宇宙戦艦ヤマト2199 白色彗星帝国の逆襲   作:とも2199

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宇宙戦艦ヤマト2202とは別の世界線を歩んだ宇宙戦艦ヤマト2199の続編二次創作小説「白色彗星帝国の逆襲」です。「白色彗星帝国編」、「大使の憂鬱」、「孤独な戦争」、「妄執の亡霊」、「連邦の危機」、「ギャラクシー」の続編になります。


白色彗星帝国の逆襲17 火星宙域の死闘Part1

「……私は、市長として、地球人と、マゼラン銀河の方々とが、共に手を取り合えるよう、この身を捧げるつもりです」

 歓迎式典の壇上で、そこまで語った透子は、急に黙り込んだ。演台に手をついた姿勢のまま、その沈黙は数秒間続いた。そのせいで、次第に会場がざわめき始めた。

「どうしたのかしら?」

 サーシャは、演台に立つ透子の横顔を見つめた。彼女は、目を閉じたまま動かない。

 不安になったユリーシャは、出来るだけ見ないように努力していた星名の方を思わず見てしまった。その星名と、ユリーシャは目があった。

 その彼も、この状況に違和感を感じていた。体の奥で、何か危険を感じ取っていたのだ。そして、ユリーシャの方を思わず彼も見てしまっていた。

 何かがおかしい……!

 同じ時、透子の異変に気づいたランハルトは、いち早く彼女に近づき、その肩を掴んで少し揺すった。

「桂木市長? いったいどうした? 具合でも悪いのか?」

 彼女は、ゆっくりとランハルトの顔を見ると、小さな声で言った。

「逃げて……」

 ランハルトは、大きく目を見開いた。

「いったい、何から……?」

 星名は、ふらついている透子のそばに寄ると、ランハルトに目配せして、彼女を壇上から下がらせようと背を押した。ランハルトは、奥の方へと連れて行かれる透子の方を心配そうに見ながらも、会場のざわめきを収めるのが先だと考えて、前を向いた。

「皆さん。市長は、この日までの準備で多忙だった為、少々体調を崩したようだ。最後に、イスカンダルからの特使のお二人にもご挨拶を頂く。済まないが、静粛にお願いしたい」

 ランハルトは、イスカンダル姉妹に会釈して、演台に促した。生き返ったサーシャとも、そのことで色々と話したかったが、それも、このイベントが終わってからと考えていた。

 サーシャは、ユリーシャと共に演台の前に立つと、話を始めようとした。

 しかし、何かに気がついた二人は、ゆっくりと頭上を見上げた。

 透子に続いて、二人の様子がおかしいので、ランハルトも訝しげな表情で、同じ様に頭上を見上げた。

 会場に集まっていた地球人たちも、同じ様に上を見上げた。

「見ろ、ガミラス人が持って来たあれが、割れているぞ!?」

 頭上に新たに現れた小さな点にしか見えなかったそれは、確かに複数の点に分かれているようだった。

 それを見たランハルトは呟いた。

「浮遊大陸が……割れた?」

 

 火星月軌道上の浮遊大陸は、大きくひび割れたかと思うと、中心からばらばらに分解していた。

 そこには、複数の光が瞬き、巨大な人工物が中から現れた。浮遊大陸だった岩石を押しのけ、その物体はロケットを噴射すると、ゆっくりと起き上がるように逆円錐形の形を顕にし始めた。

 そして、その物体だけでなく、宇宙艦と思しき物体が、岩の中から複数現れた。

 ランハルトの護衛艦隊と、ネレディアの移民船団護衛艦隊は、それぞれ戦闘態勢を整えている最中にそれを確認した。

「ガゼル司令……! ガトランティスです!」

 彼らの眼の前に、それまで何度も目撃されたガトランティス艦隊約二十隻が展開していた。そして、ギャラクシーで目撃されたという巨大な新型艦が中央に鎮座していた。

 ネレディアは、クロッツェ艦長に叫んだ。

「どういうことだ!! なぜあのようなものが、浮遊大陸に入っていたのだ!?」

 クロッツェは、真っ青になりながら考えた。

「あれは、本星の外殻を削り出したものを、他の星系に運んでエンジンを据え付けたりする改造を施したものです。その星系で中に入れられたとしか思えません。我々はずっとあれと一緒にここまで来ました。我々が受け取る前のそのタイミングしか、紛れ込むチャンスがありません」

