ふと書きたくなって書きました。

とりあえずこの一話だけになる予定です。

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星熊勇儀の学生生活 一日

 某県某所。とある中学校の屋上。

 

「ふあぁ~あ…。んん、寝ちまってたか?」

 

 太陽も西に傾いて学生がそれぞれの部活動や下校を始めるであろう頃。そんな時間まで屋上で寝ているなどどんな生徒かはお察しというものである。

 

 彼女はしばらく仰向けのまま寝起きの気分を味わったあと、のそりと起き上がり開きっぱなしのドアを潜って階段を降り始める。

 このまま1階まで降りて帰ろうと思ったものの、そういえば鞄を教室に置いてきたままだということに気付く。

 

「はぁ~」

 

 ひとつため息をつくと降りてきたところを引き返し始める。鞄の中には財布が入っているため学校とはいえ置いていくわけにはいかない。といっても中には小銭くらいしか入っていないが。

 

「う~いあったあったと…ん~?」

 

 誰もいなくなった教室に辿りついて目的の鞄を見つけたところ、廊下の方でなにやらもめているような声が聞こえてくる。特に興味は無いがもし喧嘩なら…まぁ…助けてやらなくもない。

 そんなことを思いつつ音のするほうの角を曲がると、金髪で強面な生徒が相手の気弱そうな生徒の胸倉を掴んで詰め寄っていた。

 

「おいクソナードォ!!てめぇあの進路希望は冗談だよなぁ?」

 

「じょ、冗談なんかじゃないよ!僕は本気で…」

 

「ふざけんな!てめぇみてーな貧弱で個性も何もねぇ雑魚がヒーローなんかになれるわけがないだろうが!」

 

 …どうやら卒業後の進路のことでもめているらしい。

 

 ヒーローがどうのという話をしているがこの時代には文字通り”ヒーロー”という職業が存在する。なぜそんな職があるのかはいつかの授業で教師が話していたものの、彼女はその授業すら寝ていたのでよく思い出せない。

 確か中国が光ったら赤ん坊が生まれて浦島的なサムシングだったような…。そんな教科書とは全く別物と成り果てた記憶を掘り起こしつつ、気付けば金髪の生徒が相手の少年を殴ろうとしていた。

 

 その振り上げた拳を後ろから手首を掴むことで止めさせる。掴まれた金髪少年は誰だと振り向いて相手を確認すると、今度は彼女を相手に睨み始めた。

 

「てめぇなんの用だ星熊」

 

「ほ、星熊さん!?」

 

 さっきまでの様子とは打って変わって静かな敵意を星熊と呼ばれた女生徒に向ける金髪少年。

 

「まぁそう睨むんじゃないよ爆豪」

 

 その気迫を悠々と受け止めて爆豪と呼ばれた少年を見下ろす彼女。

 

 片方は今にも飛びかからんばかりの臨戦態勢であるのに対して、逆に軽く笑みを浮かべどこまでも自然体で対峙している。

 

「お前さんがこの少年を殴るのは勝手だがやめときな。ここは学校だから誰が見てるかわかったもんじゃないし、これがもし先公にでも見つかれば内申点にも響く。そしたらあんたの目指すヒーローとやらは遠ざかっちまうだろうね。それに…ヒーローってのは弱者に手は差し伸べても手は上げないだろ?」

 

 星熊がそう言うと爆豪はしばらく考えた後、どでかい舌打ちを残して去っていった。

 爆豪が消えたのを確認して「さぁ帰るか」と自分もさっさと家路につこうと歩き始めると後ろから呼び止められる。

 

「あ、あの、星熊さん!」

 

「う~ん?」

 

 それは先ほどまで爆豪に絡まれていた気弱な少年だった。

 

「さっきはその、助けてくれてありがとうございました」

 

 そう言いながら両手をもじもじとさせて俯く少年を見て星熊は…。

 

「(女みたいな奴だな…)」

 

 と思った。

 

