男女混合超野球連盟ぱわふるプロ野球RTA   作:飴玉鉛

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だいぶ期間が空いたので実質初投稿です。


第62話

 

 

 

 

 恐らくは誰にとっても、家族というものは身近な存在だろう。特に兄弟姉妹に関しては、良くも悪くも密接な関係を築きがちだ。

 どれほど嫌い合っていても、好き合っていても――或いは疎遠であっても、なかなか無関心にはなれない。

 子供にとって親は盲信の対象になるものだが、血を分けた兄弟姉妹は互いの好悪に関係なく、幼少期の生活の中心に据えられるものだからだ。勿論例外はあるだろうけれど、幸い私はそれに含まれていない。

 

 私には弟がいる。

 

 父と母のことで知らないものはある。けれど弟のことはなんでも――は、言い過ぎかもだけど、ほとんどのことは知っているつもりだった。

 何せ弟はとても良い子で、とっても優しい子だったし、姉である私によく懐いてくれていた。そんな弟の事を私も大事に思っていて、弟の頑張っている野球に関しては積極的にサポートしてきたのだ。

 四六時中一緒にいるわけではなくても、多くの時間を共有してきた。

 だから弟が新しいことを始めても、すぐに目につくだろうと思っていて――だからこそ、予兆を感じさせなかった新たな発見に驚かされてしまったのである。

 

「姉さん、これを見てくれないかい?」

 

 意外な驚き。とても真面目で、野球にひたむきな子だったから、その勧めはとっても私をびっくりさせた。

 繰り言になるけれど、弟は真面目で、野球にひたむきな子だ。ちょっとやんちゃなところはあるけど、女の子に対しては容姿の美醜に関係なく優しくて、心から真摯に向き合える自慢の弟である。

 そんな弟が、私にとある動画を勧めてきた。

 『あなたチューブ』とかいう、否定はしないけどちょっと軽薄な印象のある動画サイトを、真面目な弟が見ているのは意外で――しかも動画主の青年を絶賛したことで興味を持った。

 

「『彼』は僕らの世代で最も鮮やかで美しい投手だよ。彼と投げ合って勝つ事ができれば、僕がナンバーワンになれたと確信できるほどのね。……挨拶代わりと言ってはなんだけど、明日にでも一打席勝負を申し込もうと思ってる。姉さんにはその勝負を見届けてほしい。勝つにしろ負けるにしろ、その勝負は僕にとって得難い財産になると思うからね」

 

 青年は動画の中で、視聴者からのリクエストに応えるという形で、八つ化け頭巾という噺を朗読し終えた後らしい。

 生放送だったのだろう、その後に視聴者からの声に応じる雑談に興じている姿は、私から見ても非凡なものに見える。容姿云々はさておくにしろ、見ていると惹きつけられる何かを感じるのだ。

 それに、弟が男性を褒める台詞を口にしているのは初めて聞いた。そのことも、私に彼への興味を持たせる。

 

「……あれ? ねえ誠、私この人のこと知ってるような気がする」

「そうなのかい? まあ、彼は有名だからね。テレビか何かで見た事があっても不思議じゃないかな」

「あ、そうそう! テレビで見たんだ! それから……雑誌でも特集組まれてるのも見たことあったわ」

 

 既知感を覚えて首をひねると、誠がさもありなんと頷く。そのおかげで一気に関連付けられて、動画の中の青年の事を思い出せた。

 パワプロくんだ。誠の世代で最も優れた打者であり、同時に最強の投手の呼び声も高く、【パワプロ世代】と称される天才たちの中でも比肩する者のいない天才――怪物だって言われていた。

 仲の良い私の友達も、彼の大がつくほどのファンで、パワプロくんのことを盛んに話題にしていたりもした。彼は非常に優れたカリスマ性の持ち主で、噂によると全国模試でも一位に君臨している完璧超人だ、と。

 

「……ふぅーん? 誠はこの人と対戦したいんだ」

 

 テレビや雑誌でインタビューを受けたパワプロくんの受け答えは、模範的なまでの好青年だったと思う。

 ここまで出来過ぎてる人物像の持ち主は、却って人の邪推を招くものだろうに、不思議なほどその手の評判は耳にしない。それに私から見ても、パワプロくんはとても良い人に感じられた。少なくとも悪い印象はない。

 きっと誠が突然押し掛けて勝負を挑んでも、快く受け入れてくれるだろう。仮に勝負を受けなくても、酷い態度は取らないだろうと思った。

 

「――いいんじゃないかな。誠が対戦したいって言うなら、彩理さんは応援してあげる!」

「ありがとう、姉さん」

 

 

 

 

 

 

 

 

  †  †  †  †  †  †  †  †

 

 

 

 

 

 

 

 

「はーい! はじめまして、私は虹谷彩理っていいます! よろしくね、えーと……パワプロくんって呼んでいい?」

 

 ダメです(無慈悲)

 

 皆様おはこんにちばんは。

 やきうがデキるならもうなんでもいいよと言いたいRTA再開しておりますのことよ?(迫真お嬢様部)

 

 突然ですが『あなたチューブ』で釣り針を垂らした前回から今回、いきなり獲物が掛かった事に困惑を隠せないわたしがいます。例えるなら相思相愛の男女の内、男の方が好きだと告白しようとして、『す――』と言った瞬間に女の方が『私も好き!』と食い気味に応じてきたような感じです。

 なんだおまえ堪え性無さ過ぎか?

