噴上裕也の果てしなくカッコよく美しいアカデミアライフ   作:己道丸

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大変ご無沙汰しております。更新遅らせてすみません。


体育祭がやってくる その③

「さぁ第一種目も終盤戦! 先頭集団は最終関門に突入したぞォ——————!!」

「あぁん!? 最終関門だあああぁぁ~~~~!?」

 

 プレゼント・マイクの実況はスタジアムの外周にいても聞こえてくる。

 クソッタレ! ギアッチョどもはもうそんなところまで行っちまったのかよ!!

 

 バカデケーロボットに襲われ、谷間に張り巡らされたローブで綱渡りをさせられ、思ったより時間がかかっちまった!

 だがそれらをそつなく飛び越えていきやがったのがギアッチョと轟、あと手汗ヤローの爆豪だ。

 チクショー! このおれが男のケツを追っかけるハメになるとは!!

 

「早ェーとこ追い越さねーと、おれの足が先にイっちまいそうだぜ……!」

 

 追撃はおれの個性、ハイウェイ・スターの十八番だ。

 時速60kmで走るヴィジョンをおれの足と連動させる、このハイウェイ走法でおれはここまで来た。

 

 けどよー、自動とはいえ人間の体で時速60kmを出し続けるのはムリがあるよなああぁぁぁ~~~~!

 体育祭に向けて特訓はしたが、さすがにスタジアム全周4kmをぶっつづけで走り続けるのはキツイぜ……!

 

 しかし! それでもおれはやらねばならない!!

 この体育祭で一位になり!! 観客どもにカッコよくて美しいこの噴上裕也を認めさせると誓ったんだからなあぁ——————!!!

 

 だから、こんなところで敗けるワケにはいかねー! 轟や爆豪、特にギアッチョのヤツによォ!!

 敗けるワケにはいかねェよなあああぁぁぁ~~~~~~!!!

 

 走れ! 時速60kmに耐えろ俺の脚!!

 加速することが出来ねーハイウェイ・スターである以上! その速度を殺さずに体現し続けることだけが、俺にできる唯一の最高速度なのだ!!!

 

 そうやって何人もの競争相手を抜き、置き去りにして、どれぐらい走っただろうか。

 スタジアムの裏手はとうに横切った!

 第一種目の最終関門とやらも、そろそろ見えてくるハズなんだが……。

 

「ム! あれは……!?」

 

 どうやらアレがそうらしーな!

 

 だが妙だぜ!そこにはこれまでみたいな、ロボだとか立間だとか目に見える障害物がねー!

 むしろ見晴らしがいいぐらいの、やたら幅の広い一本道がスタジアムの正面入り口へと伸びている!!

 だがここまで来てマジに何もないってことはねーハズだぜ! ということは、パッと見で分からねーだけで、何かが絶対仕込まれているハズなのだ!!

 

 開けた場所で見た目に分からない障害物!

 ……オイオイ、まさかそれってひょっとしてよォ~~~~!?

 

『そう! 最終関門は地雷原ンン!! よーく見れば分かるようになってるから、目と足を酷使しまくって突破しやがれェ~~~~~~!!』

「やっぱりかよ!?」

『ちなみに競技用だから威力は大したことねぇが、音と見た目は超ドハデ! 失禁しねーように気をつけなァ!!!』

 

 なるほどな、道理でギアッチョや轟がすっとろい動きをしてると思ったぜ。

 地雷を爆発させちまった時のタイムロスを考えれば、スピード落としてじっくり進む方がベターだ。下手に個性で地雷を無効化すれば、俺たち後続の助けになっちまうしな。

 何より、これはあくまで第一種目。

 ここを突破するのに全力出して、その後の競技でバテちまったんじゃ意味がねぇ!

 

 だがな、だがよぉ……。

 そんなお利口なやり方してると、追っかけてくるヤローに噛みつかれちまうんじゃあねーのかァー!?

 例えば!! アイツみてーなヤツになぁー!

 

「半分野郎と二度ネタ野郎が! 死ねェ——!!!」

「ぐ……!」

「誰が二度ネタだ、このクソガキ!」

 

 手のひらを爆発させた反動で宙を飛ぶ爆豪には、地面の中にある障害物なんて意味がねーよな!