 ネレディアは歯ぎしりした。

「ならば、その星系の奴らが、ガトランティスに協力したということか……? 私を騙して、あれをここまで運ばせたということか!!」

 ネレディアは、わなわなと震えていた。

「ゆ、ゆるさん……!」

 ランハルトの護衛艦隊では、ガゼル提督がガトランティス艦隊を鋭い眼光で睨んでいた。

「バルデス! 艦載機の発艦準備!」

「りょ、了解!」

 その時、そのガトランティス艦隊から、映像通信が入って来ていた。ガゼルは、腕を大きく振って言った。

「繋げ!」

 映像には、筋肉質の巨体をした、頭頂に髪のない、凶暴そうな顔つきをしたガトランティス人の男が映っていた。

「我が名は、ガレン。我が全能なる、女帝ズォーダーの命によりここへ来た。汝らに選択の時が来た。降伏し、今すぐにイスカンダル人を差し出すか、それとも死か!」

 ガゼルとネレディアは、その通信の言葉を聞いて驚愕した。

「女帝……ズォーダー、だと……?」

 その映像は、付近で待機していたアンドロメダでも受け取っていた。山南は、通信用マイクを掴んで言った。

「第二艦隊全艦に通達! 全艦戦闘配置で接近せよ!」

 第二艦隊は、エンジンを始動して、ゆっくりとガトランティス艦隊の方へと接近を始めた。

 ランハルトの護衛艦隊の空母ダレイラでは、ガゼルが映像越しにガレンを睨みつけた。

「本物のズォーダーの代わりに、誰か女を指導者にしたということか? 何を言っておるのか分からんな。貴様らは、我軍に敗北して、僅かに生き残った残党。もはや何の力もあるまい。降伏するのは、貴様らの方だ!」

 映像の中のガレンは、不敵な笑みを浮かべた。

「ならば、見せてやろう。我軍の科学奴隷が作り出した、このゴルバの力を!」

 逆円錐形の物体、機動要塞ゴルバは、側面に円を描く様に複数の膨らみがついた箇所を、回転させた。そして、その一つが火星の地表に向けて、膨らみの部分が開いた。

 そして、内部に青白い光が煌めくと、間髪をいれずに大きな光の束が放たれた。その光の帯は、宇宙から真っ直ぐに伸びて上空の雲を押し退け、地表に到達すると、そこに大きなオレンジと灰色の膨らみを生じさせた。

 

 地上にいた歓迎式典に参加していた者たちも、オリンポス山の向こう側に、光の帯が落下し、青空が一瞬にして、オレンジ色に染まるのを目撃した。地響きがしたかと思えば、その数秒後には、地面が大きく揺れた。

 人々は、口々に悲鳴を上げて地面に座り込んで騒然としていた。

「大丈夫ですか!?」

 ランハルトは、他の人々と同じ様に、立っていられずに、壇上でしゃがんだサーシャとユリーシャに駆け寄った。

「ランハルト、私たちは大丈夫。それよりも、皆さんをここから逃さないと……」

 ランハルトは、ユリーシャにそう言われて途方に暮れた。

 逃がすと言っても、何処へ逃せばいいのか……。

 その頃、警備の一人が星名へ報告していた。

「隊長、今の騒ぎで輸送船を無断で下船したガミラス人を見失いました」

 星名は、透子とともに、床に伏せていたが、すぐに立ち上がると言った。

「分かった。今は、皆んなを避難させる方が優先だ。ガミラス政府の輸送船を使おう。市民をそちらに誘導する!」

「分かりました。隊員を集めます!」

「俺たちも手伝うぞ!」

 星名の目の前には、いつの間にか空間騎兵隊の斉藤と永倉、そして山本が集まっていた。

 演台に走った斉藤は、そこにあったマイクを掴んだ。

「皆んな、落ち着いて聞いてくれ! 上で何か問題が起きたらしい。詳しくはこれから確認するが、まずは避難が先だ。すぐ近くに駐機しているガミラスの輸送船に避難する。これから、警備の者が誘導するから、指示に従ってくれ!」

 山本は、ガミラス移民団の代表のテリシアに駆け寄った。

「テリシアさん。全員、一時輸送船で避難させたい。発進準備をするように連絡してくれませんか?」

 テリシアも、床に座ったまま、酷く狼狽していたが、その言葉を聞いて立ち上がった。

「分かりました。すぐに連絡を取ります」

 星名は、部下に市民らの誘導を指示したあと、アンドロメダへと連絡した。彼には、何が起こっているか知る必要があった。その彼の足元で、透子はまだぼんやりした様子で空を眺めていた。

