「個性を増幅……ってそんな事が可能なんですか!?」
余りの事実に思わず声を上げてしまう出久、その反応はある意味正しいとデイヴは軽く笑いながら答える。
「そもそも個性というのは個性因子からなっている、今ではその個性因子の活動を検知して発動する機構を持つコスチュームは珍しくはない」
『私達のウルトラスーツも確かそんな仕組みだったかな』
「はいそうですね!!でも緑谷さんの場合はなんといったら良いのか、全く別の因子も検出されていてそれがまた凄い大発見なんですけど、それは人間の活動に反応して大きな力を発揮しているんですよ!!私なりに研究ではこの因子こそがウルトラマンをウルトラマン足らしめているのではと思っているのです!!」
「ウルトラマンをウルトラマン足らしめる因子……!?」
「是、是非その話も詳しく聞きたいわ!!」
「あ~もうまた話がズレる!!デイヴ続きを頼むよ!!」
と割かし衝撃的なカミングアウトが発目から行われるのであった。だがそれを聞いてもマグナは特には何とも思っていないのか、何も言わないのに出久は尋ねてみる。
「(あの、マグナさん如何なんでしょうか発目さんの言ってる事は)」
『うん、強ち間違っている訳ではないね。私が君に宿った事で力の一部が因子として君に定着しているというのは十二分にあり得る話だよ』
「(えっそれって大丈夫なんですか色々と)」
『問題は無いと思うよ、まあ君は身体が丈夫になってラッキー程度に思ってくれていいよ』
マグナ的には、漫画版のULTRAMANに出て来たウルトラマン因子に当たる物なのかな?と内心で思ったりした。どんな事になるかは分からないが、過去に一体化した方々にもそのような因子が残っていたのだろうか、とも考える。だが此処である考えが過った。
『……太古にこの地球にウルトラマンが来ていたとしたら……?』
突拍子もない想像かもしれないが、バラージに訪れたウルトラマンがいたようにこの世界にも過去にウルトラマンが居て、その時代の人間と一体化した。そしてその人間に因子が定着し、受け継がれていった結果として今があるのではないかという推論がたった。確証も無ければ推論でしかない……まあ今はそんな事は置いておいてデヴィットの話を聞かなければ。
「―――という事で、個性をそのまま増幅するんだ。実は、これはトシの力が弱まってしまうんじゃないかって不安に思ったから研究を行ったんだ」
「デ、デイヴ君は私の事をそんなに……!!」
オールマイトは言葉を失いそうになる程に感動してしまった、まさか親友が此処まで自分の事を考えてくれていたなんて思いもしなかった。同時にこれならばもっと早く告げておけば良かったという後悔にも襲われてしまった。やはり隠し事は良い事にならないのか。
「だがね、超人社会のバランスが著しく狂うと各国政府は考えたようでね。スポンサーを通じて研究は凍結、試作品も取り上げられてしまったんだ」
「こういう事を言うのもなんですけどそれは正しい判断だと思いますよ私としては、使う対象がオールマイトだとしてもリスクの方が圧倒的に大きいですからねぇ……この超人社会だと何処から情報が漏れるかも分かりませんからね、仮にオールマイトから奪えなくても入手経路を探って此処に攻め込むって事もあり得ますもん」
「全くだね、私はそんな事も分かっていなかったという事だ。デヴィット・シールドが聞いて呆れるね」
何の気づかいをする事も無く、そんな意見を口にする発目。彼女を知っている身としては、だったら気軽にブレイクスルーを引き起こすのを自重しろと叫びたくなる。それを聞いて自嘲気味に続けた言葉を放った。
「ああ本当に愚かだ、研究をする為に馬鹿な計画まで考えてね」
「計画って……何の計画を?」
「―――トシ、君が勇気を出して私に真実を告げてくれた。だから私も勇気をもって、私の罪を話す」
罪、何とも仰々しい言葉にメリッサや発目すらも驚きを隠せなかった。そしてオールマイトはマッスルフォームのまま、力強い表情を作ったまま聞かせて欲しいと告げた。それに促されるようにデヴィットは怯えて震えている心を奮い立たせて言葉を綴った。