 欲を言えば即日食いついて欲しかったんですが、流石にそれは都合が良すぎるかなと思っておりました。しかしまさかの動画生配信の翌日に来るなんて、運が良いってもんじゃありませんよ。

 これはきっとあれです。パワプロくんが動画配信をした瞬間に、その存在にたまたま気づいていたかのようなタイミングです。手間の短縮という観点で素晴らしい幸運ですね……? やはり走者は豪運の持ち主でないと務まらない。はっきり分かんだね。他の走者もわたしを見習って、どうぞ(煽り)

 

 にしても恐ろしく速いレスポンスの早さ、わたしでなきゃ見逃しちゃうね。サラマンダーより、ずっとはやい!

 

 そんな事より野球しようぜ!(中毒者並感)

 

 いきなりヒロイン候補が湧いてきたとか、なんか虹谷誠くんが勝負を挑んで来たとか、その誠くんが凄く怪しいとか、礼里ちゃんがいきなり「闇野を知っているか?」と読心チェックして誠くんにレッドカードを出したとか、そんなことは全部どうでもよろしい!

 野球を……やきうをさせてくれぇ……!

 説明しよう! 時々現れる野良の野球デュエルの申し込み、これはぱわぷろ時空だと珍しくもないイベントである! これによりまずまずの経験点を取得でき、勝利すれば低確率で特能を取得できる他、確定で特能のコツを一つ手に入れることが出来るのである! 効率厨の気があるわたしとしても、育成パートの本番である高校時代にいる走者的にも、見逃せない! このイベントは!

 礼里ちゃんの読心チェックを受けた途端、あからさまなまでに顔色を変えた誠くん(in管狐くんちゃん)の事情など知ったことか!

 

 ……はい。(はいじゃないが)

 

 どうやら二代目闇野くんを襲名したのは、虹谷誠くんのようですね。

 初代闇野くんによって襲名(物理)された虹谷くん可哀想……。

 

 ……。

 ………。

 …………え、なんで?(素)

 

 まあいいや(切嗣並感)

 

 数多くの対策を確立されている闇野くん。彼の行動パターンも当然のように把握されています。

 攻略wikiによると、闇野くんは自分の身に危険が迫った場合、幾つかの襲名先(意味浅)の候補に寄生して元の体を捨てることが明らかになっているというのは以前にも言いました(復習)

 無能無名は眼中にないので、モブキャラは襲名(物理)されません。ネームドしか闇野くんのターゲットにされず、その中でなぜか女性が襲名(物理)された事例は報告されてなかったりします。パワプロくん含めて男ばっかり狙うんですよね彼は。

 

 男ばかり襲う管狐くんちゃんはホモだった……?

 

 んで、メインとして投手がターゲットされる確率は極めて高く、今回はたまたま誠くんが餌食になってしまったのでしょう。ノンケの誠くんを狙うとは人間の屑がこの野郎……。

 まあいいです。飛んで火に入る夏の虫とはこの事ですよ。礼里ちゃんの殺意の波動を感じ取ったのか、逃げ出そうとする誠くんの初動を制し手をガシッと掴みます。彼は脚がめちゃくちゃ速いので、走り出されたら追いつくのに難儀しますからね。さも友好を示すように握手をしましょう。それでもなお手を振りほどこうとする彼を引き寄せ、耳元で囁いてあげます。

 

「――俺との勝負で勝ったら見逃してやる。負けても悪いことにはならねえから安心しろ」

 

 (パワプロくんにとって)悪い事にはならない。

 嘘は言ってないからセーフ理論的にこれは……うーん、アウト!(情緒不安定)

 

「君は……いったい何者なんだ?」

 

 誠くん(in管狐くんちゃん)が、未知の存在を見るような目をしてますね。なんでバレた、と頭の中は疑問でいっぱいのようです。そりゃあ彼は、設定上何度もタイムリープしてますからね……今までパワプロくんのような特異存在を知らなかったとなれば、今回急に正体が露見し複数の財閥に追われることになった原因を知りたくて堪らないはず。

 むしろ彼としては、霧崎礼里がこんな所にいた事自体が想定外のはずです。彼は礼里ちゃんの事を知ってます。そりゃあエビル(漢字忘れた)高校で同じチームだった事もあるぐらいですし、なんなら彼女の超能力についても知っていたでしょう。なのにパワプロくんに対してのこのこ接触してきたのは、この周回の礼里ちゃんについてもリサーチしてあるからと予測できます。

 

 彼女の超能力は、とある中学に入学した際に、学校側から非合法な実験を受けさせられて覚醒したもの。その中学に進学していない以上、礼里ちゃんが読心術を持っているはずがないとたかを括っていた。だから先制パンチを食らって動揺してしまった、と。そんなところでしょうか。

 ホントにね、可哀想な闇野くん。わたしにとっても想定外でしたよ。お蔭様でおれのチャートはぼとぼとだぁ! けどいいのそんなの気にしない。できれば逃してあげるから気にすんな管狐くんちゃん!

