魔法科高校とチート転生者   作:カトポン

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 どうも、おはこんばにちは。
 タイトルが英語で書かれていますが、意味は狙われた司波達也と九島悠馬という安直な物です。英語した理由?単に英語にしたらカッコイイかな〜という幼稚な物です。
 それに加え、今回は悠馬→ほのか→悠馬→3人称と視点がコロコロ入れ替わります。一応、分かりやすいように分けてはいますがご了承ください。
 それでは、第19話をどうぞ。


第19話 Targeted Tatsuya Shiba&Yuma Kudo

 新入部員勧誘週間は何日経とうと勧誘の激しさが変わる事はない。

 それは、週末を挟んでいたとしてもだ。

 

「はぁ、今日も外で巡回の応援かよ」

 

 またもや巡回の応援に加え、色々な仕事を押し付けられた。

 ただ、前回と違う所があるとすれば単独行動ではないところだろうか。

 

「お前は、いつから生徒会から風紀委員に転職したんだ?」

「した記憶はねぇし、大前提として委員会は職業じゃないだろうが」

 

 俺と達也は何故かタッグを組んで、巡回していた。まさに、風紀委員と生徒会役員の異色のコンビである。

 

「ったく、人が多過ぎて移動すんのも大変だ」

「それについては同感だ。生徒の安全面とかどうなっているんだ?」

「九校戦の成績を上げる為に、多少のルール破りは黙認するような所だ。大事にでもならん限り、生徒の安全なんて気にしないだろ」

 

 と、この学校の先生が聞いたら憤慨しそうな発言をさらりと吐く俺。

 

「それもそうか」

 

 と、この学校の先生が聞いたら憤慨しそうな発言に同意する達也。

 風紀委員と生徒会役員の異色なコンビではなく、この学校に喧嘩を売っているコンビに訂正した方が良いかもしれない。

 

「と、達也。どうやら、早速仕事のようだ」

「そのようだな」

 

 制服を掴み合って、喧嘩している2人の生徒を見つけた。

 

「俺が掴み合っている手を引き剥がすから、その隙に2人の距離を引き離してくれ」

「了解」

 

 達也が手早く作戦を立てると、俺達は早速その作戦通りに行動を開始した。

 

「そこの2人!掴んでいる手を離してください」

 

 と、達也が言うが案の定、2人は掴んでいる手を離そうとしないので、達也は2人に駆け寄って、腕を振り上げて強引に掴んでいる手を離させる。

 その間に、俺は2人の生徒を引き離そうとした時、後ろから達也の頭めがけて空気弾(エア・ブリット)が飛んで来るのに気づいた。

 達也なら俺が何もしなくても躱せるだろううが、達也が躱した事によって他の生徒に被弾するかもしれないので、俺は達也の後頭部を遮るように腕を伸ばす。

 『一方通行』の反射はオンにしているので、空気弾(エア・ブリット)は俺の腕に触れるか否かの所で反射され、映像を巻き戻すかのように同じ軌道で放たれた場所へと吹っ飛んでいった。

 

「達也。すまないが、この場は・・・」

 

 任せたぞと言って、俺は空気弾(エア・ブリット)を使った奴を追いかけようとしたが、それは目の前に居る2人の生徒によって出来なかった。

 

「ちょっと待てよ。まずは、こっちだろ」

「それは此処に居る風紀委員がやりますから、俺は先程の魔法の使用者を追わないと・・・」

「そんな事より、俺の話を聞けよ。生徒会役員なんだろ。白黒つけろよ」

 

 こんな事を言われたら、無視して追いかける訳にもいかない。チラッと達也の方を見ると、達也も俺と同じように足止めを食らっていた。

 結局、俺と達也の2人で仲裁する羽目になり、それすらも無駄に時間が掛かったので、空気弾(エア・ブリット)を使った奴を取り押さえる事など不可能となってしまった。

 

