竜帝と魔王の異世界冒険譚   作:桐谷 アキト

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お待たせしましたぁ!!

71話更新です!!


71話 白い亡霊

 

 

ドライグやヘスティアには伝えていなかったが、あの時メルジーネ海底遺跡でドライグの過去を見たあと、俺は一つの可能性を考えていた。

決してドライグ達には伝えるべきではない胸糞悪すぎる最低最悪な可能性を。

 

その可能性とは…………『アルビオンの遺体が本当は焼失していなかったら?』だ。

 

あの時、覇王の如き様相で暴走したドライグはその身から有り余るほどの絶大なオーラを以って周囲にいた使徒を消し飛ばした。その時、アルビオンの遺体も消し飛んだと考えるのが妥当だ。

 

だが、仮に、もしも仮にだ。仮に、あの最初の波動で消し飛んでいなかったら?

消し飛ばずにあの場に残っていたとして、最終的に暴走が収まった後遺体がどこを探しても見つからなかったのは何故だ?

 

暴走の間にドライグが齎した地獄の最中で焼失したか?

 

その可能性は十二分にあり得る。むしろ、そう考えるべきが妥当だ。

 

だが…………エヒトの性格を考えた場合、俺は一つの最悪な可能性に至ってしまった。

 

だって、俺はドライグの記憶を通じて知っているからだ。

エヒトが操る使徒達は人々を魅了の力によって洗脳して自分達に都合のいい狂信者に変えてしまうことを。

 

だから考えてしまうのだ。

 

エヒトがドライグの最愛の番であるアルビオンの遺体をそのまま放置するだろうか?

あの地獄の最中でエヒトが、あるいは使徒がなんらかの手段でアルビオンの遺体を確保し、その遺体を再利用していたとしたら?

考えたくない最悪の結論だ。だが、俺は考えなければいけない。エヒトに抗うために、最善、最高だけでなく、最悪にして最低の結末すらも想定した上で対抗策を編み出さなければいけない。

 

だから、俺はその万が一の時が来た時、何が何でも抗い、過去の呪縛を打ち破りドライグを守ろうと決意した。

それこそが、雫やセレリア、ハジメ達を守ることにも繋がるのだから。

たとえ俺が考えた最悪の結果に………()()()()()()()()()()()()()()()()()使()()()()()()()()()()としても、俺はその困難を乗り越えなければならない。

 

 

まさしく、今目の前で起こっている現実(悪夢)を。

 

 

▼△▼△▼△

 

 

「初めまして、そしてさようなら。二代目赤竜帝紅咲陽和。私の名はヌル・イナニス。我が主の命によりあなたを排除しにまいりました」

 

宙空に佇み名乗ったアルビオン改めヌルは淡々と己の目的を告げる。

瞬間、戦場の時間が停止した。

それは彼女自身が美しかったからではない。名乗りと共に爆発的に迸った、絶大な魔力の気配を感じたが故にだ。

戦場の全ての兵士達が呆然と見上げ、歴戦の猛者であるディレイド達ですら桁違いの圧力に冷や汗を噴き出す。雫やセレリアも愕然としている中、ドライグが驚愕の声を上げた。

 

『バカなっ……ありえないっ‼︎どうして、アルビオンがいるのだっ⁉︎それにその姿はなんだっ⁉︎』

 

ドライグは確かに彼女が死ぬ瞬間を見た。

暴走し正気を取り戻した後、何度探しても彼女の遺体は見つからなかった。だから、自身が彼女の亡骸を消し飛ばしたと理解させられた。

なのに、生前とは装いなど異なるところはいくつかあれど、自分達を見下ろす彼女はまさしくドライグが愛したアルビオンその人だった。

ヌルはそんなドライグの疑問に淡々と応える。

 

「その声、やはりあなたの体にかの赤竜帝はいるようですね。ならば、ちょうどいい。我が主はあなたに感謝していましたよ」

『感謝、だと?』

 

わけのわからない発言に困惑するドライグにヌルはかつて主がこぼしていた言葉を告げた。

 

「我が主は大変喜んでおられていました。“赤竜帝”ドライグ、あなたのおかげで竜人族の素体ーしかも、始まりの竜人族、“白竜妃”アルビオンの肉体を得ることができ、より強い駒をーこのヌル・イナニスを造ることができたのだと」

『———ッッ‼︎』

 

表情は変わらない。声音に抑揚もない。

だが、その言葉に確かな悪意が宿った言葉に雫とセレリア、ヘスティアは総毛立つ。ドライグも察しがついてしまった。彼女の亡骸が消えた本当の真相を。

 

『ま、まさかっ…き、貴様らっ、あの時っ…‼︎』

「想像の通りです。あの時、我々が彼女を殺し、あなたが暴走するまでのわずかな時間に我が主は自らの手で回収したのです。アルビオン・グウィバー・ウェルタニアの亡骸を」

 

彼女の亡骸はドライグに焼かれていなかったのだ。

亡骸が消失した本当の理由は、あの時エヒトが自らの手で回収し己が住まう領域ー神域に転送したからにほかならなかった。

そんな最悪の事実を理解しドライグが怒りを爆発させようとした瞬間、

 

「——————ッ」

 

大地から紅蓮の閃光が飛び出してヌルを強襲する。

重い金属音が響きヌルの身体が後方へと弾かれるが、彼女は眉ひとつ動かすことなく構えていた双大剣から伝わる衝撃を感じながら紅蓮の閃光に視線を向ける。

 

「———紅咲陽和、あなたですか」

『———ヌル・イナニス』

 

紅蓮の閃光ー紅咲陽和がヌルから少し距離を取って滞空していたのだ。既に切り飛ばされた左腕や切り裂かれた傷は修復されており、鎧も修復されている。

彼は竜聖剣の鋒をヌルへと向けながら淡々とした声音で問うた。

 

『貴様、俺を排除しに来たと言ったな。それは、俺の存在がエヒトのシナリオに不都合だからか?』

「はい、あなたの存在は我が主の筋書きの邪魔となります。故に、あなたを排除し主の筋書きを成立させるべく、私が遣わされました」

『………本来の神の使徒ではなく、わざわざアルビオンの遺体を使った使徒を差し向けてきたのは、その方が俺達に動揺を与えられると判断したわけか。二代目を死んだはずの先代妃が殺しにくる。なるほど、エヒトが喜びそうな展開だ』

「その通りです。ですが、あなたは赤竜帝ドライグと違って戸惑いもなければ、激怒もしていないのですね。我が主はあなたが怒り狂う姿も楽しみにしていたのですが」

『……ああ、貴様には今の俺が冷静に見えているのか』

 

ヌルは陽和を見て冷静だと判断したが、彼は冷静などではなかった。その証拠に下では雫達はヌルではなく陽和を見て冷や汗を一層噴き出している。

彼から放たれるドス黒い殺意の宿った紅白のオーラ。それはヌルが放つ絶大なプレッシャーに比肩し暴力的な殺意となって荒れ狂っていた。

感情があるものならば気づけるほどのプレッシャーだったが、感情がないが故にヌルは彼の変化を認識できていないだけ。

 

『………どうやら、人は怒りが限界に達すると逆に冷静になるらしい。エヒトへの怒り以上に貴様を倒してアルビオンさんの身体を取り返すかをずっと考えている』

 

一見冷静に見えるようだが、その実、強すぎる憤怒が感情の限界値を突破してしまい感情が振り切れてしまっただけのこと。つまり、今の彼は一周回って冷静になってしまうほどにブチギレているということだ。

炎とは一見激しく燃え盛る方が高温のイメージがあるが、実態は真逆でで高温であればあるほど炎は静かに燃えるもの。今の陽和はまさしくそれだった。

陽和は普段の彼からは想像もつかないようなあまりにも低く冷たい声音で宣言する。

 

『………エヒトの思惑なんざ知ったことか。俺はただ貴様を潰すだけだ』

 

竜聖剣を構え直し、はっきりと告げる。

紅蓮の劫火が彼の総身から噴き出し空間を焼き尽くさんと燃え盛った。

 

『………あ、相棒』

『ドライグ、お前の怒り俺に託してくれ。必ず奴をぶちのめして、彼女を取り返してみせる』

 

ドライグの動揺ははっきりと伝わってきた。

最愛の肉体を弄ばれ利用された憤怒。己の過ちによって齎されたという絶望。湧き上がったあらゆる負の感情を陽和は受け止める。

怒る気持ちは同じだと。自分達は共に生きているのだから、その怒りを託してくれと。必ず取り返すと約束するからと、陽和は己の覚悟を言葉にする。

 

『ヘスティア、サポートを頼む。俺達で彼女を取り返すぞ』

『勿論だよ。ボクもここまで頭に来たのは初めてだからね』

 

陽和の怒りに呼応してか、ヘスティアも怒りに満ちた声音で返す。

紅白のオーラに翡翠の輝きが混ざり、三色の輝きと紅蓮の劫火を放つ陽和は、ヌルに向けて冷酷な声音で宣戦布告をした。

 

『ヌル・イナニス。貴様はここで俺が倒すっ‼︎‼︎』

「紅咲陽和。我が主の威光の前では須く無意味だと理解しなさい」

 

陽和の宣戦布告にヌルもまた淡々と宣戦布告を返し、2人はいよいよ激突した。

 

 

▼△▼△▼△

 

 

突如勃発した白銀と紅白の激突。

陽和が竜聖剣を天に掲げ長さと太さを極大に増した劫火の大剣をヌルに叩きつけ、ヌルが白銀の魔力を双大剣に纏わせて陽和同様巨大な大剣へと変えて受け止める。

紅蓮と白銀が激突し、周囲の雲が吹き飛び、世界が紅白に染め上げられる。

初撃を相殺された陽和は翼を羽ばたかせて、一気に上空へと飛翔し、ヌルが純白の竜翼を羽ばたかせて後を追う。

 

