シャニマス幼馴染概念   作:おこめ大統領

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灯織編開始です。

主人公は灯織大好きマンです


風野灯織
「ちょ、ちょっと、さっきのアレ、なに……⁈」


 入学式とクラスでのオリエンテーションも終わり高校生になって初めての休み時間が訪れたタイミングで、灯織は俺の机のとこにコソコソと腰を低くしてやってきて言った。周りの目を気にしての行動なのだろうが、かえって目立っている気がする点についてはそっとしておこう。

 

 それにしても()()()()()()ね。まぁ()()のことなんだろうけど、何と言われても俺にとっては呼吸するも同然のことだし、まさか詰められるとは思ってなかった。

 

「いやさ、うちの中学からこの高校にきたやつってあんまいないじゃん?」

「え、うん、そうだね」

「だったら、気持ち新たに宣言しないとでしょ!」

「だからって、自己紹介の時に、あ、あんなはずかしいこと言わなくたって……!」

 

 勢いよく起立した俺に対して、髪を指でくるくるといじる灯織は小さく抗議する。

 

 それにしても、恥ずかしいこととは心外だな。自己紹介と言うなら、あれ以上に自分がどんな人間かを伝える手法を俺は知らないぞ。

 

『俺はそこにいる風野灯織さんが大好きです!』

 

 まぁクラスでの自己紹介の時に名前よりも先にそういうことを言うのは……、うん、ちょっとやりすぎたかもしれない。柄にもなく昂ってしまい、普通に自己紹介をするつもりが開口一番にそう叫び、そのまま終了してしまった。

 

 だけれども!

 

「俺が灯織を好きだという気持ちに恥ずかしさなんてない!」

「私が恥ずかしいんだけど……」

 

 俺の腕の当たりをグイっと引っ張り頬を膨らます灯織。可愛すぎるぞ。国宝か? 

 やがて国宝はハッと何かに気が付いたような顔をしたと思うと、顎に手を添えて考え事をし始めた。情緒が忙しいやつだな。そういうところも最高にかわいいんだけど。

 

「──ねぇ……この会話、中学上がるときもしなかった……?」

「え、そうだっけか?」

 

 灯織の言葉を受け、俺は腕を組んで記憶の糸を手繰り寄せてみる。言われてみれば、今回みたいなことをして怒られた記憶があるような……ないような……?

 

「……なんなら、小学校にあがったときも」

「……まぁ、灯織は小さい時からずっとかわいくてきれいだったからな。致し方ないか」

「そ、そういう話じゃなくて……!」

 

 顔を紅くしながら呟いた灯織は、やがて胸に手を当てて深く呼吸し、いつもの冷静な彼女に戻った。

 

「……とにかく、ああいうのはもうやめて」

「ああいうの……」

「みんなの前で、好きとか、そういうことを言うの」

 

 いつになく真剣な面持ちの灯織に俺は少し気圧されてしまった。彼女の中で俺の発言がそこまでの嫌悪感を生み出してしまったのかとは、正直考えが及んでいなかった。しかし、冷静に考えるとそれはあまりにも想像力が欠如している思考だった。自分本位過ぎた。人の迷惑なんて、考え切れていなかった。

 

「そう、だよね。恋人同士ならまだしも、ただの幼馴染にそういうこと言われるのは迷惑だよね……。というか冷静に考えて、10年以上好きだって言い続けて返事をもらえてないんだし、さすがに気づくべきだった。灯織の気持ち、考えられてなかった」

 

 思い返せば、ずいぶんと自分本位なことをしていた。

 

 あふれ出る灯織への愛を衝動のままに吐き出していた。それに対して返事が欲しいというより、ただの自己の欲求解消に近かった。それを言うことで灯織が照れたりすることもあり、それを見ることが楽しいというのもあった。

 

 本当に灯織を大事にしたいんだったら、そんなことをするべきではなかったのかもしれない。

 

「え、あ、えっと」

 

 肩を落とし内省に内省を重ねていると、灯織が慌てたように声を漏らした。

 

「違うの、そうじゃなくて、その……」

 

 言葉を選んでいるのだろうか、あわあわと慌てながら視線が泳いでる。クラスメイトにはあまり見せていない、俺だけがよく知ってる光景だった。周りの誰も知らないその姿に、普段なら若干の優越感さえ覚えるが、今心にあるのは『灯織を傷つけてしまっていた』という子供じみた後悔だけだたった。

 

「──周りに人がいないとこだったら、言ってもいい……」

 

 赤らめた顔を隠すように俯きながら言う灯織は、あまりにもかわいく、そして美しかった。

 

 言葉が耳を通じて頭の中に染み渡っていく。呼吸さえ忘れて、時間が完全に止まってしまったかのような錯覚に陥った。

 

 反面、心臓だけが加速した時の中にいるかのように高く鼓動する。送り出された甘い血液が全身を熱くする。

 

「ひ、灯織……、それって……」

「あ……ごめん、もしかしてまた何か変なこと言っちゃった……?」

 

 不安そうな面持ちでこちらを覗き込む灯織。頭がいっぱいいっぱいだからか、いつもよりも距離も近くなってる気がする。ほんの少しでも前に動いたら鼻と鼻がぶつかってしまうような距離にある端正な顔立ちに、俺は息を飲んだ。

 

 何年も見続けたこの顔に、緊張するようになってしまったのはいつからだろうか。

 

 分かってる。灯織の気持ちは、俺には向いてない。今の言葉も、本当に()()()()()()を持たせるつもりなく言ったものだろう。でも、いつかは……。 

 

「ごめん、私もまだ整理しきれてなくて。その、私のことにかまい続けてたら、あなたの株もさがっちゃうというか、あまり私にかまわないほうがいいってことを言いたくて……」

 

 再び俯き、小さく呟く灯織。

 

「幼馴染だからって、私に気を遣わなくていいん──」

 

「幼馴染だから一緒にいるんじゃない! 俺が灯織を大好きだから、灯織ともっと仲良くなりたいから一緒にいるんだ! 俺から感謝することはあれど、灯織が後ろめたい思いをする必要なんて何一つない! もし仮にそんなことで下がる株があったら下げとけばいいんだって!」

 

 反射的に大きな声を出してしまった。

 

 大好きな灯織のことをマイナスに言われるのは、たとえ灯織本人でも苦しかった。エゴでしかないのは分かっているけど、俺にはそれが辛かった。

 

 灯織は目をぱちくりと開閉させ驚いたように声を漏らした。

 

「……ふふ」

 

 しばらくして、彼女は意地悪そうに小さく笑った。

 

「え、なんか笑うところあった?」

「いや、もうそういうこと言わないって言っておきながら、すぐ言っちゃったなって」

 

 言われて気づいた。普通に「大好き」って言ってしまった。自分から宣言しておいて、1分も守れていないじゃん。

 

 

「あ、ごめん! そんなつもりじゃ……!」

 

 弁解するためにあわあわと振られていた俺の手は、次の瞬間には動きを止めていた。

 

 灯織の両手が、俺の手を包み込むように優しく握っていた。

 

「ううん、こっちこそごめん

 

 

 ──それから」

 

 

 灯織は月明かりのような笑みを浮かべた。

 それは儚く、優しく、何よりも美しかった。

 

 

「──ありがとう」

 

 

 言葉が終わると同時に始業のチャイムが鳴るも、俺は未だ、現に戻れずにいた。

 

 

 

 




にちか編を書いたら必然的にはづきさんとも幼馴染になれる……?


明日から新社会人になってしまうので更新頻度ががっつり落ちてしまうかもです。灯織編は絶対に終わらせます。
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