 

「誰だか知ってて勝負しに来たんだろ?」

「………」

「恐い顔するもんじゃないな。お前の姉ちゃんが見てる。話は後にして、まずお前から吹っ掛けてきた勝負を終わらせようぜ」

「……後で色々と話してもらうからね?」

 

 いいぜ、と答えておきます。君に後なんかないんだけどね?(暗黒微笑)

 少なくともまともに話してあげるつもりはありません。いやね、わたしは話に付き合っても良いんですけど、そんな暇は多分ないと思うんですよ。いやぁ残念だなぁ(棒) 彼は自分が今どんだけ危険な状況にいるのか気づいてないみたいで……かわいそかわいそ。可哀想は可愛い(邪悪)

 

 というわけで一打席勝負イベ発生だぁ!

 

 ひゃあ! 新鮮な野球だよぉ! 後ろ手にスマホを操作して橘・木村・猪狩の『管狐捕獲チーム』に連絡してる礼里ちゃんを尻目に、聖ちゃんに壁役を任せて距離を取ります。誠くん(偽)も思い切ったのか勝負に乗ってくれるようですね。いざとなったらタイムリープしてしまえばいいとでも思ってるのかもしれませんが……やりたきゃ勝手にやってて、どうぞ(建前) けどわたしのチャートにお前のイベ組んでるんだからここで乙るとか許されざるよ(本音)

 

 時は夕方。所は河川敷。金属バットを持って、打席に見立てた地点に立つ誠くん。グラブを嵌めて、投球のための位置に着くわたし。白球を左手に、ぐるんぐるんと肩を廻して、肘を伸ばして、屈伸運動を何回かし調子を整えます。誠くんもバットを何回か振ってますね。

 なかなか鋭いスウィングですよ。流石に闇野くんとしての経験値も積んでるだけあって、現状この周回で出会ってる誰よりも強そうです。遠巻きに立ってる礼里ちゃんと聡里ちゃんが目を見開いてます。聖ちゃんは……おや、完全に無表情ですね。

 

「サインは要らねえからな、聖。これはあくまで俺とコイツの野球ごっこだ。悪いけど今回は壁役に徹してくれ」

「うむ」

 

 うーん、良い光景だぁ。心が洗われるようです。

 マウンドのように整えられた足場ではありませんが、ま、わたしからすると誤差ですよ誤差。気にするほどではありません。そんな事より、こうして打者がいる状況でボールを投げれるのが楽しいです。

 それに、管狐くんちゃんの肉体のステータスはともかく、中身の技能はそこらの高校球児を問題にしないレベルですからね。具体的にぶっちゃけると160km/hの豪速球にもジャストミートしてスタンドに運べるかもしれないレベルです。リアルの高校レベルを超えてプロ級と言ってもいいかも。ぱわぷろ時空だと名門校に一人はいる程度のレベルですけど(白目)

 

 つまり、今後の高校編でのリハ、予行演習、仮想敵、肩慣らしとして最適の人選ということです。本気でやりましょう。なーに、管狐くんちゃんに限っては本気の全力で当たっても後には引きません。

 出し惜しむ必要はないんで、いっちょやってみっか!(悟空)

 

 

 

 

 

 

 

 

  †  †  †  †  †  †  †  †

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――それは唐突な邂逅だった。

 

 聖タチバナ学園の入学式を終えた当日の内に、何を思ったのかいきなりネット配信なんてものを始めたパワプロ。いったい何がしたいのか、突拍子のない行動に疑問を覚える。

 何故そんな事をするのかと問いかけると、パワプロはなんでもないように宣った。

 なんでも以前所属していたシニアチームでの騒動を皮切りに、爆発的に自分のファンが激増して、周りに迷惑を掛けてしまっていた事を知ったらしい。雑談配信などをしてネット上でファンと触れ合い、ガス抜きでもした方が良いかもしれないと考えたようだ。

 パワプロが意外と気遣いの人であるのはよく知っている。だからそれは彼らしいと言えばらしい行動で、思い付きを即座に実行に移せる行動力に呆れはしたものの違和感はなかった。

 

 その翌日の事だ。パワプロは野球部に入部届を出すものと思っていたし、礼里や聖もそのつもりでいた。マネージャーではなく部員として野球部に入るつもりらしい氷上も。だがパワプロはそれより先にやる事があるという。頭の中の八割が野球で出来ているような男がそう言ったのだ。戸惑う礼里にパワプロは苦笑いして、内緒話でもするように小声で言う。

 

