自分に素っ気ない態度を取る妹と昔みたいに仲良く話したいと願う男子高校生の十二月田雪凪と恥ずかしさから兄に素っ気ない態度を取ってしまう事を悩む女子高生の十二月田雪羽の兄妹は、ある時それぞれの友人にその事を相談し、それぞれある考えを思い付く。
果たして、十二月田兄妹は昔のように笑い合えるようになるのだろうか。

https://syosetu.org/novel/143049/

こちらは数年前に投稿した作品で、今作品に登場している星屋幸斗達がメインの作品になっていますので、こちらも合わせて読んで頂けるとより楽しめると思います。

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どうも、片倉政実です。皆さんはクリスマスはどのように過ごしているでしょうか? 大切な人や家族や友人と過ごしている方もいれば、そうではない方もいらっしゃるかと思います。
これからお届けする物語は、そんなクリスマスに因んだある兄妹の話です。ツッコミどころは色々あるかと思いますが、それでも最後まで楽しんで読んで頂けたらとても幸いです。
それでは、クリスマス特別公演、これより開幕です。


Happy Christmas

「ん……」

 

 外から射し込んできた陽の光を目蓋(まぶた)の裏で感じて目を覚ました後、俺は静かに目を開けた。そして、身体を起こしてみると、掛けていた毛布が下にずれ落ち、それと同時に冷えきった部屋の気温が一気に襲ってきた。

 

「う、さむ……今何時だ……?」

 

 枕元にある携帯を確認すると、携帯の画面には7:00と表示されていた。

 

「7時か……本当ならこのまま毛布にくるまっていたいけど、今日も学校があるし、そろそろ起きないとだな」

 

 そう独り言ちた後、俺はベッドから体を出した。そして、廊下に出るために歩き始めたその時、廊下の方から静かに歩く足音が聞こえてきた。

 

「……どうやら雪羽(ゆきは)も起きたみたいだな」

 

 そして、ドアを開けてみると、そこには少しだけ不機嫌そうに俺を見る妹の雪羽の姿があった。

 

「おはよう、雪羽」

「……おはよう」

「あ、あのさ──」

「……そろそろ良い? このままここにいても寒いだけなんだけど」

「あ、うん……ゴメン」

「…………」

 

 雪羽は不機嫌そうな顔のままで階段がある方へ向かい、俺はそれを見送りながら小さくため息をついた。

 

「はあ……この調子だと今日もろくに会話が出来そうにないな……。いつからだったかな。雪羽がこんな風に俺と話すのを拒み始めたのって……」

 

 少なくとも、小学生の頃はそうでもなかった。むしろ、勉強でわからないところがあれば訊きに来ていたし、おはようと挨拶をしても笑顔で返してくれていた。けれど、思い返してみれば、中学生になってからは少しずつ素っ気ない態度を取るようになり、高校生になった今となってはまったく会話をしてくれなくなっていた。

 

「やっぱり、高校生にもなって、異性の兄弟と仲良くするのは恥ずかしいと思われてるのかな……」

 

 でも、俺自身は前ほどじゃなくても良いから、雪羽と色々な話をしたい。やっぱり、雪羽と話をするのは楽しいからだ。

 

「はあ……何かきっかけでもあれば良いんだけど、きっかけなんて早々転がってる物でもないよな……」

 

 そんな言葉をため息と一緒に吐き出した後、俺はそのまま部屋を出て、リビングへ向かうために階段を降り始めた。

 

 

 

 

「……んで、今日もズーンとしてたわけか」

「そうだよ……」

 

 その日の昼休み、クラスメートの冬村光士(ふゆむらこうじ)の言葉に対して落ち込みながら答えていると、それを聞いていた同じくクラスメートの星屋幸斗(せいやゆきと)赤城樹佳(あかぎこのか)は心配そうに顔を見合わせた。

 

雪凪(せつな)の予想は、何となくだけど合ってる気はするんだよな……」

「うん……もし、私にお兄さんがいたとしても同じような反応をしちゃいそうだし……」

「そうか……けど、幸斗のとこは仲が良いよな?」

「ん、まあな」

「まあ、幸斗と愛香ちゃんには縁遠い話なのは間違いないわね。」

「だよな。昔から知ってるけど、幸斗と愛香ちゃんが仲悪い時は一回も無かったしな」

「ウチも別に仲が悪いってわけではないんだけどな……はあ、やっぱりこればかりはどうしようもないのかな……」

 

