「……ん、ここは…?」
薄暗いが
確かに光が存在する洞窟にて彼は目覚めた。
彼は辺りを不思議そうに見渡し、自分が置かれた状況を何となく察したようだ。
「ここが新世界か…?」
地面に倒れ込んでいたことで付いた土埃を払いながら立ち上がる。
仮に新世界…地球外生命体のエネルギーとパンドラボックスを使って創造した新たな世界だとしたら、あのタワーやパンドラウォールはどうなっているのだろうか。
未だ存在していたのなら、その時は…。
「……戦うだけだ」
それらが存在するということは、彼の宿敵が健在で、悪さをしているということになる。
あれだけやって、犠牲者も出して、ようやく倒したのに何とも報われない話ではあるが…。
彼に迷いはない。
1年間、仮面ライダーとして戦い、万丈達と出会ってさらに1年。自我が生まれたばかりの彼——桐生戦兎——にとっては濃密な時間を過ごして、正義のヒーローとして戦ってきたのだ。
時には道に迷うことも、挫折もあった。しかし、仲間と共に何度でも立ち上がってきたのだから…今度だって大丈夫だろう。
「ま、何はともあれ外に出て確認しないとな」
戦兎は服のポッケに手を突っ込んで歩き出そうとして…ふと、フルボトル以外の何かが入っていることに気が付いた。
「なんだこれ?時計か?」
戦兎が取り出したのは赤色の2017と刻まれた懐中時計のようなものだった。
ほんの少し観察すると、プレートの部分が回ることに気づいた。それを回してみる…すると。
【——–エボル】
その時計から、戦兎の宿敵である仮面ライダーの名前が読み上げられた。
「エボル…!?」
『かかったな戦兎ォ!』
気づいて手放そうとした時には既に遅かった。
赤色の懐中時計は瞬く間に液体へと変化を遂げ戦兎の体を包み込む。
「ぐぁぁぁぁっ…!」
呻き声と共に地面へと崩れ落ちた。
……それから数分。
戦兎の綺麗な黒髪は脱色した白へと変わり、目は紅く煌めきを放っている。
「ククッ…ハハハッ…フッハッハッハァ!
偶然、偶々…!何だっていい。幸運だったのさ。
まさかこんな便利なアイテムがあるなんてなァ…
こいつの中に溶け込めた…
ククッ…残念だったなぁ?戦兎ォ〜」
……そこにはもう桐生戦兎はおらず、ただただ
「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああ!!」
「…ん?うおっ」
「わぁっ!?」
ニヤニヤと不気味な笑みを浮かべていたエボルトに真っ赤な物体が飛び込んできた。
が、ハザードレベルが7を超えている
ベチャッという不快な音を立てて転んだ目の前の物体。血生臭い匂いを全身から発していることから目の前の人型の物は血塗れで走ってきたということがわかった。
もちろん血塗れということは、突っ込まれたエボルトの服は当然真っ赤で大きなシミが広がってる。
「おいおい、この服高かったんだけとなぁ〜?」
嘘である。
そもそも戦兎には石動のお下がりの服を与えていたので金などかけていない。
「わ、す、すみません!全く気づきませんでした…」
しかしそれを相手は知らない。
更にこの血塗れの人間は人が良いのか、エボルトの嘘を簡単に信じた。
「ま、嘘だがな。だが、お前そんなに急いでどこに行こうとしてたんだ?お兄さんに教えてくれよォ」
「あ、えっとそのぉ…ぎ、ギルドに行こうとしてたんです…どうしても知りたいことがあって」
「ほぅ…?」
血塗れの人間…身長と声から少年だと判別し、"お兄さん"を強調しながら詰め寄るエボルト。
少年———ベル・クラネルはタジタジになりながらもその目的を答えた。
「ギルド…どんな施設か知らんが、そんな格好で大丈夫なのか?」
「え……うわっ!」
エボルトの指摘でたった今気付いた様子を見せるベルにため息をつきながらも、打算まみれの言葉を発する。ベルの善性を利用する形で。
「ちょうどいい。お前がもし俺の服を汚したことを、ちょっとでも気にしてるなら、この洞窟の出口まで案内してくれ。あと、この辺のことを教えてくれると助かるなぁ?」
—————かくして、血塗れで真っ赤なウサギのベルと
「お前の英雄になりたいという気持ちはそんな物だったのか!」
「違う!僕は…強くなりたいんだ!…あの人に追いつくために!」
どの【ファミリア】にも門前払いだった冒険者志望の少年と、世界を滅ぼす力を持った地球外生命体が果たした運命の出会い。
これは、少年が歩み、邪悪を穿つ、
———【