「セレリア‼︎私達も加勢するわよ‼︎」

「ああ‼︎」

 

確実にディレイドを上回るであろう強敵相手に対し、消耗している陽和1人では分が悪いと判断した雫達は援護に向かおうとする。

だが、

 

『来るな‼︎‼︎』

 

念話石越しに雷鳴が如き一喝が2人を止める。

どうして、と問おうとした時陽和が続けた。

 

『足手纏いだ‼︎護りながら勝てる相手じゃない‼︎』

 

取り繕う余裕がない声だったからこそ、それが覆しようのない事実だと理解させられ、2人の表情が苦渋に歪む。

 

『で、でもあなただって万全じゃないわ‼︎私達だって援護ぐらいは‼︎』

『援護にならない‼︎2人は王都に向かえ‼︎』

『で、でもっ‼︎』

『獣魔兵がもう1人いるっ‼︎急がないとレイカ達が死ぬ‼︎俺よりもそっちを優先しろ‼︎‼︎』

 

雫は必死に食い下がるが、陽和も譲らない。

余裕がないからこそ端的に指示を出してすぐに念話を切ってしまった。

 

「………雫、陽和の言う通りだ。私達では足手纏いになる。私達は王都に急ぐべきだ」

 

セレリアは悔しそうな表情を浮かべながらも、雫の肩に手を置いて諭す。彼女も理解していた。自分達ではあの戦いにおいて援護すらできないと。

 

「で、でもっ‼︎」

「雫っ、気持ちは分かるっ。だがっ、私達には彼を信じることしかできないっ」

「〜〜〜〜っっ‼︎‼︎」

 

そんなことはわかっている。

だが、ディレイドとの激闘で明らかに無茶をしたであろう陽和のことを想えば信頼よりも不安の方が強かった。

さっきは食い下がったが、雫だってあの戦いで出来ることは何もないことは理解している。だが、心が納得いかないのは無理もない話だ。

悔しそうに俯く雫を横目にセレリアはディレイドに陽和の通信の真偽を問うた。

 

「……兄さん、さっき陽和が獣魔兵がもう1人いると言っていた。それは王城で内通者に協力しているのか?」

「……そんなことまで気づいていたのか。流石だな、彼は。ああ、その通りだ。6号個体が王城での任務にあたっている」

 

陽和だけが気づいた六人目の獣魔兵。

彼の発言から王城にいると推測したセレリアの問いをディレイドは肯定する。

 

「『緑鷹(りょくおう)』ガイル。我らの中で最も隠密に優れた者だ。紅咲陽和が気付けたのは流石だが彼が気づいたと言うことは少なくとも、向こうでの作戦が順調に進んでいると言うことになる」

「ッッ‼︎と言うことは……」

「先ほど何を話していたかはわからないが、お前の仲間達が劣勢なのは確かだろう。彼の言う通り急いで向かった方がいい」

 

セレリアの表情が自然と険しくなる。

自分達が戦ったクレア達の強さを考えれば、『緑鷹』と呼ばれる獣魔兵も同等の実力だと考えた方がいい。であれば、王城に向かったメンバーでは恐らく勝てないだろう。

自分達が向かわなければ、彼女達の命はない。

 

「雫、王城に向かうぞ。私達が対処しなければ、向こうの皆が死ぬ。陽和のことはもう信じるしかできない」

「………ええ、分かったわ。ごめんなさい、取り乱したわ」

「いや、気持ちは分かるからな」

 

今の短い会話の間に自分を落ち着かせた雫にセレリアは労わるような目を向けながら返す。

そうして2人がいざ王城へと向かおうとした時、ディレイドが彼女を呼び止める。

 

「セレリア、少し待ってくれ」

「兄さん?」

「……勝手なことを言うが、何があっても『緑鷹』を…あの子を殺さないでほしい」

「………状況にもよるが、理由を聞いてもいいか?」

「詳しいことは話せない。……だが、頼む、命だけは奪わないでくれ」

 

表向きには敵対関係である以上、本来であれば敵である存在を殺さないでくれなんて頼んでいいことではない。

だが、セレリアは兄の真剣な眼差しに少しの思考の後、頷き了承する。

 

「分かった。ただ、保証はできない。なるべくそうするが、状況によっては約束は守れないかもしれない」

「それで構わない。ありがとう」

 

ディレイドの感謝に頷いたセレリアは今度こそ雫と共に飛翔し王城へと向かった。

その遠ざかる背を見送るディレイドは目の端に涙を滲ませながら、小さく笑った。

 

「………本当に、立派になったな」

 

遠ざかる妹の背中。

それは自分の記憶の中のそれよりも大きく立派で、ディレイドはようやく彼女の成長を実感することができた。

 

「赤竜帝君のおかげね。彼があの子の笑顔を取り戻したのね」

「ああ、彼がセレリアを護ってくれてたんだ。だから、あの子はあんなにも大きく育った」

「………そうだな」

 

2人の言葉に小さく笑うとディレイドは上空の激闘に視線を向ける。上空での戦いは一層激化しており、ともすれば自分と戦っていた時以上だ。

そうせざるを得ないほどの強敵ーヌル・イナニス。

陽和達の反応を見れば彼女は赤竜帝ドライグの番であった白竜妃の死体を使って作られた使徒だということは想像に難くない。

 

(…………あれが、真の神の使徒か)

 

氷雪洞窟でヴァンドゥル・シュネーが残した記録を読んだから、存在は知っていたが実際に見るのは初めてだ。

初めて見たからこそ確信する。

 

(………アレは、駄目だ。この世に存在してはいけないモノだ。アレに勝てねば、俺達に未来はない)

 

今になって漸く己が進もうとした未来が絶望そのものだったと痛感した。その末路を真の意味で実感し、ディレイドは己の過ちを心底悔やんだ。

確かにアレが存在する限り、自分達に平穏は決して訪れないだろう。打ち倒すことでしか未来がない。

だからこそ、祈った。

 

「………負けるなよ、陽和君」

 

己の闇を照らしてくれた英雄の勝利を。

 

 

▼△▼△▼△

 

 

月下に白銀の魔弾と紅蓮の流星が無数に駆け抜け、一際眩い2種類の閃光が幾度となく衝突し、その度に凄まじい衝撃波と轟音が迸っていた。

その飛翔速度は優に音速を超えており、急制動、急発進、鋭角転身、回転、宙返りなどなどあらゆる慣性の法則を無視したような空中戦闘機動が繰り返される。

それを成す双星の片割れである紅白の閃光たる陽和はーーー

 

『はぁ、ぐぅぅっ、づぅっ』

『『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost‼︎‼︎‼︎』』

 

息も絶え絶えと言った様子で苦悶の声を上げていた。

2人の戦いの場は王都前から神山裏側の北の山脈地帯に移っていた。

戦闘開始から5分しか経過していないが、そのたった5分で陽和は明らかに劣勢に立たされていた。

それも全ては陽和が戦っている相手“真なる神の使徒”ヌル・イナニスが化け物じみた強さだったからだ。

 

「温い」

 

冷徹な一言と共に背中の四枚の竜翼から放たれる銀羽の魔弾が、陽和の操る紅蓮の流星を悉く掻き消していく。

ーーー固有魔法“分解”。

エヒトにより与えられた“神の使徒”の基本能力にして最強の魔法。ありとあらゆる全てを塵芥へと分解する魔法が陽和の魔法を分解する。それが、銀羽の魔弾となって間断なく掃射されるのだ。

ホーミングはデフォルト。四方八方上下左右360度。あらゆる場所、角度からあらゆる軌道を描いて襲いかかってくるのだ。

守護衛星たる“紅天の竜星群”はもちろんのこと。超重力場たる“禍天”“絶禍”、陽和オリジナルの二重防壁“浄火の大光盾”、空間魔法による空間障壁などなど陽和が有する防御手段は全て使っていると言っても過言ではない。並大抵では突破すら不可能な堅牢な防御を、ヌルは“分解”の魔法一つで容易く突破してしまう。

そうすれば必然と陽和に直接届くわけでーーー

 

『づぅぁぁっ⁉︎』

 

なんとか回避を試みるが、いくつかは回避しきれずに堅牢な鎧を容易く分解して体に風穴が空く。

それは1秒ごとに1秒前の状態に復元する再生魔法を重ねがけした“刻永・十連”とヘスティアの回復のおかげで修復され、“倍化”と“臨界突破”により極限まで強化された肉体のおかげで陽和はまだ辛うじて戦闘ができている。

だが、陽和が追い込まれているのは何もヌルが強すぎるからだけではない。

 

「……………」

『っっ、ぐそっ、またっ』

 

ヌルが陽和に片手を翳した瞬間、陽和の身体から赤い光が溢れてヌルに吸収されていき、明らかに動きが精彩を欠き、纏う魔力も著しく減少した。

陽和の顔が苦渋に歪み、体の各所に浮かんでいた濃い呪詛が不気味な光を放つ。これこそが、彼を苦しめるもう一つの元凶。

ーーー固有魔法“半減”と“減少”。

竜人への転生により獲得したアルビオンの固有魔法。触れた対象の力を10秒ごとに半分にして己の糧にするというドライグの“倍化”と対を成す技能と魔力や肉体、魂などを徐々に削る邪毒の技能。

