ソードアート・オンライン 全プレイヤーの裏切り者   作:眠猫の玉手箱

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お気に入り登録してくださった方ありがとうございます。

原作キャラの過去についての捏造があります。苦手な方はご注意ください。

今回短めです。


いつから相談者が可愛い女の子だと錯覚していた?

 喫茶店内は、一言で言い表すのなら現代風であった。カウンター席に囲まれるようにして店主(もちろんNPCだ)が座り、飲み物片手に何か日本語で書かれた雑誌のようなものを読んでいる。

 

(日本語?)

 

 アインクラッドでは、日本語で書かれた書物は滅多に存在しない。理由は単純。茅場が世界観にそぐわないという理由で禁じたからである。もちろんクエスト進行に必要なモノや、飲食店のメニュー表などと言った例外は多いが。流石の茅場もプレイヤーに対して一から自作のオリジナル言語を習得させる気はなかったようである。

 

 つまりこれは、俺も知らない何らかのクエストの開始のフラグの可能性もあるのだ。カデコによる自動クエスト追加機能が働いたのだろうか? 経験則上、飲食店始動のクエストは報酬が2重の意味で"美味しい"ことが多いので、ナナの相談が済んだらクエストがないか調べてもいいかもしれない。

 

「とりあえずカウンターでいいか」

 

「いや、奥に行って」

 

 奥? 確かに言われるまで気がつかなかったが、大型の観葉植物に隠れるようにしてテーブル席もあるようだ。

 

 言われるがまま俺が先導する形で進んでいき......

 

 

 

「おう、来よったか」

 

 キバオウがいた。隣にはタケもいる。なんで?

 

「......あの彼らは?」

 

「まぁいいからいいから」

 

 半ばナナに押されるような形で座る。ナナもしれっと俺の隣に座ってくる。このテーブル席反対側が観葉植物に専有されていており、席を立つにはナナをなんとかしてどかさないといけない状態だ。

 

 そしてアインクラッドにおいて他のプレイヤーを強引に動かすことはできない。

 

 ......あれ、俺詰んだ?

 

 可愛い女の子に誘われて、喫茶店に入ったらガラの悪い男が二人______これ後で何らかの商品を買わないと解放してもらえないやつでは?!

 

いやまぁ待て待て。相手は仮にも攻略組の一員だ。流石にそんな露骨なことはしないだろう。なんてったってキバオウはβテスターの排斥をしようとしていたし、タケは塩ラーメンを盾に煽ってくる男だ......すごくダメな気がする。

 

 しかも今の俺の名前である"マクラギ"で、キバオウとそのツレに軽いソードスキルについての指南もしたことがあり、βテスターであることがバレている......こんなことになるなら別のプレイヤーネームを考えるべきだったか。

 

 いや待て、指南をしたといっても一ヶ月も前のことだ。しかもその直後に茅場が好き勝手したせいで、対比例で俺の印象は薄まっているはずだ。

 

 それ以降は"ウリエル"として活動していたため、"マクラギ"としてはキバオウとは一切接点がない。

 

 つまり何が言いたいとかというと......向こうが忘れている可能性がある、いやむしろそれしかない!

 

「初めまして、マクラギといいます」 

 

「いや、久しぶりや。ワイや、ワイ。キバオウや」

 

 悲報。ばっちし覚えられていました。そんな一ヶ月も前のことなんか忘れてくれていいんですよ?

 

 とは言え、これですっとぼけることは意味がなくなった。

 

「あなたが、あのキバオウさんなんですか?! 活躍は聞いてます。最近は遂にあのフロアボスを倒したんだとか。ご無事でなによりです」

 

「ディアベルはんの犠牲や余計な横やりもあったがな。なんとか無事でやれとる。マクラギはんも無事でよかった」  

 

 横でナナがこの二人面識あったの?! と驚いていたので、茅場のデスゲーム宣言前にちょっと色々あってな。と言葉を濁して伝える。

 

「ほんで、マクラギはんにここまで来てもらったのには理由がある。マクラギはん最近は鍛冶屋として活動しているのは、そこのナナはんから聞いとる」

 

 情報源お前かナナ。余計なこと言いやがってと思い、横目でにらむが当の本人は全く気にしている様子はない。

 

「ごたごたした言葉は嫌いやからな、直球に言おう。()()()()()()()()?」

 

 キバオウからの誘いに思考が止まる。このような誘いを全く予想していなかったと言えばうそにはなる。

 

 アインクラッドを攻略するためには俺のような鍛冶屋、ナナのようなポーション屋などの生産職は必須だ。にも関わらず現状のアインクラッドにはほとんど生産職は存在しない。

 

 理由は色々あるだろうが、俺が思うに一番の原因はこれがデスゲームだからだ。

 

 持ちうる全てを用いて生存に専念してさえ死ぬ可能性がある世界で、直接的な戦闘にほぼ関与しない生産職スキルを取ろうとするプレイヤーはなかなかいないだろう。

 

 生産職を取るにしても、もう少しレベルがあがりスキルスロットが解放されてからでいいと思うプレイヤーが大多数なハズだ。

 

 故に生産職は貴重である。だからこそ、攻略組からの誘いはその内来ると踏んでいたが......

 

(ここまで速いとは......)