『ここの野球部にな、俺と仲の良い先輩がいるんだよ』

『……それがどうした?』

『まあ聞けって。で、ここだけの話なんだけど、その先輩の知り合いにそこそこ()()奴がいるらしいんだ。ソイツがな、どうも最近様子が変わったらしいんだよ』

『………』

『配信は雑談をメインにするつもりなんだけど、先輩がソイツの相談に乗ってくれって頼んできた。悩みがあるみたいでも、知り合いに相談するようなヤツじゃないらしい。縁もゆかりもないヤツの方が気楽に話せそうなんだと。んなもんで、早速今日から相談も受け付ける事にしてる。野球部に入部するのは明日以降だな』

 

 見も知らない赤の他人の為にそこまでする必要があるのか、礼里は甚だ疑問だった。

 だがパワプロが礼里の感性から外れた事をするのはいつもの事だったし、『雑談配信とやらのついでにやる』程度の態度だったから余り気にならなかった。礼里が元々他人に対し関心を持ちにくい性格な事もあり、その時の礼里は胡乱な気持ちを抑えて見守る事にした。

 だが、その次の日。下校後にいつもの河川敷に来ると、体が鈍らないように日課の自主練をしていると――同年代の青年と女が連れ立ってやって来た。警戒する礼里達を尻目に彼らはパワプロに話しかける。

 なんでも世代最強選手の呼び声高いパワプロと、一打席だけでも勝負がしたくてやって来たようだ。その手の輩はこれまでにも何人かいた覚えがある。顔も名前もすっかり記憶から抜け落ちているのは、礼里にとって至極どうでもいい手合いばかりだったからだ。

 

 今回もそうだろう、と内心決めつけている。仮に、なんて可能性の話をしても仕方がないが、もし仮にこの軟弱そうな金髪の男が、パワプロと勝負を成立させられるレベルでもどうでもいい。

 今の礼里が気にかけているのは、見ず知らずの赤の他人がパワプロに近づいてくる事だ。誰が取り憑かれているか分かったものではない。そう警戒して、礼里はいつも他人に対して読心を仕掛けている。

 その結果がこれだ。

 

 

 

 金髪の男、虹谷誠は管狐に取り憑かれている。

 

 

 

 ――見つけた。

 

 見つけた。見つけた見つけた見つけた――ッ!!

 

 瞬間、堪え切れない殺意が溢れた。

 まさかだ。まさかまさかの邂逅である。心が冷え込み、ほとんど無意識の内に掴みかかろうとしてしまった。だがそれに先んじてパワプロが管狐の手を取り握手を交わす。その際パワプロは礼里を視線で制した。

 礼里の反応を見た一瞬で――以心伝心、パワプロは虹谷誠の正体を察したらしい。迂闊に仕掛けるなとその目が言っていた。確かにそうだと冷静さを取り戻す。管狐がどうやって人の魂を奪うのか分からない現状、不用意に近づくのは危険だった。特に武道の心得のない礼里は。

 翻るに、化け物めいて腕っ節も立つパワプロなら、近くにいても不穏な行動を見逃さずに制圧できる。守ろうとしたのに逆に守られてしまった事に歯噛みしつつも、礼里は自分に出来る事を模索し行動する。

 

「誠ー! 頑張ってー!」

 

 呑気に弟を応援する金髪の女。敵かもしれないと警戒していたが、読心を試みたところ白である事……無関係の一般人である事が分かっていた。

 さりげなく打席に立つ男の逃走経路に成り得る位置に回りながら、礼里は極寒の瞳で管狐を見詰める。その一挙手一投足を見逃すまいと意識を集中した。

 本当は管狐の思考を常時読み続け、不意の行動にも備えておきたかったが、生憎とそれは出来ない。

 思考を読めはする。しかしあの管狐の思惟は酷く澱んでいて、僅かに読心を試みただけで強い頭痛を覚えたのだ。読心術はもともと許容し難い負荷を受ける力だが、アレに対しての行使は負荷の桁が違う。安易に使い続ければ、こちらの精神がひび割れそうなほどだ。

 

 管狐。

 

 猪狩コンツェルン、橘・木村財閥の対策チームが名付けたコードネーム。

 礼里の両親を廃人にして、最も大切な人である力場専一の記憶を奪った憎き仇敵。妖怪の類いとしか思えない、怨念の塊なんてものが実在していた事に驚きはしたが、そんな些末な事は捨て置いた。

 礼里にとって今、何より大事なのは、アレをどうにかすれば父母の魂が返ってくる事と、パワプロの記憶が回復する事だ。故に礼里は何がなんでも、アレをこの場で確保するつもりで居た。

 だが管狐は全てが未知の、妖怪変化の類い。どんな手段で魂を奪うのか不明な現状、考えなしに動いてはいけないと判断した。たった今連絡した対策チームが駆けつけるのを待つのが最善だろう。

 パワプロも同じように考えたから、ああして野球勝負なんてしている――いやアイツの場合野球がしたいだけかもしれない。野球馬鹿のパワプロだ、顔を見れば読心するまでもなく分かる。アイツは管狐を逃がすつもりはなくても、それはそれとして純粋に勝負を楽しもうとしているらしい。

 

