前世らしき誰かの映画知識のせいで自分のことをエンドスケルトンだと認識している少女(中身は混沌)が、一から十まで全く知らないブラック・ブレット原作に介入していくけど、少なくともターミネーター要素は皆無なお話。


日記形式もどきです。短編じゃなかったら、日記パートと他者視点パート分けるんですけどね。私にはこれが限界でした。というか、ブラブレ短編杯の存在を知ったのがつい昨日のことなので⋯⋯(言い訳)

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関わる人間全員から似ているような違うような勘違いをされる系ターミネーター主人公。書きたいことが書ききれないので、短編の日記形式は良くないね。続いたらもう少し面白いのが書ける(当社比)が、この作品が選ばれるとも思えないのでこの機に吐き出したいだけ吐き出しました。後悔はしていませんが、自らの文章能力の低さに猛省しております。


転生したらエンドスケルトンだった件

 □

 

 2031年〇月〇1日

 

 今日から日記を付けることにした。

 元々日記を付けるつもりはあったのだが、正直言ってそんな暇は無いくらいには多忙な10年を生きてきたのだ。目覚めたのが10年前。この体は16歳程度の見た目だが、稼働年数も10年。中身は今年で39歳。

 何があったかとか、そういうのは割愛するが、重要なことはただ一つ。

 

 私には前世の記憶(・・・・・)というものがある。それも、女性体である今の自分とは真逆の男性としての記憶だ。

 

 体の違和感とか、そういうのはちゃんと女性の振る舞いがインストールされてあるはずなので存在しない。多少、オタク趣味とかへの偏見が薄れたかもとは思ったが、正直言って、元からそこまで偏見とかは持たないタイプなのでそれも微妙だ。利があるとすれば、学識と多少の映画知識くらいか。

 

 ああ、そうだ、名乗り忘れていた。これでは誰の日記かも分からないだろう。

 

 私の名前は周音(あまね)・テイラー・藤束(ふじつか)

 

 

 

 ―――ターミネーター(・・・・・・・)だ。

 

 

 

 □

 

 

「藤束さん! もう寝よう?」

 

 

 東京エリアの中でもあまり治安の良いとはいえない区画。その片隅にあるボロアパート。

 

 藤束さんは、もっと良い所に住まわせてあげたいと言ってくれてるけど、わたしはここで十分だった。

 

 淡く金色味を帯びた銀髪のその人は、デスクのライトを消して何かをデスクの引き出しの中にしまってから、ゆっくりと振り返る。

 

 

「もうそんな時間か? ああ、それはいけない。睡眠不足は乙女の大敵だからな」

「うんうん。⋯⋯そう言えば、藤束さんはなにかしてたの?」

「いや、もう終わったから大丈夫だ。何も心配することはない」

 

 

 藤束さんはいつだって無表情だけど、誰よりも優しいことを私は知っている。だから、藤束さんの言うことなら信じられる。

 

 けど、そんな隠されるように言われると知りたくなるのもほんと。

 私は、お気に入りのぬいぐるみを小脇に抱えて藤束さんに飛び付くと、すかさず上目遣いを送ってみる。

 

 

「そんな目をしても見せてやることはできない」

「ええ〜、ケチ〜! 見せてよ〜!」

「もう寝る時間だ」

 

 

 普段ならこうしたら渋々教えてくれるのに、今日はダメみたい。これ以上聞いても答えてくれそうにはない。

 でも、藤束さんはそういうことも時々あるからもう慣れたものだ。

 

 うなずいて離れると、今度は温度を感じない手のひらで頭を撫でられる。でも、暖かいその手のひらがわたしは好きだった。

 藤束さんに促されるままベッドに横になると、藤束さんは私の頭をもう一度撫でてから、おやすみとだけ残して自分も隣に敷いた布団に入ってしまった。

 

