ヴィランのお話   作:斗掻き星

40 / 40
とっても良い笑顔だった。

「え、お茶子の連絡先あるんですか」

「うん」

 

それは、他愛ない会話の中で出た一言だった。

 

私がニュースに映っているウラビティことお茶子を見て、久しぶりに会いたいな、と口にしたところ、エリちゃんが連絡先を持っていると言ったのだ。

 

「前のスマホ自体は処分しちゃったけど、連絡先はメモしてあるよ」

「そうですか…」

 

エリちゃんはスマホを取り出して立ち上がった。

 

「じゃあちょっと電話してくるね」

「ち、ちょっと待って」

「ん?」

 

会おうと思えばすぐに会える。

そう思うと、緊張だか何だかで、尻込みしてしまう。

 

「その、えっと、今でなくても。ほらお茶子も忙しいでしょうし」

「ウラビティ事務所ってヒーロー事務所にしては珍しく定休日あるんだよね。今日なんだけど」

「うぅ…」

 

エリちゃんは、私が緊張して足を踏み出せないのを分かっているのか、少し笑って言った。

 

「まだ今日会うと決まったわけじゃないよ」

「う、はい」

 

 

 

「小夜さん!お茶子さんが、今日遊ぼう、って!」

 

…心の準備をしないと。

 

 

 

「二人とも、久しぶりー」

「久しぶり、お茶子さん」

 

駅前での待ち合わせ。

私達が着いたころには、お茶子は先に来て待っていた。

 

テレビで見るヒーローコスチュームとは違って、落ち着いた雰囲気の私服を着ていた。

 

「お茶子、その、久しぶり」

「うん久しぶり。最後に会った時と全然変わってないねぇ」

「お茶子は大人になりましたね」

「そらもう大人ですから」

 

いざ会ってみれば、言葉は途切れず出てきた。

緊張はしたけど、話したいことはいくらでもあった。

 

「とりあえず昼飯食べへん?そこで今日の予定立てよ」

「そうしましょうか」

「はい!私パスタ食べたい!」

 

 

 

私達は近場のファミレスに入った。

各々注文をすませ、料理が来るまで雑談に興じていた。

 

「いやーそれにしてもびっくりしたよ。失踪したエリちゃんから連絡来たんだから」

「ごめんねぇ。あれから迷惑かかったりしてない?」

「事情知ってる人からめっちゃ疑われとる」

「あはは…ごめんね?」

 

エリちゃんの失踪は公にこそされていないが、裏ではそれなりに騒がれているようだった。

特にエリちゃんのインターン先のヒーローは長期の活動謹慎となったらしい。

 

「疑われているのに、ヒーローが私達と会ったりして大丈夫なんですか?」

「いや私、公私混同しないタイプのヒーローやから」

「どういうことですか…」

「オフの日に友達と遊んだって問題ないってコト。たとえ捜索中の(ヴィラン)でもね」

 

茶目っ気たっぷりにお茶子は言った。

あ、でも、とお茶子は言葉を続ける。

 

「仕事中に電話はかけてこないでね?」

「邪魔しちゃ悪いもんね?分かってるよ」

「いや、私一応ヒーローだから。仕事中にかかってきたら普通に逆探するよ?」

 

いかにも当然、といった風にお茶子は言った。

公私混同はしない、と言っていたが、ちょっと極端で笑ってしまった。

 

「遊びのお誘いは勤務時間外にお願いしまーす」

「ふふ、分かりました」

「はーい、気をつけまーす」

 

ヒーローと、(ヴィラン)

正反対の肩書は今は鳴りを潜め、私達はただの友達として語り合った。

 

お茶子もエリちゃんも、多分私も、とっても良い笑顔だった。




これにて完結といたします。
応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。

皆様の感想、お気に入り登録が、読んでもらえているという実感が、確かに私の活力となっておりました。
感想を読んで気づかされたことも沢山ございます。

ささやかでも、皆様の楽しみとなっていたならば幸いです。
本当にありがとうございました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

おしゃべりな"個性"(作者:非単一三角形)(原作:僕のヒーローアカデミア)

 ちょっとおしゃべりな"個性"と共にヒーローを目指す女の子の物語。▼ ※本編完結しました。▼ ※Chapter-4以降、作中の雰囲気が少々変わります。閲覧の際はご注意を。▼


総合評価:6443/評価:7.84/完結:81話/更新日時:2026年04月01日(水) 06:00 小説情報

【完結】僕の『敵連合』(作者:酉柄レイム)(原作:僕のヒーローアカデミア)

 多くの人間が個性という力を持つ。ただ、それは必ずしも幸福な個性ではない。当たり前に幸福が存在するように、必ず不幸が存在する。▼ ん?僕が誰かって?ハッハッハッハッハ!▼ さぁ、始めよう僕。不幸(かわいそう)な僕が、幸福(死)を手に入れるために。▼ これは、とある不幸な少年が、幸福になるための物語。


総合評価:15221/評価:8.93/完結:112話/更新日時:2020年04月19日(日) 21:58 小説情報

<Infinite Dendrogram>~クソゲーハンター、クソゲーに挑まんとす~(作者:折本装置)(原作:Infinite Dendrogram)

無限の可能性を謳うVRMMOである<Infinite Dendrogram>。▼そこに一人の青年が足を踏み入れる。▼彼は知らない。▼これがただのゲームではないことを。▼彼は知らない。▼これがゲームではないことを。▼この世界の裏事情など知らず、今日も彼はこの遊戯に恐れおののく。▼「デスぺナがログイン制限二十四時間とかクソゲーかよ……」▼


総合評価:3245/評価:8.23/連載:137話/更新日時:2024年08月31日(土) 22:50 小説情報

悪ならざる敵(作者:百日紅 菫)(原作:僕のヒーローアカデミア)

2人の少年少女は、『  』を求めている。▼


総合評価:3983/評価:8.61/完結:6話/更新日時:2020年01月14日(火) 00:00 小説情報

波動使いのヒーローアカデミア(作者:あじのふらい)(原作:僕のヒーローアカデミア)

波導は我にありなんて言わない少女がヒーローを目指す物語▼支援絵紹介▼最近Fate読み始めt(以下略様▼【挿絵表示】▼たろーまる様▼【挿絵表示】▼


総合評価:10231/評価:8.66/完結:268話/更新日時:2023年11月19日(日) 07:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>