた在り方へと変質していく。

 それが、神次元。それが、女神メモリー。それが──人間でありながら奇跡の領域に踏み込んだ者の、運命である。

 

 

 

 

「…以上が、女神メモリーの概要よ。細かいところは多少飛ばしたけど…分かってもらえたかしら?」

 

 ふぅ、と吐息を吐くように、説明の中心を担っていたセイツが言葉を締め括る。その言葉を受けて……取り敢えず、わたしは一言。

 

「あ、って事はここまでのやつはその説明を活字媒体的に表してるんだね。なーんだ、急に始まったからびっくりしちゃったよ〜」

「いやわたしは第一声がそんな攻めたメタ発言である事にびっくりよ……」

 

 開口一番ネタに走ったわたしの言葉に、セイツは半眼になりながら突っ込み。うーん、セイツって心の動きにときめいてる時の印象が強いけど、基本は常識的っていうか、ノワールやイリゼ、あいちゃんなんかと同じポジションっぽいよね。

 

「ねぷぎあも、今の説明で大丈夫?」

「あ、はい。人が女神になるなんて…と思ってましたが、確かに元から次元に『女神を生み出すシステム』…とでも言うべきものがあるのなら、ある意味それは自然の事ですよね」

「そう、それが神次元なのよ。私達からすれば、生まれながらの女神が普通に存在してる信次元や超次元の方が不思議に思えるしね」

 

 ピー子からの確認にネプギアが同意を示すと、ノワールが軽く肩を竦めながらそれに首肯。

 勿論、わたしだって理解してる。っていうかこれ、シェアが直接女神を生み出すか、まず女神メモリーを生み出して、それを適性のある人が取り込む事で女神が生まれるかの違いであって、シェアが女神を生んでる事には変わりないんだよね。むしろ、直接生まれてるわたし達の方がより超常的って感じもあるし。

 

「あー、でも一個質問いい?土地に積み重なっていったシェアエナジーが女神メモリーになるって事は、女神メモリーはどっかに落ちてるの?」

「そうですわ。当然落ちてるではなく、沈んでいるや埋まっているというパターンもありますけれどね」

「へぇ、じゃあこの中で一人位は女神メモリーの拾い食いをしたのかな」

「ちょっ、せめて疑問符付けなさいよ疑問符を……」

「おお?そういう反応したって事は、ノワールつまり……」

「うっ……い、言っておくけど、私と貴女は同じところで得た物を、同じタイミングで食べてるんだからね!?」

「そうなの!?」

 

 これは弄れるぞ!ネタに出来るぞ!…と気分が盛り上がったわたしだけど、返ってきたのは驚きの事実。うぅしまった、まさか超次元のわたしに妨害されるなんて…まぁ、超次元のわたしからすれば、「え、そんな事言われても…」だろうけど……。

 

「…拾い食い、拾い食い…ね……」

「…ブランさん?どうしたんですか?」

「いや、独り言よ。…それより、女神メモリーの事は分かってもらったようだし…そろそろ、プルルートの事に入りましょ」

 

 静かに、真剣な顔でそう言うブラン。わたし達も一度口を閉じて…それから、ブランの方を見て頷く。

 そう。女神メモリーの事も気にはなっていたけど、あくまでこれは本題の…ぷるるんの事に関する前振り。わたし達が知りたいのは、ぷるるんに何があったかで…何を抱えているかだから。

 

「なら、まずは…なんて、順序立てる必要もないわね。二人共、さっきわたしが最後の方に言った、在り方の話は覚えてるわよね?」

「そ、それはまぁ…まだ聞いてから十分も経ってないですし……」

「じゃあ、結論だけ言うなら単純よ。…それが、プルルートを苦しめている要因だから」

 

 聞き手のわたし達に向き直って、セイツは初めに結論を言う。それにわたし達は何も言わず、そのままに受け止める。だって、その部分を聞いた時点でもしやとは思っていたから。

 セイツもそれは予想していたみたいで、一拍置いた後に続ける。

 

「さっき、わたしは表現として言ったわよね?女神メモリーを取り込んだ人間は、内包された思いによって自身の在り方を侵食されるって。分かっているとは思うけど…平たく言えば、性格や精神が書き換えられるのよ。女神化前後で二つの人格があるような状態から始まって、そこから少しずつ女神側の性格に…ね」

