ココアやチノ達が住んでいる街の、何でもない日常を描いた短編集です。
キャラ設定などは基本原作準拠ですが、若干百合要素強めかなと思います。

二次創作歴が短いので、駄文などはどうか大目に見て下さい。

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さて、以前から書きたいと思っていたごちうさのSSが書けました!
駄文ですが、何卒宜しくお願い致します。

ちなみに私の推しはココチノです。いいですよねぇ。

今回のお話の時系列は、チマメが中3、ココア達が高2の春としています。


春の陽気のように

「ココアさん、ココアさん。いい加減起きて下さい」

 よだれを垂らしただらしない寝顔を見せているのは、私の家に居候して学校に通っている保登心愛さん。私はココアさんと呼んでいる。

 

 しかしこの居候、相変わらず朝に弱い。自分から起きてきたことがほとんどない。

 今もこうして揺さぶっているのに、全然起きる気配がない。

「まったく……」

 来年は受験生になるのに、困った人だ。

(受験……それが終わったらココアさんは……)

 胸の奥がチクリと痛んだ。

 

 変わってしまうこと。ココアさんといつかお別れすること。

 分かってはいるけれど、その時が刻一刻と近付いているのを感じる。

 その時、私はどんな顔でココアさんを見送るんだろう。

 

「う~ん……チノちゃん……」

 ココアさんが寝返りを打ちながら私の名前を呟いた。一体どんな夢を見てるんだろう。

「ココアさん……」

 彼女の柔らかそうな頬に触れる。春の朝日を浴びた頬が私の指先を温めた。

 

「チノちゃん……えへへ……もふもふ~」

「!? ち、ちょっとココアさん!?」

 ココアさんが私に抱き付いてきた。

 春の陽気のような暖かさ。花の香り。何だか懐かしい気がした。

 

「ココアさん、離してください……離して」

「むぎゅっ!?」

 近くにあったぬいぐるみを顔に押し付ける。

 抱き付かれるのは別に嫌じゃないけど、やっぱり恥ずかしい。

 カーテンの隙間から差し込む日の光に照らされて、私の頬も熱く火照ってしまった。

 

 

 

「えへへ……ごめんねチノちゃん。起こしてくれてありがとう」

 寝癖を手櫛で直しながら、ココアさんは申し訳なさそうに微笑んだ。

「もう、早く朝ごはん食べて支度しちゃって下さい」

「はぁ~い」

 ココアさんがこの街に来てから、何度このやりとりをしたんだろう。

 そんなことを考えると、頬が少し緩んでしまう。

 

「それにしても、チノちゃんは早起きできて凄いね。自慢の妹だよ~」

「妹じゃないです」

 ココアさんの中では、私は妹ということになっているらしい。

 末っ子だから妹が欲しかったのかな。

 だとしても、私とココアさんでは全く似ていない。こんな妹で本当に良いのだろうか。

 

「それに、ココアさんを起こすために少し早めに起きなきゃいけないんです。まったく、手のかかる姉です」

 少しツンとした言い方をしてしまう。大丈夫かな、ココアさんを傷つけたりしていないかなと心配していると、

「い、いいい今姉って言ったー!? チノちゃん、ついに私をお姉ちゃんって認めたの!?」

 ココアさんが目を輝かせている。私の心配も杞憂だったみたいだ。

「認めてないです。早く支度終わらせてください」

 

 

 

「おっはよー、チノー!」

「おはよう、チノちゃん」

 私はいつも、二人の友達と一緒に登校している。元気なマヤさんと、おっとりとしたメグさん。

「おはようございます」

 春の日差しが川の水に反射して、キラキラと光っている。

 最近やっと暖かくなってきた。少しだけ眠気を感じる。

 

「チノちゃん、何か眠たそうだね~」

「またココアと夜更かししてたの?」

「またって何ですか……今日は朝ごはん作って、その後にココアさんを起こすしかありませんでしたから、早起きしたんです」

「文句言ってる割にうれしそう」

 マヤさんにそう言われて、頬が緩んでいることに気付いた。

「ち、違います! これは……」

 口ではそう言うけれど、実際少し嬉しいのかも知れない。

 それでも素直になれないのはどうしてなんだろう……。

「ココアちゃんとチノちゃん、仲良しだもんね~」

「うぅ……」

 

 

 