「私は……私は、このI・アイランドにヴィランを雇って招き入れた……」
「パ、パパ!?何を言って―――」
「その試作品を奪い返す為に……私は、サムの手を借りてヴィランを雇ったんだ。だが一切人を傷付けないという条件付きで、そしてその混乱を利用して試作品を奪取して他の場所で研究するという愚かな事を……私は、私はトシが、オールマイトが居なくなってしまう事が堪らなく怖かったんだ……人々の心に、私の心を支えてくれていた平和の象徴の喪失が耐えがたい程に……!!!」
懺悔の告白とも言うべきそれは、これからI・アイランドで起こすであろう計画の全貌の全てだった。それ程までに恐ろしかったのは恐らく彼だけではない、社会全体が余りにも恐ろしいと考えているであろう事柄。そして、デヴィットにはそれを実行するだけの資金力などもあった。だからこそ実行しようと思ったのだろう……。
「済まない、私は何て愚かな事をしてしまったんだ……!!」
「デイヴ……」
「パパ……」
責められなかった、出久もそうだが平和の象徴であるオールマイトが居なくなるという事は極めて恐ろしい事だ。何とかしたい物ならば何とかしようともがくのは当然の事だ。故にオールマイトは掛ける言葉を失った、メリッサは一度抱いた軽蔑の気持ちを今度は自分に向けた。父の気持ちは分かる、そして今こうして話す事がどれほど苦しい事なのか。発目も流石に口を噤んでいる。出久もどうしたら……と思った時、パンッ、そんな乾いた音が部屋に響いた。
「なっ……マグナさん!?」
「あっ……」
その音の元凶はマグナだった、彼がデヴィットの頬を軽く叩いた。赤くなった頬を抑えながらもデヴィットはこれで良いんだ……と僅かに救われたような気分になりながらも顔を上げて光の巨人の断罪を受けようと思った。だがそこにあったのは変わらぬ顔をしたマグナ……いや、むしろ笑っているように見えた。
『貴方の気持ちはよく分かります、私の居た世界でも如何にかして自分達の世界を守りたいと願った人達が居ました。もう二度と怪獣に大切な人を奪われたりする物か、やれる事を全てやって人々を守るんだ、そんな強い想いを抱いていた―――そしてそれ故に罪を犯した人もいた』
過激な思想や行動によって逆に怪獣の怒りを買った、あるべきある筈のバランスを乱してしまった、ウルトラマンの利用したが逆に敵になった、数えればきりがないだろう。
『ですが、罪を犯したならば償う事は幾らでも出来る筈ですよ。裁かれるのを待つのではなく、貴方自身の脚で立ち上がって、過ちを正そうと動き出すのが一番だと思いませんか?』
「待つのではなく、自分の脚で……」
『私達、ウルトラマンにも神のような存在が居ます。ですがその存在は最初から自らを頼るような者に手を貸す事は無い、強い心の中に希望を携えながら諦める事のない不屈の魂を宿した者に力を貸してくれるのです。貴方は―――何方ですかな?』
その問いかけに対する答えは―――一つに決まっている。
「私は……私に出来る事をします!!そうだ、私は、私は―――オールマイトのサイドキックだった男です!!」
「デイヴ!!ハハッその意気だ、そうだ若い頃のようにコンビ復活と行こう!!」
一気に覇気を取り戻した親友にオールマイトも嬉し気に応えた、固い握手を結びながらもデヴィットの瞳には光に溢れていた。そうだ、そういう光を持った者は何度だって立ち上がる事が出来る。
「急いでサムに連絡を……いや直接行った方が早いな。トシ、一緒に来てくれ!!」
「無論!!済まない緑谷少年たち、私達は行くよ!!」
そう言いながらも親友と共に部屋を飛び出して行くオールマイトを見て出久は思わず笑みを浮かべた。
「大丈夫そうですね、デヴィットさん」
『彼なら心配いらないさ、過ちなんて物は生きている限り繰り返し続ける物だ。過ちは正さないとならない、そこに気付き、方法を模索する事こそが大切な事なんだ』