 

 火星の成層圏の上では、先程の攻撃を、科学士官が分析していた。あの攻撃が、地上のマゼラン市に、もし命中すれば、地表にいる地球人やイスカンダル人や、移民団のすべての命が一瞬で奪われるであろう事は、火を見るより明らかだった。

 スクリーンに映ったガレンは、高笑いを始めた。

「見たか、このゴルバの威力。わかっただろう、どうするべきか。さあ、選ぶのだ!」

 ガゼルは、歯噛みしてガレンを見た。

「イスカンダル人を貴様らに引き渡すなど、我々ガミラス人がする訳がなかろう! どちらも選ばぬ! 何故なら、ここで貴様が死ぬのだからな! バルデス回線を切れ! 艦載機を全機緊急発艦!」

 戦闘空母ダレイラの飛行甲板から、既に発艦準備を整えていた攻撃機隊が次々に上がっていった。

「戦闘機隊のルカ少尉、出ます!」

 攻撃機を援護する戦闘機隊の隊員として、ルカも発艦して機体をガトランティス艦隊へ向けて飛び立った。

 ガゼルは、ネレディアへも通信を繋ぐ様に指示した。

 スクリーンに出たネレディアは、少し、青ざめた表情をしていた。

「リッケ大佐。よく聞け。我々は、ランハルト・デスラー大使の護衛艦隊だ。あやつは、いつかガミラスの指導者になる逸材。決して失う訳にはいかぬ。これより、我々は、大使護衛の為、あのでかいのを片付ける。でかいのの周りにいる、ガトランティスのハエどもは、お前に任せる。頼むぞ」

 ネレディアは、提督ガゼルに気合を入れられ、口もとを緩めてガミラス式敬礼で応えた。

「ザー・ベルク!」

 ネレディアは、通信を切ると、クロッツェ艦長にすぐに命じた。

「艦長、艦載機を全機発艦させ、ガトランティス艦隊を攻撃させろ! 敵の陣形が崩れたら、駆逐艦と巡洋艦の砲撃で、ガトランティスを殲滅する! 始めろ!」

「はっ!」

 

 アンドロメダが率いる第二艦隊は、戦闘が始まった宙域に急行していた。既に、戦闘機と、艦船が発射した陽電子砲のビームが入り乱れていた。

「全艦、砲雷撃戦用意! 南部、合図したら、アンドロメダの主砲発射だ。それを号令として、全艦であの大きなやつを砲撃で沈める!」

「了解!」

「佐藤! 防衛軍本部の土方総司令に連絡! 我々は、これより、地球人と移民団の生命を守る為、警備行動から防衛行動に移る。念の為、波動砲の使用許可を求めてくれ」

「分かりました。すぐに連絡します!」

 

 戦闘機をすべて発艦し終わった戦闘空母ダレイラは、飛行甲板に砲台を露出させた。そして、護衛の駆逐艦と艦載機群とともに、機動要塞ゴルバへと突撃を開始した。

 先行してゴルバに接近していたルカが操る戦闘機は、僚機とともに、大きく弧を描くと、要塞の上部から肉薄しようとしていた。しかし、ゴルバの上部から、対空砲の弾幕が展開し、味方の戦闘機や攻撃機が、次々に撃墜されていった。

 そのルカ自身も、懸命に攻撃を避けながら機体を接近させていた。ゴルバからの対空砲の弾幕は激しく、遂に彼女の機体も被弾して、右の翼をもぎ取られてしまっていた。

「あ、あれでは近寄れない……!」

 彼女は、戦線を離脱する為、歯を食いしばって機体の制御をおこなった。

 彼女は、機体を何とか反転させて離脱に成功して振り返ると、僚機が次々に被弾するか撃墜されて行くのが見えた。

「あ、あれは隊長の機体……! 何てことだ……」

 ルカの機体は、そのまま火星上を漂っていった。

 その頃、空母ダレイラでは、ガゼルが命令を発していた。

「全艦、要塞に向け一斉砲撃開始!」

 