「ばかめ」

 

 口の中で呟き、浮かびかけた苦笑を胸の内に押し込む。

 アイツはあれでいい。しかし自分はそんな能天気ではいられない。早く来いと念じた。対策チームさえ来たら、自分を取り巻く問題が前進するはずなのだから。

 

 礼里は退路を塞ぐ位置取りをし、金髪の女『虹谷彩理』と聖の中間位置に氷上聡里がいる。氷上は将来、SPになる事を志しているだけあって、腕っ節の強さには信頼が置ける。もし管狐が何かをしようとしても、その初動に先んじて聖を護りにいけるだろう。パワプロに関しては守る必要はない。単純な身体能力はもちろん、腕っ節の強さも氷上に引けをとらないのだ。

 聖は――完全に心が凪いでいる。氷上もだ。礼里同様、管狐の事は既に知っているし、実在すると認識している。礼里が投げ掛けた質問と、その後の反応から『虹谷誠』に管狐が憑いている事は察しているだろう。故に――凪いだ心の薄皮一枚を剥けば、裏に荒れ狂う激情が潜んでいた。

 

 礼里、氷上、聖の三人は、管狐を絶対に逃さない覚悟を決めている。張り詰めた緊張の糸、白刃の上に立っているような緊迫感の中、緊張している様子もない自然体でパワプロは言った。

 

「聖。今日は本気で投げっから、余所事考えてるとミスっちまうぞ」

「! 本気……全力でやるのか?」

「ああ。一期一会って奴だ。これから先、試合で投げ合う機会があるかないかも分からないしな。この勝負だけで力の差を分からせてやるよ」

「……ハハハ、力の差とは大きく出たものだね?」

 

 虹谷誠がそう言って爽やかに笑う。

 気持ち悪い。礼里は素直にそう思ったが、対策チームが来るまでは何もするつもりはない。パワプロの言う全力とやらを見せてもらう事にした。

 打席に立つ虹谷誠。当たり前だが金属バットを持っている。間近にいる聖がもしもの時には危険になる。氷上がさりげなく聖の側に歩を詰めた。そして、パワプロはズボンのポケットに白球を入れる。下手な動きを見せればもう一球のボールを投げつけるつもりらしい。

 

「挑戦者はお前なんだぜ、虹谷。なら挑戦を受ける側は上から見下ろしてなんぼだろ」

「鮮やかな挑発だ。では、是非分からせてほしい。できるものならね」

「できる。なんならピッチャーとしてのお前にも勝ってやるよ」

「……へえ、意外だよ。僕が投手だって知っていたなんてさ」

「そこそこ名前知られてるだろ、『虹谷誠』は。俺ほどじゃないけどな」

 

 ニヒルに笑っているが、やはりパワプロは強かだ。

 自然な形で会話することで時間を稼ぎ、投打の勝負を設けることで更に所要時間を増やした。自分の好きな勝負を長引かせているだけとも言えるが、自身の欲求と両立させる手管は流石と言える。

 恐らく虹谷誠――管狐はもはや、野球勝負に関してはほとんど考えていないだろう。礼里の殺意に気づいていたようで、さっきから礼里に意識を割いているのが分かる。迂闊だった。だが管狐は自分に対する制圧チームが組まれ、礼里からの連絡で駆けつけて来ている最中とは露ほども考えてはいないはずだ。

 時間はヤツの敵。礼里達の味方だ。

 

「投球練習はしないのかな?」

「必要ねえよ。お前が来るまで自主練してたからな、肩は温まってる」

「そうかい。なら早速始めようか」

「おう。けどその前に、変化球の有り無しを選んでもいいぜ」

「はは、親切じゃないか。けど答えは決まってる。断然、有りだよ。直球しか投げなかったから負けても仕方ない、なんて言い訳は聞きたくないからね」

 

 は、と鼻を鳴らしたパワプロは、心なしか楽しげだ。

 その直球だけで、並み居る天才達を手玉に取ってきたのはパワプロだ。礼里は管狐の台詞に笑ってしまいたくなった。パワプロの力は礼里や聖が一番よく知っている……あの友沢亮ですら薙ぎ倒された。打者としての体格すら完成していない『虹谷誠』が打てるはずもない。

 地面を何度か蹴って、河川敷の土の踏み心地を確かめたパワプロが、グラブでボールの握りを隠す。その体勢で管狐が構えるのを待った。それを見ながら管狐が打席に入る。聖の目がパワプロだけを映した。

 虹谷彩理が声援を弟()()()妖怪に送る。哀れだ。アレはお前の弟ではない、などと言っても分からないだろう。礼里は、思う。人の魂を奪うなんて超常現象を起こしているのだ、必ず何かをしてくると決めつけて警戒するべきだ。目に見える形で異変があるのか、それとも何か道具を使っているのか。いずれにしろ細心の注意を払う。

 

 管狐がバットを構えた。

 聖はサインを出しているが、要求ではなく球種と投げるコースをどこにするか確かめているだけだ。何度か首を左右に振っていたパワプロが頷く。聖が構えたミットの位置はド真ん中。