 俺がまたため息をつきながら言う中、幸斗は俺の肩をポンと叩きながら優しい笑みを浮かべた。

 

「まあ、元気出せよ。物で釣るわけじゃないけど、クリスマスも近いし、何かプレゼントでもしてみたらどうだ?」

「クリスマス……」

「そうだな。幸斗の言う通り、何か喜びそうな物をプレゼントしてみて、それきっかけで話を膨らませたらどうだ?」

「そうだね。幸斗もクリスマスがきっかけで愛香ちゃんにしっかりと伝えたい事を伝えられたわけだし、十二月田(しわすだ)兄妹もしっかりとお互いに気持ちを伝え合ってみたら?」

「気持ちを伝え合う、か……」

 

 たしかにそれが良いかもしれない。そういう方法しか取れないのは少し残念だけど、それで雪羽との関係が好転するのなら俺はそれに賭けたい。

 

「……そうだな。せっかく提案してもらったし、そうしてみるよ」

「ああ、頑張れよ」

「俺達で良ければ、また相談に乗るからさ」

「うんうん。困った時はお互い様だからね」

「お前達……ありがとうな」

「どういたしまして。さて、それじゃあそろそろ昼食にしようぜ。早くしないと昼休みが終わっちゃうからな」

「ああ、そうだな」

 

 返事をした後、俺達はそれぞれの弁当を用意し、話をしながら昼食を取り始めた。

 

 

 

 

「はあ……」

 

 お弁当を食べながら今日何度目になるかわからないため息をついていた時、一緒にお弁当を食べていた愛香が心配そうに声をかけてきた。

 

「雪羽ちゃん、大丈夫?」

「……大丈夫。大丈夫なんだけど、気持ちの面が大丈夫じゃない……」

 

 気持ちがズーンと沈むのを感じながら答えていると、幼馴染みの葛葉義光(くずのはよしあき)はまたかといった様子でため息をついた。

 

「はあ……また雪凪に素っ気ない態度を取ってしまい、自己嫌悪に陥っているんですか?」

「……大正解」

「それなら、また昔みたいに接してあげたら良いのに……」

 

 もう一人の幼馴染みである霜辻氷雨(しもつじひさめ)の呆れぎみに言うその言葉に私は首を振った。

 

「今さら無理だよ……何かきっかけがあってやり始めた事じゃないし、お兄ちゃんだってこんな私にはそろそろ愛想をつかし始めてるよ……」

「そんな事は無いと思いますが……」

「……それは幼馴染みとしての経験? それとも、“妖狐の半人半妖”としての勘?」

「どちらもです。あなたもそうでしたが、雪凪は幼い頃に出会った妖狐の半人半妖である私と雪女の半人半妖である氷雨をすぐに受け入れ、今でも友人として接してくれている。そんな彼の事です。きっと今頃、あなたとどう接したら良いか悩み抜いていると思いますよ」

「そうだね。すんなり受け入れた上に今度はどうやったら私達が人間の中で普通に暮らせるかを考えるような奴だもん。雪羽に愛想をつかすなんてないない」

「そうかな……」

「うん、きっとそうだよ。私はまだみんなとの付き合いは短いけど、雪凪さんはウチのお兄ちゃんみたいに優しい人なのはわかるし、今頃必死になって考えてくれてるんじゃないかな?」

「……だったら良いなあ」

「でも、雪羽だって歩み寄らないとダメだからね?」

「わかってるよ……」

 

 歩み寄る、か……たしかにそれは大切なのかも。お兄ちゃんがどれだけ方法を考えて、近付いてくれようとしても私が遠ざかっていったら意味は無いし、私もそろそろ素直になっても良いのかもしれない。

 

 

「……うん、私も頑張らないと」

「うん、その意気だよ」

「まあ、近い内にクリスマスがあるし、その時にでも何かプレゼントでもしてみたら?」

「良ければ、我が家でクリスマスパーティーをやっても良いですしね」

「プレゼントにクリスマスパーティー……か。たしかにそういうきっかけがあれば、やりやすいのかも」

「そうそう。元々二人は仲が良いんだから、早く昔みたいに笑い合えるようになっちゃいなよ」

「……そうだね。みんな、話を聞いてくれてありがとう」

 

 私がお礼を言うと、愛香達はにこりと笑った。

 

「どういたしまして。もし、また何かあったら遠慮無く言ってね」

「私達で良ければ、話くらいは聞けますから」

「まあ、何もない方が平和で良いけどね」

「ふふ、そうだね。それじゃあ、そろそろご飯を食べ終えちゃおうか」

 