 あのドブ煮込みみてーな性格をしたヤツなら、むしろここで競争相手を地雷に叩き込んで一気に順位を落とさせようとするだろう。

 

 ……だがそれは、やつら先頭集団3人の他に競争相手がいねーからこそできる選択だぜ!

 いるぜ!!

 ここによぉ!!!

 てめェらに割って入る男がなあぁ~~~~!!!

 

『ってオイオイこれはぁ――――――!!?』

「地雷イイィィィッ!? んなもんおれには関係ねぇんだよおおぉぉぉ――――――!!!」

「!!!?」

 

 やりあう先頭集団にブッコミかます一つの影!

 そう!!

 俺だ!!!

 一生そこで遊んでやがれクソヤローども!

 宙を走るハイウェイ・スターと連動したこの噴上裕也もまた、地雷原から解放された男の一人! 空中でフォームを維持するのはキツイが、今はやってやる!

 オメーらを! 追い抜くためならなァー!!

 

『おっとここで先頭集団にニューメンバー! 噴上が一歩前に出たぞォ! ってゆーかオイオイ、こいつも地雷無効化かよ! この日に向けて地雷仕込んだおれたちに謝れチクショー!!』

『やったのはお前じゃなくて準備委員だろうが』

 

 その声は相澤のヤローか!

 ケッ! オッサン二人の漫才なんか興味ねー!

 俺はまだ追いついただけ。この油断ならねー連中を追い越そうってんだ、他のどうでもいいことになんて気を割いてらんねーんだよおぉぉぉ~~~~!!

 

「くっ、噴上!」

「やっと追いついたぜ轟! だがオサラバだ、おれはむさ苦しい男どもとじゃれ合う趣味はねーんでなぁ————!!」

「ンだとテメェ……!!」

「ナメてんじゃねーぞ濃い顔ォ————!!」

「うぉっ!?」

 

 強烈な爆風がおれをかすめる!

 クソッ、この手汗ヤロー、標的を変えやがった!

 

「テメーッ、爆豪!」

「おれを無視してんじゃねー!! テメーごときに先を行かせる訳ねーだろうがぁ――――!!」

 

 素直に取っ組み合ってりゃいいものを、どんだけ執念深いんだコイツは!

 いや、おれが加わったことで先頭集団は四人、一対一が二つ作れる状況になったから、コイツも一人相手に集中しやすくなったってことか!

 チクショー! 前に出るのも良し悪しかよ!!

 

「オラアアアアアアアァァァァァ――――――!!」

「ぐうううっ! ハイウェイ・スター!!」

 

 人型に戻したハイウェイ・スターで爆発を受ける。

 先頭集団に追いついた今、追走用の足形の群れはもう意味がねーからな!

 やり合いなら、人型の方が何かと使いまわせるぜ!

人型のハイウェイ・スターはパワーが弱く、戦って勝つにゃ決め手が欠けるが、ダメージを共有しないって利点がある! こういう使い方なら十分だ!

 

「よし! ハイウェイ・スター、そのまま爆豪を足止めしろ!」

「ンだとコラァ! テメーが相手しろやぁ!!」

「テメーみてーな手汗クサいヤローの相手なんざ誰がするか! おれが用あんのは、テメーじゃなくてゴールなんだよぉ~~~~!!」

 

 悪いがイチヌケさせてもらうぜ!

 こんなメンドクセー絡みや地雷原はとっとと抜けちまうに限る。女が一人もいねー、むさ苦しい空間には一瞬たりともいたくねーんでなぁ!

 

 あばよバカども! 第一種目一位通過はおれが貰っといてやるぜ!!!

 

「させるかよ」

「行かせると思ったかよ」

「何いぃぃぃぃぃぃぃぃ!!?」

 

 だがその瞬間! 辺りに広がる極端な冷気!

 こ、これはまさか!

 

「と、轟! ギアッチョ! テメーら!?」

「抜かれちまうなら、まずお前から仕留める」

「てめェを潰した後で一位はいただいてやるぜ、噴上裕也ァ……!」

 

 コ、コイツらぁ————!!

 おれを止めるために! 一時休戦しやがった!

 二人がかりでおれを氷漬けにして、その後から悠々と先に進むつもりでいやがる!!!

