もしもかぐやに滅茶苦茶強力な恋敵がいたら・・・ 作:ゾキラファス
あと本編には全く関係無いけど、とうとう今週の火曜日がゴジラの公開日ですね。楽しみだ。
そしていつも感想、誤字報告、ありがとうございます。
ソラール水族館内 レストラン
「こちらの席におすわりください」
「ありがとうございます」
「ども」
龍珠と小島は、揃って水族館内にあるレストランへ、小島のおごりで昼食を食べに来ていた。レストラン内には、数多くの水槽が並べられており、食事をしながら魚を見て楽しむ事も出来る。
「いいな、こういうの」
「そうだな。なんか何時もと違った感じが良いよな」
その普段とは違う雰囲気のレストランに、2人はかなり興味を持つ。
「なんか、水槽欲しくなって来たな…」
「ん?もしかして、龍珠の家って水槽とか無いのか?」
「もしかしてって何だよ。普通に無いから。ってか、何であるって思ったんだ?」
「いや、龍珠の家業的に、なんかあるイメージがあるからさ」
「あー。処理用って意味で?」
「え…いや、普通に観賞用でだけど…」
「……今の話しは忘れてくれ」
「わかった」
ちょっとだけ危ない話しな気もしたが、気の所為だろう。
「こちら、メニューになります。お決まりになりましたら、そちらのボタンを押してください」
「ありがとうございます」
そこに、店員がメニューを持ってきた。2人はそれぞれ、メニューを見る。
「おお。全部美味しそうだな」
メニューには、色とりどりの食事が沢山あった。これは迷う。だってどれもこれも美味しそうなんだもん。
「よし、俺はこのハンバーグセットにしよう」
小島は、食いでのありそうなハンバーグセットにした。男の子はやはり、こういう時は肉が食べたいものなのだ。
「龍珠。お前はどれにする?」
「……」
「龍珠?」
注文をするべく、小島は龍珠にも尋ねる。しかし、どうも変だ。何故か龍珠は、少し頬を赤くして小島を見たりメニューを見たりしている。
「……これで」
「ん?」
そして、まるで意を決したかのように龍珠はメニューに載っているとある食事を指さす。
指を刺した場所を小島が見ると、そこには可愛らしい器にペンギンの形をしたパンケーキの写真が載っており、名前には『ペンギンさんパンケーキ』と書かれていた。
「えっと、それでいいんだよな?」
「何だよその顔は!!別に良いだろ!!可愛いもの結構好きなんだよ!!」
「い、いやごめん!!ちょっと意外だっただけだ!!」
まさかのメニューに、小島も驚く。だって普段の龍珠からは、全然想像もつかない食事だったからだ。
「やっぱり、私がこういうの頼むのは変だよな…」
そして小島が驚いた事で、龍珠は少しヘコむ。昔から動物のぬいぐるみとかが結構好きで、部屋にもそういうのが結構ある龍珠。
しかし、端から見れば全然似合わないという事は、彼女自身がよく理解している。だってこんな目つきの悪い、それもヤクザの娘がこんな普通に可愛いい物を愛でるなんて、変に決まっているからだ。そんなの、誰かに言われなくてもわかっている。
「そんな事ない。だって龍珠も、可愛い女の子だろ。だから普通だって」
しかし小島は、それを直ぐに訂正。確かに驚きはしたが、それだけだ。むしろ龍珠の可愛らしい一面が見れて約得でさえある。
「ほ、本当に?」
「ああ。こんな嘘はつかん。もし変とか似合わないとか言う奴がいたら俺に言え。成敗してやるから」
だから、もし今の龍珠を見て笑う奴がいたら、絶対に許さない。その時は、問答無用で背負投をしよう。
「いや、そこまではいいよ。でもまぁ、ありがと」
そして龍珠は、赤くなった顔をメニューで隠しながら小島にお礼を言う。まさかそんな風に、正面から言われるとは思っていなかったからだ。おかげで、普通に恥ずかしい。こういう正面攻撃に、龍珠は弱いのである。
(可愛いーーー!!)