「…なら、ぷるるんのサディスト感溢れる性格は……」

「そうよ。もしかしたら道中で見てるかもしれないけど、のんびりしているのが本来のプルルートの性格で…サディストの方が、女神メモリーによって生まれた性格。…元々あんな性癖があった訳じゃないわ……」

 

 引き継ぐようにセイツから代わって答えたノワールは、昔を思い出すように、少し悲しそうな顔を浮かべる。…そういえば…ノワール、さっき言ってたね。自分が、一番ぷるるんと付き合い長いんだって。

 

「…あのさ、その事で一つ、ぴぃも前からよく分かんないんだけど…サディストな性格が生まれたって事は、この土地に集積した思いは『ドSな人がいい』とかって事なの?」

「それは難しい話ですが…集積した思いは人々が決を取ったものではなく、一人一人の望みがごちゃ混ぜになったものですから、混ざり混ざった結果あの形になっただけで、別に最初からサディストを望んだわけではないと思いますよ?(´ー`)」

「ですわね。でなければピーシェちゃんが口にした女神メモリーも、子供そのものな人物に統治してほしい…という願いが内包されていた、という事になってしまいますもの」

「あ、それもそっか……ごめん皆、話の腰を折って」

「うふふ、気にする事はありませんわよ。ピーシェちゃんの質問なら、わたくしいつでも答えて差し上げますわ」

「あー…うん、ありがとべるべる……」

 

 にこりと微笑むベールだけど、微笑まれたピー子の方は困り顔。…これはまた、どういう事か薄々想像がつくなぁ…にしてもべるべるなんて、こっちのベールはガルドに復讐を誓ってるのかな?なーんちゃって。

……って、適度にボケ入れないと皆も辛いよね…だって話が話なんだから…。

 

「……あれ?」

「どうしました?ネプギアさん(・・?)」

「え、と…はい。女神メモリーに内包された思いは、取り込んだ人の元々の人格に侵食する…つまりは、その人の性格が変わっていくんですよね?」

「そうですわ」

「でも確か、ノワールさんもブランさんも…少なくともノワールさんは、豹変って程変わってなかったような気がするんですが、それは……」

 

 そんな事をわたしが考えている中、今度はネプギアが質問。言われてみれば確かに、皆だって女神メモリーを取り込んだなら、ぷるるんと同じ事が起こる筈。まあ勿論、まだ女神メモリーにはわたし達の知らない要素があるのかもしれないけど…。

 

「いい着眼点よ、ネプギア。三人を呼んだのは、それを説明する為だもの。…先に訊いておくけど…そっちの次元のブランは、どういう性格をしているの?」

「信次元のブランさんですか?…ブランさんは、普段は物静かで、知的で、でも熱い思いを持ってて……」

「女神化すると、荒い口調的にも姉御感満載になるよね。あー後、一部の国民からはキレ芸として親しまれてるよ?」

「き、キレ芸…?国民が、わたしに対して…?」

「うん。本気でキレた時のブランは本当に怖いけどね」

 

 思い出すのは、偽者のブランとどっちが本物か確かめた時の事。…正直、今思い出してもあの時は怖かった……。

 

「こ、こほん。ともかく、信次元のブランと、こっちのブランは基本的に同じ性格をしている。二人にとっては、それが普通の事。…それで、間違いない?」

「うん、そだよ」

「なら、問題ないわね。確かに女神メモリーは、基本的に取り込んだ人間の在り方を侵食するわ。けど、ノワールとベールは、元々の在り方と内包された理想像が近かったのよ。だから侵食が軽微だった…というか、侵食されてもあまり変化しなかったらしいわ。あくまで比較的、だけどね」

「ははぁ、そういう事ですか…。という事は、ブランさんも……」

「…ううん。ブランは別よ。…そうよね?ブラン」

「えぇ。わたしが初めて声を荒げたのは、女神メモリーを取り込んだ後。その前の、人間だった頃のわたしは、一度たりとも荒い口調で話した事はなかったし……ましてやキレるなんざ、やろうとしたってきっと無理だったな」

 

 人の在り方も理想の女神像も人それぞれなんだから、合わない事もあれば合う事もある。それは普通の事で、ノワールとベールの話はすぐに納得出来たけど……ブランの言葉は、一瞬理解出来なかった。…それ、って…じゃあまさか、昔のブランは…それこそ、偽者のブランみたいな性格だったって事……?