「ありがとう、悠馬。お前が空気弾(エア・ブリット)を反射してくれたおかげで大事に至らなかった」

「それは別に良いんだが・・・あの空気弾(エア・ブリット)の狙いは間違いなくお前を狙って放たれた物だった。お前、何をしたら魔法で狙われるような事になるんだ?」

「確証は無いが・・・初日のアレが原因だろうな」

 

 達也の言うアレとは、剣術部の部員を魔法の不適正使用で逮捕した事だろう。

 達也が逮捕もとい倒したのは、剣術部の次期エースである桐原先輩。2年生ではトップクラスの実力者と目されている人物が1年生に倒されたとなれば、話題にもなるだろう。それが、ニ科生ともなれば尚更だ。

 

「なるほどな。逆恨みにすらなってない理不尽な怒りを向けられたか」

 

 1年のニ科生が、2年の中ではトップクラスの実力を持つ生徒が倒した。それが、中途半端な魔法選民主義に染まった者を驚愕させ、怒り狂わせた。

 

「新入部員勧誘週間が終わるまでは、続きそうだな」

「むしろ、それ以降も続くようだったら、何かしらの対策を講じなければいけないな」

 

 というか、この事を深雪が知ったら、どうなる事やら。

 少なくとも、周囲が凍りつくーー文字通りーーのは間違いないだろう。想像しただけで、寒気がしてきた。

 

「とりあえず、巡回を再開するか」

「そうだな」

 

 こうして、俺達は巡回を再開するのだった。

 

◇◇◇

 

「うわっ、今日も凄い事になってる」

「そうだね」

 

 外を見てみると、初日と同じように凄い事になっていた。

 

「何処から帰ろう・・・」

「何処を通れば帰れるか、だよね」

 

 どうやって帰ろうかと、思案していた時だった。

 

「ねぇ、貴方達も今帰り?」

 

 突然、後ろから声を掛けられた。

 私は、突然の事にびっくりしながらも後ろを振り向く。そこには、私や雫と同じ一科生の赤毛の女子生徒が居た。

 

「あ、驚かせちゃってごめんね。私、明智英美。日英のクォーターで、正式には、アメリア=英美=明智=ゴールディ。エィミィって呼んでね」

 

 あ、だから、髪色が赤いんだ。

 

「北山雫。よろしく」

「よろしく」

 

 2人は、ぎゅっと握手する。

 

「光井ほのかです。・・・よろしくね、エィミィ」

「うん、よろしくっ。ほのか!」

 

 私も手を差し出すと、エィミィは手を絡め合わせて、ぶんぶんと振る。

 クォーターなだけあって、凄いフレンドリーな人だなぁ。

 

「それで、2人はどうしたの?」

 

 手を離したエィミィは、私達にそう聞いてきた。

 

「どうやって、帰ろうかなって」

「あぁ、なるほど〜・・・これは苦労しそうだね」

 

 外の惨状を見たエィミィもこれには、苦笑いだ。

 

「雫もほのかも隠密系の術式は持ってないの?」

「オンミツ系・・・?何それ」

「陰陽道系と密教系?」

 

 って事は、古式魔法の事なのかな?

 

「やだなぁ。隠密は隠密だよ」

 

 だけど、エィミィからすれば、古式魔法の事じゃないみたい。

 

「公儀隠密の『隠密』。松平伊豆守とか紀州御庭番とか知らない?」

「あ・・・あぁ、古式魔法の『忍術』の事?」

「忍術だけじゃないんだなぁ」

 

 どうやら、エィミィの言うオンミツは忍術の事だけじゃないみたい。

 

「とにかく、意識を逸らしたり、姿を隠したりする術式だよ」

「私は使えないけど、ほのかは得意。でも、魔法を勝手に使うのはルール違反」

「今さらだよ。いつもなら守らなきゃだけど、今は魔法が飛び交ってるじゃん。校内限定だけど」

 

 それは・・・そうだけど・・・

 

「魔法を使って攻撃しようって訳じゃないんだし、迷惑勧誘を避ける為に魔法を活用するくらい、大目に見てもらえるって」

「う〜ん・・・でも、この前ちょっと・・・」

「なるほど、一理ある」

「えっ!?」

 

 雫まで、そんな事を言うの!?

