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アクロバティックかつ理解不能な状況に陥った私こと黒羽式は
「逃がしませんの」
「ですよねー」
白井さんには勝てなかったよぅ、と佐天は呟く。
佐天のスペックは俺の演算を貸し与え、能力を向上させたとは言え、普通の女子中学生がバットを振るえる程度、つまり平凡オブ平凡だ。良くも悪くも佐天は『普通』なのだ。そんな人間が白井の空間転移から逃げられる筈がない。
「うー、白井さん。慈悲とかありません?」
「無いに決まっているでしょう。昨日からお姉様がウジウジしていたのは、まさか佐天さんが原因だとは」
「いやカッとなっちゃってつい……」
「まあ両成敗ですの。お互い喧嘩したままだとこっちまで影響するんですのよ」
流石御坂のストーカーだな、と精神体の黒羽は呟くと佐天さんが吹き出した。不意打ちってズルいと笑ったのを白井に不思議がられた。
『まー、やっちゃったぜ☆と言えばいいのか?』
「(言ったら猛烈に殴りたくなるのでやめてください。多分私黒羽さんを殺せますよ?)」
『やめてくれ。謝る時はオレが出るから』
直死の魔眼を佐天も使える以上、物事の明確な死を読み取る事ができる。魂然り、意識然り、万物には綻びがあり綻びがない完璧な存在などいない。居るとしたらそれは
と言うか佐天もこの力を理解したせいか能力が少し怖くなったようだ。この世界では恐らく『原石』扱いだが、佐天涙子は万物、ありとあらゆる存在の死を握る事が出来るのだ。
直死の魔眼は死を与える行為自体は普通に刃を使う。使わなくても殺せるが。問題は
『(ある意味直死の魔眼は原点へ帰る力とも言えるな。この世界の処分出来ない魔導書や消えない魔術も、いや下手したら能力だって永久に殺す事だって不可能じゃない。早いとこオレの身体を見つけないと利用されかねないな)』
自分探しが当面の目的として、今は不機嫌な佐天を宥めるとしよう。
★★★
「………」
「………」
き、気まずいよ!と心の中で佐天は呟く。
一七七支部に集合した初春、白井、御坂、そして佐天の周りの空気が重く感じた。佐天と御坂は顔を合わせた瞬間逸らしてしまうし、初春は察したのか佐天が持っていた『
「さて、説明してもらいます。佐天さん、これを一体どこで手に入れたんですの?」
「音楽ファイルをダウンロードするページがあるんですけど、そこに隠しページがあって、それをソフトにダウンロードしたんです。初春に伝えてもう削除されてると思いますけど」
「音楽…… 『
「でも本当に音楽っぽいですよ。調べてみても音楽のそれに近いです」
白井は僅かながら信じられないような目で佐天を見るが、解析が終わった初春はそう告げる。もしかして偽物なんじゃないんですかと佐天が黒羽に頭の中で問いかけるが、間違ってはいない。
『
「『まあ、そりゃ当たり前だ。誰でも簡単に手に入れられて、誰でも簡単にレベルが上がる。まあ電子ドラックに近いようなもんだ』」
「……えっ?」
「佐天さん?」
「……っ!アンタ、あの時の!?」
御坂は気付いたようだが、二人は口調が変わった事に首を傾げる。その直後、白井はある事に気がつく。佐天の瞳が蒼く、宝石のように鮮やかな瞳をしているのだ。
「『––––よう、
「……アンタは……何なの?」
「『オレか?オレはまあ……佐天の相棒みたいなもんだよ。まっ、訳あってコイツの中に居座ってる……夢のような存在だ』」
「答えになってない!!」
「『答えるつもりはない。お前らは目に見える事を全て科学で読み取る癖に、非科学的現象を真っ向から否定する。そんな奴らに教えてもそんな話あり得ないで終わるんだ。要するに時間の無駄』」
黒羽自身、御坂美琴は好きじゃない。
別に物語の中では嫌いなキャラでは無かったが、実際に見てみるとなんか違うみたいな感覚だ。嫌いな訳じゃないが、相対すると相性が悪いだけだ。
「『オレは別に能力を否定する訳じゃねえよ。ただ、頑張っても、頑張っても能力が上がらない奴だって居る。お前はそれを努力してないって上から言ってるからムカつくんだよ。テメェが何を知ってんだよ。オレ弱い奴を無意識に見下してるようなお嬢様が––––大嫌いだね』」
「っ……」
「『まっ、殴った事は謝るよ。だが、お前も少しは他人を見て言葉を使え。じゃなきゃ、お前の周りから誰もいなくなるぞ』」
腕を組みながら御坂に対して引く気すらない。
だが反面、白井や初春については真逆のメッセージに見えた。御坂美琴がこのままだと周囲に誰も居なくなる、と言っているようだった。
「貴方が一体誰なのかは置いといて、一先ず聞きたい事がありますの」
「『ん、どうぞ。答えられるのには限りがあるがな』」
「先ず、貴方の名前は?」
「『置いとくんじゃないのかよ……黒羽式、ってらしいがそれ以上は分からん。記憶が曖昧な上に、身体が無い状態だ。幽体離脱みたいな感じで佐天を拠り所にしてる』」
「佐天さんはこの事を?」
「『知ってる。能力の底上げはオレの頭脳でやってんだ。同意無しとか犯罪だから』」
割とマジな話だ。
今身体が無いのは死んでいるからではなく、仮死状態だからだ。そこまでは分かるが肉体が無いし、何となく肉体と繋がっている事は分かるが、長時間佐天から離れると繋がっていた感覚が徐々に薄くなるのだ。