 機動要塞ゴルバでは、ガレンが呆れたような表情で、ガミラス艦隊を見つめていた。

 ガミラス艦隊の激しい攻撃がゴルバに命中し、艦内はぐらぐらと揺れていた。

「女帝からは、どうしても、イスカンダル人を拉致するのが難しければ、殺しても構わんと指示をされている。取引など面倒だ。あの惑星を攻撃して、仕事を終わらせるぞ!」

 ゴルバの乗組員は、ガレンの命令を受け、火星攻撃の準備に移った。

「回転砲塔、次弾発射用意!」

 ゴルバの側面にある回転砲塔は、大出力のレーザーを照射するものだった。この兵器の欠点は、使用後に十分程度のチャージが必要で、連射が不可能なことだった。これを補う為、複数の砲門を設けて、個別にチャージすることを可能にし、これを回転させることで連続砲撃を可能にしていた。この装備を実現するため、ゴルバの艦体は、砲塔部分が非常に大きくなり、逆円錐形の形状を取ることになったものだ。

 それは、回転すると大出力の砲を発射しようと砲門を開いた。

 これを空母ダレイラでも確認していた。

「敵要塞、先程の砲を撃とうとしている模様。今度は、マゼラン市に狙いをつけています!」 

 ガゼルは、砲撃手に叫んだ。

「あの砲門に集中砲撃!」

「駄目です! 射線上に、敵味方が入り乱れていて、これでは当たりません!」

 ガゼルは、肩を怒らせて考えた。

 このままでは、間に合わん。ランハルトもイスカンダル人も、守らねばならないすべてを失ってしまう……!

「バルデス!」

「はっ!」

 一瞬だけ、躊躇したが、ガゼルは指示を発した。

「あの砲門の目前にジャンプしろ! 奴に撃たせてはならん!」

 バルデスは、大きく目を見開いたが、にやりと笑った。

「司令、承知しました! 緊急ジャンプだ! あの砲門の前に出ろ!」

 ガゼルは、小さな声で言った。

「すまんな、皆……」

 

 ゴルバでは、ガレンが冷酷に命令を下していた。

「撃て!」

 回転砲塔の砲門の光が大きくなり、大出力のレーザーが放たれた。

 しかし、その瞬間、砲門の目前に、空母ダレイラがワープで現れた。放たれたレーザーは、ダレイラに命中して、その艦体が大爆発を起こした。

 ゴルバの艦内は、その瞬間大きく揺れた。

「どうした!? 何が起こっている!?」

「回転砲塔の目前にガミラス艦が出現し、爆発しました。回転砲塔の内部が大破して、周囲の砲塔が四門吹き飛んだようです。隔壁を閉鎖して、消火にあたらせます!」

 ガレンは、憎々しげに持っていた大剣を床に叩きつけた。

「回転砲塔は、まだ使えるのか!?」

「残りの八門は健在です。しかし、回転機構が動作しません!」

 ガレンはにやりと笑った。

「側面のロケットで、艦ごと回せ! もう一度、回転砲塔で地上を攻撃しろ!」

 

 空母ミランガルでは、ダレイラ撃沈の報を受けていた。

「なんだと……? ガゼル提督が亡くなったというのか!?」

 艦長のクロッツェは、沈痛な面持ちでネレディアに伝えた。

「はい、間違いありません。護衛艦隊の残存艦艇から、リッケ大佐の指揮下に入れてほしいと打診がありました」

 艦橋のスクリーンには、ゴルバの側面が被弾し、大きな穴が開いている様子が映っていた。そのゴルバは、側面のロケットに点火して、位置取りを変えているのが見て取れた。

「奴は、また撃つつもりだ。提督の死を無駄にするな! あの要塞に、全艦を突撃させろ!」

 しかし、ガトランティスの艦隊が周囲を固め、思うように前に進むのは困難だった。ガトランティス艦隊の排除自体は問題が無かったが、それではゴルバの攻撃を防ぐのに間に合いそうも無かった。

「こ、このままでは……!」

 ネレディアは唇を噛んだ。

 彼女たちの目の前で、ゴルバは停止し、新たな無傷の砲門を開いていた。

 

 ガレンは、攻撃準備が完了したことを受けて、再び砲撃手に命じた。

「今度こそ、命中させろ! 撃て!」

 そして、再び回転砲塔から、大出力のレーザーが発射された。

 

続く…




注)pixivとハーメルン、及びブログにて同一作品を公開、または公開を予定しています。
注)ヤマト2202の登場人物は、役割を変更して登場しています。

参照1 ガレンについて
ギャラクシー6 ガトランティスの残党
https://syosetu.org/novel/215852/6.html

参照2 ルカ少尉について
連邦の危機5 中立地帯
https://syosetu.org/novel/213828/5.html
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