ヴィランのお話   作:斗掻き星

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とっても良い笑顔だった。

「え、お茶子の連絡先あるんですか」

「うん」

 

それは、他愛ない会話の中で出た一言だった。

 

私がニュースに映っているウラビティことお茶子を見て、久しぶりに会いたいな、と口にしたところ、エリちゃんが連絡先を持っていると言ったのだ。

 

「前のスマホ自体は処分しちゃったけど、連絡先はメモしてあるよ」

「そうですか…」

 

エリちゃんはスマホを取り出して立ち上がった。

 

「じゃあちょっと電話してくるね」

「ち、ちょっと待って」

「ん?」

 

会おうと思えばすぐに会える。

そう思うと、緊張だか何だかで、尻込みしてしまう。

 

「その、えっと、今でなくても。ほらお茶子も忙しいでしょうし」

「ウラビティ事務所ってヒーロー事務所にしては珍しく定休日あるんだよね。今日なんだけど」

「うぅ…」

 

エリちゃんは、私が緊張して足を踏み出せないのを分かっているのか、少し笑って言った。

 

「まだ今日会うと決まったわけじゃないよ」

「う、はい」

 

 

 

「小夜さん!お茶子さんが、今日遊ぼう、って!」

 

…心の準備をしないと。

 

 

 

「二人とも、久しぶりー」

「久しぶり、お茶子さん」

 

駅前での待ち合わせ。

私達が着いたころには、お茶子は先に来て待っていた。

 

テレビで見るヒーローコスチュームとは違って、落ち着いた雰囲気の私服を着ていた。

 

「お茶子、その、久しぶり」

「うん久しぶり。最後に会った時と全然変わってないねぇ」

「お茶子は大人になりましたね」

「そらもう大人ですから」

 

いざ会ってみれば、言葉は途切れず出てきた。

緊張はしたけど、話したいことはいくらでもあった。

 

「とりあえず昼飯食べへん?そこで今日の予定立てよ」

「そうしましょうか」

「はい!私パスタ食べたい!」

 

 

 

私達は近場のファミレスに入った。

各々注文をすませ、料理が来るまで雑談に興じていた。

 

「いやーそれにしてもびっくりしたよ。失踪したエリちゃんから連絡来たんだから」

「ごめんねぇ。あれから迷惑かかったりしてない?」

「事情知ってる人からめっちゃ疑われとる」

「あはは…ごめんね?」

 

エリちゃんの失踪は公にこそされていないが、裏ではそれなりに騒がれているようだった。

特にエリちゃんのインターン先のヒーローは長期の活動謹慎となったらしい。

 

「疑われているのに、ヒーローが私達と会ったりして大丈夫なんですか?」

「いや私、公私混同しないタイプのヒーローやから」

「どういうことですか…」

「オフの日に友達と遊んだって問題ないってコト。たとえ捜索中の(ヴィラン)でもね」

 

茶目っ気たっぷりにお茶子は言った。

あ、でも、とお茶子は言葉を続ける。

 

「仕事中に電話はかけてこないでね?」

「邪魔しちゃ悪いもんね?分かってるよ」

「いや、私一応ヒーローだから。仕事中にかかってきたら普通に逆探するよ?」

 

いかにも当然、といった風にお茶子は言った。

公私混同はしない、と言っていたが、ちょっと極端で笑ってしまった。

 

「遊びのお誘いは勤務時間外にお願いしまーす」

「ふふ、分かりました」

「はーい、気をつけまーす」

 

ヒーローと、(ヴィラン)

正反対の肩書は今は鳴りを潜め、私達はただの友達として語り合った。

 

お茶子もエリちゃんも、多分私も、とっても良い笑顔だった。




これにて完結といたします。
応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。

皆様の感想、お気に入り登録が、読んでもらえているという実感が、確かに私の活力となっておりました。
感想を読んで気づかされたことも沢山ございます。

ささやかでも、皆様の楽しみとなっていたならば幸いです。
本当にありがとうございました。
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