一方そんな龍珠を見た小島は、顔こそ無表情を装っているが、内心はもう響喜乱舞であった。
だって今の龍珠は、本当に可愛い。顔を赤くして、目も少し潤んでいる。マジのマジで、可愛い。こんな表情を見れただけでも、今日は龍珠をデートに誘った価値がある。
(あーもう!マジで可愛い!!天使!いや、女神だろこれもう!!今の龍珠の顔を世界中に公開したら、マジで戦争無くなるって!!皆何で争っているのか疑問を持って、そのまま龍珠によって浄化されるって!!そして軍隊も国家も超えて、国境線すら消えて世界はひとつになる!!制約も争いも格差もない、理想の世界だ!!つまり龍珠の笑顔を見せるだけで、世界は変わる!!V2*1なんて必要ない!!ならばここで写真を撮って、それを世界に公表した方がいいのか?いやダメだ!この龍珠の顔を世界中の下賤な男達に見せたくない!!これは今俺だけが見ていたい!!つまり独占しておきたい!!だからごめん世界の人達!!戦争はまだまだ無くならないわ!!)
でもちょっとテンションがおかしくなっており、かなり気持ち悪い事も考えていた。今思った事をそのまま口にすると、間違いなく龍珠からグーが飛んでくるだろう。
(おっといかんいかん…少し冷静にならないと…ぐっ!?)
これ以上は普通にヤバイので、小島は舌を噛んで冷静になった。因みにこのやり方、普通に危ないので皆は真似しないようにしよう。
(あああああ!!!何してるんだ私はーーー!?)
そして龍珠。彼女も内心は、結構いっぱいいっぱいになっていた。気が緩んだせいなのか、可愛い食べ物を注文してしまい、その事で小島から可愛いなんて言われてしまい、顔が熱くなる。
はっきり言って、凄く嬉しかった。
でもそう思った時点で、また頭の中がぐちゃぐちゃになりそうになる。何度も言っているが、龍珠は別に小島の事なんて好きじゃない。なのにあんな一言だけで嬉しがるなんて、まるでチョロイ女だ。でもそんなの、自分のプライドが許さない。
(くっそ!顔が熱い!!マジで1回冷水シャワー浴びたい!!)
でも今は、先ずこの熱を引かせたい。じゃないと、絶対にどっかでボロが出る。
そこで龍珠は、小学生の頃に、当時仲の良かったクラスメイトから『お前ヤクザの娘なんだろ?』と言われて距離を取られた事を思い出す事にした。
(…………きっつ)
結果、一瞬で熱が引いていく。でも凄くしんどい。あの時は、本当に親を恨んだりもした。同時に、親からも沢山謝られたりもしたが。
そしてあの日から、龍珠は学校では1人で過ごすようになったのだ。
誰もが自分の親の仕事を聞くと、距離を取り陰口を叩く。それなら、最初から1人でいい。その方が、気楽だから。龍珠は、ずっとそうして過ごしてきた。
それが変わったのが、高校生になってからだ。
生徒会長に半ば無理やり生徒会に入れられて、京佳や白銀と出会った。2人共、自分を全然拒絶しない。それどころか、龍珠にとって初めてもちゃんとした友達にさえなってくれた。
更につばめ先輩にも出会え、今ではこうしてずっと喧嘩をしてきた相手である小島とデートすらしている。数年前の自分にこの事を話しても、絶対に信じられないだろう。本当、人生は何があるかわからない。
(ま、おかげで少しは熱が引いたし、今は食事を楽しむか)
ちょっと嫌な事を思い出したが、おかげで熱は引いた。これなら、食事も楽しめそうだ。
「おまたせしました。ハンバーグセットとペンギンさんパンケーキです」
料理を選んで数分後。注文した料理が届いた。
「んじゃ、ありがたく奢らせてもらうぞ」
「ええ。遠慮無く食ってくれ」
「それじゃ、いただきます」
「いただきます」
2人揃ってしっかりといただきますをして、食事を口に運ぶ。
「ん!?これうまいな!!中までしっかりと焼けてるし、肉汁もたっぷりだ!」
「こっちのパンケーキも、フワフワで凄いぞ。これなら毎日食べてみたい」
本当に美味しくて、舌が唸る。確かにこれなら、毎日食べても飽きそうに無い。カロリーが怖いけどね。
「はいダーリン。あーん」
「あーん」
パンケーキを食べながら少し離れた席を見てみると、ペアルックのカップルがあーんをやっていた。それを見た龍珠は、ふと思った。今日は何度も、小島にしてやられている。正確に言うと、小島の正直な言葉で何度も照れている。ここで少しやり返さないと、気がすまない。
なので龍珠は、恥ずかしいけど小島にあれと同じ真似をする事にした。
「なぁ小島」
「何だ?」
「ほれ。これうまいから食ってみろよ」
「…え!?」
龍珠はパンケーキを一口分切り取り、それをフォークに刺して小島に差し出す。
(さぁ恥ずかしがれ!その瞬間思いっきり煽ってやるからさ!!)