“半減”や“減少”の発動条件は共に対象への接触が発動条件なのだが、それは最初の邂逅で満たしてしまっているため、陽和は“倍化”で強化しても“半減”させられ、更には“減少”の毒気によって力を奪われ続けているのだ。アルビオンの死体を使っているからこそ、生前の彼女の技能も扱えていた。

そして、強者同士の戦闘で一時的に己の力が半減されるというのは十分に隙になりえるものでありーーー

 

「早く落ちなさい」

「ッッ‼︎」

 

頭上に影が差す。銀光を纏う双大剣を振りかぶったヌルがいた。陽和は腹部の炎を一瞬で収束し爆破させて無理やり距離をとる。

爆破の衝撃が陽和の肉体にダメージを与えるものの、閃光の如き剣撃を陽和は紙一重で回避することができた。

 

『———“紅華・爆炎刃”ッ‼︎』

 

爆炎の刃を無数に放ちヌルを四方から焼き砕かんとする。

銀羽の魔弾と同等の密度での大量掃射は炎の尾を引きながらヌルに殺到する。

 

「愚かですね」

 

全身から銀の魔力を放ち、襲いかかる炎刃全てを分解させると炎の残滓が舞う中一気に陽和との距離を詰める。

 

『なっめんっ、なぁぁっ‼︎‼︎』

『『Explosion‼︎‼︎』』

 

彼は口を開き迫るヌル目掛け紅緋の極光を放つ。しかも、圧縮してより貫通力を高めた仕様でだ。

それをヌルは片手から銀の分解砲撃を放ち、正面から容易くぶち抜いた。銀の砲撃はそのまま槍となって陽和へと迫る。

 

『ヘスティアァァッッ‼︎』

『任せてっ‼︎』

『Dragon Armor Change Solid‼︎‼︎』

 

ヘスティアが応える。

鎧の装甲が魔力で補強、追加生成され重装甲化する。同時に魔力防御を集中させて、分解砲撃を受け流す。

分解の魔力を纏うが故に装甲が削られるが、一瞬で分解されることはなくわずかに逸らされて右脇腹を抉られるだけにとどめた。

だが、視界の端でもう片手の大剣が煌めいたのが見える。

 

『ッッ‼︎‼︎』

 

慌てて翼を羽ばたかせて、重力魔法も併用して上空へ無理やり飛翔するが、その時にはすでに銀の極大剣が迫っていた。

更に回避しようにも、その大剣はあまりにも巨大すぎて回避しきれずに左脚が斬り飛ばされる。

しかし、その直後、通過した極大剣がまるで()()したかのように空中で軌道を反転させて陽和を背後から強襲したのだ。

 

『マスターっ‼︎‼︎』

『相棒っ‼︎‼︎』

『……かっ……⁉︎』

 

ヘスティア達の警告も虚しく、背後から逆袈裟に斬られ鮮血が噴き出した。わずかな筋肉の繋がりを残し、胴体が斜めに切り裂かれたのだ。口からも血の塊が吐き出され、意識が霞み動きが鈍る。

その隙をヌルは容赦なくつき、弐之大剣で陽和を両断せんと振りかぶる。が、それはヘスティアが阻んだ。

 

『させないっ‼︎‼︎』

 

ヘスティアが巨大な炎鳥“朱雀”を強制的に遠隔発動させて陽和を庇ったのだ。片翼で陽和を包み込み、もう片翼でヌルを薙ぎ払おうとする。

 

「無駄な足掻きを」

 

しかし、そんなものヌルにとっては小細工にもならない。

ヌルは“朱雀”ごと陽和を両断しようとそのまま大剣を振り下ろすが、超高密度に圧縮された炎塊の片翼は一瞬で塵芥にはならず、大剣の動きを確かに減衰させた。

 

『今のうちにマスターをっ‼︎‼︎』

『っ、あぁっ‼︎』

 

その間にドライグが陽和の背後にゲートを出現させて、ヌルから離れたところに転移させる。

 

『ッッ⁉︎……げぼっ、ごほっ、ガハッ』

『相棒大丈夫かっ‼︎しっかりしろ‼︎‼︎』

 

障壁の足場に横たわる陽和は一度大きく体を痙攣させると何度も血を吐く。傷や斬られた足はすでに復元しているが、蓄積されたダメージは回復しきっていなかった。

とはいえ、そんなことで諦める彼ではない。

 

『ま、だだっ……まだっ、やれるっ』

 

傷が完全に塞がるや再びヌルへと立ち向かおうと翼を広げるが、それをドライグが止める。

 

『もういい‼︎相棒、逃げてくれ‼︎これ以上は相棒がっ‼︎』

『ふざけんなぁっ‼︎‼︎』

 

ドライグの懇願を陽和は怒号で返す。

文字通りで死に体でありながらそれでも瞳に宿る覚悟の炎は決してを弱まることはなく、むしろ一層激しく燃えていた。

 

『お前はそれでいいのかっ⁉︎愛する女がいいように利用されてんだぞっ⁉︎俺の心配よりも彼女を取り戻す方法を考えろよっ‼︎‼︎』

『〜〜〜ッッ、だ、だがっ、それよりも今は相棒の方が大事だっ‼︎』

『だったら尚更、諦められるわけがねえだろがっ‼︎‼︎』

『相棒っ‼︎‼︎』

 

ドライグの心配をなおも否定し、彼の静止を無視して翼を広げて飛翔。障壁を踏み砕き一条の閃光となって飛び出す。

丁度“朱雀”を分解し消滅させたヌルはこちらに向かう彼を見下ろしながら淡々と告げた。

 

「まだ抗いますか。それならば、こちらも少し本気を出しましょう」

 

ヌルの全身から白銀の魔力が噴き上がり、彼女を白銀の輝きが包み込む。

輝きは瞬く間に巨大化し形を変え、やがて巨大な四枚の翼を広げる白竜が姿を現した。

翼の枚数に変化はあれど、その姿はまさしく生前の竜化したアルビオンの姿だった。

 

『精々踊りなさい。紅咲陽和』

 

白竜と化したヌルの顎門に閃光が収束されノータイムで白銀の極光が放たれる。先程の分解砲撃よりも格段に太さが増した極光は空間を掻き消しながら迫る。

陽和は咄嗟にゲートを開き上空へ転移回避。アルビオンの背後へと回り込み狙い打とうとしたのだが、

 

『先程よりも遅いですね』

 

既にアルビオンは振り向いており、陽和に向けて顎門を開いて眼前に迫っていた。

 

『チィッ‼︎』

『『Wing Shield Set‼︎』』

 

虚を突かれながらも何とか翼に装甲を集中させて盾翼を形成し自分の身を包み込んでの防御が間に合う。

刹那の差で盾翼から鋭い金属音が鳴り響き、牙が突き立てられる。

 

『ぐっ、うぅっ‼︎』

 

辛うじて一息に食い千切られる事態は免れたものの、現在進行形で銀光を纏う牙が装甲を分解して食い込みつつあるのだ。埒外の膂力と分解の牙により陽和の口から苦悶の声が溢れる。

 

『その鎧、少々面倒ですね』

 

呆れた声とともに分解能力が強まり盾翼を食い破る速度が増す。砕ける音が幾度となく響き、翼の装甲が砕かれていく。

このままでは10秒もしないうちに砕かれ喰われるだろう。

そうなる前にどうにかせねばと、陽和は顎門に炎を収束させて閃光を放とうとする。だが、その瞬間、再び“半減”により容赦なく力が奪われ、脱力してしまう。

瞬間、盾翼は完全に砕かれーーー

 

『ぐっ、ああぁぁぁっ⁉︎』

 

胴体に牙が突き立てられ、下半身が容易く喰い千切られた。上半身の断面から鮮血と臓腑が溢れ落ち、千切れた翼の残骸と共に地上へ落ちていく。

“刻永”により即座に再生されるが、陽和は微動だにせずそのまま落ちていった。

 

『これで終わりです』

 

ヌルは落下する陽和目掛けて勢い良く降下。

今度こそ陽和を喰い殺さんと追撃するが、陽和は諦めておらず今度こそ顎門に収束した極光を解放した。

 

『『Over Explosion‼︎‼︎‼︎』』

『“聖火の竜咆“ァァァァッッ‼︎‼︎‼︎』

『———⁉︎』

 

渾身の必殺砲撃。

魂を削り捻出した莫大な魔力による一切焼滅の咆哮。

思わず目を見張るヌルだったが、一瞬にして無機質な眼差しへと戻り、即座に銀の魔力を全身に纏わせて突貫。咆哮を分解しつつ、“半減”“反射”“減少”により息吹の威力を極限まで削りながら突破し、陽和を凶爪の範囲内に捉え、今度こそその命を刈り取らんと振るった。

 

『“浄火の大光盾”ッッ‼︎‼︎』

『『Boost‼︎‼︎』』

 

竜聖剣を盾へと形態変化させ、光と炎の二重障壁も再度展開し、分解の鉤爪を防ぐ。

一瞬で分解されることはなかったものの、衝撃は殺しきれずに陽和は吹き飛び、今度こそ地面に墜落した。

砂埃をあげて墜落し、それでも殺しきれずに無様に地面を転がる。

 

『…………ぐっ………ぁあっ』

 

何度も転がり漸く止まったが陽和は立ち上がることすらできず地面に横たわったまま掠れた呻き声しか出せない。

限界などとうに迎えていた。

ディレイドとの戦いで既に体内魔力は使い切り、魂を削ってまで魔力を消費しなければ勝てなかった。

ヌルとの戦いでは最初に“ディア・エイル”で回復させた魔力はすぐに底をつき、魔晶石にストックした魔力は保有している分は全て消費し切った。故に、再び魂から魔力を捻出しているのだが、幾度も致命傷を負い強引に回復させてきたからこそ、“女神の祝福”の回復も追いつかず肉体の方が先に限界を迎えてしまったのだ。