 

 まさか2層。この時点で誘いがあるとは思わなかった。

 来るとすれば10層以降、NPCの生産職が明らかにその層の適正レベルを下回るころだと思っていたが。

 

「キバオウさんは俺になにをしてほしいんですか」

 

「ワイらは今、"生産部"って言うのを作ろうとしとるんや」

 

「生産部」

 

 キバオウに言われた言葉をそのまま反復する。

 

「まぁその名の通り、生産職の人達だけで集団______ギルドを作ろうって話です。」

 

 とここで、横のタケが説明を加え、申し遅れたけど俺はタケっていいます。と簡単な自己紹介をする。知ってるさ。(ウリエル)は。

 

「今のアインクラッドには生産職が足らん。今のうちから生産職を育てておかんと後々大変なことになる気がするんや」

 

「生産部に入ってくれるなら俺達、'アインクラッド解放隊'がサポートします」

 

「サポートというのは具体的に言うと」

 

「ワイらが手に入れた素材をなるべく安価でそっちに回そうと思ってる。」

 

 ......決して悪い話ではない。それがここまで話を聞いた感想だ。攻略組との接点はこの先鍛冶屋として攻略に携わっていくには重要だ。

 

 だが、話をどっちに転がすにしろ確認しておかなければならないことが3つほどある。

 

「それはキバオウさん達()()に鍛冶スキルを使えということでしょうか?」

 

「そこまでは言わんが、多少は優遇してもらいたいところではある」

 

 いくらなんでも独占までは言わないか。もしその条件を出されていたら全力でお断りの返事をしていた。多少の優遇は向こうからしてみれば当然の条件だ。"多少"がかなり曖昧な表現であることはこの際目を瞑ろう。

 

「では次の質問を。生産部を立ち上げるとのことでしたが、それは独自のギルドを立ち上げるということなのでしょうか、それとも'アインクラッド解放隊'の中の一部門としての活動になるのでしょうか」

 

「とりあえず今のところは'アインクラッド解放隊'の一員として活躍してもらおうと考えとる」

 

 うーん。そっちか。よく言えば、アインクラッド解放隊(以後長いので解放隊と呼称)への優遇に関して分かりやすい理由付けにもなる。が、悪くいってしまえば解放隊の意向に左右されやすいということだ。とりあえずこの件は保留だ。

 

「では最後に一つ質問を。()()β()()()()()()()。キバオウさんはβテスターについてどう思っていますか」

 

 俺のカミングアウトにナナとタケは微かに動揺した。βテスターとそれ以外のプレイヤーとの確執は激しい。特にキバオウは反βテスター筆頭であるのは誰もが知ってる有名な話だ。

 

 キバオウは、一瞬口を閉ざし......静かに語り出した。

 

「マクラギはんに一緒にソードスキルを教えてもうたアイツおぼえとるか」

 

「ええまぁ。キバオウさんよりも先にソードスキルを発動できた人ですよね」

 

「そや。昔っからアイツはワイよりもゲームが上手くてな。ス〇ブラやP〇BG、どんなゲームでもワイよりもすぐに上手くなった。けどな、」

 

 アイツは死んだんや。

 

 それはこの世界にありふれていて、それでも無視できないほどに重い言葉だった。

 

 そうか、あの人は死んでいたのか。

 

「死んだのはワイの実力不足のせいや。初めて見るモンスターの攻撃に対応できなかったワイのせいや。分かっとる。それでも思うてしまうんやβ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()対応できたかもしれへんってな」 

 

「それは......ご愁傷様でした」

何を返せばいいのか分からない俺の口から出てきたのは乾いた場当たり的な言葉だった。

 

「ありがとな、マクラギはん。だからワイは、知識を保有して自己の利益だけに固執するβテスターが大っ嫌いや。 ______けどな、この世界はそんなえり好みをする余裕はないんや。この狂った世界を攻略するためにはβテスターの助けも______やり方はともかく______必要や」

 

 キバオウなりにもかなりの葛藤があったのだろう。言葉の節々に渋々さが残されていた。

 それでも彼はβテスターとの協力を選んだ。キリト君や(ウリエル)の暴虐を経て思うところがあったのかもしれない。

 

「重い話をしてすまんかったな」

 

「いえ逆に、話してくれてありがとうございました」

 

 多分、こんなことでもないと聞けなかっただろうから。

 

 さて、色々質問したが正直言って迷っている。

 

 単純な話、軍以外の攻略組、特にヒルコとユウキのサポートができるのかという問題だ。

 キバオウはとりあえず許可というスタンスを打ち出しているが、今後攻略組というあり方に吊られてどうなっていくかは分からない。ソロ鍛冶屋の時よりも余計な気苦労も増えていくだろう。

 

 それでも、キバオウの誘いに乗ってもいいなと思っている自分もいる。

 

 うん。決めた。

 

「少し考える時間をくれませんか」

 

 性急に返事ができるものではない。ゆっくりと考えるべきだ。




皆も初対面の可愛い女性に誘われても喫茶店やファミレスに行かないようにしようね! 9割9分10厘何らかの詐欺だから!! 絶対に席に着いた途端にどこの馬の骨とも知れぬ凡骨の男にチェンジするから!! 絶対に引っかかるんじゃないぜ!!

 ちなみに作中に登場したキバオウ(とそのツレ)にソードスキルを教える話は"SAO デスゲーム開始前 前半"https://syosetu.org/novel/218504/9.htmlと"SAO デスゲーム開始前 後半https://syosetu.org/novel/218504/10.html"です。

ちくしょう。"なんでや" を言わせることができなかった!!"キバオウ"がない"なんでや"なんて"なんでや"じゃないだろ!!

 次回更新は1週間後を予定しています。間に合うかは知らん。
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