 以前は同じベッドで寝ていたんだけど、ある時私が寝ぼけて()を使ってしまった際に藤束さんを抱き枕にしてしまい、危うく死ぬところだったらしい。それ以来、私はベッドで藤束さんは布団で寝ることになったのだ。最近では私もかなり力を制御出来るようになってきたので、前みたいに藤束さんを抱きしめ殺してしまうなんてことは無くなったと思うけど、それでも藤束さんはたまにしか一緒に寝てくれない。

 

 長老や他の子達と一緒にマンホールの中で暮らしていた頃。あまり贅沢とかそういうのは無かったけど、それでも幸せだった。

 今はあの頃よりも断然マシな生活でも、本当は生活なんかよりも、この人と一緒に居られることが今のわたしにとっては幸せ。

 

 それに、藤束さんも一緒に戦えば長老や他の子達の生活も楽になる。危険だけど、いらない子だったわたしがこの人のそばに居て、誰かの役に立つ為には、この力を使ってイニシエーターとして活動するのが一番だから。

 

 

「⋯⋯お前は、私と共に居て満足か?」

「うん。あそこに居た時も幸せだったけど、今の方がもっと幸せだよ」

 

 

 わたしが即答すると、藤束さんは少しの間黙りこんでしまう。

 

 何か変なことでも言ったかな?

 

 そんな心配に駆られていると、藤束さんは優しげで安心したような声色で小さく微笑んでから、口を開いた。

 

 

「⋯⋯それなら良かった。また明日も早い。おやすみ」

「おやすみ、藤束さん!」

 

 

 ぎゅっとぬいぐるみを抱いて、わたしは目を瞑る。すぐに眠たくなってきて、いつの間にか私は眠りについていた。

 

 

 □

 

 2031年〇月〇2日

 

 昨日は後少しのところで相棒に日記を覗き見られるところだった。

 相棒とは、イニシエーターである少女のことだ。

 

 イニシエーターというのは、この世界特有の存在である。

 

 前世では有り得なかった怪物『ガストレア』のウィルスに感染した状態で産まれてくる、だったかそんな感じの子供たちがプロモーターという保護者のような存在と組んで就く仕事、もしくは役職のことだ。

 

 まだ年端も行かない子供たちが仕事に就いている時点でどうかとも思うが、この世界における彼女達は何もしていなくても憎まれている存在なので、こうしてイニシエーターとして民警に所属しなければ明日のご飯も食べられるか分からないご時世なのだ。

 圧倒的にマシな現代人の感性を持つ私からすれば正直言って胸糞悪いことこの上ないが、私のような一兵器が何を言って何をしたところでどうにもならないので、取り敢えず相棒だけ救えればそれで良し、他は出来る範囲でやろう、ということで納得した。過去には現代日本人の感性と前世から度々お人好しだと言われてきた性質、そしてこの世界で強大な力を持ってしまった故にこの腐った世界をどうにか出来ないかと思い悩みもしたが。それは今は良いだろう。

 

 そんな私の相棒である彼女は、私が過去に一度お世話になった松崎さんというこの狂った世界における神にも等しい方から託された子だ。

 薄色の髪の毛にいつも、熊なんだか猫なんだか分からないぬいぐるみを抱えている10歳に行くか行かないかの少女だが、あれで戦闘能力はターミネーターである私に追随するものがあるので侮ってはいけない。

 

 それにしても、松崎さんは本当に神だ。

 

 39区だけとはいえ、それでもあの一帯の子供達を拾ってしっかりと育てている。不敬なことかもしれないが、テレビでしか見た事のない聖天子様(天皇様のような存在)よりもよっぽど敬える。松崎さん is God.