 

 マズい!

 ハイウェイ・スターは爆豪にかかりきりだ!

 今! おれ自身に! おれ自身を守る術がない!

 逃げきれねぇ!!!

 

「あばよ」

「ぐ、ぐおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 ここまでなのか!?

 このまま氷漬けにされて、ギアッチョたちはおろか後続連中がおれを通り過ぎるのを見ることしかできなくなるのか!?

 クソッタレ、そんなのはゴメンだぜ!

 

 だが、だがだからって、どうすれば――――……

 

 

 

「————大!! 爆速ターボ!!!」

 

 

 

「!!!?」

 

 な!!

 ん!!

 だ!!!

 こりゃ!!!?

 音! 光! つぅかすげぇ風!! もうこりゃ突風なんてもんじゃあねぇ! 爆風、嵐みてぇなもんじゃあねーか!!

 そこかしこで起きてる地雷の爆発なんて目じゃねえような大爆発! いきなりの音と風でひっくり返ってるヤツもいるぞオイ!?

 

「なんだ、一体……!」

 

 轟たちすらおれへの攻撃を中断して振り向く。

 ここにいる全員が見つめる先、そこにあんのは空に届きそうなバカデケー噴煙だ。ちょっとした丘にも見えるほどの煙がもうもうと立ちのぼっている。

 

 ウソだろオイ、なんか威力上げ過ぎた地雷でもあったのか?

 でなきゃ一ヵ所に地雷が集まり過ぎてたとか……、

 

「……ん?」

 

 いやちょっと待て。

 煙のてっぺんからなんかこっち向かって飛んで来るぞ。

 飛び散った土のかたまりか?

 いや、それにしちゃ数が少ないし、形が妙だ。まるでデカい板切れみたいな形だし、おまけになんか裏側にくっついてるみてーじゃねぇか。

 

 …………。

 ………………。

 …………………………。

 

 ……いやアレ人だぞ!?

 鉄板にへばりついた、……緑谷のヤローだ!!!

 

『A組緑谷!! 爆風で猛追ィ————! コイツぁクレイジ————————!!!』

「何だとおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!?」

 

 み、緑谷! アイツ、まさか!?

 まさか!!! 集めた地雷をまとめて爆発させて、吹っ飛ばされることで地雷原を跳び越えようってことなのか!!?

 いくら破壊力がないからってよぉー! ムチャクチャだぜ!!

 アイツ、そんなキレてるヤツだったのか!?

 ギアッチョとはまた別の意味でプッツンしてやがるぜ!!!

 

「デク!!!」

「緑谷……!!」

 

 おれたちの頭上を飛び越え、緑谷が一気に先頭だ。

 それを見て走るのは爆豪と轟。そりゃそうだ、おれたちを抜いて一番になろうってヤツが出りゃ、こんなところで足引っ張りあってる場合じゃねーよな!

 

 モチロンおれもだ! 早く行かなきゃならねー!

 

 だが緑谷のおかげでマークが外れた、これを使わねー手はねーぜ!!

 

「何だアイツは……!」

 

 反応が遅れたな、ギアッチョ!

 同じクラスのおれたちだってビビったんだ。ほぼ初対面のコイツじゃ驚きが勝って動き出しが遅れる!

 何よりギアッチョと爆豪たちとじゃ緑谷への因縁の深さが違うからな! 大爆発と緑谷のプッツンぶりへの対応で差がついた!

 

 その隙が!! 命取りだぜ!!!

 

『オラアアアアァァァァァァァァッ!』

「何!?」

 

 ハイウェイ・スターがギアッチョに足払いをかけ、押し倒す!

 緑谷を見上げて浮ついたヤローをスッ転ばすなんてチョロいもんだぜ!

 そして、この地雷原で不用意に倒れることがどういうことなのか、お前だって分かってるよなァ——————!!?

 

 

 

「噴上! 貴様ァ――――――!!」

「あばよギアッチョ!! 吹っ飛んじまいなぁ――――――!!!」

 

 

 

 地雷にジャストフィット!

 緑谷を追いかけ始めたおれの背後で爆発、その爆音の向こう側でギアッチョの叫びが一瞬で遠のいたのをおれは聞く。

 よし、ギアッチョを先頭集団から蹴落としてやったぜ!