ここで小島が顔を赤くすれば、一気に色々と煽れる。そうすれば、形勢逆転だ。
しかし、
「あむ」
「な!?」
「うん、確かにうまいなこれ。ありがと」
小島はなんの躊躇も無く、龍珠が差し出したパンケーキを食べたのだった。
(うおおおおお!?龍珠に、龍珠にあーんってされた!!これはヤバイ!!もう俺今日死んでもいい!!…いや、やっぱり龍珠とちゃんと恋人になるまではまだ死にたくない!)
そしてテンションを爆上げしていた。折角龍珠があーんってしてくれるのだから、それをしっかりと受け取って食べないといけない。ここで恥ずかしがって躊躇するなんて、小島の中には無かったのだ。つまり龍珠の作戦は、最初から破綻していたのである。
「龍珠となら、毎日でもこんな事して過ごしたいな」
「…………」
おまけに小島は、そこから更に畳み掛けるように素直な気持ちを龍珠に直接伝える。
(だ か ら ! そんな事を正面から言うなっていうの!!ほんとに、ほんとにさぁ…!!)
反撃をしたと思ったら、逆に自分が反撃される始末。更にそこから追撃もされる。おかげで、龍珠は色々とボロボロだ。今なら体の熱で、お湯を沸かす事も出来るかもしれない。
「そうだ。だったら俺も」
「いいから!!それはいいから!!」
「え?あ、そう?」
ここでもし小島にあーんなんてされたら、自分でもどうなるかわからない。なのでそれだけは阻止させてもらう。
(ショックだ…)
そして小島は落ち込んだ。
昼食後も、2人は水族館を見て回った。サンゴの水槽や、熱帯魚の水槽。ピラニアやテッポウウオの水槽。どれも見ていて、とても楽しい。
「しかし、水族館って楽しいな」
「まぁな。ただ魚見るだけなのに、何でか超楽しいわ」
今まで来たことなんて無かったけど、こんなに楽しいなら是非また来たい・それも、出来れば今隣にいる人と。
(あああああ!!だから違う!!私は別にこいつと一緒がいいとか思ってねーから!!来るならそれこそ立花とかでもいいから!!)
しかし相変わらず、龍珠はそれを認めない。断じて自分は、小島を好きじゃないと認めない。いい加減認めた方が、楽になるというのに、認めない。
「お、お土産コーナーだ」
そう思いながら歩いていると、水族館内のお土産コーナーへたどり着く。
「へぇ。結構広いな」
人気のある水族館だからなのか、お土産コーナーはかなり広い。品揃えも、クッキーからタオル、写真集まで色とりどりだ。
「龍珠。俺家族用にお土産買いたいから、寄ってもいいかな?」
「別にいいぞ。私も、うちの連中に買おうと思ってたし」
「そうか。じゃあ行こう」
そして2人は、そのままお土産コーナーへと入っていった。
「うん。こんな感じでいっか」
小島は無難に、クッキーを2箱購入した。こういうお土産は、変に尖ったものはいらないのだ。会計を済まして店内を探していると、龍珠を見つけた。
「いた。おーい、龍珠…」
しかし途中で、小島は声をかけるのをやめる。なんせ今龍珠は、お土産コーナーのぬいぐるみ置き場にあるアシカのぬいぐるみを、じっと見ているからだ。それも、何やらうっとりとした目で。
(そういえば、結構可愛い物が好きだって言ってたよな…)
昼食時も言っていたが、やはり龍珠も女の子だと小島は再認識。周りの同級生は、いつも龍珠を怖がり、関わろうとしない。
そして去年までの自分は、龍珠をずっと敵のように認識していた。
現代は、暴対法で暴力団はかなり弱体化しており、バブル時代程のやりたいほうだいは出来なくなっている。しかしそれでも、今だに暴力団によって苦しめられる人々は大勢いるのが現状だ。
そして龍珠は、そんな暴力団組長の娘。
だから最初龍珠に会った時は、蛙の子は帰る理論で小島は接していた。どうせ龍珠もそのうち、エグイ手段で堅気から金をだまし取ったりする所詮はヤクザの子だとして。なので仲良くなるなんてありえないし、何だったら在学中に何か問題起こして退学なればいいとさえ、思っていた。
だが今となっては、相手と禄に話してもいないのに、そんな風に決めつけるなんて最低にも程があると後悔している。
だって話すと、龍珠は本当に普通の女の子だからだ。可愛いものが好きで、笑顔が可愛くて、お洒落だってする。そんなどこにでもいる、普通の女の子。それが、龍珠桃なのだ。
そして自分は、そんな龍珠に惚れてしまった。そこからは、もう今までの行いが嘘のように反対になった。積極的に挨拶をしたり、食事に誘ったり、今日のようにデートに誘ったり。まさに、恋は人を変えるだ。
(よし)
そして小島は、龍珠に振り向いてもらいたいという考えを一時的に投げ捨てて、ひっそりとある事を考えるのであった。
「あいつ、どこだ?」
組に皆へのお土産であるカップケーキを購入した後、お土産コーナー周辺で小島を探していた。しかし結構な人混みなのと、龍珠は割と背が低いせいもあって全然見つからない。
(まさか、帰ったか?いや、あいつに限ってそれは無いな。あいつ、真面目だし)
一瞬勝手に帰ったかと思ったが、小島の性格からしてそれは無いと断定。恐らく、トイレか何かだろう。
(でもあれだけ真面目だったら、もしあいつと付き合っても浮気とか全然無いだろうな。仮に子供が出来ても、あいつは絶対に責任取るだろうし)
今日1日だけでなく、小島が真面目な人という事は知っている。少し頑固な部分はあるが、それでも小島は誠実で真面目だ。もしそんな彼と一緒になったら、彼女は幸せだろう。
(っ私今、何を考えて…!?)
