【助けて】呼吸使えるけど、オサレが使えない【転生】 作:ぬー(旧名:菊の花の様に)
ついでに83話も一部書き直し
「源氏……」
目の前でチャドが倒れる。
血塗れになりながら、
俺の方を見つめながら、
俺につけられた傷で、倒れた。
「…………」
それに対して、俺は無言で倒れたチャドを見下ろす。
「オイ! カス!」
そして、後ろからの声に俺は振り向く。
背後では、絶賛拳を振り上げていたヤミーが、そこにいた。
「邪魔をすんな?!」
そして振り上げた拳を俺に……ってえ?!
俺も攻撃すんの?!
拳は俺に向かってくる。
回避も防御も反撃も、
俺の首輪に引っかかる可能性がある。だからこそ避けようとする体を理性で押さえつける。
あ、死ぬかも。
そう思った瞬間。
バチン!!!
目の前に、薄透明の膜が現れ、ヤミーの拳が防がれる。
この霊圧は、井上のもの。
背後を見なくても、分かる。
温かくて、戦うなんて考えられない、そんな霊圧。
震えて、怯えて、それでもこちらを守るそんな霊圧。
今も、チャドのことを回復しようとしているのか、チャドの周りが何かに包まれているのを気配で感じる。
「あがつま…………くん」
そんな井上は、俺のことを見る。
俺と井上は、そんな接点はない。
チャドと同じく、同じグループにいる、変なやつ、位の認識だろうか。
そんな井上、俺は今から、斬る。
「なんで、なんでこんなこと」
「ははは!!! オイこいつ! お前のこと守ってんのか?!」
ヤミーの笑い声。
ウルキオラの視線。
様々なものを背負いながら、
「なんで! 茶渡くんのこと!」
月輪刀を握りしめ、最大限の殺気を込め、凡そ出す必要のない膨大な霊圧を抱え、
今から君をぶった切るという精一杯の殺気を込めて、
「三天結盾」
「私は拒絶する!」
斬る。
俺の背後の盾は消え、俺の目の前に再構築される。
それは3点を起点とした盾。
強固にも見えるそれに、斜めの線を刻みつける。
盾はバラバラと砕けていく。
幸い、呼吸を使ったものではなく、単なる振り下ろしなので井上に傷がつかなくて良かった。
ただ、盾を割られたことで井上は絶望を感じたのか、青ざめた表情で俺を見る。
うわー、友達からそんな表情で見られるの、心に来るな、と罪悪感を感じながらも、
シィィィィィ
雷の呼吸
参の型
聚蚊……
ゆっくりと呼吸をして、チャドと同じくギリギリ死なない程度に切りつけてやろうかと刀を振り上げた瞬間、
俺は地面にしゃがんで、何かを避けていた。
何を? なんで?
疑問を払拭するかのように、しゃがんでいる俺に対して何かが迫る。
何が迫っているかは分からないが、危険の気配を避ける。
また来る。
連続で訪れる攻撃を、俺は丁寧にギリギリのところで避ける。
東仙先生から学んだことで、今まで感じていた危険を知覚することができるようになった。
今までは息抜きだったり攻める隙だったり呼吸のことを考えていたが、この危険に対して向き合うことで、考えて回避できるようになった。
まぁ、これは余裕ある時にもできたんだが、これを常時できるようになったおかげで、
「は? なんだお前? なんでそこにいるんだ?」
「奇妙なやつだ」
ヤミーの前で戦っていたが、一瞬でウルキオラの隣に移動する。
これも雷の呼吸、伍の型、遠雷だ。
無呼吸呼吸。
尸魂界にいたときから挑戦していたが、俺は呼吸という行為を必要としなくなった。
呼気によって吸収していた霊子を、体で取り入れることができるようになった。
そのため、呼吸による一瞬の溜めが、なくなった。
「無理だったか」
そんな俺が脱出した土煙から、声が聞こえる。
その声に、俺は安心する。
せっかく普段はやらない気配をガッツリ出して、さっきダダ漏れで、ゆっくり味方斬り続けたんだ。
「テメェ、だれだ」
「ごめんね、黒崎くん」
「悪い、やりきれなかった」
土煙から見える姿は、いつもの死神の姿ではなく、卍解状態だ。
霊圧も研ぎ澄まされている。
……あいつ普通に俺を殺しに来たよな?
あれ? 俺裏切ったのってこいつ今知ったんじゃないの?
多少の疑問があるが、ひとまず状況は良い。
一護が来たなら、他も来るのかと考えていると、
「あがつまくんは……」
「あぁ、丈さんの言うとおりだった」
2人は何やら話し込んでいた。
ジジイの気配はしない。
こんだけの殺気放ったらいくらなんでも来るべきだろ?
なんか来れない理由でもあるのか?
気配察知に気を割いていると、
「おいカス!」
ヤミーさんや、多分俺のことでしょうか?
「なんだ」
返事する。
「あいつでいいんだよな!」
静かに頷く。
俺はカスという名前になったっぽい。
「聞いていた特徴とも一致している。
こいつの気配に釣られたのか、連れてきて手間が省けた」
「ハハハ! カスでも使い道があったってことだ!」
敵(味方)からの評価が上がった。
俺は無言で周囲に気を張っている。
「テメーが、チャドをやったのか?」
そんな中、俺等に割入るように、一護の声が放たれる。
「ちげーよ、そこのカスがやったんだよ。
テメェらの仲間だった、あのカスがよ!」
「そうか」
一護の霊圧が、揺らいだ。
「じゃあこれは、八つ当たりだ」
次の瞬間、ヤミーの腕は吹っ飛んでいた。
☆☆☆☆☆
時は遡り、8月15日。
丈さんから、源氏が裏切る宣言をされてから、俺は現世に戻り、丈さんのもとを訪れた。
考えた。
源氏を救う方法を。
あいつが裏切っても、救える方法を。
そしてたどり着いた。
「力が、足りない」
いつの日か、源氏が言っていた、やりたいことをやるための力。
多分、源氏はなんとしても生きる。
というか全然俺等を裏切る。
言われて納得した。
もちろん、源氏のことは信じている。
あいつは友達思いだし、そう安々と裏切るような奴じゃない
ただ、あいつは友達のために自分の命を捨てるようなやつでもない。
自分か友達がどちらか死ななければならないときは、「いや流石に嫌でしょ」とか言ってちゃんと生き残るタイプだ。
「ただ、それが源氏の力なんだと、そう思いました」
「そうか」
浦原商店にある『勉強部屋』で、向かい合った丈さんはケタケタ笑う。
丈さんは、まるで俺の出現を待っていたと言わんばかりに、待っていた。
「たしかに源氏の言いそうなことだ」
丈さんは、普段の殺気全開の様子ではない。
会話をしてくれている。
いつもの、生き延びてみろ、死んでしまうぞ? といった優しい刀を向ける鬼ではない。
1人の、我妻源氏の、祖父としての、丈さん。
「源氏を、まだ、友と言うのか?」
「はい」
丈さんは、ゆっくりと立ち上がる。
あいも変わらず、すべての所作がきれいな人だ。
源氏もそうだった。
作法とか、体の動きが、綺麗だったんだ。
「ちなみに、礼儀作法は源氏に教えたことはない。
強いて言えば、見様見真似」
見透かしたようなセリフ。
まるで、俺の思っていることを知っているような話し方。
そして、
「お主は、コレを、学びたいのではないか?」
丈さんは、
「お主の中から感じるその力」
その額に、
「死神とは違う」
虚の面を、
「まるで、虚のような」
出現させた。
「この力を」