更に付け加えるならば、戦闘開始時から発動されていた“減少”の毒気による呪詛。それが今もなお継続的に彼のありとあらゆる全てを減少させており、体力やスタミナまでも削られ続けているのだ。

現に彼はもう“竜化”すらできていない。魔力が枯渇しかけているのもあるが、竜形態で戦闘できるほどのスタミナがもはやなくなっていた。

 

『マスターしっかりしてっ‼︎立つんだっ‼︎早くっ‼︎』

『相棒逃げろっ‼︎逃げてくれっ‼︎頼むっ‼︎‼︎』

『………ぁっ………ぅっ………』

 

ヘスティアやドライグが必死に呼びかけても返事はなかった。砕けた兜から見える瞳は半ば虚に、血まみれのまま無様に地面に這いつくばることしかできていない。

ヘスティアがどうにか“女神の祝福”や“刻永・十連”を維持させているが肝心の陽和本人の魔力が枯渇しかけているため、思うように回復ができておらず、砕けた鎧もボロボロのままだった。

 

『まるで蛆虫ですね。見るに耐えない悍ましい姿です』

 

その無様を少し離れたところに降り立ったヌルは見下ろし、侮辱する。死に体となった陽和はそれに反応することもできない。

 

『…………どうやら、ノイントは失敗したようですね。イレギュラーに殺されましたか』

 

ヌルは不意に空を見上げそんなことを呟いた。

それは偶然にも陽和の耳にも届き、沈みかけていた意識を繋ぎ止めた。

 

(イレ、ギュラー……?)

 

ぴくりと指が小さく動く。

イレギュラー。それが誰を指しているのかはわからないが、陽和はこれまでの状況から1人心当たりがあった。

自分以外で神の使徒と戦っているのは知る限り、ハジメとティオの神山救出組の2人だ。なら、イレギュラーというのはつまり………

 

(……ハジ、メ?)

 

そう、彼ならば、己の親友である彼ならば、奈落の底にて生き抜く力を手に入れたアイツならば、イレギュラーと呼ばれてもおかしくはない。

 

『………ノイントが敗北した以上、私が出向かなければいけませんね。紅咲陽和を殺し、その首を見せれば確実に排除できましょう』

(…………ッッ⁉︎)

 

陽和を殺しその首を見せれば、親しき者ならば動揺するだろう。そうして隙を見せれば、労せず仕留められるし主の筋書きを盤石なものにすることができる。

 

『いずれにしろです。紅咲陽和、まずはあなたの首をいただきましょう』

 

首を確保するべく、陽和を直接己が手で仕留めようと竜化を解除し双大剣を手に持つと、彼に一気に肉薄して首を刈らんとギロチンの如く大剣を振り下ろす。

 

「ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッ‼︎‼︎‼︎」

 

突如、彼を中心に大爆発が発生し、ヌルを退ける。

流石にこの大爆発はヌルも距離を取らざるを得ず、竜翼を羽ばたかせて後退させられる。

クレーターが出来るほどの爆発。舞い上がる粉塵の中、クレーターの中心で陽和はゆっくりとだが確かに立とうとしていた。

何度も血反吐を吐き、膝がガクガクと笑いながらもそれでも立ち上がろうと彼は片膝を立てる。

 

「まだ終わってねぇっ‼︎いつまで寝てやがる‼︎立て俺‼︎今までの道を思い出せっ‼︎‼︎」

 

戦意に滾る瞳が見える。

瞳に力が戻り、再燃した意志の力が瀕死の肉体を無理やり動かそうとしていた。

 

「ハジメ達が勝ったっ‼︎雫達が限界を超えたっ‼︎なのに、俺だけ倒れてどうするっ⁉︎」

 

ググっと足に力が更に込められる。血反吐を吐き、傷口から血が噴き出し、骨が軋んでなお、陽和は立ち上がろうとする。

そんな無様な姿にヌルは理解ができないと頭を横に振った。

結果などとうに分かりきっているはずだ。なのに、なぜそこまで足掻こうとするのか。なぜ無意味に吼えるのだろうか。

不合理極まりない彼の抵抗に心底理解ができなかった。

もう終わらせよう。これ以上は時間の無駄だ。後にも成すべきことはある。

そう考えて、ヌルは頭上に銀の光を集束させた。

 

「もっとだっ‼︎俺の全部を使えっ‼︎この身体も、魂も、意志も何もかもだっ‼︎‼︎何もかも全部薪に変えて加速させろっ‼︎‼︎」

 

銀の光が集束される中、陽和はヌルを睨みながら吼える。

しかし、その言葉に何らかの魔法的効果などあるはずもなく、死の閃光は容赦なく放たれる。

 

『相棒避けろォッ‼︎』

『マスター逃げてっ‼︎』

 

ドライグ達が叫ぶが、今から回避しようとしても間に合わない。

陽和はその場から動かず、真っ直ぐに睨み返しながら、

 

「勝負はっ、ここからだろうがぁぁッッ‼︎‼︎」

 

そう吼えた。

遍く全てを分解する死の閃光が迫り、あわや陽和はその命が伝えようとした瞬間だった。

 

『Boosted Gear Second Liberation‼︎‼︎‼︎』

 

力強い音声と共に噴火の如く噴き上がり、天を衝くほどに聳え立った灼熱のオーラが死の閃光を明後日の方向へと弾いたのだ。

 

「なにっ⁉︎」

 

初めてヌルの口から驚愕の声が上がる。

陽和の魔力が爆発的に上昇している。“半減”も“減少”も追いつかないほどに際限なく上昇し、既に彼の元来有している魔力上限を容易く突破しているのだ。

“限界突破”?違う。彼はその技能は持っていない。

であるならば、“臨界突破”か?いや、既に発動していたはずだ。

ならば、一体何が?と考えたところで彼の変化に気づく。

 

「紅蓮のオーラ?いえ、もっと赤く……それに、鎧が変質して……」

 

彼が纏う灼熱のオーラ。それが紅蓮よりもより鮮やかな紅に変化し、赫灼の如き輝きとなっていた。

その様はまさしく赫灼の太陽。

圧倒的な輝きを以て世界を照らす、超越者の姿だった。

更に彼に起きた変化はそれだけではない。

 

『Dragon Reactor Activation‼︎‼︎』

 

別の音声が響き、彼が纏う鎧が変化する。

胸部の翡翠の宝玉が赤橙色へと変化し、眩く発光しながら金属音のような特徴的な音声を響かせる。

砕けた鎧は修復され、色が濃い紅蓮にー真紅色へと変質し鎧の形状もより有機的かつ鋭角なフォルムへと変化する。

鎧の各部には荒々しい炎を模った黄金の紋様が血管のように浮かび上がり、鎧の先端も黄金に染まる。

翼は二枚から四枚へと数を増やし、翼膜から赤橙色の輝きが劫火の如く噴き出していた。

やがて、赫灼のオーラが収まった時、そこにいたのは新生した鎧を纏い、二本の足で確かに立つ陽和の姿だった。

 

「なんですかっ、その姿はっ」

 

ヌルは自分でも気付かないうちに声が上擦っていた。

死に体だったはずだ。夥しい数の数を負い、いつ失血死してもおかしくない量の血を流し、魂を限界まで削っていたはずだ。なのに、魔力は明らかに魂を削っていた時以上に噴き出し、鎧は完全に修復されるどころか、新生し明らかに進化していたのだから。

 

「——————」

 

陽和はゆっくりと顔をあげ空を仰ぎ見ると、顎門を開きーーー

 

 

『ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ‼︎‼︎』

 

 

天を衝く大咆哮をあげた。

 

 

▼△▼△▼△

 

「先生、大丈夫か?」

「うぅ。はい、何とか……それにしても、すごい魔法ですね。確かに、こんなすごい魔法があるなら、日本に帰ることのできる魔法だってあるかもしれませんね」

 

ハジメが愛子を気遣う。

愛子はこめかみをぐりぐりしながら納得したように頷き、会得したばかりの魔法に表情を少し緩めていた。傍にはティオの姿もある。

彼らがいるのは神山の頂上だ。元々、そこには聖教教会の本拠地たる教会があったのだが、今はその面影は微塵もなく、原形を留めないほど破壊され尽くされただの瓦礫の山となっていた。

何故こうなったのかというと、ハジメや愛子、ティオ対教会関係者達の戦いの結果によるものとしか言いようがない。

 

当初の作戦通り、ハジメとティオは陽和の指示に従い愛子の救出の為に神山の教会まで来ていた。そこで、彼の予想通り、囚われていた愛子を救出したまでは良かったのだが、その時に真の神の使徒“ノイント”がハジメを、イレギュラーと故障し排除すべく襲撃してきた。

使徒との戦闘を余儀なくされ、非戦闘員の愛子をティオに預けて交戦。互角の戦いを繰り広げていたのだが、教皇イシュタルをはじめ教会勢力が使徒の援護という形でハジメを妨害したのだ。デバフ効果の魔法をかけられ、追い詰められるハジメを助けるべく愛子はティオに頼み込んで共闘を決意。

“作農師”の技能をフル活用した結果、紆余曲折あって愛子は総本山たる教会を教皇達諸共爆砕してみせた。

爆砕の結果、教皇達は仲良く爆散し、教会も廃墟と化したのである。そして、それが神山の攻略条件を満たしたと判断されたのか、ノイントを一対一の戦いで見事打ち破ったハジメと共に攻略者と認められ三人は見事魂魄魔法を習得するに至ったのだ。