 

 何はともあれ、私はこの身体の借金1000億円の返済金と、松崎さんのところに仕送るためのお金、私と相棒だけで切り盛りする民間警備会社(以降民警と書く)の維持費諸々を稼がなくてはならないので、明日の為にもう寝ることにする。

 

 

 □

 

 

 彼女と初めて出会ったのは、四年程前のことでした。

 

 あの日は、丁度子供達とマンホールの外で遊んでいた時のこと。いきなりの雨で子供達を連れて急いで戻る最中、雨の中で立ちつくす彼女を見つけたのです。

 

 

『ああ、私か? 私に話しかけるなんて、物好きな人だな。見ての通り、傷心中だ。何も無いぞ』

 

 

 今まで攻撃的になっている子供達や、絶望感から目を濁らせた子供達と出会うことはあっても、ここまで凄惨な目をした子は見たことがなかった。

 

 藤束周音と名乗った彼女は、年代的には奪われた世代。その独特な雰囲気はよしんば生来のものかもしれなくても、その内側は計り知れない。だから、子供達と引き合せることに躊躇しました。

 しかし、それでも良心には逆らえず地下へと連れて行くと、そこに集まる子供たちを見て、彼女は次の瞬間には私の首を掴んでいました。

 

 

『お前も、子供達を虐げるのか⋯⋯!? お前は何のために子供達を集めている!? お前も、あの悪魔共と同じなんだろう!?』

 

 

 ああ、良かった。

 

 大の大人を浮かせる程の握力で首を絞められ、意識が薄れ始める中、彼女の慟哭にも似た叱責を聞いて、私の心には温かさと安堵が広がりました。

 彼女のような奪われた世代もいるのだと。まだ、この世界は終わっていないのだと。子供達に希望を持たせても良いのだと。

 

 結局、子供達の泣きながらの説得で彼女は慌てて手を離してくれました。先までの虚無感や怒りはナリを潜め、しおらしくなり何度も頭を下げて謝罪する姿に微笑ましいものを感じながらも、私はひとつ彼女に提案したのです。

 

 

『子供達と遊んであげる⋯⋯私がですか?』

 

 

 呆けた彼女の顔は今でも覚えています。思えば、あの日が最も彼女の表情の移り変わりを見れた日でもありました。

 

 一人で子供達の世話をするのも段々と厳しくなってくる。私だってずっと子供達を見ていることは出来ない。私の後継、とまでは言わなくてもそろそろ手助けしてくれる人が欲しいとは思っていましたし、彼女のような得難い人に、もっと子供達のことを知って欲しいと思ってのこと。

 

 私の説得に、負い目とかそういうのも手伝って、彼女は首を縦に振ってくれました。

 今にして思えば、達観しているところがあったからと言って、少女であった彼女に歳もそうは変わらない子達の相手をしてもらう、というのは私としても些かどうかとは思いますが、それでも彼女は頑張ってくれました。

 

 ですが、ある日を境に一ヶ月程度音信不通となったことがあります。危険な目にだけはあっていないと良いのですが、と謎の多い彼女を心配は出来ても、何かがあった時、彼女を助けることは力無き私には出来ません。

 自らの情けなさに自責する日々が続く中、唐突に彼女がやってくると開口一番にこう言いました。

 

 

『松崎さんのことを女史に話したら、是非とも援助したいと言っていました。どうでしょうか?』

 

 

 願ってもない話でしたが、すぐに私は何かがあると気が付きました。

 恐らく、その女史には話していないでしょうし、手渡してきた封筒の中の大金もその女史の物ではないとどうしてか分かってしまったのです。

 

 それでも、彼女の手渡してくるそれを受け取らない、ということは出来ませんでした。きっと、彼女はもう決意を固めてしまっている。危険を冒してでも、子供達のために身を粉にして戦い抜くということを決めているのだと、私には分かってしまった。

 

 その真相が分かったのもすぐ後のこと。

 

 久しぶりに会ったのだから、子供達にも顔を見せてあげて欲しいと頼めば、彼女はいつもの如くすぐさま首肯。

 道中でまだ保護出来ていなかった子供を見つけて私が近寄ると、彼女はいきなり子供の方へと飛び出しました。

 

 何事か、そう思って見遣ると、そこには今まさにその子を襲おうとするガストレアの姿(・・・・・・・)

 

 鋭い爪が彼女を襲い、来る惨劇に呆然とするしか無かった私ですが、今でもあの時の光景は目に焼き付いて離れません。

 

 