 何も変わらず、強気の姿勢。打てるものなら打ってみろと、大上段に構えて見下ろす傲慢な顔。力と実績に裏付けされた、自信溢れる怪物の心は暴力的なまでのカリスマを有していた。

 パワプロが始動する。ワインドアップだ。

 大きく背を逸らし、制服のシャツのボタンが弾けそうなほど胸を張り、片脚を上げる。靴の裏から砂利が落ちた。流れるように体勢は前傾へ――そして恵体が捻出した力は流動的に指先へ集中する。

 まるで一種の工芸品のように美しい投球フォーム――腰の回転、背筋の盛り上がり、肩の駆動、肘から手首への流線、神憑り的な指のキレ――いつ見ても何度見ても飽きが来ない躍動感だ。歯を食いしばった表情までもが、力強さと繊細さを宿している。

 

 特徴的なオーバースローで投じられた白球が超高速で回転した。

 

 最近までのパワプロの直球は、球筋の角度が30度、以前機器を使って計測した回転数は20回転にも及んだ。プロの投手でも平均で17回転しかしていないのだから、極めてハイレベルな直球だろう。

 だが――()()のデータなど宛てにはならない。

 信じられない球速でミットに着弾する。爆発したような音と共に捕球した聖は微かに顔を歪めていた。捕球ミス……手に痛みがきたらしい。信じられない程の豪速球だった。管狐でなくとも見逃していたに違いない。上方向にポップし手元で急激に伸びたそれに、管狐は一度打席から離れて苦笑する。

 

「……データよりだいぶ、球速が上がってるじゃないか。今まで手を抜いてたんだね」

「馬鹿言うな、手加減はしてたが手は抜いてねぇよ」

 

 管狐の台詞を即座に否定するパワプロだが、離れて見ていた礼里や氷上も驚愕していた。目算で160km/hは確実に超えている。本気、全力とパワプロは言ったが、まさかこれほどとは思わなかった。

 

「体が出来上がってもねえのに、こんな力入れて投げてたんじゃ肩がぶっ壊れるだろ? 俺はプロになる。それまでに故障を抱えるつもりは毛頭ねえよ」

「……なるほどね。今までも本気ではあった、と。けど、コースは甘かった。ド真ん中に投げられるなんて……舐められたものだ」

 

 管狐は驚きはしても、気圧されてはいない。圧倒されていない。

 寧ろ余裕を滲ませた笑みすら浮かべ、パワプロを挑発していた。

 

「これぐらいの球速で来ると分かったなら、そうと弁えた上で迎え撃つ。次はないから、真ん中はやめておいたほうが賢明だと忠告しておこう」

「気ぃ吐くのは良いけどよ、今ので1ストライク・ノーボールだ。俺が三球勝負を好んでるのは知ってるな? あと二球で俺のターンを終わらせてやるよ」

「君の鮮やかな代名詞、ジャイロフォークでも投げるのかい?」

「さあな。……いや、今回それは投げねえでおいてやるよ」

 

 管狐は再び打席に入る。どこか、面白そうな顔をしていた。

 返球した聖が再びコースと球種をサインで訊ねる。パワプロはまた首を左右に振り、三度目で頷いた。

 ワインドアップ。先程と全く同じフォームだ。だが、ほぼ誤差のない動作でパワプロは直球と変化球を投げ分けられる。パワプロを研究している人間なら誰でも知っている事だ、油断はないだろう。

 高校一年生――16歳の少年が投げたものとは思えない豪速球がミット目掛けて飛来する。それに、管狐が反応した。

 ジャリッ! と鋭く土を削る踏み込み。世代最強の座こそパワプロに譲っているが、打者としてなら№2の座を友沢亮と争っている礼里ですら瞠目した。バットヘッドの角度、振り始めのタイミング、スイング速度、いずれも申し分ない――いや、今の礼里を凌駕する質のバッティング技術が見て取れる。

 

 鈍い金属音が鳴った。

 

 白球がファーストの方向へ飛ぶ。それは明らかにファールゾーンに落ちていた。振り遅れたのだ。だが――当てた。バットに。聖が驚愕の余り捕手のマスクを外して立ち上がっていた。

 信じられない……虹谷誠の体は完全に投手のものだ。足腰こそ驚嘆に値するほど鍛えられているが、上半身は打者のそれではない。だというのに、何故これほどのバッティング技術を――

 そこまで考えて、ハッとする。肉体は確かに虹谷誠のそれでも、取り憑いている管狐の技術はそれに比例するとは限らない。そんな当たり前の事に今更気づいた。

 

「座れよ、聖」

「あ……ああ、すまない……」

()()()()()。集中を乱してたら止める事もできねえぞ」

 

 パワプロが、笑っている。

 いつも浮かべているものとは質の違う笑みだ。

 野球を楽しんでいる顔ではない、対戦を楽しんでいる――今まで誰にも見せたことのない、()()()()()()かのような――笑顔。犬歯を剥き出しにした、肉食獣の貌。

 束の間、礼里は全てを忘れて管狐に嫉妬した。

 パワプロは……無敵だった。敵が無かった。だが、こうしてはじめてまともに勝負できる存在を迎えられて……歓喜しているのだ。どうして私じゃない、と臍を噛む。力が、練習が足りない。

