勘違いは止まらない!   作:ふに・ふらふら

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所場十八は胃が痛い

 

改めて考える。善行ポイント制度で一つ分かっていること。

 それは、悪行に関しては見て見ぬ振りをするだけでポイントが減少するということ。

 

 ヤンキーがゴミをポイ捨てした。

 スルーするとポイント減。

 注意するとポイント増。

 つまり相手の快、不快に関わらず悪行を正すことは何よりも優先すべき善行ということ。

 

 知ってしまったら手を出さざるを得ないこの仕組み。

 ポイントが得られるなら問題ないとは言い切れない。リスクにリターンが伴っていない。ポイント減のリスクだけじゃない。身体的リスクもだ。何故ああいう輩はすぐに手が出るのか。怖いよ。穏便に済ませてよ。

 

 まあ見知らぬ子どもにいきなり注意されてイラっとするのはわかる気もする。

 だからといってケツを狙ってくる漢らはもはや論外だよ。私のケツで穏便に済ませようとするな。初対面でいきなりドッキングを勧めてくるって何さ。狂気か。

 

 首を突っ込み過ぎればさらなる悪行を目にしてしまい、見逃せばより多くのポイントが減ってしまう状況に追い込まれる。

 警察の方々にも何度かお世話になった。心からありがとうございます。お陰様でなんとか私の後ろは守られています。

 

 


 

 

side主人公

 

 変態(エロス)は激怒した。必ず、かの邪智暴虐の魔王(四宮かぐや)をどうにかせねばならぬと決意した。変態には女心がわからぬ。変態は、ただのむっつりである。

 エロスを想い、アソコを弄んで暮して来た。それゆえに女心に対しては、人一倍に鈍感であった。

 

(……。ついに四宮が仕掛けてきやがったッ──────)

 

 少しでも早く生徒会室から遠ざかりたい。走り出したい衝動をマナー違反=ポイント減少という思考が鎮める。

 それでも、先の生徒会室での出来事を振り返るたびに否応なく歩くペースは上がった。

 

 

 今日は珍しく生徒会室に白銀と二人きりだった。

 これまでもないわけではなかったけどさ、大抵四宮と藤原(あのふたり)のどちらかはいた。

 

 まあこんな日もある。

 むしろこちらの方が居心地は良い。今日はついてる。最高にいい日だ。なんて浮かれて生徒会業務にあたっていれば、突如視線を感じた。

 

 むっちゃ真顔で白銀がこちらを凝視していた。凄く怖かった。

 何かやらかしたかと訝しんでいると、唐突に意味のわからない問答のキャッチボールが始まった。お見合いか何かですか?ボールが空中分解してるよ。

 警戒して手短に答えれば、段々と顔をしかめていく白銀。

 

 何かがおかしい。

 どこか違和感を感じるこの状況。白銀は以前からこんなにも私に話しかけてきただろうか。否だ。

 

 二人きりの時は本当に必要なことしか話さなかったじゃないか。私が差し入れを白銀宅に持っていく等、どれほど尽くしてもそれは変わらなかった。いつも表情が硬く、私と二人でいると常時不機嫌なのかなくらいに思っていた。ポイントには影響がなかったからあまり気にしてなかったのもある。

 

 それが変わったのはここ最近。

 四宮&藤原と何やら企み始めてからだ。

 

 私が気づかないとでも思っていたのか。なめんな。チクショウ。

 これまでは四宮だけを警戒していれば良かったのに。白銀はポイントにはプラスだし藤原だって偶の奇行を除けば積極的に私に関わってくるわけではない。藤原の“私に関わりたくない度”は顔を向けたら目を逸らされるレベルだし。私の顔面はタマ〇ンかよ。

 ……まあ、私が変態だと見抜いているからかもしれないけどさ。

 

 それが今はどうだ。

 四宮は愉悦部員を増やしやがった。私のこと暇をつぶすための玩具にする気か。

 

「はっ??!!」

 

 そ、そそ、そういえばこの前、生徒会室を盗み聞きした時に藤原はなんと言っていた。

 

『次は四人でゲームがしたいです』

 

 ゲーム。ゲームだと!!?!

 ゲームってつまりは遊び。

 まさかとは思うが玩具(わたし)で遊びたいということか?