 

「…あれ、でも…ブランは、ぷるるんみたいに苦しくなさそうだよね?ブランは、ぷるるんとも違うって事…?」

「いいえ、同じよ。違いがあるとすれば、それは段階の話」

『段階…?』

「プルルートは、まだ侵食を受けている。まだ抗っている。…けどもう、わたしは変化が終わっているのよ。わたしの人格と、女神の人格とが完全に融合して、一つになっている……それが、今のわたしよ」

 

 嘆く事も、惜しむ事もなく、ただ事実を述べるようにブランは言った。

 その言葉で、その声音と表情で、わたしは理解する。本当にもう、それは終わった事なんだって。ブランにとって、侵食される事も、自分が変わっていく事ももう過去の話で……楽観的にか、悲観的にかは分からないけど、今の自分を受け入れているんだって。

 

「ブランさん……」

「大丈夫よ、ネプギア。昔は色々悩んだけれど、この性格のおかげで言うべき時に言うべきものを言えるようになったって面もあるし……格好良い、信頼出来る…そんな言葉を国民から受ける度、これも悪くないって思えるもの。…それに、わたしの女神としての性格は、他者をどうこうってものじゃなかった。…敢えて言うなら、それがプルルートとのもう一つの違いね」

「…何とか、ならないんですか…?」

「残念ながら、なりませんわ。それこそ、侵食していく思いを完全に制御し切れたのはネプギアちゃんや、ネプテューヌの様な先天的女神が使った場合だけですもの」

「え?わたし達が、ですか…?」

 

 苦しんでいるなら、何とかしてあげたい。そう思うのは当然の事で、だけどネプギアの言葉をベールは否定。続けてベールの口からはわたし達の名前が出て…わたしもネプギアも、揃って目を丸くする。

 

「はい。これはあくまで推測ですが…超次元のお二人はこちらで女神化する事が出来ず、その為に女神メモリーを取り込みました。しかしそれはあくまでシェアエナジーの配給を受けられなくなっていただけで、人間になってしまった訳ではありません。だからこそ、女神メモリーに内包されていた思いも完全に受け止める事ができたのではないでしょうか

( ̄^ ̄)」

「あー…うん、それはあるかもね。わたし達って、元から常に信仰してくれてる皆の思いを受けてる訳だし、シェアにおいては生まれながらのプロな訳だもん」

「逆に言えば、そういう特別な理由がなければ変わってしまうのが女神メモリーの力よ。どうにもならないし、だからこそ取り込むなら覚悟をしなくちゃいけないのよ。適合出来ない事だって、往々にしてあるんだから…」

 

 また、悲しそうな顔をするノワール。ふと横を見れば、ブランも表情を曇らせていて、ピーシェも思うところがあるみたいな顔してて……思わずわたしは、話の流れを変えようとする。今は真面目な話の最中だけど、それでもやっぱり空気が沈んでいく一方なのは嫌だから。

 

「え、っと…ピー子はどっちなの?女神化すると精神が幼くなってるし、影響が激しいパターン…?」

「あー……うーん…確かに、今のぴぃとは差が大きいけど……」

「女神メモリーを取り込んだばかりの頃はむしろ殆ど変化がないレベルでしたし、成長の件も含めてピーシェさんは例外的な存在…ではないでしょうか

(´-ω-`)」

「そうね。わたし達が知る中で、影響が激しいのはブラン、プルルート……それに、女神崩れのあいつだけよ」

『え……?』

 

 上手くいった。少なくとも、暗い流れは変えられた。そう思って、一安心しかけたわたし。けど……次の瞬間、今度はセイツが表情を歪める。

 でもそれは、悲しさとか辛さとか…そういう感情によるものじゃない。セイツが浮かべているのは…怒りの感情。

 

