あらかわい、え?この子たち世界壊せるってマ?   作:うろ底のトースター

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推定四騎士と戯れる実験

「・・・ねぇ、ルイ?ちょっと動けない」

 

「・・・」

 

「ルイ?」

 

「すぅーーーーーーー」

 

「深呼吸!?」

 

日本から帰ってきて早々これである。

 

帰国当日、別れを惜しみつつ(約1名ガチめに監禁しようとしてきた)本部へ戻ってきたわけだが、まぁ予測可能回避不可能というものだ。

 

何やら、後で面貸せやみたいな顔してるアベルと、次は誰を殺ればいいんですかと爪をジャキンジャキン鳴らしてるノア。

 

やめてくれ、切実に。ちゃんと後で会いに行くから。

 

「そろそろいい?」

 

「すぅーーーーーーーーーーーーーーーー!!」

 

「ルイィ!!?」

 

このまま食べられんのかと思った。

 

「食べてやろうか」

 

ナチュラルに心読むのやめようね。

 

 

 

 

 

 

『さて、帰国して間もないが、クロステストだ』

 

「はい」

 

そう、元は俺は本部所属で本部が収容場所。あっちのクロステスト予定が全て終われば、こっちに戻ってたまってるクロステストをこなすのである。

 

さながら極秘エージェントって感じの忙しさだ。

 

過言だ。

 

『目標は君の目の前にある店に滞在している。君なら問題はないと思うが、注意して臨んでくれ』

 

「了解」

 

ふぅ、と息を吐く。

 

今回の相手は、Keterにして財団施設外の存在。いつも通りのバックアップは望めない。何度か経験済とはいえ、緊張するものは緊張するのだ。

 

SCPー1295 メグの晩餐

 

先の通り、オブジェクトクラスはKeter。

 

4人の、恐ろしい能力を持った人型実体のオブジェクト。あるお店に居座っており、そこから遠ざけようとすればその異常性が発揮される。

 

1人は無気力を広め、1人は微生物を殺し、1人は食べ物とそれ以外の区別をなくし、1人は被害妄想を与える。

 

うん、多分そこから離れるのが嫌で能力が漏れ出てるだけだと思うんですが。

 

という感じで。

 

その場にいれば安全だけど、引き離せばヤバい。そして記事に載せられた会話の内容から見ても、とんでもない厄ネタであることは確実。

 

正直、これ以上財団にできることはない。

 

なかった、のほうが正しいかもしれない。

 

飽くまでも、もしかしたらの範疇。失敗する可能性の高いリスクのない賭け。俺なら何とかできるかも、という最後の反抗。

 

自意識過剰とかではなく、きっとそうだ。

 

「会いに行かないと始まらないな」

 

再度、息を吐いて気合いを入れる。

 

アメリカに戻って最初の実験。頑張ろう。

 

 

 

 

カランカランと、入店を知らせるベルが鳴る。昼時を少しすぎた店内は、客が疎らで空いていた。カウンターに目を向けると、恰幅のいい男性が大きなバーガーにかぶりついており、テーブル席は子連れの家族が、スパゲティやらハンバーグやらを囲んで食事を楽しんでいた。

 

普通のレストランといった様子だ。

 

そういえば、ばたばたしていて昼飯を食べていない。建前上客として来ているのだから、注文するのは別に構わないだろう。腹が減っては何とやらだ。

 

そう思い立って、適当な席に座ろうとしたとき、背後から声がかけられた。

 

「ね」

 

振り返ると、ストローに口をつけ、シェイクを飲んでいる女性がいた。これまでの経験が囁く。この人は、目的のオブジェクトの1人だ。

 

「やっぱり。すごく好み」

 

「え?あ、ありがとう、ございます?」

 

いきなりの好み宣言に感謝はするものの、クエスチョンマークが飛び出てしまう。

 

「ね、お昼まだ?」

 

「そうですね、ちょっと忙しくて」

 

「じゃあ、一緒にどう?」

 

それは、願ってもない提案だ。

 

「ええ、ぜひ」

 

「良かった」

 

そうして案内されたのは、やはりテーブル席。いつも4人でいるとの報告通り、シェイクの女性を含めて4人、勢揃いだった。

 

「ウォーレン、その子は?」

 

「まさか彼氏じゃないわよね?」

 

「作れるか?」

 

「ひど」

 

「え、えーっと・・・」

 

普通の会話だ。とても恐ろしい力を持つ、収容不可のオブジェクトの集団とは思えない。放課後の女子高生がファストフード店でだべっているかのような、あまりに日常過ぎる空間が、そこにあった。

 

「好みだったから連れてきた」

 

「センス良っ」

 