 

「大丈夫、ほのか。今回は攻撃じゃないから」

 

 雫がグッと親指を立てる。

 

「あの時だって、攻撃じゃなかったよ!」

 

 とはいえ、帰るには魔法を使わないと無理そうだし・・・

 

「分かったよ、雫。・・・エィミィも一緒に帰る?」

 

 少しの間、逡巡した私は魔法の行使を決心した。

 

「うん!ありがとう!」

「皆で行った方が心強い」

 

 そういう訳で、私は魔法を使い、私や雫やエィミィの姿が見えないようにしながら、校門へと向かっていた。

 

「これだけで結構、気付かれないものなんだね」

「映ってるのが背中と植木だから」

「なるほど〜あっちから見ると、植木の奥で作業している風に見える訳か」

 

 と、感心するようにエィミィが言う。

 

「うん、バッチリだよ、ほのか」

「だといいんだけど・・・」

 

 魔法を使っていても、私達の姿が見えていないかと不安になる。

 それに、音を誤魔化す事は出来ないから、足音を立てないように慎重に歩いてるせいで、ひどくもどかしい。

 だけど、ひどくもどかしさを感じていた私は、とある光景を目にして思わず、足を止めてしまった。

 

「あっ」

 

 私が急に止まったせいで、エィミィの頭が私のぶつかったけど、その事を気にも止めずに私は、目の前の光景をじっと眺めていた。

 

「どうしたの?」

 

 2人は、私の後ろから覗き込むように私の視線の先の光景を見る。

 

「そこの2人!掴んでいる手を離してください」

 

 私の視線の先には、達也さんが制服を掴み合っている一科生を仲裁しようとしていた。

 近くには、悠馬さんも居る。たぶん、巡回の応援で達也さんと一緒に居るんだろう。

 

「風紀委員?」

「深雪のお兄さんに悠馬さんだ」

 

 達也さんは制服を掴み合ってる2人の生徒に駆け寄ると腕を振り上げて、掴み合っている手を外させる。

 その後ろから悠馬さんが片方の男子生徒に駆け寄るが・・・

 

「あっ」

 

 達也さんの背後から空気弾(エア・ブリット)が飛んで来たのに気づいて、思わず誰かが声を上げた。

 このままだと達也さんに当たる!と思った次の瞬間・・・

 

「えっ?」

「跳ね返った・・・」

 

 悠馬さんが達也さんの頭の後ろに手を伸ばすと、空気弾(エア・ブリット)が悠馬さんの腕に触れるか否かの所で映像を巻き戻すかのように、空気弾(エア・ブリット)が元の軌道で戻っていった。

 

「って、雫。今の・・・!」

「わざと、だね」

「えっ、わざとって・・・あの風紀委員の男の子が()()()狙われたってこと?」

「うん」

 

 しかも、達也さんと悠馬さんは、前の2人に邪魔されて、空気弾(エア・ブリット)の術者を追いかけられない。

 まさか、全員グルなの?

 

「今のは偶然なんかじゃない。どう見てもわざとだった」

「私にもそう見えた」

 

 雫もコクリと頷いて言う。

 

「魔法を跳ね返した彼、風紀委員じゃないけど何者なの?」

「九島悠馬。老師のお孫さんで生徒会役員」

「えぇっ!?あの老師の!?だったら、魔法を跳ね返したりするのも納得かも・・・」

 

 悠馬さんの凄さは、老師の孫というだけで納得出来てしまう。

 しかも、実技は深雪を抑えて悠馬さんがトップ。筆記試験で足を引っ張らなかったら今年の総代は深雪じゃなくて悠馬さんだったらしい。

 

「それで、風紀委員の方の彼はニ科生なんだ」

 

 エィミィが視線をずらした先にある達也さんの制服を見て、そう口にした。

 なに・・・エィミィもニ科生のくせにとか言うつもりなんじゃ・・・

 

「でも、キリッとしてて、なんだかイイ感じ。知り合い?」

 