 

「それじゃ、魔法陣の場所もわかったことだし、早く陽和達と合流しよう。さっきから感じるとんでもない魔力も気になるしな」

 

愛子を救出し、魂魄魔法も習得した。

ここでの目的を達成した以上、早く陽和達と合流を急ぐべきだ。戦争の結果も気になるし、先ほどから確かに感じる冷や汗すらかくほどの莫大な魔力の正体も気になるからだ。

そして、いざ下山を開始しようとした時、ハジメとティオの元に念話の通信が届く。

 

「もしもし、雫俺だ。何があった?………はぁ⁉︎本当かっ⁉︎」

 

念話の主は雫からだ。だが、声には明らかに焦燥が宿っており、只事ではないと感じ理由を尋ねた直後、目を見開き驚愕をあらわにした。

 

「………分かった、陽和の方には俺が向かう。ティオと先生は先に王城に向かわせるから、王城で落ち合ってくれ」

『………ごめんなさい、陽和のことお願い』

「当然だ。あいつを死なせてたまるか。そっちも気をつけろよ」

『ええ』

 

短く言葉を交わして念話を切ったハジメは焦燥を顔に滲ませて深く息をついた。

 

「ハジメよ、雫達の方で何が起きとる?それに主殿が危険のように聞こえたのじゃが……」

「最悪の状況だ。ディレイド達とは決着がついたらしいが、その後、どうやらアルビオンの死体を利用した使徒ヌルが現れたらしい。それで陽和が今交戦中だそうだ」

「何じゃとっ⁉︎アルビオン様のっ⁉︎」

「ああ、さっきから感じる馬鹿でかい魔力が恐らくそうなんだろう。これが陽和が戦ってるヌルって奴のものなら、確かに相手はとんでもねぇ奴だ。ノイントなんて目じゃねぇぞ」

 

ハジメ達が感じるプレッシャーは殺し合った使徒ーノイントを軽く凌駕している。陽和であっても危ないのでは?と思ってしまうほどだ。

これならば、雫がハジメに助けを求めたのも納得できる。

 

「それで、ハジメは主殿の救援に向かうということなのじゃな?」

「ああ。雫やセレリアは足手纏いだと拒絶されたらしい。守る余裕がないほどなんだろう、俺でも厳しいかもしれねぇ」

 

ステータス的に言えばハジメはセレリアより少し上程度だ。

雫やセレリアが援護を拒絶されたことを考えれば、自分であっても援護は厳しいかもしれない。

だが、ハジメには地球の兵器を参考にしたアーティファクトが多数ある。それはステータスに依存しない性能だ。ともすれば、それで陽和の援護ができるのではと雫が一縷の望みをかけて救援を求めたのだ。

だからこそ、その信頼には応えねばなるまい。それにだ、

 

「だが、親友が命の危機に瀕してるってんなら、敵がヤベェからって迷う理由なんざあるわけがねぇ」

 

親友にして兄貴分の命の危機。助けに行かない道理などあるわけがない。

ハジメの選択はすでに決まっていた。

 

「承知した。妾達は先に王城に向かい、雫達と合流しよう。向こうも安全とは言えぬからのう」

「ああ、それに王城にも獣魔兵が一人いるらしい。ティオ達はそっちを対処してくれ」

「任された。急いで参ろう」

 

手短に作戦を決めて、ハジメが陽和の救援に、ティオ達が雫達と合流をするべく背中合わせに飛び出そうとした時、

 

「「「ッッッ⁉︎⁉︎」」」

 

突如、麓の方から赫灼のオーラが柱の如く聳え立ち、雲を貫き夜空すら貫いたのだ。

夜闇を照らす燦然とした輝きに三人が揃って目を剥いて驚く中、ハジメとティオは気づく。天を衝く赫灼のオーラから自分達がよく知る男の魔力が感じられることを。

 

「陽和、なのか?」

「じゃ、じゃが、この魔力量は……一体……」

 

その男とは言わずもがな、自分達のリーダーだ。

だが、感じる魔力の量があまりにも膨大で、自分達が知る彼のソレを遙かに上回る濃密かつ強大な奔流に呆然とすらしてしまう。愛子は凄まじすぎる魔力の輝きにボカンと口を開けて突っ立ってしまっている。

一体何が起きているのかと三人とも唖然とする中、どこらからか竜の咆哮が聞こえた。

 

 

▼△▼△▼△

 

 

———ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ‼︎‼︎

 

雄々しく、猛々しく、気高さに満ち、透き通るほどに見事な赤竜帝の咆哮が夜天に轟く。

咆哮を終え顔を下ろした陽和はヌルを捉える。

兜から覗く瞳は翡翠から、鮮やかな赤橙色の輝きへと変わっていた。

ヌルを確かに見ているようで見ていない、もっと別の何かを見て、いや、なにか世界の深淵を視て捉えたかのような深い眼差し。

感情などないはずなのに、言いようのない戦慄にゾッと怖気が走った。今の陽和は酷く恐ろしい。これ以上はやらせてはいけない。彼に次の手を打たせてはならないと警鐘にも似た何かが命じた。

 

「答えなさい‼︎紅咲陽和‼︎」

 

内から湧き上がった何かを吹き飛ばすように怒号をあげると、より一層魔力を噴き上げて分解砲撃を放つ。

空間が歪むほどの莫大かつ濃密な魔力を宿す分解砲撃はヌルの全力の砲撃だ。本来ならば陽和はなすすべもなく分解されて終わり。

だが、それを前に陽和はゆっくり拳を構えると全身の赤橙の宝玉から金属音を響かせ一言。

 

『———“爆ぜろ”』

『Ignition‼︎』

 

一言の呪いと音声が響いた瞬間、陽和の姿が掻き消え分解砲撃は誰もいない空間を通過する。

一筋の閃光が駆け抜けて、次の瞬間にはヌルの腹部に陽和の拳が突き刺さっていた。

 

「ぐぅぅっ⁉︎」

『Ignition‼︎』

 

赫灼に燃える拳が爆炎の華を咲かせる。ヌルの体がくの字に折れ、砕けた鎧の破片を撒き散らしながら吹っ飛んだ。

腹を焼かれ、地面を転がりながらも何とか体勢を立て直したヌルは空へと飛び上がるが、その時には既に陽和が目の前にいた。

 

「そん、なっ」

『Ignition‼︎』

 

馬鹿なとは続かなかった。その前に、首を掴まれ大地に叩きつけられたのだ。

粉塵が舞い上がり、大地が捲れ上がる中、粉塵を突き破り陽和が飛び出してきた。その手には未だヌルが首を掴まれており、地面に叩きつけられながら引き摺られている。

 

「離しなさいっ‼︎」

 

使徒の体では地面に引きずられた程度では傷つかないが、陽和に掴まれている部分が文字通り焼かれ始めていた。

このままでは全身を焼かれると、銀の光を全身から発して彼を分解しようとするが、その前に陽和は手を離して距離を取った。

 

「……………」

「なにをっ……一体何をしたのですかっ⁉︎」

 

ヌルは明らかな驚愕の声を上げる。

先程とは比にもならないほどの超強化。その理由が理解できなかったのだ。

それは彼の相棒達も同じだった。

 

『あ、相棒、さっきから何が起きてる?どうしたんだその変化はっ』

『ぼ、ボクも訳がわからないよっ‼︎マスター、君の身に何が起きてるんだいっ⁉︎』

 

2人もヌル同様驚愕の声を上げる。

陽和は静かな声音で彼らの疑問に答える。

 

『なに簡単なことだ。俺はようやく掴んだだけだよ』

『掴んだ?っっ、ま、まさかっ』

『魔力が、流れて……』

 

静かな声音で告げられた言葉に2人は気づく。

空から、雲から、風から、大地から、無数の光粒が銀河の如く彼を中心に渦を巻き、彼の体に収まっていっているのだ。

恐ろしいほど濃密で強大な魔力の奔流ーーー自然界の魔力が彼に流れているのだ。

それは、かつて1人の少女が到達した究極の領域。

人類の想いを信じて何千年もの間、希望の英雄を待ち続けた人類の守護者のリーダー、ミレディ・ライセンが至った最強の御業。

神代魔法が一つ重力魔法の神髄ーーー“星のエネルギーへの干渉”。自然界の魔力の掌握と無制限使用だ。

 

『ようやく掴んだぞ。ミレディ』

 

そう、陽和は到達したのだ。

ディレイドが変成魔法の神髄“有機物への干渉”に到達したように、重力魔法の神髄に至ったのだ。

その結果、彼は新たな派生技能にも覚醒していた。

 

———“臨界突破”派生技能“炉心解放(レイジングフォース)

 

“臨界突破”の派生技能。魂と肉体のリミッターを解除し意図的に暴走させることで、許容量を超えたエネルギーを爆発的に活性化させて、自身の魂を炉心にして循環・増幅させる超強化系技能だ。

本来ならば命を削る荒技だが、彼はその炉心に注ぐ燃料を己の魂魄魔力だけでなく星の無限魔力も加えて“炉心解放”のエネルギーに転換して増幅しているのだ。

更に付け加えるならば、彼は星の無限魔力の他に地熱エネルギーすらも吸収し、“炎熱吸収”の技能によって魔力へと変換しそれすらも、“炉心”へと注ぎ込んでいるのだ。

まさしくその名の通り、核分裂反応を起こし莫大な熱エネルギーを発生させる原子炉のように彼は自身の魂を炉心とし、捻出した魂の魔力、干渉した星の魔力と、地熱エネルギーをを燃料にし、莫大なエネルギーを生み出している。