 

 聖は息を呑んで、頷いた。アレ、と言われて目の色を変えている。聖が超集中モードと言っている時の、深い目だ。管狐はそのやり取りを聞いて無言で構える。決め球(ウイニングショット)が来ると解ったのだろう。

 だがジャイロフォークは投げないとパワプロは言った。では何が来る? 余裕を消して集中する管狐は――この時、妖怪ではなく野球選手だった。邪な企みも何もなく、打者として立っている――

 

「コイツはとっておきだ。解ってても打てるもんじゃない。少なくとも、俺が打者でも打てねえだろうよ。だからもしコイツが打てたら――お前は打者としての俺より上だって認めてやる」

「……へぇ、それは楽しみだね」

 

 管狐も笑った。パワプロがポケットから予備のボールを取り出し、それを管狐に見せつける。なんの細工もされていない、まっさらなボールだと知らせているのだろう。

 ワインドアップ。

 フォームはいつもと同じ――いや、少し違った。

 上げた脚の位置が高い。いつもは腰の高さにまでしか上げない脚が、軽やかに、雄々しい鷹の翼のように――胸の高さまで上げられた。そしてゆったりと始動し、やはりいつもより大きく踏み込む。

 全身を打ち出すかの如き、中国拳法の震脚の様な一歩。踏み込んだ脚の足首が廻り、ジャッ、と地面を抉りながら、三日月のような軌道で左手を突き出す。そのボールの握りは――魔球ナックルのそれ。

 だが違う。世に知られる魔球ではない。

 

「――――!!」(エフェクト現象!!)

 

 管狐が刮目した。

 エフェクト現象……それは知る人ぞ知る野球神が認めた、驚異の質と独自性のある魔球に与えられる加護……と、言われているもの。パワプロほどの怪物なら使えるだろうとは思っていたが――パワプロの放つエフェクト現象は類を見ないほど兇悪だった。

 

(!! み、見えなッ――!?)

 

 黒。

 全き、黒。

 信じ難い。目を疑う。

 煙幕を張った様に黒く、白球がエフェクトに覆い隠され、ボールの回転どころかその姿すらもが視認できない。長年白球を追った経験から、辛うじてボールの行方が煙幕の中心部にあるとは察せたが。

 見えない。しかも速い。直球系の魔球か? 猪狩守のカイザーライジングのように、ボール二つ分もポップするかもしれない。コースはインハイ。内角高め。上に変化するならボールカウントが取れる。

 だがパワプロは三球勝負だと明言した。

 刹那の間、管狐の意識が打者としての物に塗り変わる。それは管狐の性質ではない、虹谷誠という女好きで軽薄な、しかし野球を愛する少年としてのもので。その性質が管狐の思考と能力をフル活用させた。

 

(あの男は自信の塊だ、つまらない嘘などで裏を掻こうとはしないだろう。なら――上方向への変化は無い。確実にストライクゾーンにボールを収める。インハイにきた……()()は今、左打席に入っている……オレから逃げるように、横に滑るのか? それとも下方向? 縦スラのように斜め下に行く? ――()()!)

 

 言語としての思考ではない。感覚、反射が大部分を占めた思惟だ。

 管狐は妖怪の如き【魔のもの】である。存在そのものが魔力を秘めていた。故にその勘は鋭く――そんな超常存在の勘を、パワプロは当たり前のように上回った。

 

(――――)

 

 黒い闇に覆われたボールが、球速を維持したまま――驚異の切れ味を魅せつけ鋭角に落下しながら――()()()()()()()()()。管狐はバットを振っていた。パワプロが三振を奪いに来ると確信していたが故に、見逃し三振だけは回避しようと。しかしバットを振りながら瞠目させられる。

 ナックルの描き出す軌跡は不規則に変化しながら落下するもの。それが黒煙に隠され、挙げ句の果てに管狐の想像を遥かに超える変化量を魅せつけた。肩の位置から――膝の上まで落下したのだ。

 パワプロの代名詞だったジャイロフォークより、ほんの少しだけ変化量は少ない。だがそんなものよりも格段に恐ろしい魔球だ。見えないのに速い、速いのに変化量も凄まじい。こんなもの、誰も打てない。

 

 バットが空回る。聖は、捕球どころかミットにボールを掠らせる事すらできなかった。まるで今のお前が触れていいものではないと、嘲笑うようにすり抜けて、聖の後ろに落球する。

 六道聖は高校野球界でも一、二を争う捕手だ。捕球技術だけならトップに君臨している。そんな聖が壁にもなれなかった事に礼里は驚くも、とうの聖自身が一番衝撃を受けているだろう。

 聖は、呆然とエフェクトの消えた白球を振り返っていた。

 