「あ~いや、別に感謝されるほどのことをしたつもりはないよ。あたしは自分の見える範囲で人が襲われたり事故にあったりなんてのは寝覚めが悪くてね。ただの自己満足だし今回はたまたま、次も期待するんじゃないよ?」

 

「は、はい!…それでも、なんだか、か、かっこよかったです。…なんというかヒーローみたいだなって」

 

「ははは、ヒーローね。あたしの柄じゃないさ。そう言うおまえさんはヒーロー目指してるんだろ?」

 

 話の流れで先ほど聞いていたことを少年に振ってみる。

 

「え…っと、そう、ですね。…僕には子供の頃からどうしても憧れてるヒーローがいて、その人みたいにどんな時どんな場所にいても助けを求める人を救えるような、そんなヒーローになりたいって思ってて…」

 

「へぇ~、あたしなんかよりよほど立派な志を持ってるじゃないか」

 

 目指す先がある。目標を思い浮かべて瞳に光があると星熊が思ったのもつかの間、少年は肩を落とすと思いつめた表情で再び俯いてしまう。

 

「でも僕…無個性なんです…」

 

「私もそうたが?」

 

「………えぇ!?」

 

 

 

 現代は超常社会である。強力なパワー、水を操る、岩のような肉体など世界人口のおよそ9割以上が”個性”と言われる何かしらの超能力を有しており、それに伴って犯罪も個性を悪用したものが激増した時代があった。

 それを取り締まるために生まれたのが”対個性犯罪鎮圧協力隊員”であり、後のヒーローと呼ばれる職業である!

 これにより個性犯罪は格段に減ったものの現代でもゼロというわけにはいかず、個性に対抗するためヒーローになることが出来るのも個性を持ったものだけというのが現代のヒーロー事情である!

 

 

 

「え、で、でも!星熊さんって一年生のころ校舎の壁を吹き飛ばしたんだよね?」

 

「あ~その話かい」

 

 星熊勇儀が無個性。それがまったく信じられないと少年が持ち出した話題が、過去星熊が入学式の次の日に校舎の壁を吹き飛ばし大穴を開けたという伝説である。

 星熊は懐かしそうに眼を細めるとその当時のことを語り始める。

 

「いつだったか。あたしはいつも通り遅刻して行ったんだけどね」

 

「遅刻しちゃダメだよ!」

 

「………」

 

「………つ、続けて下さい」

 

「教室に着いた頃には一時間目が終わったところでね。全員の注目を集めちまったわけさ。あたしは別になんとも思わなかったけど、それが気に入らない奴がいたみたいでね。…ここにいてもなんだ。帰りながら話そうかい?」

 

「あ、はい」

 

 星熊が促す形で下足箱へと向かう。

 

「…げ、下駄」

 

「これかい?なんだかこっちの方が性に合っててね。普通の靴を履くより快適なのさ」

 

カラコロと下駄独特の音を鳴らしながら歩き始める星熊。それを見て少し呆けていた少年は慌ててその後をついていく。

 

「そうそうさっきの話の続きだったね。あたしを気に入らなかったってのがさっきの爆豪って金髪の奴なんだけどね」

 

「かっちゃんが!?」

 

「なんだ、昔馴染みだったのかい。まぁそのかっちゃんに放課後あんたみたいに呼び出されてね。俺より目立つなだのなんだのって言ってたんだが、それで怒るほどあたしも気が小さいわけじゃないからハイハイ言ってたわけなんだけど…あいつは最後にあたしに言っちゃいけないことを言ったのさ」

 

 話の核心に迫って今日初めて剣呑な空気を漂わせ始めた星熊。そんな彼女を前にして少年が思ったのはさっきの幼馴染から向けられたプレッシャーとは比べ物にならないほどの威圧感だった。

 少年は背筋が凍りつきそうなほどの緊張をなんとか振り切って「なんて言ったんですか」と聞いた。

 

 

 

「…大女」

 