 あれ?てっきり、達也さんを貶すと思ったのに・・・

 

「う、うん。新入生総代の深雪のお兄さん」

「えっ!?あの究極美少女の!?それなら、カッコいいのも納得だよ!」

 

 どうやら、達也さんの容姿に関しては、深雪のお兄さんである事で得心が行ったみたい。

 

「2年生?3年生?」

「1年生」

「あれで同学年。なら、只者じゃないね」

 

 確かに、達也さんは私達の同い年の筈なのに年不相応な程に落ち着いているっていうか大人びている。初対面の時に制服を着てなかったら、社会人と間違えてしまっても何らおかしくはないと思う。

 

「もしかしたら、司波さんのお兄さんが狙われたのは、やっかみかも」

「えっ?何が?」

「かっこいいお兄さんを僻んだんだよ。1年生の癖に生意気だ。やっちまえって。こういうのはありがちだし」

「嫉妬で闇討ちなんて卑怯過ぎるよ!許せない!!」

 

 そんな理由で達也さんに魔法を放とうとしたなんて信じられない。

 

「理解出来ない」

 

 雫も私と同じ考え方で、達也さんが狙われた理由が理解出来ないみたい。

 

「そうだ!こんな理不尽、許してはならんぞ!!」

「でも、具体的にはどうする?ほのか」

「うーん・・・悠馬さんが生徒会役員だから、今回の件は生徒会に知られるよね」

「悠馬さんが今回の件を生徒会に話したらね」

 

 私と雫はふと、今回の件を生徒会が知った時の事を想像した。

 そして・・・

 

「今回の件、深雪が知ったら・・・」

「うん・・・」

 

 私と雫は、どちらも生徒会が寒波に見舞われる場面が脳内に展開した。

 そして、どちらも行き着く先が空気弾(エア・ブリット)の術者が氷漬けにされる未来だった。

 

「深雪が今回の知ったら、一体、何人の犠牲者が出る事やら・・・」

「えっ!?司波さんって、そんな恐ろしい存在なの!?」

 

 だって、ヴィードって単語を発するだけで教室が氷河期になるくらいだし・・・

 

「でもさ、さっきの人が今回の件を生徒会に知らせたとしても、証拠がある訳じゃないから有耶無耶で終わるかもしれないよ」

「そ、そうかも」

 

 結局、悠馬さんと達也さんは空気弾(エア・ブリット)の術者を追う事が出来なかったから、証拠も何も無い。あるのは、達也さんが魔法で襲われそうになったという事実だけ。

 これじゃあ、悠馬さんが生徒会に知らせたとしてもエィミィの言う通り、有耶無耶になるかもしれない。

 

「だからさ、私達で証拠を押さえない?」

 

 エィミィがにやりと笑って言う。

 

「私達って・・・()()!?」

「そう!」

 

 エィミィが私の方に指を差す。

 

「ほのかと雫と私で少女探偵団、始動よ!」

「えーっ!何それ!?」

「だって、こんなのほっとけないじゃん?」

「それは・・・放っておかないけど・・・」

「でしょっ!?雫は?」

「この問題を放っておけない事に関しては、同感だけど・・・」

()()()?」

「後ろ」

「「ん?」」

 

 そう言われて、私とエィミィは後ろに振り向く。

 

「・・・今は逃げるべきだと思う」

 

 これには、私とエィミィも同意するしかなかった。

 何故なら、話に夢中で私が魔法を解除してしまったから。魔法によって、私達の姿が見えないようにしていたのにそれを解除してしまったという事は・・・

 

「クラウド・ボール部です!」

「射撃やってみない?スカッとするよ!」

「ハイポスト・バスケって知ってる!?」

 

 自分達の部に私達を入部させようと勧誘の嵐が襲い掛かってくる事を意味していた。

 

「ま、間に合ってま〜す!」

 

 こうして、少女探偵団を結成?して最初に行った事は、校門まで全力疾走になったのだった。

 

◇◇◇

 

