宇宙戦艦ヤマト2199 白色彗星帝国の逆襲   作:とも2199

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宇宙戦艦ヤマト2202とは別の世界線を歩んだ宇宙戦艦ヤマト2199の続編二次創作小説「白色彗星帝国の逆襲」です。「白色彗星帝国編」、「大使の憂鬱」、「孤独な戦争」、「妄執の亡霊」、「連邦の危機」、「ギャラクシー」の続編になります。


第二章 銀河航路
白色彗星帝国の逆襲15 経歴詐称


 火星――。

 

 それから、移民船団はギャラクシーを出発し、約二週間程で火星宙域に到着していた。

 

 その火星宙域では、山南率いる地球連邦防衛軍、極東管区第二艦隊が待ち受けていた。防衛軍は、ガルマン帝国との初の交戦以来、更なる艦隊の増産を続けていた。防衛軍の艦隊は、全体でも六百隻をゆうに超え、山南の第二艦隊も、六十隻からなる艦隊だった。波動砲を搭載した主力戦艦が二十隻、新造艦のミサイル巡洋艦十隻にも、波動砲が搭載されていた。総数で言えば、二百数十隻が波動砲を搭載するようになり、芹沢が以前軽口で語っていた波動砲艦隊と呼べる程の数が揃っていたのである。

 これならば、どの異星国家が侵略してきても対抗出来る、と芹沢は藤堂に胸を張ったのだ。そして、副大統領から、大統領になったダグラスも、この艦隊を誇り、半年前に式典も行った。

 

 第二艦隊の旗艦アンドロメダでは、山南が退屈そうに艦長席の背もたれに寄りかかって天井を眺めていた。その天井の大型スクリーンには、到着した移民船団が映っている。

 艦長席のすぐ近くでは、極東管区の防衛軍情報部からやって来たという青年が立って、山南と同じ様に天井のスクリーンを見つめていた。その青年は、山南を見下ろして言った。

「山南艦長。そろそろ行きます。移民船団が火星に降りる前に到着しておきたいので」

 その青年、星名は、山南の目を見つめて薄く笑っている。

「いいとも。ギャラクシーにガトランティスが現れたって聞いて、俺たちは警備行動が目的でここに来た。今は、ここを動くわけにはいかんのでね。誰か部下に送らせるよ。……それにしても、さっきの話、本当なのか?」

 山南は、ほんの少しだけ興味を持って尋ねた。星名は、僅かに頷いた。

「ええ。もう少し、確認する必要がありますが」

「火星の新たな市長に、経歴詐称の疑いありか……」

「あまり大きな声では」

「分かってるって。ま、気をつけてな」

 そう言うと、山南は艦内通信のマイクを掴んだ。

「掌帆長、コスモシーガルの発艦準備を頼む。情報部の方々がお出かけだ。航空隊に、誰かパイロットを頼んでくれ」

「了解、艦長」

 

 火星では、移民団の歓迎式典の準備が行われていた。既に新たな火星の都市、マゼラン市は完成し、歓迎式典で登壇する連邦政府の外務長官ライアンが、市庁舎で待機していた。もともと、ダグラス大統領が来る筈だったが、ギャラクシーでのガトランティス出現の報を受けて、それは見送られた。

 ライアンは、市庁舎の最上階の市長の執務室で、窓から見えるマゼラン市の様子を眺めていた。

 大小の建築物が建ち並んでおり、急ごしらえで開発を行った割には、立派な眺めである。地平線の彼方には、巨大な山脈、オリンポス山が雄大な景観を支えていた。空は青空で、雲ひとつ無い、正にこの日の事を祝福しているかのようだった。

 ライアン外務長官を警護する為、工事を手伝っていた山本もそのまま居残り、彼のすぐ近くで感慨深くその都市を見つめていた。ここは、かつて彼女が住んでいたアルカディア市のすぐそばであり、その感慨もひとしおだった。故郷の地の復興を、こうして手伝えた事を、彼女は誇りに思っていた。その彼女も、防衛軍情報部が護衛部隊を派遣して来れば、ライアンの警護任務も終了となる。