『お前達に恨みはないが、子供達を危険に晒すなら話は別だ』

 

 

 爪刃によって切り落とされるはずの右腕はしっかりとそこに在り、しかし、その刃の下からは黒い鋼が覗いていました。

 彼女は腰を落とした体勢から左腕を引き絞ると、ガストレアに向けて凄まじい速さで拳を繰り出します。

 

 素人目に見て確かにガストレアを倒すことは出来ても、人の拳では到底耐えられないような一撃。ですが、彼女の体は人のソレではありませんでした。

 

 

『―――ヴィヴロ・ターミネーター⋯⋯!』

 

 

 皮が裂け粉々に砕けながら生まれ出るようにして現れた黒き鋼の拳は、真っ直ぐガストレアに突き刺さり、そのまま貫通。

 彼女は一撃で何倍も大きな巨躯を持つ怪物を打ち倒してしまったのです。

 

 呆然とする私と目を見合わせて、困り顔の彼女でしたが、先程助けた子供に抱き着かれ混じり気のない感謝をされると、悪い気はしていないようでした。

 

 

 なるほど、彼女の資金源はガストレア退治で、ここ一ヶ月はこんな危険なことをしていたのか。

 納得すると同時に心配し、また年長者として命を大切にするように何かを言った方が良いのではないかとも思いましたが、彼女には必要のないことに思えました。

 

 

 何せ、あんな優しい眼で子供の頭を撫ぜる少女が、命を大切にしていないはずがない。彼女なら、どんなに危険を冒してでも、必ず帰ってくるだろう。危うさはありましたが、それ以上の安心感を抱かせる風格が、私にそれをさせなかった。

 

 

 そして去年。彼女はプロモーターとなり、私の推薦と、その子本人の志願で、その時に助けた子をイニシエーターとして彼女に預けることにしたのです。

 

 

「長老! あまねはまだなの?」

「もうすぐ来ますよ。待っていなさい」

「はーい」

 

 

 きっと、この子達やあの子の為にも彼女は死なない。こうしてまた、顔を出しに来る。

 ただ一つ、心配なことがあるとすれば、あの子と暮らすようになってから段々と弱くなってゆくイメージを抱くようになってしまったことですが⋯⋯。

 

 心配は尽きません。でも、私のような老いぼれには心配することしか出来ない。なんとも、歯痒いものです。

 

 

「長老!」

「松崎さん、お元気でしたか?」

「ええ、お陰様で。二人とも、よく来てくれましたね。ここではなんですから、どうぞこちらに。珈琲でも出しましょう」

 

 

 そう言えば、あの心優しい青年。

 彼ならば、彼女をどうにかしてくれるかもしれない。そんな気がするのです。

 

 

 □

 

 2031年〇月〇3日

 

 今日は大変だった。相棒が、一時的とはいえ行方不明になってしまい、私はそれを必死こいて探していたのだ。

 

 まあ、結論から言えば案外相棒はあっさり見つかった。というよりも、相棒を保護してくれていた親切な人が私を探していたらしいのだ。

 

 持つ過去が過去なだけあって普通はあまり人間を信用しない相棒がいつの間にか見知らぬ女性と仲良くなっていたので何事かと思ったが、そういうことかと納得すれば、この様な稀有な人物と出会えることもこの世界ではあまりないことであるため親睦を深めたいと思うのも道理。しかし、幼子すら相棒達のことを恨むこの腐った世の中には斯様な人格者がまだまだいるのだなと思うと心が温まる思いであった。

 

 

 □

 

 

 私、天童木更が彼女と出会ったのは、本当に偶然だった。

 買い物帰りに迷子の子供を見つけた私は、放っておくことなど出来ず保護者を探してあげようとした。途中で呪われた子供達であること、イニシエーターであることを打ち明けられ、探し人がプロモーターであることを知ってからは早かった。身のこなしが一般人と違う人を探せば良いのだ。