「ナイスだ」

 

「あたしら好み似てるもんね」

 

「「「ねぇー」」」

 

「とりあえず座んなよ。あたしフレデリック」

 

フライドポテトをつまんでいるフレデリックさん。青のメッシュが映える黒髪ショート美人。ともすれば睨んでいるように見えるつり目と、異様に整った顔立ちが近寄り難い雰囲気を醸し出すが、もきゅもきゅと音が聞こえてきそうなそのポテトの食いっぷりが小動物のようで可愛らしい。

 

「はい、メニュー」

 

俺を誘ってくれたウォーレンさん。黒髪ウルフカットがよく似合う。表情があまり動かないが、感情の起伏が乏しいというわけでなく、今のように唐突に行動を起こしたりと不思議な、もとい愉快な性格の方らしい。あといっぱい食べる。見てるだけで胃もたれしそうな量のバーガーはちょっと見なかったことにしたい。

 

「あ、わたしの食べる?口つけちゃったけど」

 

「ドワイト?」

 

明らかに食べかけのサンドイッチを突きつけるドワイトさん。明るい茶髪をひと房にまとめ、健康的な首筋と肩を見せつけるように晒している。からかうような視線とイタズラっぽい笑みが不思議と心を落ち着かせ、穏やかにさせる。茶目っ気のあるムードメーカーさんだ。

 

「はぁ、ドワイトが済まない。パットだ」

 

おちゃらけたドワイトさんを窘めるパットさん。白みがかった金髪ロングが眩しく輝き、窓際で髪をかきあげるだけで、さながら写真集の1ページ。何をしても画になるその姿に、何故か苦労人の影が重なって見えてしまう。良くも悪くも奔放な3人のブレーキ役、お疲れ様です。

 

「メニュー、決まった?」

 

「はい、それじゃあチーズバーガーを」

 

「チーズバーガー5人分追加で」

 

「え、皆さんも同じのですか?」

 

「いや、残り4人分はウォーレンのだよ」

 

「まだ食べるんですか!?」

 

「ぶいっ」

 

ドヤ顔かわいっ、けどそのカロリーの山は可愛くない。

 

「毎度思うけど、食べ切れるの?」

 

「問題なし」

 

「その細い体のどこに収まってるのやら。服ひん剥いて確かめてやろうか」

 

「はぁ、ドワイト」

 

「あ、賛成」

 

「乗るなフレデリック」

 

「君にならいいよ」

 

「誘惑するなウォーレン」

 

「遠慮しておきます、はい」

 

「「「ちぇっ」」」

 

「全く・・・騒がせて悪いな。えっと」

 

「朱里です。神谷朱里」

 

「わ、日本人じゃない?」

 

「顔立ちからアジアだと思ってたけど、なるほど日本人か」

 

「分からないよ、場所によっては日本じゃないけど日本人っぽいところもあるらしいし」

 

「あー東南アジア系?」

 

「さすがに無理があるだろう」

 

「ちゃんと日本人です」

 

「朱里くん、ハーフの子供って憧れない?」

 

「口説くなら段階もう少し踏みましょうよ」

 

「ね、結婚を前提にお付き合いしよ」

 

「じゃああたしも」

 

「お、二股するか?しちゃうか?なんなら三股までいくか?」

 

「しないですよ、選ぶなら1人だけです」

 

「なら間を取って私とどうだ?」

 

「「「何が間だ」」」

 

「ブレーキレバーへし折れちゃった・・・」

 

そんな、パットさん。信じてたのに。ボケ4にツッコミ1は追いつかないよ。てか会話内容がヤバい。ピキってる、頭の中でみんなピキってる。こっちの相手しつつツッコミこなすは重労働すぎる。

 

「てか朱里くん腕ほっそ。ちゃんと食べてる?」

 

「ん、私を見習って」

 

「あんたは食いすぎ」

 

「和食といえばローカロリーなイメージがあるが、実際どうなんだ?」

 

「んー、どちらかといえば、和食どうこうとかじゃなく濃い味の食べ物をあんまり食べないだけですよ」

 

「うわ、ダイエット中のあたしみたい」

 

「「嘘つけ」」

 

「一昨日、ダイエットっていいながら、フランクフルトにかぶりついてた」

 

「ちょ、恥ずかしいからやめて!」

 

「知ってるぞ、最近下っ腹が出てきたそうじゃないか」

 

「やめてってば!」

 

「そのー、男子の前でそういう話をするのはちょっと⋯」

 

「「「「確かに」」」」

 

ダメだ、ブレーキ役がいなくなったせいでデリケートな話題が止まらない。

 