「…あぁ、二人は知らなかったわね。わたしが今言ったのは、神次元最古の国…タリを築いた奴の事よ」

「最古…え、じゃあ…その人が、神次元の最初の女神…って事?」

「えぇ。まぁ、あんなのは女神じゃないけどね」

 

 そう言って、セイツは軽く鼻を鳴らす。嘲笑のような、侮蔑のような…少なくとも好意なんか微塵も感じられない表情で。

 

「…落ち着きなさい、セイツ。貴女自身も今さっき言ったでしょう?彼女もまた、女神メモリーからの激しい影響を受けたんだって……」

「はっ、あんな奴に擁護なんか必要ないわよ。沢山の、沢山の人の積み重ねられた期待を受け取って、願いも込められて、それで女神になった癖に、暴政の限りを尽くして、挙句クーデターが起きればその人達を潰そうとした、皆の思いに悪意で返した、正真正銘最低の屑なんだから」

「え、ちょっ…セイツー…?セイツさーん……?」

「あぁ、忌々しい…本当に本当に忌々しい…ッ!もっと早くわたしが存在出来てたら、あんな奴より先にわたしが国を興して、あいつなんか生まれた時点で根絶する事が出来ていたら、皆は……ッ!」

「……止めて、せーつ。せーつの気持ちも分かるけど……ぴぃはあんまり、あの人を悪く言ってほしくない」

「……っ…!」

 

 どんどん表情に浮かぶ怒りが深くなっていって、瞳にも怒りを灯して、落ち着くどころかブランの言葉でむしろヒートアップすらしていたセイツ。皆が好きだって言ったのと同一人物だとは思えないような、次々と発せられる怒りの言葉に、わたしもかなり動揺しちゃって……だけどそれを止めたのは、ピー子の言葉。ピー子の静かな、でも意思の籠った言葉を受けて…セイツも、はっとしたような表情を浮かべる。

 

「…ごめんなさい、ピーシェ。…少し、配慮に欠けていたわ…」

「ううん、いいよせーつ。さっきも言ったけど…せーつがそんなに怒る理由は、よく分かってるから」

「…ブランも、悪かったわ。貴女にとっても、配慮が足りていなかった……」

「そう思ってくれたのならもういいわ。でも…こういう話の時は、冷静にね?」

「う…はい……」

 

 優しく許してくれるピー子と、許しながらもしっかりと釘を刺すブランの言葉で、セイツは軽くしゅんとして首肯。わたしも、それで今度こそ一安心。…けど、セイツに何があったんだろう…それも今度、聞いてみようかな…。

 

「ええっ、と…こほん。ともかく、説明としては以上よ。何もなければ、わたしもプルルートの様子を見に行きたいところだけど…大丈夫?」

「うん、だいじょーぶ。…あっ、でもその前に後一つだけいい?なんかこう言うと、よく妻の話をする刑事さんみたいになっちゃうけど」

「……?いいけど…」

「ありがと。もしかしてセイツって、物凄い長生きなの?」

「へ?…あぁ、違うわよ。確かに、わたしは神次元で二番目の女神に当たるけど…クーデター側の女神として奴を一度討った後は、ずっと眠っていたの。だから長生きかと言われると…違うっていうか、微妙なところね」

「そっかぁ…そうなるとさネプギア。やっぱセイツって、イリゼとなんか似てるよね」

「…イリゼ……?」

 

 先にこれだけは訊いておこうかな…と思った事を口にすると、返ってきたのは「長い間眠っていた」という、部分的にだけどイリゼと同じエピソード。その思いをネプギアに向けて話してみると、ネプギアもこくんとわたしに頷いてくれる。

 

「だよね。見た目も似てるし、戦い方も通じるところがあるし、皆を大事にするって思いも近いよね」

「え、あの…二人共?イリゼっていうのは…信次元にいる人の事…?」

「そだよ。イリゼも長い間眠ってた女神で、実は原初の女神…の、複製体なんだ。その反応だと、こっちの最古の女神と原初の女神は違うっぽいけどね。国の名前も違うしさ」

「イリゼ…原初の女神…複製体……」

「なんなら、今日の連絡で話してみる?イリゼってば友達大好きだから……あぁそうだ、後イリゼはこっちのいーすんの妹でもあるんだよ?同じ人に生み出された、って意味でのだけど」

