TS転生すればおっぱ……おにゃのこと戯れられるのでは?だからチート勇者、テメェはお呼びじゃねえんだよ! 作:Tena
「私個人としても、学園都市の一導師としても、森人の協力は喉から手が出るほど求めていますよ」
タゲリは蓄えた髭を撫でながらそうぼやいた。
仮に政治的な理由だけでドローネットを軟禁しているのなら、もっと温度のない、事務的な受け答えをするはずだ。自分の孫ほどの年齢の少女だが、コルキスが一端の為政者であるということは理解していた。
であるなら、彼女がドローネットを抱える理由はもっと寵愛に近いものなのかもしれない。
「しかしまあ、コルキス嬢が保護することになった経緯を出されると耳が痛い」
学園都市のインフラで事故が起きれば、それは学園都市の責任だろう。
予測できるかどうかとか、そんな言い訳を全て抜きにして。
政治というのは、そうした不可抗力の失態を押し付けあうことであるから。
「
「誰も理解していない、よく分からないものを使うな」という話であれば、それは学園都市の特性上難しいものだ。
魔導の研究とは、まさに「よく分からないもの」の連続であるからに。この国の住人は、よく分からないものに慣れ親しみすぎている。
理論を重視する機械文明のソートエヴィアーカからは全く理解できないだろう。
しかし、よく分からないままで良いと思っているわけでもない。
よく分からないから知りたいのだ。
「だから、余計にドローネット殿を欲するのです。我々が事故と本当に向き合うには、彼女の存在が不可欠ですから」
「コルキス様の望むままになさるのがよろしいかと」
修練場代わりの中庭で、木造りの剣を振りながら女従者は答えた。
コルキスと手合わせする時はいつもこの場所だ。コルキスがどの程度戦えるかという情報は色々な意味でひけらかさないほうがいい。
逆に、従者たちの訓練する場所はもう少し外から見える場所に配置されていたりする。威武を示す文化がソートエヴィアーカ式だ。
イエスマンは求めてねェよという無言の圧力と共に打ち込まれると、丁寧に受けながらヴィオラは考える素振りを見せた。
主人から預けられた小刀の、その意味を。
コルキスの才覚は疑うまでもない。
覇者となるべくして生を受けた少女は、成人前に諸侯とやり合えるほどに政に通じ、護衛が足手纏いとなるほどに武を修めている。
仮にヴィオラが本気で殺意をぶつけたとしても、凌ぎかねない力を有しているのだ。
だから必殺の小刀を渡された。切り裂けなくとも、掠らせるくらいならできるだろう、と。
これは信頼であると同時に、不信をも意味した。
己の力不足が生み出したこの不信が、ヴィオラはなにより悔しく、恥ずかしかった。
「ソートエヴィアーカ王女の側付き筆頭として申し上げるならば──」
急に威圧を露わにした従者に、主人は目を見開いた。
これまで感じたことないほどの気迫である。語りながらの稽古の最中であっただけに、迎撃するための体勢を整えるには心が間に合わないと感じた。
ほんの一瞬でも時間があればいいのだ。それだけで心の準備は済むのに、それすら許さない疾さで連撃が打ち込まれ、重心がずれてゆく。
「アンブレラ様には目隠しを施し、鎖で寝台に張り付け、毎日情愛を注いでやるのがよろしいでしょう」
足が僅かに浮き、首に剣を添えられたままコルキスは組み伏せられた。
甲冑を着込んだ状態では、寝転がされた時点でほとんど負けが決まる。
「ハハ……打ち負ける日が来るとは、私は弱くなったか?」
先日と似たような問いかけをする。
そのときは、ヴィオラは変わってしまったのでしょうと答えた。
握った剣を、ヴィオラの脇、手首、剣と縫うように通す。
そのまま胴を蹴り飛ばしつつ全身で大地を押し返すと、コルキスの剣で腕を固定されたヴィオラは、反撃虚しく身動き取れないまま逆に組み敷かれた。
「いけねぇなァ、寝技ばかり強くなっちまったかもしれねェ」
「は、
変わることと弱くなることは同義でないとでも言いたげに、兜を脱いだ主人は得意げな顔で従者の兜も奪って口付けを落とした。
悔しさで固く引き結ばれた唇だったが、二度目の口付けで舌を捩じ込まれ、涎で溺れかけた。
「嫌がらせですか」
「いいや、労いだよ」
くそう、好き。
ヴィオラの情緒はここ最近壊れかけていた。
意趣返しにと、口を尖らせてボソリと呟く。
「……けれども、コルキス様は寝技で負かされてる側では?」
「おァ? 今から寝室行くか??」
全く予想通りの返答に、思わず従者は吹き出した。
書ききれなかったのでその2に続きます。
来週からは普通に更新されるはず。