 

 だが問題はこっからだ!

 

 ギアッチョに代わっておれたちの前に出た、緑谷に追いつくって問題がよォ!!

 

「クソが!! やらせねぇぞ緑谷ァ————!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『雄英体育祭1年ステージ! 序盤の展開からこの結末を誰が予想した!? 今、一番にスタジアムに帰って来たこの男……』

 

 音割れ寸前の実況がスタジアムに響き渡る。

 そいつの名前を呼んで。

 

 

 

『——緑谷出久の存在をぉ~~~~~~!!!』

 

 

 

 そこから始まるのは大歓声。

 ところ狭しと詰めかけた観客どもが一斉に声を上げ、拍手喝采でもっておれたちを迎え入れた。

 だが、こいつらが見ているのはおれじゃない。

 モチロン、一歩先を行く轟でも爆豪でもない。

 その先にいる、緑谷のやつだ。

 

「……こんチクショーがぁ……!」

 

 止まらねぇ汗をぬぐい、肩で息をするのをやめられない。なのに、どんなに息を吐いても、胸の中にある重苦しいものを吐き出せなかった。

 へばりついて取れない、この気持ちが!

 

「このおれが、……走る競技で敗けただとおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ~~~~~~~~!!!?」

 

 この噴上裕也が!

 突っ走りと追撃の個性、ハイウェイ・スターを持つ男が、他のやつを追い抜くことができず、歓声を奪われただとぉ~~~~~~!!?

 

 ありえねぇ——————!!!

 カッコわりー!!

 なんて醜態だ!

 こんなもん、おれが雄英体育祭でやろうとしていたことじゃーねぇぞ!!!!

 

 あそこに!

 今、緑谷がいる場所には、このおれが立っているハズだったのに! 轟も爆豪も追い抜いて、おれが一番になるハズだったのに!!

 

 このおれが!!

 カッコよくなれなかった!?

 美しくキメられなかっただとおぉぉぉ~~!!?

 

『さぁ次々とゴールインだ! 順位はあとでまとめるから、とりあえずお疲れ!』

 

 どんどんやって来る後続連中が、へとへとな動きでおれを追い越していく。

 もう競技は終わった後だ。それは分かってる。

 だがまるで他の連中にまで追い抜かれたような、どん底に落っこちちまったような、そんな気さえするぜ。

 緑谷を褒める麗日の姿がはるか遠くみてーだ。

 

「すごいね、デク君! 悔しいよ、チクショー!」

「い、いや、運がよかっただけで……」

「ウググ……ッ」

 

 勝って、歓声を浴びて、その上しかも女とイチャイチャするだとぉ~~~~!?

 完璧じゃねーか!

 おれが欲しかったもん全部手に入れやがって!!

 勝者の余裕ってヤツかよ、コンチクショー!!!

 

 ……だがな、いい気になるなよ緑谷出久。

 この雄英体育祭は始まったばかりだ。

 器の大きいこの噴上裕也は、たった一度の敗北でヘコタレたりしねぇ。たとえそれが最初の競技だったとしてもな。

 最後に勝つのはこのおれだ!

 次の競技でこそ、このおれが一番に輝いてやるぜ!

 

 

 

「1年ステージ、第一種目もようやく終わりね! 勝ち抜いた上位42名、よく頑張ったわ!」

 

 

 

 インターバルの時間を終えて、おれたちは主審のミッドナイトが立つステージの前に集められた。

 だがその数は第一種目の時よりずっと少ない。

 当然だ。

 こっからは第二種目。

 障害物競走を勝ち抜いた上位連中だけが参加できるんだからな!

 

「でも本戦はここから! 白熱していきなさい!!」

 

 鞭を振るミッドナイトに、周りにいた連中の誰もが顔を引き締めた。

 おれだってそうさ。

 勝つと決めて挑んだ勝負に敗けた後だ。もう気持ちにあそびはねぇ。次の競技でこそカッコよくキメてやるぜ!