そんな過剰とも言えるエネルギーにより彼の鎧も変化を遂げ、“炉心解放”を使用できるように最適化させたのだ。

その鎧の名はーーー

 

 

『———“赤竜帝の聖鎧(セイクリッド・スケイルメイル)紅煉(インフェルノ)”とでも呼ぶか』

 

 

赤竜帝・紅咲陽和の新たな形態『紅煉(インフェルノ)』。

重力魔法の神髄に至ったことで自然魔力を掌握し、覚醒を経て“炉心解放”を発現したことで到達した高み。

無限の魔力と己の力を糧に竜の炉心にて循環・増幅させることにより、今や彼は星そのものとなったのだ。

 

「あなたっ、ミレディ・ライセンと同じことをっ‼︎」

 

ヌルもその事実を知っているのだろう。

かつてミレディ・ライセンが重力魔法の神髄に至ったことで、神威の具現たる“神の使徒”を打ち倒したことを。

だからこそ、表情は驚愕に歪み、愕然としたものへと変わった。

 

「ヌル・イナニス。改めて告げよう」

 

すぅと突き出された指。それはヌルに向けられており、彼は静かに断言した。

 

「貴様は俺が倒す」

「っっ、戯言をっ‼︎」

 

ヌルが歪んだ形相で銀羽の魔弾を全力射出し、さらには分解砲撃も放つ。降り注ぐ致死の嵐を前に陽和は咆哮をあげて飛び出した。

 

『ガアアアアアアァァァァァァッッッ‼︎‼︎』

『Ignition‼︎』

 

再び音声が響き、赤橙の宝玉が激しく輝く。

竜の雄叫びが轟き、炎が爆ぜて彼の体を閃光と化した。

魔弾の合間を閃光が複雑な軌道で掻い潜り、再びヌルの眼前に迫る。

 

「なんという速度っ」

『防いでみろ』

 

振るわれた拳が、ヌルの動体視力をもってしてもブレた。

辛うじて双大剣の腹で拳は防げたが、その直後には双大剣が拳が宿すあまりの熱量に融けてへし折られる。

 

「武器を融かすほどの熱量⁉︎」

『ぶっ飛べぇ‼︎』

 

武器を融かすほどの熱量に再び驚愕するヌル。

今の陽和は“炉心解放”によって循環・増幅させたエネルギーが全身を駆け巡っていることで炎熱の化身となった。

星の無限魔力によって強化された炎は触れただけで武器など容易く融解してしまうほどの熱量を有している。

その証拠に彼の周囲の大気は常に歪み、足元の地面は赤熱化するほどだ。

武器は既に使い物にならなくなり、今度はアッパーカットを喰らい顎がかちあげられ仰け反り、ガラ空きの脇腹に間髪入れずに横蹴りを喰らい真横に吹っ飛ぶ。

ヌルの肉体を以てしても視界がぶれるが、それでも銀羽の魔弾を放射する。だが、それも当たらない。

常軌を逸した速度で回避され、吹っ飛んだ先に回り込まれ再び吹っ飛ばされる。

竜人を素体に作られた自分を凌駕するなど、

 

「あり、えないっ。こんなの、人間の範疇を超えていますっ」

『違うな。これも人間の力だ』

『Ignition Fire Boost‼︎‼︎‼︎‼︎』

 

爆音じみた音声が一際強く轟き、全身の宝玉が一層輝く。

焦燥と畏怖が混ざる表情を浮かべるヌルの胸に拳が突き刺さり、爆炎が彼女を焼きながら吹っ飛ばした。

水平に飛び、背後の木々を薙ぎ倒しながら神山の山肌に叩きつけられる。粉塵が舞い上がり、山肌にクレーターが刻まれ、一部崩壊するほどの凄まじい破壊を生んだ。

 

『す、すごい……ここまで……』

『あ、ああ、なんて力だ』

 

空いた口が塞がらないとはこういうことだろう。

あのヌルを圧倒しているのだ。2人とも陽和の埒外な覚醒に呆然としていた。

だが、他ならぬ当人は忌々しげに舌打ちする。

 

『チッ、やっぱり分解そのものは消せねぇか。それに、時間もキツイな』

 

今の戦闘で分かったことは二つ。

一つは紅煉形態を以てしても、分解の力は対処できないということ。回避はできてるが、当たればさっきの繰り返しだ。確実に鎧は砕かれるだろう。全身を魔力で覆われたら手が出せない。

二つが、制限時間だ。彼の左手の宝玉に浮かぶ『200』という数字、それは刻一刻と減っており1秒ごとにその数字は減っていた。

先程この形態になった時に『300』と表示されていたことを考えると、現状この鎧の制限時間は残り200秒と考えるべきだ。

タイムリミットを迎える前に倒さなければ、自分は確実に死ぬことになる。

だからこそ、追撃をしようとした時、ドライグが不意に口を開いた。

 

『…………相棒、すまなかった。そして、ありがとう。アルビオンのことを諦めないでくれて』

『ドライグ?』

『俺は彼女のことを諦めていた。それよりも、相棒が生きることの方が大事だったからだ』

 

ドライグにとってアルビオンは既に過去だ。

陽和と生まれ変わった彼女を見つけると約束したからこそ、今は陽和の身を優先させるべきだと決めていた。

 

『アルビオンは既に死んだ。俺が守れなかったから死んだ。だから、今を生きる相棒を優先しようと思っていた。だが……それが、愚かだった』

 

遠くの山肌で銀の閃光が輝き、一条の流星となってこちらに迫る。

それに身構えながらもドライグの独白に耳を傾けていた陽和はドクン、と己の内で何かが力強く脈動したのを感じた。

同時に体の内から湧き上がる未知数の何か。だが、不思議と恐怖はなく、暖かい気持ちになった。

 

『ああ、なんて情けない。これが力の塊と称された赤竜帝か?否‼︎否だ‼︎‼︎相棒がここまで戦ったのだ‼︎なら、俺が諦めてどうする⁉︎信じずして、何が相棒だ‼︎‼︎』

 

脈動は段々と激しくなる。

同時に未知の力も湧き上がってきて、陽和の纏う熱量が格段に上昇していく。

 

『相棒の成長を鑑みて負担が大きすぎるからと制限をかけていたが、今の相棒ならば使いこなせるだろう。これならば使徒の分解にも対抗できるはずだ』

 

何がとは聞かない。本能的にソレがなんなのかは理解しており、使い方も分かったからだ。

ヌルとの距離はもう100mを切っている。2秒もしないうちに接触するだろう。ヌルは両手に分解の魔力を纏わせ手刀の構えをとっていた。

 

『使え‼︎この俺の、赤竜帝ア・ドライグ・ゴッホの本来の炎をなっ‼︎‼︎そして、俺が果たせなかったことを果たしてくれ‼︎紅咲陽和っ‼︎‼︎』

『応っ‼︎』

 

ドライグの願いに陽和が笑みを浮かべて応えた瞬間、彼の両手には鎧の色と全く同じ真紅の炎が宿り、ヌルの分解の手刀を掴んで受け止めた。

 

「馬鹿なっ‼︎」

 

ヌルの表情が再び驚愕に染まる。

これまであらゆるもの全てを分解してきた、エヒトより授かりし絶対の魔法。それが、彼の炎に受け止められていたのだから。

 

(分解、できないっ⁉︎)

 

一体何が、と思った時陽和の纏う炎の正体に気づく。

 

「その炎…まさか、赤竜帝のっ⁉︎」

『“燚焱の炎火(いつえきのえんか)”。ドライグが生前有していた究極の炎だ。これなら、貴様の分解にも対抗できるみたいだな』

 

ーーー“赤竜帝の魂”派生技能“燚焱の炎火”。

“倍化”や“譲渡”、“透過”と同じくドライグが生前有していた力の一つ。しかし、この炎はただの炎にあらず、あらゆるものを燃やし尽くしてしまうほどの熱量を有している。

言って仕舞えば、使徒が使う“分解”と同等の効果を有している魔法と言ってもいいだろう。

 

「我が主より授かった神聖なる力に対抗するつもりですかっ⁉︎」

『知るか。貴様らの下衆な小細工と一緒にするな』

 

ヌルの批判を一蹴し、陽和はヌルの両手を握り潰す。

ぐしゃりと嫌な音を立ててヌルの両手から鮮血が噴き出す。

分解を意に介さずに握りつぶしたことに、あらん限りに目を見開く。

 

『エヒトもこの炎には焼かれたらしい。神をも焼く炎、貴様の小細工程度で凌げると思うなよ』

 

握り潰した腕を掴んだまま陽和はヘッドバッドを見舞う。

人体からなってはならないような檄音が響き、次いで爆音も轟きヌルの身体は再び仰け反り後方に蹌踉めく。

そこへ間髪入れずに陽和の前蹴りが炸裂し上空へと蹴り飛ばされる。

錐揉みしながら吹っ飛ぶヌルは銀羽を全力掃射する。致死の魔弾が嵐となって再び降り注ぐ。しかし、もう届くことはない。

 

『———“赫星劫華(かくせいごうか)”』

 

彼が纏う“燚焱の炎火”で構成された無数の火華が、花吹雪のように、あるいは流星群のように飛翔し銀羽の嵐を燃やし尽くし、焼滅させたのだ。

 

「“分解”を、焼き尽くしたっ⁉︎」

 