 

 

「…え?」

 

「あいつはあたしに大女って言ったのさ。だから顔面をぶち抜いてやろうと思って殴ったら生意気にも避けやがってね。案外すばしっこいから一発浴びせた頃には壁を二、三枚ぶち抜いちまってたよ」

 

「えぇ…」

 

 そう話を締めくくって快活に笑い声をあげる星熊に、少年は「そんな理由で?」とどん引いてしまっていた。

 

 しばらく沈黙が続いたところでふと少年は最初の疑問に答えてもらっていないことに気付いて、もう一度質問をする。

 

「あの、さっきの星熊さんが無個性っていう話は本当なんですか?」

 

 ここまで話に聞き入っていて忘れてしまっていたが、自身が無個性である少年にとってこのような武勇伝を持つ星熊が無個性とはとても信じられない。ただそれと同時にもし星熊が無個性であるなら、その強さを持つに至った何かしらの要因があり、もしかしたら自分も彼女のような力を手にできるかもしれない。そんな打算的な考えもあった。

 

「あぁそうさ、あたしには個性が無い。もっと正確に言うと個性因子というのが無いんだとさ。さっきも話した壁をぶち抜くなんてのは朝飯前なんだけど、検査の結果は”無個性”。医者や検査員も首を捻ってたよ。理解できないってね」

 

 握力計を壊せば”怪力”の個性と言われ、地面を割れば”自然干渉系”の個性と言われ、鉄球を受け止めれば”頑強”の個性と言われ、様々な記録を取った結果は解析不能。一般人よりも”尋常じゃなく力が強く頑丈”なだけということしかわからなかった。

 

「とまぁ、そんなわけで原因を究明出来なかった役所連中は書類上はあたしを無個性ってするしかなかったってわけさ。…悪いね、同じ無個性だけどたぶん参考には出来ない」

 

 星熊は話し終えると少し申し訳なさそうに少年の方を見た。少年は予想通り少し落胆した様子を見せたものの、案外立ち直りは早いのかしばらくすると思案顔でブツブツと何事かを呟いていた。

 

「…あの、さっきの話を聞いてて思ったんだけど、星熊さんの力ってオールマイトに似てるような気がする。ほら、物凄いパワーとか足が速いとか!」

 

 現代に輝く誰もが認めるナンバーワンヒーロー”オールマイト”。その彼の話をし始めた少年は目を爛々と輝かせ少々頬が紅潮していた。

 

 (これじゃさっきの憧れの存在が誰だったのかはっきりわかるな)と星熊は思うものの、そこは言及しないことにした。なんとなく。

 

 

「そりゃ嬉しいね。でもあたしはナンバーワンヒーローほど高尚でもなければヒーローになる気もない」 

 

「ど、どうして!?」

 

 ヒーローを目指さない。それは何故なのか。これほどの力があるのならたくさんの人を助けることもできる。

 あれこれ理由をつけてヒーローになる気はないと言っても、案外諦めの悪い少年は一緒に雄英に入ってヒーローを目指そうとしつこく勧誘してくる。そこで星熊は決定的な一言を言うことにする。

 

「残念だけど、あたしじゃヒーローになれない決定的な理由があるのさ」

 

「え、そ、それはなんですか…?」

 

 さっきまでの空気と違う真剣な雰囲気に思わず腰が引けてしまう少年は、それでも理由を尋ねた。

 

「いいかい?」

 

「は、はい…(か、顔が近い)」

 

「あたしはね」

 

 

 

 

「成績が体育以外オール1なのさ」

 

「………Σ(゚Д゚)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




え~お久しぶりの人はお久しぶりです。

今回は百鬼夜行の続きでなくてすみません(;´・ω・)

初めましての方は初めまして、ソトン9と申します。

こちらの作品は続編を書くかはわかりませんが、楽しんでいただけましたでしょうか?

面白いと思ってもらえれば幸いです(*´ω`)

ではでは

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