 

「さぁて、気になる第二種目の発表よ! 貴方たちが次に挑む競技はぁ————……コレ!!!」

 

 スタジアムのスピーカーがドラムロールを流し、備え付けられたバカデケーモニターが回転するスロットの映像を映し出した。

 第一種目の時と同じだ。つまり、あのスロットの出目が、次にやる競技の名前を出すってことだ。

 おれたちの、観客の誰もが注目する中、それは出た。

 

「——騎馬戦よォ!!!!」

 

 その瞬間、ファンファーレと一緒にスモークや花吹雪が噴き出し、観客どもの声を盛り上げた。

 進行の節目、体育祭の本番だ。その気持ちも分かる。

 だがよぉー。

 やる側のおれたちからすりゃ、どういうことだ? ってなっちまうんだよなぁー。

 

「チーム戦ってことか? 予選で競わせといて……どういうつもりだ?」

「説明するわ!!」

 

 ミッドナイトの耳は、集められた42人の誰かがこぼした疑問だって聞き逃しゃしなかった。

 鞭をおれたちに向け、いかにも嬉しそうな顔をして声を張り上げる。

 

「貴方たち参加者には、2人から4人のチームを組んで、騎馬を作ってもらうわ。基本的なルールは普通の騎馬戦と同じだけど……違うこともあるわ」

 

 それはね、と息を溜めて、

 

「第一種目の結果に合わせて、各参加者にはポイントを割り振るわ。つまり、チームの組み合わせによって騎馬の合計ポイントが変わるってわけ!」

 

 ポイント。

 その単語におれたちの全員は身構えた。

 当たり前だよな。この状況でそんなもん言い出されて、何に使うポイントなんですか? なんて言い出すようなやつはここまでたどり着けるハズがねー!

 

「気付いたみたいね! そう、貴方たちにはポイントを奪い合ってもらいます!!」

 

 おお、というどよめきが観客席から上がる。

 ついに見えてきた第二種目のルールに興奮しはじめたようだな。

 

「ポイントはハチマキに書いて配るわ。試合終了時点で持っている点数が多い騎馬、上位5組が最終種目に進出よ!!!」

 

 つまり、ここが大舞台にあがるための本当のふるいってワケか!

 ここで勝てなきゃ、今年の雄英体育祭でベスト入りすることもできねー。ただの、ちょっぴりスゴかったヤツ、で終わっちまうってことだな!

 

 そうはいかねーぜ!

 第一種目じゃ4位なんてパッとしねー順位におさまっちまったが、今度こそガッツリ1位で通過してやるぜ!

 

「注意事項だけど、ハチマキは必ず首から上で管理すること! あと、ハチマキを取られたり騎馬を崩されたりしても、退場にはならないってことよ!」

「……試合終了まで、競り合う相手は減らないってことか」

「マジかよ。油断できねーじゃん」

「取ったハチマキが全部首から上なら、たくさん持っててもやり辛くなるよな」

「じゃあお前、終わり際にハチマキたくさん持ってるヤツから奪う作戦か? リスキーすぎんだろ」

「なお、これはあくまで騎馬戦。個性の使用は許可するけど、悪質な崩し目的の攻撃は即退場よ……、って貴方たち気が早すぎ! もっと聞きなさい!」

 

 プンプンってな具合に頬を膨らませるミッドナイトだったが、気を取り直したのか、手を振り上げた。

 どうやらそれが合図だったらしい。背後の巨大モニターが新しい映像を映し出した。

 縦長の表だ。

 どうやらアレが、おれたちに割り振られたポイントの一覧らしい。

 

「……下から5ポイントずつ増えていくのか」

「ふふん、アマいわ。初恋の予感に胸をトキメかせる思春期の少年少女のようにね!」

 

 納得したような誰かの声をミッドナイトは笑う。

 いやでもミッドナイト、おれたち全員思春期の男と女なんじゃねーのか? そのものズバリすぎてたとえになってねーよ。

 

 だが、言ってることにはおれも頷く。

 だってここは雄英高校だぜ? 自由とぶっ飛び振りにかけちゃ日本一って感じの学校なんだぜ?

 絶対最後になんか仕込みを入れてやがる!

 

「ポイント数第1位! つまり第一種目1位通過の選手に与えられるポイントは……1000万!!!!」

 

 とは思ってたが!

 まさかここまで極端だとは思ってなかったぜ!?