「如何ですか、長官。ガミラスの方々にも恥ずかしくない都市になったと思いませんか?」

 ライアンの横には、いつの間にか市長の桂木透子がそっと並んで立っていた。彼女は、長い黒髪を弄りながら、誇らしげに言った。その彼女の更に隣には、ガミラス大使のランハルト・デスラーの姿もあった。

 ライアンは、にこやかに二人に顔を向けた。

「ええ。都市開発の指揮をとって頂き、これだけの街を作って頂いたことに、連邦政府として感謝しています。デスラー大使も、ガミラスの方々が過ごしやすい設備などのアドバイスを頂いたと伺っています。本当に助かりました」

 ランハルトは、穏やかな表情で応じた。

「当然の事をしたまでだ。彼らの今後の暮らしを支えられないのが、少し残念だがな」

 透子は、微笑してランハルトの方を向いた。

「退任されるんですってね。残念ですわ」

 ライアンも彼の方を向いて言った。

「これまでの、両国政府の橋渡し、政府も感謝しています。送別会を行いますので、時間を作って頂けますね?」

 ランハルトは、憑き物が落ちたように素直に頷いた。

「ありがとう。こちらこそ、これまで我がガミラスとの友好関係に尽力してくれたことを、心から感謝している」

 山本は、不思議そうな表情でランハルトの様子を見守っていた。いつもの慇懃無礼な態度が影を潜め、殊勝な態度でいるのが意外だったからである。

 視線に気がついたランハルトは、山本を少し睨んで言った。

「何だ?」

 どうやら、そうでもないらしい――。

 山本は、目を閉じて微笑した。

「言いたいことがあるなら、はっきりと言え」

「いいえ。大使がガミラスに帰ると、寂しくなります」

「ふん。心にもないことを」

 山本は、真面目な顔をして言った。

「そんなことはありません。大使は、私の命の恩人ですから」

 ランハルトは、冥王星で銃撃戦の末、彼女を救い出した時の記憶を辿った。ガミラス人が人質にした彼女は、絶対に守らねばならなかった。そして、大使として、ガミラスと地球人が仲違いするようなことが、これ以上、あってはならないと、あの頃は必死だった。

「そんなこともあったな。もう何年も前のことだ……」

 透子は、そんな二人のやり取りをうっすらと笑みを浮かべて見守っていた。

 ライアンは、壁に掛けられた時計を見て言った。

「山本一尉、そろそろ情報部が来る頃だ。護衛任務、感謝する」

 山本は、ライアンに敬礼した。

「ありがとうございます。では、部屋の外で待機して、情報部が到着したら部隊へ戻ります」

 