そして龍珠は、今自分がそんな恋する乙女みたいな事を考えていた事に仰天。本当に、自分はどうしたというのか。修学旅行までは、こんな事無かったというのに。
「いた!龍珠!!」
「あ?」
自分で自分に驚いていると、後ろから小島の声がしたので振り返る。
「これ、受け取ってくれ!」
「え?」
振り返った瞬間、龍珠の眼の前には大きなアシカのぬいぐるみが写った。それは、先程まで自分が欲しいと思っていたぬいぐるみである。
「え?いやいや、受け取れないって…」
正直に言うと超欲しいが、流石にこれは受け取れない。だってお値段1万円超えのぬいぐるみだ。なんの理由も無く、こんな高価な物は受け取れない。
「いや、これは今までの詫びなんだ」
「は?詫び?」
「俺ってさ、去年までずっとお前と喧嘩ばかりしてただろ?今思えば、俺はマジで酷かった。お前と禄に話すこともなく、一方的にお前を悪者扱いだ。だからこれは、その時の詫びなんだ」
「いや、だったら私だって売り言葉に買い言葉だったろ。お互い様じゃん」
「だとしても、元はと言えば俺が悪い。だから、受け取ってくれ」
小島なりに、理由あってのプレゼントである。ある意味これは、これまでの禊にようなもの。これでしっかりと龍珠に詫びを入れる事で、自分も後腐れ無く前に進める。勿論、これは龍珠が受け入れてくれる事が前提だ。もし断られたら、その時はまた考えよう。
「……あーもう。わかったよ。そういう事なら、これはちゃんと受け取る。だから、これで去年の事は全部チャラだ」
「っ感謝する!」
だが龍珠は、それを受け取る決断を下す。このアシカのぬいぐるみが欲しかったし、何より小島の誠実さに負けたのだ。あと、ここで受け取らないと多分小島は後日また似たような事をする気がしたので、今受け取る事で今後の騒ぎを起こさせないという判断である。
「あと、私も悪かった。ごめん」
「いいや、龍珠が謝る事じゃないさ」
ついでに、しっかりと自分も謝る。これで、お互い様だ。
(こいつ、態々そんな事まで…)
受け取ったアシカのぬいぐるみをぎゅっと抱きしめて、龍珠は改めて小島を見る。去年までは憎き敵としか思えなかったのに、今では全然そんな風に思えない。
むしろ、こうしてしっかりと詫びを入れたりしたり、今日はずっと自分を見てデートをしてくれたりと、好意的に思える。そして小島であれば、他の有象無象の男なんかより全然アリだと思ってしまった。
(何だこれ…本当に何なんだよもうっ…!!)