「ねね、男子ってさ、ちょっとむちってしてたほうが好きってよく聞くんだけどマジ?」

 

「ドワイトさん!?」

 

まーた触れずらい話題をこの人は⋯。

 

「そうなの!?メニュー取って!あたしもっと食べる!」

 

「私もおかわり」

 

「だからあんたは食いすぎだって」

 

「それで、実際どうなんだ?」

 

「えっと⋯」

 

正直、どちらでもいい。というよりどちらも好きだ。飽くまで健康的な範囲でならば。第一に本人が幸せであることが大事だから、体系は二の次⋯って、ここまでは行きすぎかな。

 

「どちらも好きですよ」

 

「えーなんかつまんないなー」

 

「答えずらいんじゃない?ね、あたしにだけ内緒で教えてよ〜」

 

「いや本当ですって」

 

「模範解答的だが、本気でそう思ってるのが、お前の魅力なんだろうな」

 

「ん、フレデリックも安心」

 

「なんであたしだけ名指しなのさ」

 

「「そりゃ、ねぇ?」」

 

「ムキィ!」

 

「こらこら、店内で暴れるんじゃない」

 

「うぐ、そうだね⋯」

 

おお、会話をしてる過程でなんとなく思ってはいたけど、やっぱりこの人たちはしっかりと良識がある。記事に書かれていた異常性は、つまりは漏れ出た能力なのだろう。

 

とすると、どうしてこの店にこだわるのか、という疑問も出るが⋯。

 

「チーズバーガーなくなっちゃった」

 

「また頼む?あたしコーラ飲みたいなぁ」

 

「全く⋯アイスコーヒーのおかわりだ」

 

「わたしも食べたいななんか。朱里くんは?」

 

多分、純粋にこの店が好きなんだろうな、きっと。

 

「それじゃあ、コーヒーを」

 

 


 

 

『我々としては、管理可能な領域に誘い込みたかったところだがな』

 

「無理でしょう、あれは」

 

『無理、だろうな。あのように奴らが楽しそうに話しているのは初めて見た。余計、あの場から離れんだろう』

 

「すみません」

 

『気にするな。もとより駄目で元々、ハナから成功するとは思っておらん。ご苦労だったな』

 

通信終了。同時に迎えの車が到着する。ここから財団保有のヘリポートに移動し、高速ヘリで帰る手はずだ。時間にして、合計2時間半。そこそこの長い帰宅時間は、否が応でも今回のクロステストの反芻をさせてくる。

 

要するに―――

 

「ギャルってすごくパワフルだ⋯」

 

会話の流れ、速度、入れ替わりの激しさ。思えば今まで以上に疲れたと言える。

 

「でも楽しかったなぁ」

 

ご飯も美味しかったし、機会があればまた行こうかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや~面白い子だったねぇ」

 

「そうだな」

 

「でも、私たちのこと、多分知ってる」

 

「ウ~ン別にいんじゃない?それを知った上で友好的に話しかけてくれるなんて、あたしは嬉しいけどな」

 

「「「確かに」」」

 

「あんな子、そうそういないよ」

 

「そうだねぇ⋯惜しいねぇ⋯」

 

「全くだ。願わくば、あの子の生きている間に、終末の喇叭が鳴らないことを」

 

「ま、そのときはあたしらが守るけど」

 

「ん、頑張る」

 

「だいじょーぶ、一人くらい隠してもバレないよ」

 

「そうだな⋯ところで、仮にそうなったとき、我々はあの子からご褒美をもらってもいいと思うんだが―――」

 

「私が最初」

 

「いーやあたしだね」

 

「えーわたしも最初がいい」

 

「仕方がない、ここは間を取って私だな」

 

「「「何が間だ」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くしゅん!」

 

『どーした朱里、風邪でもひいたかァ?』

 

「思えば少し寒気がするような、疲れかな」

 

『ゆっくり休めよォ』

 

「しょうが湯でも飲んで早めに寝ることにするよ⋯」




神谷朱里

いっぱい食べる女の子大好き。それはそれとして見てるだけでお腹はいっぱいになる。


ウォーレン

大食いダウナー不思議ちゃん。よく直感に従って動く。今回もそれ。いっぱい食べる私が君は好き(断定)


フレデリック

絶賛ダイエット中、らしい。ウォーレンほどではないがよく食べるほうで、食生活はお世辞にもいいとは言えない。


ドワイト

イタズラ大好きイジり大好き。多分健全な男の子の初恋を軒並み奪っていくタイプ。


パット

みんなのブレーキ。けどノるときは大いにノる。真面目なときもボケるときもテンションが同じなのが玉に瑕。



さぎとも様
誤字報告ありがとうございました。


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