「へぇ、イストワールの…。…ふふっ、最後のはともかく、そこまで似てるなら、なんだか親近感が湧くわね」

 

 そこで漸く戻るセイツの笑み。明るい話だからか、皆の表情もさっきより緩んでいて、わたしも自然に言葉が弾む。

 

「けど、不思議だねお姉ちゃん。イリゼさんとセイツさんは色々似てるのに、明らかな別人だなんて……」

「ふむ…セイツさんとイリゼさんは、プルルートさんとネプテューヌさんのような、共通項の多い別人、同じ枠にいる別人…という事ではないでしょうか?…それにしても、イリゼさんが別次元のわたしの妹だったとは……Σ(・□・)」

「あぁー、確かにわたしとぷるるんも、同じプラネテューヌの女神で、同期の三人は同じだもんね。なら二人もそのパターンかも……って…」

「……?今度はどうしたの、ネプテューヌ」

 

 いーすんの推測に、それあるかもとわたし達はそれぞれ頷く。実際わたしとぷるるんも女神化前後共に体型似てるし、そこはかとなく通じるものがある…気もするから、いーすんの言葉は説得力ばっちり。同時にわたしは、それならぷるるんの事をもっと知ってみたいって気持ちにもなって……でもその言葉を言い切る直前、ある事に気付いた。

 それは、セイツに纏わる事。周りから見れば一目瞭然で、でも本人は気付いてない変化。どういう事…?とわたしは一瞬訳が分からなかったけど、セイツも本当に分かっていないみたいだから……わたしは、言う。

 

「どうしたの、って……頬、気付いてないの…?」

「──え?…あ……」

 

 言われて、触って、それで初めて気付くセイツ。理由は分からない、分からないけど……セイツは、涙を流していた。

 

 

 

 

「…はぁ……」

 

 洗面所。プルルートの部屋に行く皆と一度別れたわたしは、洗面所に行って、顔を洗って……小さく一つ、溜め息を吐く。

 

「…どうしてわたし、涙なんか……」

 

 顔も手も洗って、今はひんやりしている。だけどわたしはまだ、はっきりと覚えてる。指先に触れた、わたしの涙の熱さを。

 何か、悲しい事があった訳じゃない。どこか痛かった訳でもないし、ましてやわたしは涙目のセイツとかでもない。けれど何故か、わたしは泣いていた。涙を流していた。理由もなく、訳もなく、ただ何故か……

 

(…いや、違う……)

 

 鏡に映る、わたしの顔。それを見て、瞳を見つめて…わたしは首を、横に振る。

 そう。本当は分かってる。本当は……嬉しかったんだ。だってわたしは、寂しかったから。今も昔も、わたしの事を理解してくれる人がいて、仲間や友達もいて、わたしの周りには大切な人が沢山いるけど……それでもわたしは、違う存在だから。この次元において唯一の『先天的女神』で、自分がどうして生まれたのかもはっきりとしていなくて…だからどうしても、自分の事を『異質』に思っている自分がいるから。その思いがあるから……似ている存在の、わたしに近いのかもしれないイリゼって女神に対して、無意識にシンパシーを感じていたんだ。…勿論、勝手な思い、だけどね。

 

「……ふふふっ。折角言ってくれたし…会ってみようかしらね、イリゼと」

 

 会ってみたら、わたしの思い違いだった…となるかもしれない。一方的な思いで終わる可能性もある。けれど、それならそれで、ただの似ている女神として仲良くなればいいだけよね。だって……わたしは、心動く人皆が好きなんだから。




今回のパロディ解説

・ガルドに復讐を誓っている
デュエル・マスターズシリーズにおいて登場するキャラの一人、ベルベルの事。より厳密に言うと、漫画(勝負編)版のキャラですね。

・「〜〜よく妻の話をする刑事さん〜〜」
刑事コロンボシリーズの主人公、コロンボの事。何の作品かは忘れてしまったのですが、パロを主としていない商業作品でもコロンボはネタに使われていた覚えがあります。

・涙目のセイツ
ジョジョシリーズに登場するキャラの一人、涙目のルカの事。ナイフを突き立てられても喧嘩を止めなかった…あれ?これはむしろ、セイツではなくイリゼですね。
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