 藤原、お前……。やっぱり邪神じゃあないかッ。

 四人って三人+石上君のことかと思ってたよクソ。私だけハブられているとかそういうのではなかったのか。そういえば藤原にゲームに誘われたなんて話、石上君から聞いてない。

 

 ……くそッ。脳裏に浮かぶ藤原のアホっ面の笑顔が煽ってるようにしか思えない。

 

 私は知っているんだぞ。生徒会室には四宮の管理下に置かれた監視カメラが複数台設置されていることを。

 生徒会室は緊急時に生徒の寄り合い所として機能するため、常時開放されている。そうしたセキュリティの観点から設置されたそのカメラ達は副会長の四宮が管理していた。

 

 先程の生徒会室でのあれこれも四宮と藤原でモニタリングしていたのだろうさ。白銀が凝視してきた段階で何となく察しがついていたよ。藤原も随分とタイミングよく登場したし、そのおかげで男に抱きつかれているという特級のホモネタまで目撃者ありの確定事項になってしまったし。

 

 カメラで記録しているのにわざわざ藤原が姿を見せたのはきっと、“常にお前を見ているぞ”というチラ見せレベルの脅しも含まれているのかもしれない。

 お前ら、変態には何やってもいいと思ってる?

 

 頼むから大人になってくれ。貴方らもう高校生だよ?私に構ってないでアオハルしてこいよ。大人の階段登ってこいよ。頼むよ。

 

 

「……本当にこれからどうしようか」

 

 今日の事のおかげで私が一つ思い違いをしていたことがわかった。四宮たち三人は同列の存在ではなかった。四宮にとっては白銀すらも玩具に過ぎなかった。

 

 白銀が本気(マジ)で気絶するほどに大嫌いな(ゴキブリ)を使って仕掛けてきた時に確信した。突然白銀の肩にゴキが現れた時は我が目を疑った。四宮はそうまでして私を揶揄いたいのか。私の痴態が見たいのか、と。

 

 一体どうやって白銀の肩にゴキを配置したんだ。会社の廊下ですれ違った社長の(ズラ)がずれてる時並みの対処のむずさだよ、そんな状況そうそうないわ。結果失敗したし。

 私はてっきり白銀と四宮は両想いだと思っていた。恋人までは行かないまでも、お互い意識し合っていると思っていたんだ……。

 一年生の頃。白銀が生徒会長になる前から仲よさそうにしているのを見てきた。つい数日前も突然見つめ合ったりしてたし。

 

 ……もうなんだろう、白銀が哀れで仕方がない。同性としてあまりにも不憫だ。

 四宮が考えたであろう私に対する揶揄い(シナリオ)を健気に全うして、気を引こうとしているその姿が。

 明日からはより一層白銀に優しくできるよ。

 

 ……うっ、……ふぅ(決意の音)、決めた。

 ついに来たんだ。四宮と決別する時が。こちらに直接仕掛けてきて、さらには弱みまで握られた現状だ。

 

 あげく白銀に腕の包帯を見られ中二病疑惑まで浮上したかもしれない。

 あの時の白銀の顔は痛々しい者を見るそれで……。違うんだと叫びたかった。それでも、おそらくは台本通りに私をホモに仕立て上げるために抱きついてきた時は思わず震えたよ。抱きつく流れあった?

 あげく頼ってくれだの。自分は不甲斐ないだの。私より断然優秀な頭脳を持っている定期考査トップ様が何いってんだい。上から目線で勉強を教えてあげるとドヤってたら混院生全員に敗北した私を遠回しにこき下ろすな。

 一聴で四宮が考えたであろうセリフだとわかったよ。的確に私の心を抉るの得意ですよね四宮さん。

 

 四宮は私の痴態これくしょんでもしてるの?痴これなの?今回の痴態はSレアかな、瑞鳳かな?泣くよ?……それも痴態か。

 まあ、白銀はいいよ。男の純情を四宮に弄ばれてるだけだしさ。

 

 問題は四宮と藤原だよ。

 

 なんなの君たち。暇なのかな?暇を持て余した神々の遊びなのかな?私を揶揄うのに本気出し過ぎじゃないですか。

 はっ。そりゃ暇でしょうよ。私とは頭の出来がちゃいますからね。人生にゆとり溢れちゃってるでしょうよ。定期考査ワンツーの白銀と四宮に、普段はアレだが語学堪能の藤原。頭の出来はむしろ良い方だろう。音楽の才も特級クラスだ。

 誰もが一つも二つも飛び抜けた何かを持っていやがる。私が一つ抜けてるのなんて女子のチラ見技術だけやぞ。どんな才能だよ。変態の才能だよ。ちくしょう。

 