「全く、お前と居ると本当に退屈しないわ。悪い意味で」

 

 やっぱり、達也はトラブルの神様に愛されてるわ。マジで。

 

「俺だって好きでこんな事になってる訳じゃないからな」

「だからこそ、タチが悪いんだよな」

 

 別に達也がトラブルを引き起こしている訳じゃない。ただ、達也の行く先々でトラブルに見舞われるのだ。

 空気弾(エア・ブリット)事件以降も、達也は魔法で何度か狙われた。その度に、『一方通行』で反射して自爆させていく。お陰で、俺達は検挙数がぶっちぎりでトップとなった。全くもって、嬉しくない。

 

「うん。達也、もう家に引き篭もっちまえよ。ついでに、家も要塞化すれば、お前がトラブルに見舞われる事は無い。つまり、俺もトラブルに巻き込まれる事は無い。understand?」

「何が、understand?だ。何の為に俺が此処に通ってると思ってる」

 

 まぁ、そうなんだよな。

 

「達也の此処に通ってる理由の片割れは深雪も引き篭もりにしちまえば、解決するんだが・・・もう片方がな〜・・・」

「俺の妹を引き篭もりにしようとするな。闇討ちで消し飛ばすぞ」

「それは困る。となると、達也に厄祓いでもさせるしかないか?」

 

 もはや、達也のトラブルに巻き込まれる体質を改善するには、神頼みしか思いつかなかった。

 

「これからも、こんな事が続くようなら深雪とお前も連れて、厄祓いに行くか」

「何で俺もなんだよ。深雪と2人で行けよ」

「俺への嫌がらせだけなら検挙数が常軌を逸した数にはならないんだが?」

 

 そう。検挙数がぶっちぎりでトップになったもう一つの要因は、別に達也の嫌がらせ関係なく、普通に違反行為をしている人達に数多く遭遇したからだ。

 

「それが俺のせいだって言いたいのか。このシスコン野郎」

「少なくとも、俺の肩書きは関係ない。それと、俺は兄として妹を思っているだけであって、シスコンと呼ばれる筋合いは無い」

「それをシスコンって言うんだよ!」

 

 コイツ、シスコンやブラコンを深雪で基準にしてるんじゃないだろうな。あそこまで重度なのは、深雪しか居ないってのに。

 でも、こうして軽口を叩き合わないとお互い、やってられないので、これが冗談だと思う事にしよう。達也は俺に対しては、割と冗談を言う奴だし。

 とはいえ、今日の巡回はもう終了したので、今から生徒会室に帰還。達也も風紀委員の活動報告を提出する為に生徒会室に向かっていた。

 

「で、どっちがインターホンを鳴らす?」

「何故、そんな事をわざわざ聞くんだ。誰が押そうと構わんだろ」

「いや、2人同時に押して、ロマンスの神様が降臨したら大変じゃん?」

「俺とお前の間にロマンスの神が降臨する事は天地がひっくり返ってもあり得ない。それと、ネタが古いボケは辞めろ」

 

 確かに、ネタは古いが有名な曲だろ?しかも、何故かは知らないが、真由美の携帯端末にこの曲あるし。

 結局、インターホンは俺が近かったので、俺が押す事にした。

 

「どうぞ」

 

 真由美の入室を促す声と共にロックが外れた。

 

「ただいま、戻りました」

「失礼します」

「悠馬くん、お疲れ様」

「お疲れ様です!お兄様!」

 

 俺と達也が生徒会室に入ると、真由美が俺、深雪が達也に労いの言葉を掛けてくれた。

 

「悠馬くん、聞いたわよ。達也くんと並んで検挙数No.1だって。お姉さんも鼻が高いわ」

「そう言われても、ちっとも嬉しくない。むしろ、早く帰って家で横になりたい」

 

 賞賛の言葉を掛けられても湧き上がってくるのは疲労だけだった。正確には、嬉しいとは思うものの重度の疲労がそれを掻き消していた。

 てか、疲労と共に無性に眠気が襲いかかってきた。

 