「はい、俺の勝ち。振り逃げは無しだぜ、虹谷。聖には最初に言った通り、壁役を任せただけだからな。今のは俺のとっておきが壁を貫通したってだけの話だ」

 

 パワプロが勝ち誇る。しばし呆然としていた管狐だったが、すぐに我に返ると苦笑いした。

 

「――とんでもない、まさに最強だ。ああ、僕も認めざるを得ない。君は確かに、今まで僕が見てきた中で最強のピッチャーだよ」

「だろ? けど強すぎるってのも考えもんでな、俺のとっておきの弱点は捕れる奴がいない事だ。誰も捕ってくれないなら投げられねえだろ?」

 

 その言葉に、聖は無言で項垂れた。

 パワプロに悪気はない。パワプロはきっと、これから先、聖なら捕れるようになると思っているのだろうが、聖にはなんの慰めにはならないだろう。

 礼里には分かる。聖は強いショックを覚えていた。パワプロと一緒に居たいが為に始めた野球であり、今まで十年以上も捕手一本でやって来ているのだ。野球のキャリアはパワプロや私と同等である。

 その分、積み上げてきた自負と自信があった。それが根底から崩されたような錯覚がある。

 後でフォローしてやろう、と礼里は思った。流石にアレは無い。アレは、打てない。プロでもだ。16歳の小娘如きが何を決めつけると嗤われるかもしれないが、礼里は確かに確信していた。

 捕れなくても無理はない……その言葉は確実に聖を発奮させる。慰めたつもりでも、聖からすると挑発されたようにしか聞こえないだろうから。

 

「ともあれ、良い勝負だった。またやろうぜ、虹谷」

「……ははは、そうだね。()()やろう。今回は僕の負けだけど、次は打ち崩してみせるさ」

「期待してる。――で、なんか空気的にお開き感があるけどよ、今度は俺が打席についていいか?」

「もちろん――……ッ!?」

 

 

 

 ――野球は終わった。

 

 

 

 故に、ここから先はR指定だ。

 管狐は首に何かが突き刺さったのを感じる。なんだ、と思う間もなく膝を折り、その場に倒れてしまった。

 麻酔銃を食らったのだ。虹谷彩理が驚愕の悲鳴を上げて駆け寄っていくのに先んじて、どこからともなく現れた三人の男達が管狐を確保し、担ぎ上げると走り出した。彩理が何を叫ぼうと止まらない。河川敷付近にある橋の蔭に停めていたワゴン車に乗り込むと、そのまま走り去ってしまった。

 

「まことぉ!」

「礼里、聡里、ケーサツに電話してくれ。虹谷の姉さん、落ち着け。いや落ち着かなくてもいいが話を聞け。ケーサツに連絡してる、きっとすぐに戻ってくるから慌てるな」

 

 錯乱する彩理をパワプロが宥める。礼里はケーサツに電話するフリだけをしていた。

 

 管狐は、対策チームに確保された。良い気味だと思うが、『虹谷誠』に罪はない。なんとかして管狐だけを祓えないものだろうか……。

 泣き崩れる彩理に、困り果てた様子のパワプロだが、どちらかと言えば罪悪感が強く出た表情である。腹芸はパワプロには無理だな、と礼里は思った。隠し事とは無縁の男だから仕方ない。

 それにしても――と、礼里は思った。

 

(光学迷彩……現実に存在する技術だったのか……)

 

 人の思念を感じ取れる礼里や、非常識に強い氷上やパワプロは気配を悟っていたが、実際に目にすると少しばかり感動してしまう。

 ともあれ目的は達成した。管狐に対する読心は効果がかなり薄いが、奴を尋問するのに礼里の力は有用である。尋問への協力を申し出る意思を、礼里は密かに固めていた。

 

 

 

 

 

 

 

  †  †  †  †  †  †  †  †

 

 

 

 

 

 

 

(――ミッション・コンプリートぉ! どうですか皆さん、完璧じゃないですかこれ! 管狐くんちゃんは確保、囚われるも彼には協力者の魔女っ子がいるので脱走は容易でしょう! ぱわぷろ公式の設定でメタ情報は流出しないし、礼里ちゃんの読心術は管狐くんちゃんには効果薄! ソウルジェイルに囚われた魂はともかく、抜け殻側の本体が回復する手段も知ってるので任意のタイミングで記憶が戻ったフリもできる! 礼里ちゃんのパパママも回復可能! もしも管狐くんちゃんが暴走し始めても魔を祓う家系の阿麻くんを頼ればオールオッケー! ふはは、完璧なガバ処理だぁ……)

 

 

 

 

 

 

 

 




※なお彩理ちゃんに関しては考えないものとする。

皆様お待たせしてすみません。別作品に構ってるのでまた待たせる事になるでしょうが、私は久し振りに野球描写(パワプロ風味)ができて満足しました。失踪します。

あとお忘れかもですが、アンケート結果の金(あっかふわふわ)は彩理ちゃんでした。ヒロインとして参加するかは未定、だって登場するかしないかのアンケートに過ぎませんでしたからね…!(苦しい言い訳)

ほな、また…。

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