 商店街にまで来ると焦った様子で聞き込みをしている制服姿の女性が目に留まる。動きが圧倒的に違ったから。恐らくは私よりも強い。その女性の姿を認めると一目散に駆け寄る少女。やっぱり彼女がこの子のプロモーターだったか。少女から話を聞いた様子の女性は私の元まで歩いてくると頭を下げる。

 

 

「ありがとう、貴女が相棒を見つけてくれたらしいな」

「え、ええ。見つかって良かったです」

 

 

 その雰囲気からてっきり気の強い人かと思ったがそうでもなかったらしい。礼がしたいとの事でここのところの財政難からちょうどお腹も空いていた私はありがたくお誘いに乗ることにした。

 手頃なカフェに入ると彼女は自らにコーヒー、少女にはケーキ、私にも少女と同じものを注文する。

 

 

「えっと、名前を聞いても良いかしら?」

「ああ、そうか。すまない、名乗り遅れた。私は藤束周音だ、よろしく」

「ええ、よろしく藤束さん。私は天童木更よ。木更で良いわ」

「分かった、木更。私も周音で良い」

 

 

 天童というこの呪われた名前は誰にも呼んで欲しくはない。周音さんは運ばれてきたコーヒーに口を付けると、ほっと一息吐いた。その幻想的な見た目からか、行動が逐一絵になる人だ。私も客観的に容姿は並より上程度だとは思っているが、そんな私からしても彼女の姿は憧れる。

 

 

「周音さんはプロモーターなのよね?」

「む、ああそうだ。藤束民間警備会社を営んでいる」

「そうなのね。私も天童民間警備会社を営んでいるの。もし良ければ、今後も仲良くしてくれると嬉しいわ」

 

 

 伝手ではないが、こうして知り合いが増えれば私の目的の為にいつか助けてくれるかもしれない。それに、打算的な面を除いても、同い年らしい彼女とは仲良くなれそうな気がした。

 

 

 □

 

 2031年〇月〇4日

 

 今日はかかりつけ医である室戸(むろと)(すみれ)女史の下に赴いた。

 私の躯体のメンテナンスと、侵食抑制剤を受け取りに行ったのだが、先客が居たらしく随分と待たされてしまった。気配を殺して様子を伺えば、そこに居たのは私と同じ勾田高校の制服を着た黒髪の少年。

 名前は知らないが見かけたことはある。向こうはおそらく私のことは知らないだろう。彼も機械化兵士や、私のようなターミネーターなのだろうか?

 

 退室する彼に気が付かれないように女史の私室と化している死体安置所に入る。

 気配を消したまま話しかけたからか物凄く驚かれた。全力で平謝りする。時々やってしまうのだ。私は基本的に無機物なので気配を消そうとしたら、本当に消える。何せ、脳以外は機械(・・・・・・)の身である。実質無機物だ。女史には、R18ゲームに居そうなキャラだと言われた。

 

 許してもらえたかと思って女史の顔色を伺うと、彼女は懐から何かを取り出してきた。

 

 それは、なんと私の子宮(・・)。しかも、まだ死んでない生きているものだ。

 私の身体は、元々重い持病で死に体の少女を加工したものであるらしく、脳などのいくつかの生きていた器官(脳と子宮の二つだけだが)は保存されているらしい。元の見た目を考慮した毎年の成長アップデートもある。ちなみに今年で最後で、後はやりたければするが大金が必要だし保険は効かないらしい。私も今のままで、ここから成長するつもりはない。今日のメンテナンスは普通のメンテナンスだ。

 

 残念なことに元の人格は無い。私の人生において気掛かりなことは相棒や松崎さんと子供達などの知人の安否と、元の人格の行方である。もしも戻ってくる余地があるならば、この身体を受け渡して消滅することも辞さない。

 

 それにしても、なんとも非人道的な人間である。流石は自称人外の過去をお持ちの神医だ。相棒を連れてこなくて良かった。これを見られるのはあの子の教育的にも、私の精神衛生的にもよろしくない。そもそも、なんでそんな物を持ち歩いているのだ。それは借金の担保とはいえ私のだぞ。

 