 その言葉に頷いた後、私達は色々な話をしながら再び昼食を食べ始めた。

 

 

 

 

 幸斗達に話を聞いてもらった日から一週間が過ぎ、世間はクリスマスイブで盛り上がっていた頃、俺と雪羽は義光に呼ばれて義光の家へ向けて歩いていた。

 

「……なんかこうして雪羽と一緒にどこかに行くって久しぶりだな」

「……そうだね」

「…………」

「…………」

 

 なんとも言えない空気が俺達の間に流れる中、どうにか流れを変えるべく、次の話題に移ろうとしたその時、空からちらちらと降る雪を見て、俺はある事を思い出した。

 

「……そういえば、義光と氷雨と出会ったのもこんな雪の日だったな」

「そう、だね……私達が公園で遊んでた時、それを引っ越してきたばかりの氷雨が見てて、氷雨を遊びに誘おうとした時に同じく引っ越してきたばかりの義光が東屋で本を読んでるのを見かけて、結局義光も遊びに誘ったのが私達の付き合いの始まりだった」

「それで、遊んでる最中に自分達は半人半妖だっていう話をされたけど、俺達は別にそれが怖いとは思わなかったんだよな」

「うん……」

「まあ、アイツらからしたら、結構ドキドキだったろうけどな。もしかしたら、怖がられて逃げられるかもしれないわけだし。でも俺達は、たとえアイツらが半人半妖という俺達とは少し違うモノだとしてもそんな事は関係無く付き合っていくと決めた。本当ならもっと何かしてやりたいところだったけど、子供だった俺達にはそれくらいしか出来なかったからな」

「けど、義光達からすれば本当にありがたかったのかもしれない。引っ越してきたばかりで友達が出来た事もそうだけど、普通の人間とは違う自分達を受け入れてくれた事も」

「そうかもな。雪羽、これからもアイツらとは仲良くしていこうな」

「……うん」

 

 雪羽が少しだけ微笑みながら答えたのを見て、俺は空気が変わった事や久しぶりに雪羽と会話が出来た事に嬉しさを感じていた。

 

 そういえば……義光は家でクリスマスパーティーをするから、プレゼント交換用のプレゼントを持ってきてくれって言ってたけど、実は雪羽に渡す用のプレゼントも持ってきてるんだよな。さて、いつ渡したら良いかな……。

 

 肩に掛けているショルダーバッグの中に入っている雪羽用のプレゼントの事を考えながら歩いている内に、俺達は義光の家に着いていた。そして、インターホンを鳴らすために指を近付けたその時、ドアが静かに開き、中から義光が笑みを浮かべながら顔を出した。

 

「よく来てくれましたね、二人とも。さあ、中へ入ってください」

「ああ。それじゃあ、おじゃまします」

「おじゃまします」

 

 そして、家の中に入ると、台所から氷雨がひょこっと顔を出した。

 

「あ、二人とも来たね」

「氷雨、先に来てたんだな」

「うん、私の家の方が義光の家に近いからね。ところで……二人とも、ちゃんとプレゼントは持ってきた?」

「ん……ああ、持ってきたぜ」

「私も持ってきた。でも、プレゼント交換なんて小学生の頃に子供会の行事でやったきりだよね」

「あははっ、そうだね。でも、ワクワクするし楽しそうでしょ?」

「それはそうだな」

 

 氷雨の言う通り、何だかんだで俺はワクワクしていたし、チラッと見た雪羽の顔もどこか楽しそうな様子だった。

 

 良かった……雪羽が楽しそうで。この調子で今日こそ雪羽とは関係を良くしていきたいな。

 

「ところで、台所で何をしてたんだ?」

「ん? ああ、今ね台所を借りてケーキを作ってたんだ。ほら、私の趣味はお菓子作りだから」

「はは、なるほどな」

「前にも氷雨の手作りケーキは食べた事あるけど、あれは本当に美味しかったから、今回も期待しちゃおうかな」

「うん、期待してて」

「氷雨、何か私達で手伝える事はありますか?」

「ううん、こっちは大丈夫だから、義光達は居間の飾りつけをお願い」

「わかりました。では、行きましょうか」

 

 その義光の言葉に頷いた後、俺達は飾りつけをするために居間へと向かった。

 

 

 

 

 数時間後、時間もすっかり夜になった頃、俺達が飾りつけをした居間はクリスマス一色になり、テーブルの上には様々な料理がズラリと並んでいた。

 

