僕の名前は江戸川コナン。
高校生の工藤 新一が薬を飲まされ身体が縮んだ。
小さくたって頭脳は同じ。迷宮なしの名探偵!
の はずだったんだけどなあ……
身体が縮むだけでもありえないってのに、気が付きゃ知り合いも米花町も杯戸町もありゃしねえ。
俺の記憶がいじられてるってわけでも無さそうだ。
つまり、実家は消えて、阿笠博士にも毛利のおっちゃんにも頼れず、蘭にも会えない。
真実は いつも ひとつ!
このままだと、行き倒れる。
俺をこんな身体にした黒ずくめの男たちを追うとかいう場合じゃねー。
まずは生活基盤を整えないと、身動きも取れねえ。
しゃーねえ。役所でも行って、孤児院でも入るか。
それで入って早々に、施設で殺人事件があったりしたが、まあいつもの事だ。
子供のフリをするのだけが面倒だったが、案外イケるもんだな。
犯人の志村 転弧はまだガキだったが、漏れ聞こえた話じゃ家族もヤッちまってたらしい。
おっかねえ話だ。
だがそれはそれとして。個性って何だよ。
俺にもあんのかよ。
個性は小学生になる事と、よくわからない世界へ行く事ですってか。笑えねーよバーロー。
退屈な授業にも、小学生のガキどもと一緒に一日の大半を過ごすのにも、そろそろ慣れてきた。
なついてきたガキどもが、クラス全体で探偵団とかイレギュラーズとか名乗ってるが、この世界にもホームズあるのか?
まっさか、実在したとか言わねーよな。
この世界、まさかと思う事ほどマジにあったりするけども。
いや、まさかなあ……
おっと来たか。今日の事件。
爆発の個性で、空を飛んでいた少年Bが、墜落死。
事故死だあ? バーロー。どう見たって、そりゃ殺人事件だろ。
しゃーねえ、行くか。出番だぞイレギュラーズ! ラインを飛ばせ!
こういうテクノロジーが発達してるのだけは、いいところだよな、ホント。
それがトリックのタネになる事も、結構あるけどな。便利なもんは便利に使うだけにしとこうぜ。
犯人は、幼馴染の少年M。
ヒーローに憧れて、ヒーローを調べて書き集めたノートを燃やされ、クラスの全員の前で自殺を示唆されたのが動機。
「来世は個性が宿ると信じて…! 屋上からのワンチャンダイブ!」
被害者の少年Bは口が悪かったらしく、犯人候補は多かったが、少年Mほどけなされ、イジメられてるヤツはいなかった。ある意味お気に入りだったんだろう。
今回、聞き込みをしたイレギュラーズの中で、途中で捜査から抜けていくのがそこそこ出た。
「コイツ死んでも、しょうがなくない?」
正直、俺もつい同意しそうになった。
だが俺は探偵だ。探偵は事件から逃げちゃいけない。
犯人も、見つけてやらないといけない。また何かあった時に、殺人なんていう卑劣で汚い手段に出なくてもいいように。
俺が見つけて、教えてやる。それは、やっちゃいけないことなんだって。
真実は いつも ひとつ!
なあ。お前は、ヒーローに憧れたんだろう…?
「かっちゃーーん! ゴメン、ゴメンよ、かっちゃーーん!!!」
少年Mは、ボロボロになったノートを抱えて泣き崩れた。
バーロー。泣くくらいなら、するんじゃねえよ。
「ハハッ。彼は、すごいなあ」
「個性ってものは、多かれ少なかれ、世界に働きかけるものだけれど」
「彼の個性ほど、世界に影響を与える個性は他に無いよ。しかも徐々にその範囲を広げていっている!」
「この地図を見たまえ、
「ハハハ! どうだい、
「ズルいじゃないか」
「きっとボクにだって、この個性は使えない。でも彼がひとりだけ、こんな素敵な遊びをしているのを、見てるだけなんてガマンが出来ない」
「彼と、トモダチになろうと思うんだ。そうしたら一緒に遊べるじゃないか。きっと楽しい。楽しいに決まっている」
「それで遊び飽きたら、親切に彼の持っている力について、教えてあげてもいいかもね」
「だからダメだよ、
「それじゃあ出かけてくるよ。死神の、トモダチになりにね」
「え~、本部。応答願います。こちら三号車。場所は折寺小学校付近の国道。殺人事件発生」
「犯人は自称オールマイトの妙に痩せた中年男性。
「被害者は黒のスーツの体格のいい男性。頭部欠損に付き、身元は不明。また所持した物に、身元がわかるものなし。ただ用途不明のパイプだらけのマスクが近くに落ちていました」
通学路にパトカーが止まっていて、そんな風に無線でやり取りをしているのを見た小学生は、ふと思った。
蝶ネクタイにブレザーに短パンの、あのメガネの転校生が来てからだったと思うけど。
それはいったい、どれだけ前だったっけ……
「まっ、いいか」
学校で話すネタができた。
ガリガリで普通の背丈のオッサンが、オールマイトのコスプレして殺人事件とか、絶対ウケるぞ。
もはや殺人という
変わっていく世界。
それがどこまで続いていくのか。
それは、きっと名探偵にだってわかるまい。
<End>
注:これは続きません。マジで。