 即座に右手の推進力カートリッジを起動して取り返そうとすると、女史が手元の機械を弄る。それだけで唐突に全身の力が抜けてしまい、私はあられもない姿にひん剥かれてメンテナンスを受けることになってしまったのであった。

 

 やはり、女史は変態である。

 後、私は別に恋人なんて要らないし、元はと言えば男の人格なんだから男を好きにはならないぞ。うん。

 

 

 □

 

 

 カルテを見ながら、ベッドに座って腕の調子を確認する周音をちらりと見遣る。

 一応、全身に人間質の皮を貼ってはいるが、基本的に金属である為熱などない。一度熱を出せるようには出来ないかと聞かれたが、そんなことをしたら皮が溶けてグロテスクなことになるぞと言って退けたこともある。それくらいには、彼女の人間としての身体への愛着は強い、ということだろう。

 それを考えると、自らの罪深さを強く自覚してしまい、胸を締め付けられる思いで一杯になる。例え、放置していたら死んでしまうような、全身に悪性の腫瘍が出来た状態だったとしても、うら若き少女の肉体を丸々取り払うという行いは、神をも恐れぬ人外の愚行、非業でしかない。

 

 いや、元はと言えば、私は彼女という奇跡に今は亡き彼を重ねて、縋っていただけなのだ。到底、許されることではない。

 

 どんどんとネガティブに傾倒していく考えを振り払うように頭を振って、手元のカルテを彼女に渡す。今は、彼女や他の者達を出来る限り支援してやるのがせめてもの罪滅ぼしなのだ。

 

 

「よし。今日のメンテナンスはこれで終わりだ。どうだ? 新しい身体は馴染んできたか?」

「まあまあ、だな。まだ数ヶ月と経っていない。今はなんとも言えないが、リーチ(・・・)は伸びたな」

「くく、リーチか。生身の部分なんてほとんど残っていないのに、余裕そうだな」

「女史が私の子宮を返してくれたら多少は人間らしさを取り戻すさ。だから、早く返せ」

 

 

 伸ばされた手を躱して手元のリモコンで周音の全身を脱力させる。堪らず転がりそうになる体に寄り添ってベッドにもう一度寝かせた。恨めしそうに少しだけ、本当に少しだけ表情を歪ませる周音に苦笑する。

 

 

「鬼畜め」

「はっはっは。なんとでも言うが良い、周音」

 

 

 彼女は、こうしてこれ(子宮)を借金の担保にしなければ、すぐにでも戦場で死に果てようとするだろう。もう既にこれと脳以外には生身の残らぬ身だ。愛着あるそれらを失って、彼女には縋れるものがない。私からこれを取り返すことで、彼女はやっと全てを取り戻す。

 

 全てを無くし絶望した人間が、遺されたその欠片を取り戻した時、変わり果てた自らに終わりの引き金を引くであろうことは想像に難くない。似たような例も少ないが過去に見てきた。

 

 だから、私は自分がどれだけ彼女に対して非道なことをしているという自覚があっても、これを彼女に返す訳にはいかないのだ。それこそ、彼女が生きる意味を見つけるか、彼女を止めてくれる伴侶を見つけるまでは。

 

 

「⋯⋯そういえば周音。恋人はできたのかい?」

「⋯⋯は?」

 

 

 奇天烈なことを言ったつもりはないのだが、周音は呆れたような、または虚を突かれた様にも見える表情で私を見つめる。

 何者も映さない紺碧の眼に耐えかねて、私は冗談だとはぐらかすことにした。私もこの手の話題は明るくはなれないからな。

 

 

「⋯⋯恋人、か。いや、いい。私には似合わない」

「そうかね? なら、まあ、君の意志を尊重しよう。ああ、でも一人だけ優良物件を紹介しておこうか」

「?」

 

 

 今の私は相当意地の悪い顔をしているだろう。

 許せ、蓮太郎くん、木更ちゃん、延珠ちゃん。

 

 