「まあ佐天さんが同意している以上、深くは聞きません」
「『そりゃ助かる。オレも自分の肉体探してるけど、場所が分からないから仮宿みたいなもんだ。追い出されたら多分死ぬし』」
「「重症じゃない(ですの)!?」」
白井と御坂が驚愕する。
魂がどれだけ放浪出来るか不安しかない中で、どうすればいいか分からないし、下手に動くより調べてから動いた方がマシだ。
まあ、それはさておき……
「『
「『知ってる。共感覚性を用いて使用する
まっ、コレの考案者は木原幻生だ。
あのクズの発想実現力は半端じゃないが、犠牲など毛ほども興味をかけないイかれ実験者だ。マジさいてーという奴だ。
「共感覚……ああ!そういう事ね!感覚の一部にさえ作用されれば五感全てに働きかける。それを
「確かに……理にかなってますわ」
「『まあ大した発想だよ。AIM拡散力場を繋げて使ったものの演算力を並列に使うなんてな。レベルが上がる理由が分かる』」
「貴方は何故その事を知っているのですか?」
「『正確に言うなら、多重能力者の研究の一部を模して造られた実験だ。オレに関してはAIM拡散力場に干渉する系の能力者だしな。調べたら案外カラクリは簡単だったぞ』」
これについては原作知識だが。
しかしよく考えられてるな。パソコンのようにネットワークを繋いで
やはり、『木原』の存在が裏に来るとLevel5まで掌握してきそうだから、嫌い……いや待て、そもそも嫌い好きとかキャラではなく、なんで俺は
記憶ではあった事すらないのに、どうして木原と言う嫌悪感がある?今のオレは
「『ともかく、何かの共通点を探せ。オレは用がある』」
「用?なんの?」
「『カエル医者の所。この状態だしな』」
「共感覚で作用すると分かれば、
初春が木山に連絡を入れるのを見計らって、オレは一七七支部を後にする。このまま行けば、原作より少し早めに木山は捕まってしまう可能性が高くなった。
御坂美琴は何も知らない。
木山の過去を知らない以上、木山を絶対に止めてしまうだろう。
原作改変。
それは余りしたくない事だが今回ばかりは、介入してやろう。
★★★
「う、おおおおっ!!」
佐天は今、『
空力使いは風力使いとは違い、風を念動力のようなもので操るのではなく、あくまで自分、もしくは触れたものを基点にしか風を起こせない。大気中の気圧や気流の流れくらいなら測るくらいは出来るけれども、演算で能力を向上させているオレも専門分野じゃない。
そもそも、演算出来ていることが不思議なくらいだ。黒羽式であって黒羽式ではない偽物が黒羽式と同じように演算出来る時点で、やはりおかしい。
「凄い凄い凄い!?でもちょっと怖いんですけど!?」
『慣れろ。オレが演算に失敗するわけないし、お前は着地とダッシュに全力を注げ』
「なんで地味に偉そうなんですか!?」
佐天に代わって走らせている黒羽を少し恨めしく思う。まあ能力が使えて、少し楽しい分で割り切ってはいるけれど。
「木山先生の所に行って何するんですか?」
『まあ、やる事が二つくらいあるな』
木原に見つかる前に実験で眠っている子供達を起こし、保護してもらう為に子供達を隠している場所を教えてもらう事。捕まった後の釈放後にオレの身体を探してもらう事。
恐らくだが、オレなら子供達を目覚めさせる力がある。
AIM拡散力場の暴走により昏睡状態に陥ったのなら、オレが介入出来る可能性が高い。
元々、それをやろうとしているのが木山だったわけだし。一万の脳を使い、AIM拡散力場の暴走を解除させようとした木山なら、その分野に必要な能力者のピックアップくらいしていた……と思う。
『問題は、木山がそれを素直に教えてくれるかなんだけどな』
「黒羽さん……?」
『悪い。今回だけ付き合ってくれ、オレの完全な私欲だけどな』
オレは
ただ、自分を探す為に交渉を持ちかけようとする自分主義の勝手な人間だ。しかし、それでも最善は尽くす事は当たり前のことだ。
なんだかんだ、オレはオレをクソッタレと思っているのかもな。
★★★
木山のいる病院にたどり着き、部屋の扉にノックをする。「どうぞ」と言う声と共に扉を開けると机で資料を見ながらも、こちらに目を向けた木山の姿があった。
佐天は黒羽に意識を渡し、黒羽は木山を前に視線を向けた。
「君はあの時の……何のようだい?」
「『取り引きをしに来た』」
「取り引き?」
「『ああ、オレはお前がやろうとしている事を知っている。木山先生が、こんな事件を引き起こしてまで行おうとしている事をね』」
ピクッ、と僅かに眉が上がった。
それは先生と言う言葉に反応したのか、やろうとしている事に反応したのか。恐らくは後者だろう。
木山は引き出しに隠した拳銃に手を触れる。
ここでバレるわけにはいかない。最悪口を封じてでも実行しなければならない。
「取り引き……だと?」
「『––––オレはアンタの共犯者になってやる』」
木山はその言葉に疑問を抱いた。
共犯者とはどう言う意味か、これから自分がやる事に一体どう関係するのか。それを質問する前に黒羽式は木山に告げた。
「『だから、アンタもオレに協力しろ。救う手を増やしたいのなら』」
ただ、そう告げた黒羽の眼は蒼く染まっていた。