 山本が市長の執務室の外に出ると、廊下で空間騎兵隊の斉藤が、永倉志織と二人で待機していた。

「隊長、そろそろお役御免だ」

 斉藤は、少しおどけて言った。

「何だ、もう終わりか」

 永倉は、山本を見つめて尋ねた。

「情報部の護衛部隊って、どんな奴が来るんだい? 空間騎兵隊のあたしらより、強そうなのが来るんだよね?」 

 山本は、星名が来る事を知っていたので、少し笑って言った。

「それはどうかな。まぁ、ヤマトの保安部で、優秀だった男がリーダーだ。安心してくれ」

 そんな話をしている所へ、その星名が、三名程の部下を連れてやって来た。

「山本一尉、久しぶりですね。我々が交代するので、引き継ぎをお願いします」

 斉藤と永倉は、予想外な優男が来たので拍子抜けしていた。

 しかし、星名は、二人を確認すると言った。

「斉藤さん、それに永倉さんですね。クーデター事件以来ですね。斉藤さんとは、あの時は通信機越しでしたから、お会いするのは、これが初めてですね」

 クーデター事件と聞いて、斉藤は自分の部隊の空間騎兵隊の若者が反旗を翻した忌々しい出来事を思い出していた。言われて見れば、何となく聞き覚えのある声だった。

「そうか、あんときの!」

 星名は、にこりと笑っていた。

「そうか、クーデターの首謀者たちを強襲して、無事大使たちを救出したんだったな。すまん! 人は見かけで判断しちゃあいけねえな」

 見かけ、と言われて星名は、苦笑いした。似たようなことをよく言われるからだ。

「お気になさらず。では、引き継ぎをお願い出来ますか?」

 山本は、執務室にいるメンバーが誰かと、これからの予定について説明した。

 星名は、山本に礼を言うと、部下に配置につくように指示した。

 それが終わった後、星名は山本に囁いた。

「山本さん。これは内密にして頂きたいんですが……」

 山本は、怪訝な表情で頷くと、星名に体を寄せた。

「実は、情報部は、市長の桂木さんの素性を調査しています」

 山本は、少しだけ驚いて尋ねた。

「どうして?」

 星名は、声を潜めて話を続けた。

「日本では、ガミラス戦争の時に、遊星爆弾で完全に戸籍が失われた地域があちこちにあります。それを利用して、経歴を詐称して、犯罪を起こす者が今でもいるんです」

「市長が、そうだと言うの?」

「まだはっきりした訳では……。しかし、どうも辻褄が合わない点がいくつか。死亡したと記録されていた彼女は、数年前に実は生きていたと名乗り出て、突然政治活動を始めて、あっという間に今の立場にまで上り詰めました。優秀な女性であることは確かなんですが、情報部としては、立場が立場なので、調査を始めたんです。そこで伺いたいのは、彼女に、何かおかしな言動などはなかったか、と言うことです」

 山本は、ため息をついた。

「ごめん。彼女のことは、あまり話したこともないから、よく知らないんだ。デスラー大使とは、熱心に色々打ち合わせしていたのは知っているけど、それは仕事上当然のことだし……」

 星名は、頷くと山本から離れて、わざと大きな声で言った。

「では、これで交代します。お疲れ様でした!」

 星名は、山本と斉藤たちに会釈すると、執務室に入って行った。

 山本は、彼の話を頭の中で反芻して、少しぼうっとしていた。

「あんたは、どうする? 俺たちは、式典を見物してからもどるが」

 山本は、斉藤と永倉の顔を眺めて考えた。何となく、嫌な予感がしたからだ。

「では、私もそうしようかな。同行してもいいか?」

「構わないよ。じゃあ、会場に行ってようか」

 そうして、彼ら三人は、廊下を歩いてその場を去って行った。

 

 執務室に入った星名は、ライアンとランハルトと握手を交わして挨拶をした。

「よろしく頼む。移民団には、イスカンダルの特使もいるんでな。彼女たちの警護も頼むぞ」

 ランハルトにそう言われた星名は、再びユリーシャに再会することになるのを思い出した。今までも何かあった訳ではないし、これからもあってはならない。それでも、彼女が潤んだ瞳で見つめてきたのを思い出すと、少し胸が痛んだ。

 気を取り直すと、星名は透子にも笑顔で握手をした。

「市長、ここからは、我々情報部が、御三方の警護を行います。申し訳ありませんが、ここからは、我々の指示に従って行動して下さい。よろしくお願いします」

 透子は、握った手を離すと、その手をじっと見つめている。そして、星名の方を見ると、笑顔で言った。

「星名さん。ではよろしくお願いしますね」

 星名は、会釈すると、他の部下と共に、扉近くに下がった。

 だが、急に星名は強烈な違和感に襲われた。

 僕は、いつ名乗っただろうか……? たまたま、名前を知っていたのだろうか……?

 

続く…

 




注)pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開、または公開を予定しています。
注)ヤマト2202の登場人物は、役割を変更して登場しています。

参照1 ライアン外務長官について
白色彗星帝国編5 新たなる旅立ち
https://syosetu.org/novel/210483/5.html

参照2 星名とユリーシャについて
大使の憂鬱3 地球の休日
https://syosetu.org/novel/212007/3.html
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