「あぁ、生徒会室にソファがあれば良いのに・・・」

 

 此処にソファがあったら迷わず、ダイブしているだろう。そんでもって、最終下校時間ギリギリまで寝る。

 

「しょうがないわね。ほら、お姉さんの肩を枕にして寝たら」

「やだ。真由美の肩枕は首が痛くなる」

 

 肩枕は背の高い人が背の低い人の肩を枕にして寝ようとすると起きた時に凄く肩が痛くなるからだ。

 しかも、俺と真由美の身長の差は頭一つ分だ。果たして、首が痛くなるだけで済むのだろうか。

 

「何よ。お姉さんのせっかくの好意を無駄にして」

 

 ムキーと真由美が憤慨する。

 

「疲労回復が目的なのに首が痛くなったら本末転倒だろうが」

「それを言われると何も否定出来ない」

 

 否定したくても否定出来ない真由美は、ぐぬぬ顔だ。

 

「だったら、名倉さんに頼んで悠馬くんの家まで車で送って行くわ。それと、肩枕が嫌なら膝枕よ」

「マジ?やった〜社畜並みに働いた甲斐があって良かった〜」

 

 真由美の肩枕は首が痛くなるだけだが、膝枕は極上の一言だ。

 それだけで、疲労が消し飛ぶと言っても過言ではないくらいに。真由美は膝枕は何度か経験しているが、その度に思う。真由美の膝枕よりも良い枕は世界中、何処を探したって見つからないだろうと。

 最後に気分が良くなった俺は達也の方を見ていると、深雪の顔の横に手を当てて、労いの言葉を掛けていた。深雪の幸せそうな表情も相まって、本当に絵になる。この2人の写真集があったら、売り切れが続出しそうだ。なんなら、深雪が保存用・観賞用・実用用で最低3冊は買いそうだ。

 

「市原先輩。本日の風紀委員会の活動報告です」

「お疲れ様です」

 

 風紀委員会の活動報告を市原先輩に提出する達也。傍から見たら大きいメモ帳にしか見えないケースを開き、中に入っているメモリだけを受け取った市原先輩は、メモ帳型ケースを達也に返却した。

 

「しかし、何故、わざわざ、物理メディアを受け渡しするのですか?」

 

 メモ帳型ケースを受け取った達也は市原先輩に疑問に投げかける。

 まぁ、達也が言いたい事は分からんでもない。俺の前世でならともかく、科学がかなり発達したこの時代においては、原始的とまでは言わないが随分と古臭い手法と言わざるを得ない。

 

「正直に言えば、余り意味はありません。単なる習慣です」

「習慣・・・そうですか」

「あら達也くん。不合理だって言わないの?」

「不合理だとは思います。ですが、許容出来ない程ではありません」

「達也くんって意外に融通が効くのね」

 

 うん?なんか深雪の様子が可笑しいような・・・

 

「深雪、どうした?」

 

 どうやら、達也もそれを感じ取ったようだ。

 

「・・・お兄様、正直にお答えください」

「おいおい。穏やかじゃないな」

「お兄様・・・魔法による攻撃を受けられましたね?」

 

 ちょ、深雪。なんでお前、その事を知ったんだ。

 

「・・・受けてはいない」

()()()()()()()()事は、否定されないのですね」

「事実、その通りだからな」

 

 あぁ、達也が魔法による攻撃を向けられた事がバレちまった。

 

「何故、分かったんだ?」

 

 うん。俺もそれは気になる。

 

「妹の直感です」

「なんか深雪が言うと、そう思わせる説得力があるな」

 

 普通だったら、とてもじゃないけど信じられない・・・が、深雪の異常なまでの達也に対する思いを知ってると・・・うん。

 

「でも、直感で分かるものかしら・・・?」

「どちらかと言えば、「女の勘」ですね」

「女の勘だったとしても、凄すぎません?」

「あら、悠馬くん。知らないの?女の勘は時として鋭くなって良く当たるものよ」

「そ、そうか・・・」

 