「よし……これで良いですね。では、そろそろ始めましょうか」

「ああ。そういえば……今頃、義光のお父さん達やウチの父さん達も向こうで楽しんでるのかな?」

「そうかもしれませんね。私も町内会の行事でパーティーをするからその準備で今日は昼からいないと聞いた時は驚きましたが、父さん達も毎日頑張っているわけですから、今日くらいは楽しんでもらいたいものです」

「ふふ、そうだね。それじゃあ……そろそろ乾杯といこうか」

「うん」

「よし、持ったね。それじゃあ……メリークリスマス!」

『メリークリスマス』

 

 その言葉を言いながら乾杯をし、俺達のクリスマスパーティーは幕を開けた。

 

 

 

 

 約一時間後、クリスマスパーティーがそろそろ終わりに近付き、氷雨は満足そうな様子で体を上にグーっと伸ばした。

 

「うーん……! だいぶ楽しんだねー!」

「そうですね……」

「あはは、たしかにな。料理も食べたし、プレゼント交換もしたし、やる事はだいぶやった感じがするな」

「うん、そうだね」

 

 雪羽も満足そうな様子で笑みを浮かべており、その姿に俺は嬉しさを感じていた。

 

 うんうん、雪羽も楽しそうだし、これでやる事はもう──。

 

 その時、雪羽用のプレゼントの存在を思い出し、俺は近くにショルダーバッグを引き寄せ、中から綺麗にラッピングされた小さな箱を取り出した。

 

「雪羽」

「ん、なに──って、それは……?」

「お前用に用意してたクリスマスプレゼントだよ」

「私用の……プレゼント……」

「雪羽、開けてみてくれるか?」

「あ、うん……」

 

 そして、俺からプレゼントを受け取り、雪羽は真剣な顔をしながら丁寧にそれを開けた。すると、雪羽の顔はとても驚いた物に変わった。

 

「え……これって、前から欲しかった天然石のブレスレット!? それも私の誕生石の奴……!」

「ああ、そういえば言ってたね。でも、雪凪はよく知ってたね」

「雪羽が雑誌を読んでた時、それが載ってたページを真剣に見てたのを何回か見かけたからな」

「ふふ、なるほど。それで、どうしてこれをプレゼントしようと思ったのですか?」

「……実はこれは幸斗達の案なんだけど、これをプレゼントする事で、これきっかけで雪羽と話を膨らませようとしてたんだ。俺達、最近まったく会話らしい会話してなかったから、こういう物きっかけで良いから、ちゃんと話したいと思ってさ」

「お兄ちゃん……」

「雪羽、こんなダメダメな兄貴でごめんな?」

 

 すると、雪羽は軽く俯きながら首を横に振った。

 

「そんな事無い……ダメダメなのは私だよ」

「雪羽……」

「何となくわかってたと思うけど、私が最近話そうとしなかったのは、高校生にもなってお兄ちゃんと仲良く話すのは少し恥ずかしいと思ってきたからなの。それを他の子達に見られたら、からかわれると思ったの……」

「……うん」

「でも、愛香と幸斗さんが仲良く話すのを見て、私はそれを羨ましいと思ってた。こんな事なんて考えずに昔みたいにお兄ちゃんと話したいとずっと思ってた」

「…………」

「でも、いざ話そうとしても何を話したら良いかわからなくなるし、お兄ちゃんから話しかけてもらってもすぐに話を打ち切っちゃうし……!」

「……雪羽」

「ごめんね、こんなダメダメな妹で……」

 

 目に涙を浮かべながら謝る雪羽に対して首を横に振った後、俺は雪羽の頭にポンと手を置いた。

 

「あ……」

「そんな事は無い。ここに来る前、話を振ったらしっかりと答えてくれたし、今だってこうしてちゃんと話をしてくれただろ? だから、雪羽はダメダメなんかじゃない。俺の自慢の妹だ」

「お兄ちゃん……!」

「雪羽、俺の妹でいてくれてありがとう。これからもよろしくな」

「……うん、こちらこそよろしくね、お兄ちゃん」

「ああ」

 

 ようやく笑ってくれた雪羽に対して俺が笑い返していたその時、「あ、そうだ……」と雪羽は何かを思い出したように声をあげたかと思うと、俺のとは色違いのショルダーバッグを引き寄せ、中から綺麗にラッピングされた小さな箱を取り出した。

 

「雪羽、それは?」

「私からもクリスマスプレゼント。お兄ちