ストパン世界に転生したけどモブとしてクルロスを見守ろうと思ってただけなのに…   作:まったりばーん

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今回も趣味全開です
すみません
次からちゃんとドロドロさせます


そうは問屋が卸しません!

指向される鈍色の殺意。

FNブラウニング1910。

それは小さな護身用のピストルに過ぎない。

将校というステータスを示す、ただのアクセサリーでしかない。

でもそれが、華奢な彼女の掌にすっぽり収まり、かえって必ず当てるという妙な説得力を持っていた。

 

「答えなさい。さぁ…!」

 

急かす声。

銃口は俺を真正面に見据えている。

既に、彼女のその白く細い指は無骨な引き金へと伸びていた。

突然の状況転換に俺は面食らう。

先程まで穏やかな雰囲気を持っていた彼女とは、殆ど別人に見えたからだ。

そして…なにより、この将校は日本という単語を知っている。

おそらくかつて詩に詠まれ、歴史書に記された日の本という意味の単語ではない。

国家を指す日本という固有名詞を知っていた。

 

「…自分には2つの記憶があります。」

 

ならば、相手は正規の軍人。

素直に話す他、術はない。

 

「一つはこの世界で、北欧のヴィボルグという都市で目が覚めてからの今までの記憶です。」

 

俺の言葉に穴拭智子は眉を顰める。

そんな彼女を眼前に、必死に弁明とも言える身の上話を展開した。

 

「先程お話ししたように、この世界でのヴィボルグ以前の記憶はありません。そこの部分は本当に、でも…もう一つ記憶があります。この世界の扶桑と瓜二つの国で生まれ育った記憶です。時代も今より数十年後、21世紀と言われる頃合いでした。大学を卒業し、就職して暫くの間は平和でしたが、ある日戦争が勃発し従軍。作戦行動中に記憶が途切れ…気づくとヴィボルグの瓦礫の下で目を覚まし…今に至ります。おそらく以前の私はそこで戦死したのかと…。そして、その国の名前が」

 

「日本だったと?」

 

俺が言い切る前に核心部を彼女に言い当てられた。

やはりそうだ。

彼女はどういう訳か日本の存在を知っていた。

 

「成る程。私の知っているケースとは少しちがうけれど、事情は解ったわ。そしておそらく貴方が嘘をついていない事も。」

 

「…信じるんですか?こんな話を。それにどうして中尉は日本をご存知なんです?」

 

「質問してるのは私です。許可した覚えはないわ。」

 

問いかけはぴしゃりと封殺された。

 

「でもそうね、教えられる範囲では答えて上げましょうか?むしろ、貴方が本当にあちらから来た人なら教える義務がある。そうする事を私は推奨されています。」

 

彼女の切れ長の一重に強みが増す。

 

「…その代わりいくつか質問に答えてくれるかしら?」

 

そして魔女の尋問が始まった。

内容は驚くほど馴染み深い物。

以前いた世界の歴史的事件、政治体制、元号、それを取り巻く社会情勢などなど…

いくつか答えに詰まる物はあれど、その殆どを前の世界の知識で回答する事ができた。

 

「…では、最後に。貴方の最後の記憶にある、あちらの世界の正確な年を教えて。皇暦でも西暦でもかまいません。」

 

「忘れもしません。あの年は夏が暑かった。」

 

最後に、俺は前の世界で死んだであろう年月日を西暦で回答した。

 

「驚いたわ、最高記録更新よ。」

 

そこまで言って彼女は銃口を下げる。

だが以前として、その目には警戒の二文字がみてとれる。

ブラウニングは相変わらず抜き身のままだ。

 

「間諜ではなさそうね。約束通り、私が教えることを許可された範囲で教えます。教えている最中の質問はいっさい受け付けませんし、記録を取ることも認めません。最も、その指では書き下す事は出来ないでしょうけれど。」

 

そうして彼女は言葉を続ける。

 

「まず、私の現在の所属を教えるわ。貴方は知らないと思うけど、私はそれなりの実力を持った魔女だった。」

 

それは知ってる。外伝は大抵読んでいた。

 

「だけど、今の私は魔法力がなくなり殆ど常人のソレ。お役御免となる代わりに、軍歴を買われアドバイザーとして招聘されたわ。それが、陸軍科学研究所登戸出張所…通称、登戸研究所よ。今はそこで対ネウロイ技術の開発と防諜及び諜報活動に従事してます。」

 

登戸…急に馴染みのある地名が出てきた。

一度も降りた事はなかったけど確か在来線から私鉄への乗り換え駅だった筈。

たしか、神奈川県。

そうか!扶桑が日本とこんなにもそっくりなら当然同じ土地もある。

考えてみればペテルブルク、ベルリンもヘルシンキだってそっくりそのまま同じじゃないか。

 

「日本。その存在が確認されたのは扶桑海事変の時よ。戦闘中の行方不明者、特に状況的に戦死したと思われる兵士がひょっこりと発見される事があったわ。その何人かが口を揃えて言うの、自分は日本という国から来たってね。」

 

「それって自分以外にもいるんですか!?日本人が!」

 

「…」

 

思わず叫ぶ俺。

だけど、彼女は何も答えない。

質問は受け付けない。

それは最初に宣言されていた事だ。

応える代わりに、穴拭智子は口を動かす。

 

「数は多いわけでもない。ただ、1人や2人ではない。最初は一種のストレスによる集団ヒステリーか、さもなければ敵前逃亡の言い訳だと考えていたわ…けれども、その日本という国の歴史、政治体制、文化、宗教、経済、及び、日本の存在する世界の国々、その国際情勢等…どの証言も具体的過ぎた。それも、特定の時代からではなく、近代以降の様々な時代から、日本の記憶を持つ彼等はやってきている。そして、それらを繋ぎ合わせると一つの歴史が完成してしまう。日本は空想や想像の産物ではない。研究を任される事になった登戸研究所は数々の証言から、日本という国の存在は別次元の扶桑であるとの結論を下したわ。」

 

彼女の解説に俺は唾を飲む。

なんということだ…!

 

「登戸…いえ陸軍は日本という国に着目した。その辿る歴史が扶桑と瓜二つだったから。結果、原因、影響…それぞれに違いはあれど概ね扶桑と日本は同じ歴史を歩んでいて、彼の国の情報は扶桑より先の時代の物も含まれている。これは将来の国家運営と戦略上の参考になる筈。私もこれには同意見よ。」

 

…この将校の話を額面通りに受け取るなら。

扶桑は日本という世界の存在を少なくとも陸軍は、公に認めているという事。

望郷の念に、一筋の光が見えて来た。

 

「断片的な日本の情報を基に、現在、陸軍が備えているのは対リベリオン戦略。扶桑は今後発生するであろうリベリオンとの戦争、これを危惧しているの。おそらく近いうちに…扶桑が日本と同じ道を歩むというなら、リベリオンとの戦争になる。ネウロイという共通の敵はもう駆逐される寸前だもの。敵がいなければ争うのが人間よ。日本はリベリオンに相当する、アメリカという国と戦争を繰り広げ敗北した。これは複数の証言から得られたわ。それも軍民合わせて300万以上の死者を出し、特殊兵器の攻撃を食らって…この世界も丁度良く、2度のネウロイ大戦で欧州は没落し、扶桑とリベリオンは新興国として影響力を増している。しかも互いの勢力圏は太平洋。貴方達の日本とアメリカの様に…」

 

「扶桑陸軍はその戦争を…」

 

止めるために。

そう言いかけて俺は口を噤む。

そうでないと本能で理解しているから。

仮に日本と瓜二つの扶桑皇国。

その陸軍軍人が日本陸軍の将兵とそっくりそのままの性格をしているというのなら…。

 

「そう、扶桑はその戦争に勝つために、日本の情報を集めているの。」

 

一瞬にして光が暗雲に変わった。

そうだ。

あの時代の軍人のロジックなら、戦争を止めよう等という考えにはならない筈だ。

そして、なんとなく、穴拭智子が欧州に来たその真の目的も解り始めた。

 

「貴女が欧州に来た本当の目的は、それですか?穴拭智子中尉。」

 

彼女はさっき今の仕事に諜報活動があると言った。

穴拭智子の真の目的はそこだったのだ。

戦争の英雄の帰還。

先程彼女が語った通りの、プロパガンダ的な意味合いは勿論あるのだろう。

でも戦争の英雄だからこそ、どこの基地も表敬訪問を拒めないし、有名人だからこそ却って怪しまれない。

まさか銀幕のスターがスパイ活動なんてするとは思わないから。

たしか、元の世界の日本でも戦前に来日したアメリカの野球選手が東京の写真を持ち帰り、それを空爆の参考にしたという話もある。

彼女は行方不明者の中に日本から来た人物がいないかを探しつつ、各基地で得た欧州の情報を扶桑本国へ持ち帰ろうとしているのだ。

来たるべき国家間戦争に備える為に。

 