何度目かもわからないヌルの驚愕の悲鳴が響く中、ヌルの四枚の竜翼を赫灼の閃光が貫き、根本から溶断する。

翼を撃ち抜かれ宙を落下する中、ヌルは陽和が顎門から赫灼の輝きを溢しているのを見る。どうやら、圧縮したブレスの速射によって撃ち抜かれたようだ。

しかし、たいした問題ではない。実体のある竜翼だが、“再竜化”をすることで即座に再生する。

だが、その間に陽和は次なる手を打っていた。

 

『———“灼焔・大轟嵐”』

「ぐっ、ぁああああああっ⁉︎」

 

灼熱の熱波と雷撃に満ちた巨大竜巻がヌルを中心に出現し、ヌルを閉じ込めたのだ。

ヌルから絶叫が飛び出し、死に物狂いで抗い全身から分解魔法を放つ。だが、それも無意味。

“灼焔・大轟嵐”を構成する炎は“分解”をも燃やし尽くす究極の炎だ。“分解”は悉く焼かれ、ヌルの体も焼かれ始める。なんとか抜け出そうともがくも、荒れ狂う熱波と雷撃によって動くことすら許されなかった。

灼熱の竜巻に囚われる彼女を睥睨する陽和はその場で四肢をアンカーのように地面に突き刺し固定する。

 

『———“装填(リロード)”』

『Dragon Cannon Set‼︎‼︎』

『IgnitionIgnitionIgnitionIgnitionIgnitionIgnitionIgnitionIgnition‼︎‼︎‼︎』

 

四枚の竜翼が変形を始める。

カシュカシュと装甲が動き、竜翼がそれぞれ人一人分はありそうな砲門へと変形したのだ。全身の宝玉と紋様が激しく明滅を繰り返し、耳を劈くような金属音を響かせながら四門の砲口に赫灼の輝きが集束されていく。

内包するエネルギーの余りの膨大さに鎧から不吉な音が響きひび割れが生まれ、砕け始める。

己の肉体が自壊しかけてもなおチャージを続け、やがてチャージが完了する。

 

『相棒‼︎チャージは完了だ‼︎ぶちかませ‼︎』

『———ああっ‼︎これで、決めるっ‼︎‼︎』

 

“灼焔・大轟嵐”が解除され、ヌルが解放されるがもう遅い。

魂の魔力、星の無限魔力、地熱エネルギー。彼が持ち得るあらゆるエネルギーを全て集束させた必滅が解き放たれた。

 

『“紅煉の竜咆(インフェルノ・ブラスター)”ァァァァァァッッ‼︎‼︎』

『Ignite Booster Over Fire‼︎‼︎』

 

瞬間、世界から音が消え、夜を照らすほどに燦然とした赫灼の輝きに染まり、満たされた。

一拍、大気が唸るような轟音を響かせ、四つの光帯が極太の一本へと集束され、空間を焼き尽くしながらヌルに迫る。

 

「こんなものっ‼︎」

 

熱傷を再生させ、何とか体勢を立て直したヌルは避けられないと悟るや、両手を前に突き出して自身の力の全てを結集させた極光を放ち迎え撃つ。

全魔力を集束させたのだろう。赫灼の極光にも劣らないサイズとなり、夜天の下、白銀と赫灼の二つの極光が激突した。壮絶なせめぎ合いが予想されたが、しかし、予想に反して拮抗はなく白銀の極光は容易く赫灼の極光に焼かれ掻き消されていく。

 

「紅咲、陽和ッッ‼︎‼︎」

 

大気を唸らせ、白銀を焼き削り赫灼はヌルへと迫る。もう回避すら間に合わないだろう。

ヌルは怒りに満ちた絶叫をあげながら、そのまま赫灼の極光に呑まれていった。極光はそのまま背後にある神山をぶち抜き、遙か上空まで貫いた。

神山を貫通し、上空の雲すらも突き破るほどに長く長く伸びた極光は徐々に細くなり、やがてフッと消えた。

後に残っていたのは、巨大な風穴を開けた神山を背に、銀光の残滓を散らしている息も絶え絶えな様子のヌルの姿だ。

 

「…ぅ……ぁ………」

 

全身から白煙をあげ、微かな呻き声しか発することができていない。

手足は焼き爛れ、全身が真っ赤に焼けている。かろうじて命を留めているが、今やその場に滞空するので精一杯だった。

そんな彼女の視界に影が掛かる。彼女の眼前に陽和が移動してきたのだ。

 

『返してもらうぞ。その女の身体は俺の相棒のものだ』

「……………」

 

ヌルから言葉が発せられることはなかった。

2人の視線が交錯し、怜悧な眼光の中にわずかな恨めしさを滲ませていたが、最後の一瞬だけ、どういうわけか心なしか綻んだように感じた。

直後、陽和の右手がヌルの胸部を貫き、背中から突き出る。

その手には彼女の胸元にあった青色の宝玉が握られていた。

ヌルの瞳から光が失われ、ビクンと大きく痙攣。陽和が右手を引き抜けばぐらりと背後に倒れて大地に堕ちようとしていた。

陽和はそんな彼女の背中に手を回して優しく抱き留めると、そのまま麓に降りた。

 

『………相棒、本当にありがとう』

 

彼女を地面に寝かした陽和にドライグは感謝する。

陽和はその感謝に笑みを浮かべて言葉を返そうとしたが、

 

『っっ……ガハァッ‼︎ゲボッ‼︎ゴホッ‼︎ハァッ、ハァッ、あぁぁっ⁉︎ぐぅぅぅっ⁉︎』

 

傍らで蹲り何度も血の塊を吐き出してしまう。

砕けた鎧の破片が剥がれ地面に落ち、全身からも鮮血が噴き出し、筋肉が千切れる音と骨が折れる音が何度も響く。

全身から蒸気をあげ、熱せられた空気が陽炎の如く周囲を歪ませていた。

纏っている鎧は真紅から紅蓮へと色が戻り、宝玉や瞳も赤橙から翡翠へと戻っていた。莫大な魔力も霧散した。

陽和は意識が飛びかねないほどの激痛に血を吐きながら、絶叫を上げる。

 

『ぐっ……ぎっ……がっはっ……ああぁぁぁっ⁉︎』

 

丁度、紅煉形態のタイムリミットを迎えたのだ。その結果、膨大な魔力行使による負荷が今になって現れてしまっていた。

 

『相棒、しっかりしろっ‼︎』

『今回復させるっ‼︎』

 

ドライグとヘスティアが2人がかりですぐさま治癒と冷却を始める。見るも無惨な瀕死だった彼の体がゆっくりと治癒されていき、荒かった呼吸も次第に落ち着き始めた。

全身から放出されていた熱も冷却されていき、蒸気も収まってきた。

 

『はぁ……はぁ……2人とも、すまん……あり、がとう』

『今は喋るな。ゆっくりと回復に専念するんだ』

『ダメ、だ。早く、王城に、むかわねぇと…休んでる、暇はねぇ』

『正気かっ⁉︎既に相棒の体は限界なんだぞっ⁉︎今は休むことを優先させるべきだっ‼︎‼︎』

『マスター、今動くのはお勧めできない。これ以上消耗したら今度こそ本当に死ぬよ』

 

肉体の損傷は治癒されたとしても魂への負荷は回復できていない。今意識を保ってること自体奇跡なのだ。

だからこそ、休ませるべきなのだが、陽和は頑として受け入れなかった。

 

『休むのは、戦争が終わってからだ。まだ、王城の問題は、片付いてないっ、だからっ……』

 

不意に陽和の言葉が止まる。

彼はある一点を凝視していたのだ。その瞳は驚愕に揺れている。

 

『相棒?どうした?何があった?』

『マスター?』

「…………いる」

『?何がだ?』

 

相棒達の呼びかけに短くそう返した陽和の瞳は驚愕から次第に歓喜へと変わっていく。

兜を解除した彼は目の端に涙を滲ませながらヌルの胸元から引き抜いた青色の宝玉を大事に握りしめたのだ。

 

「ヌルの中に、アルビオンさんの魂があるっ‼︎彼女は、まだ生きてるんだよっ‼︎‼︎」

『なにっ⁉︎』

 

陽和の歓喜にドライグは驚愕の声をあげながらも、すかさず宝玉を魂魄魔法で視る。

しばらく無言だったが、やがてドライグは歓喜に声を震わせた。

 

『……本当、だ。微かに、今にも消えてしまいそうだが、確かに彼女の魂があるっ。まさか、こんなことがあるものなのかっ⁉︎』

 

きっと肉体があれば涙が溢れ出ていただろう。

そう断言できるほどにドライグの声音にはどうしようもないほどの巨大な感情が湧き上がっていた。

反応は微弱で、かなり希薄ではあったが、それでも確かに彼女の魂は霧散することなく宝玉の中に存在していたのだ。

 

『………でも、もう本当に反応が僅かだ。ヌルがいたから辛うじて存在できていたと言ってもいい。彼女が死んだ今、早く保護しないと消えてしまう』

「分かってる。今すぐに、神山の大迷宮に向かうぞっ‼︎‼︎………っ」

 

ヘスティアの懸念は当然だが、それも陽和が魂魄魔法を会得して三人で固定を行えば問題はない。

陽和は彼女の体を抱えて急いで神山の大迷宮へと向かおうとするが、立ちあがろうとした瞬間蹌踉めいてしまう。

ダメージがダメージなのだ、すぐに動くことはできなかった。

 

『無理に動こうとするな。俺が運ぼう』

「……っっ、すまん」

 

左手の宝玉が輝き、そこから炎が溢れ炎竜が姿を現す。言わずもがな、“ドライグ”だ。

彼は陽和とヌルの死体を背に乗せると翼を羽ばたかせて飛翔した。この勢いであれば数分のうちに神山の大迷宮の入り口に着くことができるだろう。

 