 女の勘の恐ろしさに俺は、背筋が凍るような寒さを覚えた。

 一瞬、眠気が吹き飛んだが、それも一瞬で終わり、再び眠気が襲いかかってきた。

 とりあえず、椅子に座り、背もたれに身体を預ける事にした俺。これで、寝たらそん時はそん時と腹を括ろう。

 

「何者です?お兄様に刃を向ける不届き者は!」

「深雪」

 

 達也に魔法を向けられたって憤慨する深雪の顔に達也は手を添える。

 

「心配いらない。今回はそこで船を漕いでいる奴が俺に向けられた魔法を反射したが、俺は闇討ちに頼らねばならないような軟弱者に傷つけられるほど弱くはない」

「その通りですが・・・」

 

 それを言われたら、流石の深雪でも反論出来ないよな。

 

「大した自信よね」

「しかし、彼の実力なら納得です」

「まぁ、達也ですから」

 

 達也だから、で大抵の事は解決するからな。この言葉、マジ便利。

 

「勿論、放置しておくつもりもない。正体が分かったら、お前にも教えるよ」

 

 その言葉に深雪は満面の笑みを浮かべ・・・

 

「・・・きっとですよ、お兄様」

「あぁ、必ず」

 

 微笑ましい兄妹の1ページでめでたしめでたし

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とならないのが現実である。

 

「会長1つ頼みたい事があるのですが・・・」

 

 うん?達也、君は一体、真由美に何を頼もうとしているんだ?

 

「何かしら?」

「新入部員勧誘週間が終わるまで、悠馬を貸してください」

「そっか〜俺を借りるのか〜おやすみ〜・・・っておい!」

 

 今ので、眠気が完全に吹き飛んだわ。

 

「どうした。とうとう睡眠欲でおかしくなったか?」

「ツッコミが随分と辛辣ですね、達也さんや。魔法による攻撃を受けてないとか言ったが、精神干渉系魔法でも受けてんじゃねぇの?」

「お兄様にそのような事があろう筈がございません。これは、いつものお兄様です」

 

 深雪さんや。それだと、達也が俺に対して辛辣なのがデフォだと言ってらようなもんなんだが。

 

「で、なんで俺を借りたいんだ?闇討ちに頼らないといけないような軟弱者には負けないんだろ?」

「そうだな。だが、お前が居るとそんな奴等の対処が楽になるのもまた事実だ」

 

 まぁ、反射するから自分で放って自分で傷つく訳だからな。

 

「良いわよ。どうせ、悠馬くんは新入部員勧誘週間の間は外でのお仕事がメインだし。そこに達也くんの護衛が加わっても問題ないわ」

「俺が問題大アリだわ。一体、どれだけ仕事を増やせば気が済むんだ」

 

 巡回の応援をしながら、修理の手配やら苦情の受付も対応させられてるってのに、そこに達也の護衛?俺に過労死街道でも爆走させたいの?

 

「私にセノ○ックを私名義で郵送させようとした罰よ。黙って、私の言う事、聞きなさい」

 

 それ言われちゃ、何も言い返せねぇよ。

 

「お前は何バカな事をしようとしたんだ」

 

 達也が呆れたような目で俺を見る。

 結局、俺は真由美の指示に抗う事は出来ず、新たに達也の護衛という仕事が追加されたのだった。げせぬ

 

◇◇◇

 

「随分と変わった風紀委員の一年生が居ると?」

「はい。1ーEの司波達也。二科生で風紀委員というのもかなりのイレギュラーのですが・・・」

 

 都内某所。此処に居るには似つかわしくない第一高校の生徒と眼鏡を掛けた男性が対談していた。

 

「ほう・・・それは、だいぶ反発を生みそうだね。特にあの特権意識に凝り固まった一科生が二科生に取り締まられるなどプライドが許さないだろう」

「その通りです。さらに、先日の事件が拍車をかけてまして・・・」

 

 第一高校の生徒が言っているのは、達也が剣術部の部員を逮捕した事件の事だ。

 その事件の詳細を第一高校の生徒は、眼鏡を掛けた男性に伝える。

 