「君の学校に里見蓮太郎という男がいる。彼はなかなか悪くないと思うがね。君のお眼鏡にも叶うはずだよ」

「いや、私はそんなに高い基準を求めてなど居ない」

「はは、そういうことにしておこう」

 

 

 もしもこれで周音まで蓮太郎に惚れるようなら、そろそろ蓮太郎も不味くなってくるな。ははは。まあ、あいつのことだ。悪い風にはならないだろう。

 納得していない顔の周音に帰るように促しながら、私は内心ほくそ笑むのであった。

 

 

 □

 

 2031年〇月〇5日

 

 

 今日はマスケラを被った変態と出会った。

 

 いや、まずはことの成り行きからか。

 

 なんか、きな臭い。なかなか面白くないことが起きそうな、そんな予感をひしひしと感じる一日だった。

 朝一に防衛省から呼び出しを受けたので赴けば、そこに居たのは東京エリアでも有数の民警の社長とペア達。間違っても私なぞが呼ばれるような場所ではなかった。が、同じく零細だと言う木更とその天童警備会社所属ペアであるらしいどこかで見たことのある少年と女の子も居たのでよく分からなかった。そして、一同に会した私たちの前(と言ってもスクリーンだが)に現れたのはなんと聖天子様。これには場が騒然となったが、そんなことよりも重大なことがあった。

 聖天子様からの依頼の最中に現れた例の変態マスケラが、圧倒的な力でその場にいた民警を捩じ伏せると、宣戦布告をして首を置き土産に去っていったのだ。

 新型ターミネーターでも、あそこまでデタラメではなかった。確かに液体金属のアイツらは難敵ではあったが、そこはシュワちゃんが倒したし、今の私なら倒せる。が、アレばっかりは攻略法が謎だ。というか、何故に機械化兵士が敵側に回っているのか。私達はこれでもイニシエーターと同程度以上には戦える。だからこその対ガストレア特殊部隊なのだ。そんなのが敵に回るのは明らかにおかしい。

 

 椅子から立ち上がらずに、物騒な世の中になったものだなあ、と遠い目をしながら呆れていると、周りから凄い目で見られた。跳ね返った弾丸は全部撃ち落としたし、なんなら近くの奴らも守ってやったのだがどうしてそんな目で見られなくてはいけないのか。疑問に思いながらも、私はその場を後にして帰ってきた。

 

 そこからのことは、大して特筆することでもないので割愛しよう。さあ、今日の晩御飯はビフテキだ。

 

 

 □

 

 

 あまりにも圧倒的だった。

 俺に何が出来たか、自問しても答えは浮かばない。せめて身を呈して木更さんを守ることが出来たくらいか。

 

 だが、あの人は自分の身だけでなく、周りの人間も助けることを可能とした。

 それも、銃弾で銃弾を弾き飛ばすという人間離れした業で。俺も少しは強くなったと思ったが、あんなこと出来るはずもない。

 あの男、蛭子影胤もまた、彼女の成したことに驚きを禁じ得ないようで。その名を、藤束周音という名前を聞くと納得したように頷いて去っていった。

 

 

「アンタは⋯⋯いったい何者なんだ⋯⋯!?」

 

 

 俺の問い掛けに振り返ることなく、彼女は応える。

 

 

 

「私は藤束周音。ただの―――ターミネーターだ」

 

 

 

 ターミネーター。殲滅者。どこか蛭子影胤にも似た雰囲気を持つ彼女のことを、俺は忘れることは無いだろう。

 

 

 




うーん、ゴミクオリティ()
やっぱり二次創作は難しいですね。後、単純に主人公視点を日記形式で書くこと、原作キャラクター視点から物語を進めること、これらがどれだけ難しいのか身をもって知りました。それだけでも参加した価値はあったと思います。続いたら、私の大好きな三木眞一郎と猫娘が生き残ります。その代わりに主人公がアイルビーバックします。

藤束・T・周音
戦闘力:S
意志力:B(里見蓮太郎でS)
闇深力:A(ブラック・ブレット登場人物全員S)
みたいな?

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