『ヘスティア、相棒の治療を続けておいてくれ』

『任せて。ほら、マスター、そこでじっとしててくれよ』

「ああ」

 

ドライグに言われヘスティアは陽和の治療を再開する。

まだ万全ではない陽和の肉体が確実に治癒されていく中、ドライグは改めて礼を言う。

 

『相棒、改めて感謝する。相棒がいなければ、俺はアルビオンの遺体を取り戻すこともできなければ、こうして魂だけでも存在していることを知らないままでいただろう』

「気にするな、相棒の為だ。お前が笑ってくれるなら、命をかけた甲斐がある」

『ふははっ、本当に相棒は優しいな。お前のような男が俺達の希望を受け継いでくれて本当によかった』

「そう言ってもらえて光栄だ」

 

そんなことを話しているうちにあっという間に目的の場所に辿り着く。

辿り着いた場所は神山の麓の何の変哲もない場所だ。だが、陽和達はそこが神山の大迷宮の入り口の一つだと言うことを知っている。

そこには、人がいた。

 

『……………』

 

白い法衣のようなものを着た禿頭の男がおり、陽和達をまっすぐに見つめていたのだ。しかし、その体は透けており、ゆらゆらと揺れていた。

明らかに普通の人間ではありえないが、陽和達は誰一人驚くことはなかった。と言うのも、彼らは幽霊らしき人物が誰かを知っているからだ。

 

「………ラウス・バーン」

 

幽霊ーーー否、解放者が一人にして、魂魄魔法の使い手『ラウス・バーン』の映像体だった。

彼は陽和達を認識すると、僅かに表情を綻ばせると踵を返して山肌のそばへと移動した。

陽和はドライグから降りてアルビオンを横抱きに抱えると、ゆっくりとした足取りで山肌のそばまでいく。その瞬間、山肌の一面に描かれていた、大迷宮の紋章が、ラウス・バーンの紋章が紋章は淡く輝き、陽和達を包み込んだ。

気がつけば、陽和達は全く見知らぬ空間に立っていた。それらも大きくはなく、光沢のある黒塗りの部屋で、中央に魔法陣が描かれており、そのそばには古びた本が置かれている台座があった。

 

「やっぱり、ヌルとの戦いが攻略条件として認められたわけか」

『そのようだな』

 

陽和な予想通り、この空間は大迷宮【神山】の攻略者のみが入れる継承の空間だった。

元々、神山の攻略条件は三つあった。

最低でも二つ以上の大迷宮攻略の証を所持していること。神に対して信仰心を持っていないこと。神の力が作用している何らかの影響に打ち勝ったこと。これらの条件を達成すればラウス・バーンの映像体が現れ案内をして攻略は認められたことになる。

“竜継士”はこれに加えて、自らの親しい者や愛する者が神の傀儡に堕ちても打ち勝ち取り戻すことができるのかという条件が加えられている。

どうやら変則的ではあったが、ヌルとの戦いがこの“竜継士”独自の条件として認められ、彼女を倒したことで攻略は認められたと言うことになるらしい。

陽和は最深部に辿り着けた理由に納得すると、そのまま魔法陣へと踏み込む。いつも通り記憶を精査されだけでなく、魂にまで入り込まれ精査されていく。慣れない感覚に一瞬強張るも、次の瞬間には霧散し、攻略が認められたとして魂魄魔法の知識が頭の中に直接刻まれた。

 

『何はともあれ、神山の大迷宮、これで攻略だね』

「ああ、これでアルビオンさんを助けられる」

 

確かに魂魄魔法を習得したことを理解した陽和は台座に安置されていた本の表紙を優しく撫でる。

 

「すまない、また後で来る」

 

そう言って本と共に置かれていた証の指輪を取るとさっさとその場を後にした。ラウス・バーンの紋章が輝いて転送され麓に戻るが、そこで彼を待つ者がいた。

 

「……ハジメ?」

「陽和‼︎無事か⁉︎」

 

彼を待っていたのはハジメだ。彼は陽和の姿を確認するや、血相を変えて駆け足で近づいてくる。

 

「ハジメ…何でここに?」

「雫からお前を助けてくれって頼まれたんだ。それで来たんだが、どうやらお前は自分で解決しちまったんだな」

 

元々、ハジメは陽和の戦闘の痕跡を辿ってここまで来た。山肌にラウス・バーンの紋章があることに気づき、もしかしたら陽和は大迷宮の中にいるのではと考え、入れ違いを避ける為に外で待っていた。

そして、魔法陣が輝き戻ってきた陽和の腕にヌルの遺体が抱えられているのを見て、彼が一人で打ち勝ったことを理解したのだ。

 

「………何度も、死にかけたがな」

「そうみたいだな。とりあえず、これを飲め」

 

ハジメは宝物庫から神水が入った小瓶を渡す。

唯一陽和の回復魔法よりも絶大な効果がある回復薬だ。これを飲めば確実に回復するだろう。

だが、神水の提供を陽和は断った。

 

「いらない。それは、万が一に取っておけ」

「今がその万が一だ。お前、かなり無茶をしただろう?魂魄がかなり傷ついている」

「っ……そうか、お前も魂魄魔法を……」

 

ハジメの発言から陽和は彼が魂魄魔法を習得したことを察する。魂魄魔法を習得し魂魄を直接見られてしまった以上は、もう否定できなかった。

だが、それでもなお、陽和は神水を拒む。

 

「それでもだ。魂魄の消耗は魂魄魔法でしか癒せない。戦いが終わってからじゃないとできないなら神水は必要ない」

「チッ、この頑固野郎が。わぁったよ、ただし全部終われば、しばらく休息は絶対だ。それは守れよ」

「それぐらいならな」

 

戦争が終われば、しばらくは休めるはずだ。

だからこそ、ハジメが下した決定に素直に従うことにした。

 

「なら、急いで王城に向かおう。ティオ達にはすでに向かってもらっている。前もって言っとくが、先に行けは受け付けねぇからな」

 

ハジメに先回りされ、陽和は苦い表情になる。

実は先に行けと言おうとしており、出鼻を挫かれてしまった。

 

「…………すまんが、素早くは動けない。それに、今やっておきたいこともある。ドライグ、頼めるか?」

『任せろ。最速で、かつ安全に運ぼう』

 

陽和の頼みに答えて、再び炎竜“ドライグ”が姿を現した。

陽和は先にヌルの死体を乗せてから、自分も背中に乗る。ハジメも最初こそ炎の竜になったら焼かれるのではという懸念もあったものの、ドライグから魂魄魔法で焼かないように調整できる旨を言われ素直に背中に乗り込んだ。

ドライグはすぐに翼を羽ばたかせて飛翔し、王城へと向かう。

 

「ドライグに乗って行くのはいいんだが、陽和、少しでも休んでおけよ」

「……………」

 

ハジメは陽和がドライグの背の上で横に寝かされたヌルの死体の前で魂魄魔法の詠唱を始めていることに疑問符を浮かべる。

今の状態を考えれば、休息を優先するはずなのに、それを投げ打ってでも魂魄魔法の詠唱を行っているのだから。

だが、陽和は極限まで集中しているのか、ハジメの疑問に答えを返さない。だから、陽和に代わってドライグがその疑問に答えた。

 

『アルビオンの魂がヌルの中にあったんだ。だが、かなり希薄だったからこそ、相棒が霧散しないように固定・定着させている。ヘスティアも補助に回っているのだ』

「は?アルビオンの魂が?大昔に殺されてたはずだろ?」

『俺もそう思っていたが、相棒が奇跡的に見つけたんだ。だから、今こうして必死に固定をしているわけだ』

 

陽和はアルビオンの魂を霧散させないように、ヌルの死体に固定させて保護しているのだ。

今は万全ではないから、たいしたことはできていないがひとまず固定しておけば、後で定着することも可能だ。そうすれば、アルビオンに再会できる日もそう遠くはないだろう。

明らかに声が喜びに満ちているドライグにハジメも表情を柔らかくさせる。

 

「ドライグ、本当に良かったな」

『ああ。相棒のおかげだ』

 

そうして陽和がアルビオンの魂魄固定に専念し、ヘスティアだけでなくハジメも陽和の回復などでサポートする中、ドライグが王都上空を飛翔する。

巨大な炎竜が空を飛ぶ光景に、眼下の王都で住民達が混乱しているがそれらを無視して飛び雫達と合流する為に王城へ向かった。

やがて、到着した先で見たのは………

 

 

胸から剣を突き出し、既に息耐えた香織の姿だった。

 

 





陽和の更なる覚醒形態!『紅煉』‼︎
重力魔法の神髄と新たな派生技能“炉心解放”によって会得した魔改造です。
ミレディがアハトを倒したように、陽和も覚醒して格上だったはずのヌルを倒すという胸熱覚醒展開で死闘の様子をお送らせていただきました。

『紅煉形態』は“炉心解放”という技能名からもある通り、イメージ的には猛り爆ぜるブラキディオスー臨界ブラキの最終決戦フィールド時の変化をイメージしてもらえると分かりやすいかと。
とにかく、陽和との覚醒シーンは大変でした。元々、ヌルを出すことは決まっていたので、どうやって戦った上で勝たせるかは本当に悩みましたねぇ。
とにかく、劇的な覚醒展開をここでは書きたかったんですが、最近描写が細かすぎて文字数が多すぎて、もう少し書き方の研鑽が足りないなと痛感しました。

ハジメ達救出組は原作とほぼ変わらないのでカットし、次回からは王城組の展開を書いていきますので引き続きよろしくお願いします!!



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