 授業中、窓の外を眺めてみる。

 暖かな陽気が私を包む。何だかココアさんを思い出した。

(って、またココアさんのこと……)

 

 思えば同年代の友達も少なかったから、ココアさんのことをこんなに特別に思ってしまうのかも知れない。

 でも、ココアさんとマヤさん、メグさんとの違いは何だろう。

 同じ友達のはずなのに、何かが違う。

 

 暖かい空気の中で、そんなことを考えていた。ずっと考えていた。

 

 

 

 下校中、携帯の着信音が響いた。画面を見ると、ココアさんからのメールが来たみたいだ。

『家に帰る前に、少しだけ寄り道に付き合って(‐人‐)』

「わざわざ顔文字まで付けて……」

 そう言いつつも、胸はドキドキして止まらなかった。

 

「ココアさん」

「あっ、チノちゃん! ごめんね~」

 ココアさんが大きく身体を伸ばして手を振っている。

「いえ。何かあったんですか?」

「こっちこっち」

 手招きされるままついていくと、そこは公園だった。

 

「うわぁ……」

 思わず見とれてしまった。夕暮れの日に染まった桃色の世界。

「桜……満開ですね……」

「綺麗でしょ。チノちゃんにも見せたくて。サプライズになった?」

「は、はい」

 

「地元の私にも知らない穴場を見つけるなんて、ココアさんは凄いですね」

「あれっ!? チノちゃんが普通に褒めてくれてる!? 熱でもあるのっ!?」

 ココアさんが私の額に手を当てて、熱を測ろうとしている。

 恥ずかしい。あまり慣れないことは言うものじゃないなと思った。

「や、やっぱり今のは無しで……」

 

「って言っても、ここ見つけたの偶然なんだ。うさぎ追いかけてたら、ここにたどり着いたの」

「何だ、ココアさんはやっぱりココアさんでしたか」

「それって褒めて……くれてるの……?」

「どうでしょうか。ふふっ……」

 思わず笑ってしまう。私につられたのか、ココアさんも笑った。子供のような無邪気な顔で。

 

 

 

 桜の花びらが舞い落ちるのを、ココアさんと二人で眺めている。

 春の柔らかい夕日を浴びて落ちていくそれを見ていると、感動すると同時にどこか切なくなるのは何故だろう。

 花は散るから美しいと言ったのは誰だったか。桜の咲く時期はとても短い。だから美しくて切ないのかも知れない。

「綺麗だね、チノちゃん」

「は、はい……」

 いつもは子供のようだと思っていたココアさんの横顔が、一瞬だけ大人びて見えて驚いてしまう。

「綺麗ですね、本当に……」

 

 今の私達の時間も、人生の中ではほんの一瞬なのかも知れない。だから……。

「ココアさん、ちょっと目を瞑っていてくれますか?」

「え、どうして?」

「いいですから」

「う、うん……」

 だから私も後悔しないようにしたいと思った。

 いつかココアさんが居なくなっても大丈夫なように。

 

 誰もいない公園の中、心臓の鼓動だけが鳴り響いている。

「ち、チノちゃん……今何を……」

 二人で顔が、桜のように桃色に染まった。

「サプライズ返しです。ふふっ……」

「え……えぇっ!?」

 ココアさんがたじたじになっているのが、何だか面白い。

 

 膝丈のスカートを翻して、ココアさんに背を向ける。

「さあ、帰りますよココアさん。お店でリゼさんが待ってますから」

「ま、待ってよチノちゃん」

 ココアさんの手が私の手に触れる。

 その手を握り返して、家へと帰っていった。

 

 夕暮れの街に二人の足音が響く。暖かな風が頬に当たる。もう春真っ盛りだ。

 

 

 

≪その後≫

「遅いぞ。二人とも何してたんだ?」

「何って……ねぇ……」

「ふふっ……」

 ココアさんと二人、顔を見合わせて笑う。今日はやけに頬が緩んだ一日だった。

「遅刻してへらへらするんじゃない! そこに直れ!」

「「い、イエッサー!!」」




というわけで、趣味全開のココチノのお話でした。いいですよねぇ。

しかし私、現在連載が3本ありますので、次回以降を更新できるかはちょっと微妙なところ……。
気が向いたら更新しようかな、とは思っています。

ここまで読んで頂き、ありがとうございました。


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