短くてすみません。
比企谷八幡と雪ノ下雪乃は共に大学生になった。
それぞれ楽しい大学生活を満喫している。
テニス部に入った雪乃は、先輩とも上手くやれている。
「雪乃ちゃーん、今夜カラオケ行こう」
そう言ってくれてるのは、雪乃の先輩である池面 茂手男(いけめん もてお)という二年生だった。
雪乃も、二年生にしてカーストトップにいる池面先輩が雪乃に優しくしてくれる環境を悪いとは感じていなかった。
池面先輩のお気に入りと言うだけで、周囲も雪乃を特別扱いする。
池面も言っていた。
「ゴミ男と付き合っちゃうと、彼女までゴミ扱いされちまうわけよ。
ゴミなんかにも股開くんだから、そいつもゴミ扱いされてもおかしくないわけ。
底辺男と付き合ったら一緒に玩具扱いされちゃうから気をつけてね」
実に正しいアドバイスだった。
今、比企谷八幡も雪ノ下雪乃も大学生にはなったが、同じ大学では無い。
比企谷八幡の知能では、どれだけ頑張っても本気を出して勉強した雪ノ下雪乃の進学先には届かなかった。
八幡は十分に頑張った。
充分な学歴と呼べる大学には入れた。
これは奇跡と言っても良かった。
でも、凡人が奇跡を起こしたところで、転載の必然には届かない。
ポテンシャルが違いすぎたのだ。
今、雪乃の周囲には雪乃と同じレベルの天才達が集まっている。
この誰もが将来の日本や世界を背負っていく人材だろう。
雪乃はこの夜カラオケに着いていった。
池面先輩と二人きりだった。
池面先輩が昔の武勇伝を話してくれた。
「昔引きこもりみたいな名前の男がいてさ、いじめてたんだよ。
しょうもないやつでさ、なにやっても駄目なゴミ男。
でも、今では俺は反省しているんだ。
いじめてしまった分も、俺は立派になってやろうって。
それがいじめてしまったそいつへの恩返しになるんだって」
雪乃は直感的に、その引きこもりみたいな名前の男が誰だか分かった。
だけれど、そんな男と仲良くしていた自分が恥ずかしくなった。
自分も同じような扱いを受けると思うとゾッとする。
池面も昔を後悔して、今は立派になっている。
だから、とても良い人なんだと雪乃は思った。
雪乃のことをいつも大事にしてくれている。
依怙贔屓なくらいに大切にしてくれている。
いつも好きだと言ってくれる。
これで靡かないのも失礼だと思った。
いつまでもアプローチされないのかもというタイムリミットの不安も感じていた。
何より、イケメンにひたすらチヤホヤされることに悦びを感じていた。
八幡と付き合っている事が周囲に知られたら、雪乃の立ち位置は大きく変わるに違いない。
力ある池面先輩を敵に回して、力の無い八幡と一緒の扱いをされるなんて耐えられない。
「今日、先輩の家に泊まっても良いかしら」
池面は、雪乃の提案を快く受け取った。
その日、雪ノ下雪乃は様々な初めてを経験した。
その最中、よく知った男からLINEが来ていたが、雪乃は知らない振りをした。
お互いに何も知られなければ、幸せなままでいられる。
八幡に今の自分を知らせないことが、本物に迷走した八幡には丁度良い幸せだと思ったから。
同じ大学に行けなかった八幡が悪いのよと、雪乃は先輩の腕の中で思った。