 

「ウフフ、これがどういう意味か分かるわよね? つまり、1位の騎馬を落とせばどんな順位からでも一躍トップ! 下剋上のサバイバルってことよ!」

「……面白ェ……!」

 

 ヘヘ、いいじゃねーか下剋上!

 まさしく今のおれが望んでいたことを全て叶えてくれる、最高の舞台を用意してくれたな雄英高校!

 

 標的を見るおれの目がギラリと光ったのが分かる。他の連中もそうだったからな!

 考えることは皆同じってことさ。

 この場に集まった42人分の視線を一身に集めるのは、あわれなウサギちゃんみたいになって真っ青な顔を震わせる緑谷出久だ。

 そうだよな、分かるよな、自分の状況がよ。

 

 テメーは今!

 この場にいるほとんどのヤツから狙われる格好のエサになったってことよ!

 しかも一対一じゃねー、テメーと組まずに参加する10組近いチームが一度に襲いかかるって寸法よ!

 

 いいザマだな緑谷!

 だが同情はしねー! それが頂点に立つヤツが背負うべき重荷ってもんだ!!

 

 テメーに奪われたトップの座!

 ここで奪い返してやるぜ、緑谷ァ~~~~!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「裕ちゃん! 私と組もう!!!」

 

 説明を終えたミッドナイトは、おれたちにチームを決めさせるための交渉タイムを寄こしてきた。

 ここで話がついた連中が、最大4人の騎馬になるってワケだ。

 それが始まった途端、声を揃えて寄って来たのは、おれの女たちだった。

 

「おうおうトオルにミナ! オメーらはいつも元気イッパイだな! マブしいぜぇ~~~~っ」

 

 葉隠透と芦戸三奈!

 この噴上裕也を慕ってくれる、激マブのイカした女どもだ!

 ミナが真っ黒な目をまっすぐに向けてきてくれるのも! トオルが小鼻をフンフン鳴らしながらアドレナリンの匂いを香らせて来るのも!

 めちゃめちゃキュートだよなぁ~~~~!!

 

 いいねぇいいねぇ! こいつらに囲まれてるとよぉ、やっぱり俺はサイコーだと再確認できるぜ!

 女どもってヤツぁよぉ! いつだってこの噴上裕也を輝かせてくれるよなぁ~~~~!!

 

「よぉし! んじゃトオルとミナでまず2人だな!」

「やったぁ! 頑張ろうね、芦戸ちゃん!」

「モチロンだよ葉隠! 目指すは一位通過!」

 

 おうおう、おれの傍で女どもが手をとり合うの見てると、気持ちがうるおうよなぁ~! カワイ子ちゃんならなおさならだ!

 さて、できればもう1人欲しいところだが……。

 

「ケロッ。やっぱり透ちゃんたちは裕ちゃんと組むのね」

「おう、ツユちゃん!」

 

 そう声をかけてきたのは、小柄な女の子だ。

 真っ黒ツヤツヤな長い髪につぶらな瞳をした顔は、蛙吹梅雨をおいて他にはいねぇ。ちょっとしたマスコットキャラっつっても通じそうな可愛さだよなぁ。

 

 ちょっと遠巻きにこっちを見てるツユちゃんだが、別におれたちのチームは満員になったワケじゃねー。そしてツユちゃんも、誰かと組んでる風じゃなかった。

 だったらよー、言うことは一つなんじゃねーかー?

 

「どうだい、ツユちゃんもおれたちと組まねーか?」

「……いいの?」

「当たり前よぉ!!!」

 

 むしろ何を遠慮すんだっつー話だぜ!

 ツユちゃんもトオルやミナと同じ、このおれを輝かせてくれる一等イカした女どもの一人なんだぜ!?

 望んでくれるならよぉー! おれはいつだってオメーを迎え入れるし、追っかけてやるんだぜ!

 

「やったぁ! これで4人! フルメンバーだね!」

「ツユちゃんがいれば百人力だよ!」

「……ケロッ。それはちょっと照れちゃうわ。でも、頑張りましょう」

 

 よぉし、これで決まりだな!

 おれ!

 トオル!

 ミナ!

 ツユちゃん!

 このメンバーでおれたちのチームは完成だ!!