そう思った途端、龍珠は考えが纏まらなくなり、胸が苦しくなり、まるでオーバーヒートしそうなくらい顔を赤くしてしまう。これは行けない。ぬいぐるみで顔を隠しているとはいえ、これでは直ぐにバレる。
「わ、私ちょっとお手洗い行ってくるから!」
「わかった。じゃあ、あっちで待ってるよ」
なのでまたトイレに行って、冷静になろうと考えた。
しかし、
「い゛」
「龍珠ーーー!?」
ぬいぐるみで顔を隠していたせいで前が見えず、そのまま段差に気が付かずそのまま足をこうグキッとくじてしまったのだ。
「…なぁ、小島」
「何だ?」
「その、私重くないか?」
「全然。ちっとも重くない」
「そうか…」
水族館からの帰り道、龍珠は小島におんぶをさせて貰っていた。あの後、足をくじいた龍珠は歩けなくなってしまった。もう少し見ていこうとしていたのだが、こうなっては仕方がない。そこで帰ろうとしたのだが、この水族館にはタクシー乗り場が無かったのである。なので少し離れたタクシー乗り場まで行こうとしたが、どうやって行けばいいかわからない。
そこで小島が、龍珠を背負う事にしたのである。
最初こそすっごく抵抗していた龍珠だったが、他の方法が無いし、何より小島が凄く心配してくれていたのを見て、龍珠は背負われる事を承諾。そして今、こうしておんぶされて移動をしている。
「アシカは?」
「こっちにちゃんとあるぞ。あと、買ったおみやげもある」
「そうか…」
水族館デートとは違い、どこかぎこちない会話をする2人。それもそうだろう。なんせ年頃の2人が、おんぶをしているのだ。体が凄く密着しており、お互いの心臓の音さえ聞こえそうである。
(ああああ!!マズイ!これはマズイ!!さっきから龍珠の胸が背中に当たってる!!それに、俺の両手が服越しとはえいえ、龍珠の足を触ってる!!マジでヤバイって!!)
特に小島がヤバイ状態である。好きな女の子をおんぶしているのだ。思春期の男子に、これはある意味で劇薬である。あとちょっと上に手をやれば、龍珠の太腿や尻を触れてしまうかもしれないというのヤバイ。
「一応言っておくが、変なとこ触ったらマジでぶっ殺すからな?」
「も、勿論だ!絶対に触らない!!」
うっかり事故とみせかけて、もう少し上の部分を触ってしまいそうになるが、龍珠の一言でなんとか理性を取り戻してなんとかなった。
(こいつの背中、こんなに広いのか…)
そして龍珠は、小島に背負われながら男の背中の広さを実感していた。組の若衆みたいに広く、ガッチリとした安心する背中。これだったら、いっそ家までおんぶしてもらいたいくらいだ。
(ああ…くそ…)
自分の顔がまた赤くなるのを自覚しながら、龍珠はいよいよ自分の気持ちと向き合う。これまでずっと、自分の気持ちを否定してきた。なんだか認めるのが癪だったし、恥ずかしかったからだ。
(認めたく無ぇ…認めたく無ぇけど、認めるしかねぇ…)
でも、もういい加減認めるしかない。ずっと気が付かないふりをしてきたが、もう無理だ。これ以上、事実から目を背ける事は出来ない。
そしてとうとう、龍珠は認めた。
(私は、こいつに惚れてる…)
自分が、小島に惹かれている事を。
(ああ、何か、心が軽くなった気分だ…)
最近ずっと、小島の事を考えると胸が苦しかったり、もやもやしていたのが、一気に消えて行く。まるで生まれ変わったような気分だ。今なら、空だって飛べるかもしれない。
(もっと早く、認めていればよかったかもな…)
こんなにスッキリするのなら、意地を貼らずもっと早く素直になれば、苦しまずにすんだだろう。
(でも、告白はなぁ…)
ようやく自分の気持ちに気がついた龍珠だったが、だからといっていきなり小島に告白は出来ない。小島だって困るだろうし、告白の仕方なんて知らないし、そもそも自分から告白するのは超恥ずかしいからだ。
(だからって、ずっと何も言わないと、誰かに取られるかもしれない…)
しかしそのまま何もせずにいると、かぐやと眞妃の仲間入りである。それだけは、断じて嫌だ。なのでその辺は、ちゃんとするとしよう。
(けどまぁ、今は、このままで…)
でも今はとりあえず、このまま小島の背中を堪能しておこう。そして、もう少し気分が落ち着いたら、しっかりと事を運ぼう。
「綺麗だな」
「そうだな」
ふと見た夕焼けが、なんだかやけに綺麗に見えた。まるで、龍珠の恋を現しているかのようである。
その後、小島にタクシーに乗せられて家にちゃんと帰った龍珠は、しっかりと組の者から手当を受けて、大事には至らなかった。
そしてその日から、小島に貰ったアシカのぬいぐるみを、毎晩抱きしめて寝るようになったのである。
なんだか、龍珠がチョロい気がする。まぁ、本作ではこういう子って事でひとつ。ついでに小島も、恋に猪突猛進な子になってるけど、この子も本作ではこんな子ってことでお願いします。
この2人の恋の行方は、またそのうち。
次回は多分、また日常回かも。
それでは皆さん、またね。