 中等部の頃にガチのマジで本気で定期考査に臨んでギッリギリ50位だった精神年齢大人(笑)の私。以降、どんなに頑張っても50位より上に行けない私。

 天才児たちの集い、パネーッス。

 

 絶対に49位になれない私の学力の限界。変態は現実の厳しさを学びました。前世の優秀さが如何に井の中の蛙かわかりました、はい。

 

 ……そもそもこんな状況になったのは私の不徳だ。

 年齢的に子供だからと四宮たちを侮っていたからこうなった。見るべきは積み重ねた歳月でも経験でもない。何を学び得てきたかだ。

 数多くの経験をしても、何年生きようとも、学びを得て自ら考えられなければ意味がない。それが出来ない奴は愚か者だ。じっちゃんがそういってた。おいおいじっちゃん、それは私のことかい。

 

 年齢も経験もその一個人を推し量る一材料でしかない。

 それこそ、この学園なんて普通の学生が経験しないような環境に身を置いて、そこから学び得る思慮深さのある人達ばかりだ。

 そう人だ。本来の私たちに子供も大人もないんじゃないか。うん。

 

 彼らと私は対等。いやむしろ私は劣等。

 そうだ。やってやる。私はやるぞ。

 

 

 明日、明後日……いや来週、そう絶対に来週、四宮へ頭を下げて許しを乞う。

 そこに大人と子供なんて認識は存在しない。子供に本気で頭を下げる中身の年の差が三倍近い大人はいない。

 

 そこにいるのは人と人。

 

 だから土下座や靴舐めをしても大人としてのプライドは傷つかない。

 全てはポイントのため。

 

 さらば大人の私。ばいばい。

 

 

 

 ◆

 

 

 

 都内アパート。

 四方をアルミ棚が囲い、所狭しとファイルが並べられている2LDKの一室。

 

 ファイルのラベルにはそれぞれ個人の氏名と秀知院学園高等部、学年、クラスの文字。

 一人につき一ファイル。生徒のパーソナルデータが纏められている。私が学園生活を送る上で、必然的に関わることが多い高等部のみをpcのデータから取り出したもの。

 プラスαで白銀のご家族など、関わる頻度が多い人物に関してもファイルとして書き出した。

 無論そこには生徒のスリーサイズが綴られている。四宮はもちろん藤原と白銀も。

 

 これが四宮たちに見つかったら私はどうなってしまうのか。いや、でも四宮たちに関してはすでにむっつり変態野郎ってバレてるわけだよ。手遅れか。

 

 でも変態は変態でもムッツリだからね。変態目・むっつり科・ムッツリ属・学名[剥突理(むっつり)]ってだけだから。

 むっつりはYES興奮NOタッチがルール。

 今生の私が何年、女性に触れていないことか。異性に触れる。それだけで不快判定に及んでポイント減になる可能性がある以上、ドチャクソに気を使ってるから。

 

「……書き終わった」

 

 今日判明した四宮と藤原、白銀の新情報を各ファイルのパーソナルデータに書き足した。

 

 ・四宮かぐやは男のウブな心を弄ぶ鬼畜。学園を裏から牛耳る女帝。変態には容赦がない等。

 

 ・藤原千花は四宮に付き従っていると見せかけて己の愉悦だけにしか興味がない悦楽志向人間。何考えてるのかわからない。変態には容赦がない等。

 

 ・白銀御行は四宮と藤原に心を歪められた純情な男。四宮の操り人形。可哀相なお人。本当はいい奴、きっと等。

 

 ……あれ?でも、そういえば白銀って出会った当初から私に冷たかったような。それにあの二人とは初対面から何だかんだ結構楽しそうに話していなかったっけ。

 いや、よそう。

 

 ……もうやだ。助けてくれ石上君。

 私、何も悪いことしてないよね、石上君。

 →中等部の頃、四宮に付き纏っていた。

 →いやらしい目で女生徒を窃視。

 →生徒の個人情報を収集。

 →変態。

 →所詮は学園の雑用止まりの人生。

 →四宮たちに嫌われるのは単純に生理的な気持ち悪さが原因かもしれない受け止めきれない現実。

 

 おいおい、因果応報じゃねーか。あはは。

 

 ピンポーン

 ファイルを棚に戻そうと立ち上がりかけたところで部屋に鳴り響くインターホンの呼び出し音。

 

「……え?」

 

 

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