「ニ科生とは思えない彼の戦いぶりに生徒の耳目は集まりましたが・・・」

「むしろ、特異なのは高周波ブレードを抑えた波動・・・か」

「そうです。まるで・・・希少鉱石アンティナイトを使用したキャスト・ジャミング・・・」

「・・・高い魔法力や高価なアンティナイトなしに魔法を無効化する技術など社会基盤すら揺るがしかねない」

 

 この時、眼鏡を掛けた男性は思った。

 もし、司波という生徒がそれを実現出来ているとしたら、これ程、我々の計画に都合の良い人物が居るだろうか、と。

 

「しかし、見間違いという事は無いのかね」

「えぇ。そこが気になったので司波を観察していたのですが、決定的な瞬間を掴む事は出来ませんでした。ですが、それとは別に興味深い物を目撃しまして・・・」

「なんだ」

「司波は風紀委員での巡回中に良く嫌がらせを受けており、魔法による攻撃を向けられたのですが、司波と同行していた生徒がそれを時間を巻き戻すかのように跳ね返しまして・・・」

「魔法を無効化させたのではなく、魔法を反射させたというのか」

「はい」

 

 魔法の無効化ではなく、魔法の反射。魔法を無効化する技術はあれど、魔法を反射する技術などは聞いた事が無い眼鏡を掛けた男性は信じられないと言わんばかりに驚いていた。

 

(もし、それが事実ならば魔法の信頼性など無に帰す)

 

 魔法を無効化する技術と魔法を反射する技術。自分達からすれば、喉から手が出る程、欲しい物であった。

 

「その魔法を反射させた者が誰か分かるか」

「はい。1ーAの九島悠馬。実技に於いては、今年の主席入学を抑えて最高評価だそうです」

「九島・・・十師族か」

 

 しかし、魔法を跳ね返したのが悠馬と知り、眼鏡の男性は少しだけ顔を歪ませる。

 一科生な上に十師族となると、自分達とは対極に位置するような人物だからであろう。

 

「司波という生徒の方は、君自身が仕掛けて確かめてくれるか?」

「分かりました」

「さらに、仲間に引き入れられれば重畳だ。その役目は同じニ科生である壬生紗耶香彼女に働いてもらう事にしよう。君の方から伝えておいてくれ」

「分かりました。九島の方はどうしますか?」

「普通に勧誘したところで首を縦に振らないだろうし、魔法を反射するとなれば僕の力も効かないだろう。もし、邪魔になるようであれば、秘密裏に殺すしかない」

「だったら、その役目は私がしましょう」

 

 すると、さっきまでこの場に居なかった人物が突然、姿を現した。

 

「カオス様!」

 

 眼鏡を掛けた男性が片膝を付き頭を垂れる。

 

「どうして此方に」

「様子を見に来ただけですよ。それと、九島悠馬に関しては私に任せてください」

「しかし、カオス様のお手を煩わす訳には・・・」

「構いませんよ。彼には興味があるので。では、私にはやる事があるので、これで・・・」

 

 カオスと呼ばれた男はフッと姿を消した。

 司波達也と九島悠馬。第一高校に在籍する2人の男子生徒が良からぬ者に狙われた瞬間であった。




 如何でしたか?
 達也は原作通り、あの人に。悠馬はカオスなるオリキャラに狙われる羽目になりました。
 なお、そんな悠馬は七草真由美名義でセノ○ックを郵送しようとした事を根に持たれ、社畜ルートまっしぐらです。ま、まぁ、あの後、真由美の膝枕を堪能したでしょうから過労死は免れる事でしょう。
 さて、話は変わりますが皆様は夏休みを如何お過ごしでしょうか。私は夏休みが始まらず、テストに怯える日々でございます。マジで勉強しないと、私の明るい夏休みが暗くなる上に今後が・・・
 これを書き終わったら勉強しなくては・・・
 という訳で、この辺りで締めて今から勉強机と睨めっこしてきます。皆様、良い夏休みを。
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