 

「騎馬の分担だが、トオルを騎手にしておれが先頭、ミナとツユちゃんが騎馬の左右で行こうぜ」

「あれ? 裕ちゃんが騎手じゃないの?」

 

 トオルが小首をかしげたのが分かる。

 そうだな、普段からおれとつるんでたら、そういう風に思うかも知れねーな。

 だがな、この噴上裕也にも譲れねープライドがある!

 

「この噴上裕也は確かに女に囲まれチヤホヤされるのが大好きだが! 女どもに担がれてふんぞり返るような男ではねーぜ、トオル!! おれが女の上に乗るのは夜だけだ!」

「裕ちゃん、セクハラは駄目よ」

「すまんなツユちゃん!!!」

 

 お叱りに速攻謝罪をいれて。

 

「おれはオメーらの前に立って敵と戦う! 最高にカッコよくて美しい姿を、オメーらや周りの連中に見せつけてやるのが、この噴上裕也のやり方よぉ!!!」

 

 そう言ってやった時の、こいつらの顔!

 キラキラ光らせた目がマブシーぜ!!

 

「裕ちゃん……!」

「裕ちゃんカッコイー!」

「ケロッ。頑張り屋さんね」

 

 くぅ~~! 女どもの讃える声が骨身に染みる!

 コレコレ、やっぱりコレがなきゃおれじゃねぇよなぁ! 第一種目はむさ苦しいヤローどもとのやり合いばかりで華が無くってよぉ!!

 イケてる女どもに囲まれる姿こそ、このおれの真骨頂ってワケよぉ~~~~~~!!!

 

「透明人間なら取っ組み合う相手もやり辛いだろうぜ。ハチマキは任せたぜ、トオル!」

「うん、分かった! 私、頑張る!!」

 

 トオルは勢いよくジャージの前を開けて脱ぎ捨て、素っ裸になって透明人間の本領を発揮する。うーん、気風のいい女は大好きだぜぇ~!

 第一種目で汗ばんだ体はトオルの匂いを強くしてくれるからな。包むものがなくなって、一層香り立ってきたぜ!

 

「ミナの個性は遠くからでも敵を狙える。迫ってきたらぶっかけてビビらせてやれ! ツユちゃんは隙を見つけ次第、ハチマキを引っこ抜いてくれ!」

「オッケー! 任せて!」

「分かったわ」

 

 真っ白な歯で笑うミナに、伸縮自在の舌を見せて頷くツユちゃん。いいねぇ、こいつは中々イカしたチームができたんじゃねーのかぁ!?

 こいつらに加えて、このおれの個性があるんだからよぉ!

 

「ククク、こうは言ったが、もしかしたらオメーらの出番はねーかもしれねーぜ?」

「? どういうこと?」

「ちょっとした秘策があるってことよ」

 

 第二種目、この騎馬戦は第一種目とは別の意味で、おれ向きの競技だっつーことよ。

 このおれの個性をもってすれば、楽々で勝ち進むことも夢じゃねーぜ!

 

「ハイウェイ・スターにかかれば! オメーらに苦労させねーでポイントを稼げるってことさ!!!

 




雄英体育祭編、中盤戦です。
図らずも、前半は男子との絡み、後半はとの絡みとなりました。





p.s.
他に2作、頑張って同時投稿しました。もし見てやっていただけると、とても嬉しいです。

ONE PIECE小説
https://syosetu.org/novel/196152/23.html

Fate小説
https://syosetu.org/novel/277396/2.html





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とあるRe:ゼロから始まる異世界生活好きが転スラに転生する話▼*ラインハルトと同じ加護、体質を持っているだけの一般人です(予定)▼ここの設定違うよ、とかあったら遠慮せずコメントにどうぞ


総合評価:2658/評価:7.12/連載:47話/更新日時:2026年05月13日(水) 09:53 小説情報

雷神は最強を指名する(作者:あいあい)(原作:僕のヒーローアカデミア)

鹿紫雲一は、死滅回游の果てで燃え尽きたはずが、個性社会の日本で目を覚ます。この世界では「最強」がランキングと称号で掲げられている。なら、話は早い。最強の場所へ行けば最強がいる。▼そんな感じで始まる鹿紫雲さんカッケェっていう話です。


総合評価:3306/評価:8.2/連載:10話/更新日時:2026年02月24日(火) 21:20 小説情報


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