「…察しが良いわね。このブラウニングを撃つつもりはないけれど、あまり口にしないで欲しいわ。どこで聞かれてるかも解らないから。」

 

返ってきたのは否定ではない…遠回しの肯定であった。

 

「だからこそ教えて欲しいの。貴方の記憶を、私の知る限り最高記録よ。21世紀から来たのは貴方が初めて。戦争というのも気になるわ…アメリカの次よね?貴方はどこの国と闘って、何処で死んでしまったの?」

 

「離れろっ!扶桑の軍人!」

 

その時だった。

この世界に来てから一番聞いた事のある女性の叫び声が木霊した。

黒目だけ動かして、声のする方向を見る。

そこには何処から持ち出したのか旧式の歩兵銃を構え、穴拭智子を睨むアウロラが立ってた。

 

「ユーティライネン中尉!なぜここに!」

 

驚愕する扶桑の尉官。

 

「その声…!穴拭智子か!カウハバにいた!」

 

二人は面識があるらしい。

たしかに同じ外伝作品に出ていたから知り合いであってもおかしくない。

実際に言葉を交えた描写はなかった筈だけど。

 

「今は大尉だ!全く!今日は旧いメンツによく会う日だ!それもフジキ絡みでな!まさかお前もフジキのやつと因縁でもあるのか?」

 

「失礼しました大尉!いえ!私の場合は仕事です!彼とは今日初めて会いました!」

 

「仕事!そう言えばニパから…知り合いから聞いたよ!基地に扶桑からの来客があったとな!行方不明の扶桑人を捜索している元ウィッチだったと…まさか貴官とは思わなかったが…まずはその物騒な物をしまってはくれないだろうか?ウチのフジキが何か無礼なことでもしでかしたか!?」

 

「ウチの…?って貴方一体、ユーティライネン大尉の何?」

 

視線を一瞬こちらに戻し困惑の目を向ける黒髪の彼女。

 

「その、まぁいろいろあって…。」

 

「はぁ?」

 

おそらく将校モードとは違う素の声が彼女の口からこぼれ落ちた。

 

「そのピストルをしまってくれないだろうか!彼が何かしたのなら私が代わりに謝ろう!」

 

自分も小銃で狙いを定めているのは棚に上げて、アウロラは尚も巴御前を睨み続ける。

きっと早い段階でアウロラは俺の事を見つけていて、俺に拳銃を突きつける軍人がいたから、どこかでその古くさいライフルを調達してきたのだろう。

ピストルを持つこの軍人と張り合う為に。

 

「…大尉!恐縮ですが自分にも軍務があります!この拳銃は仕舞いましょう!ですが、この藤木和也一等兵の身柄、預からせてはいただけないでしょうか!悪いようには扱いません!彼は扶桑の重要人物になる可能性があるのです!」

 

「断る!結局はフジキの意思次第だが、この男は私にとっての重要人物…それに今は扶桑人ではない!スオムス軍での軍歴が認められ!スオムスの国籍だって持っている!扶桑はまさか友好国の一市民を拉致するとでも言うのか!引け!穴拭智子!」

 

その言葉と同時に、気配が複数現れた。

 

「警官…?」

 

制帽を被り、紺色のコートを纏った複数人。

スオムスの警察官達だ。

彼等も巴御前の握る1910を睨みつけ、自身のピストルを抜いていた。

一触即発。

そんな空気が流れ込む。

 

「…あとで武官を通じて正式に抗議します。」

 

数的不利を悟ったのか、彼女は軍服のインナーホルスターに拳銃をしまい込む。

 

「では、近い内にまた会いましょう。藤木和也一等兵。」

 

そして、切れ長の目を一層尖らせ、俺から離れアウロラや警察達とは反対の方向へ去っていった。

 

「大丈夫かフジキ!」

 

緊張の糸が解れその場にへたり込む俺。

すかさず、アウロラは俺にかけよった。

 

「フジキが飛び出した後、最悪の事態を想定し、ロスマン曹長が通報したのが功を奏した…。」

 

そう話しながら、地面にへたる俺を抱きしめる彼女。

なんだかそれがとてもとても暖かった…。

 




ビースメイカー2
高い城の男味あってよかったよね
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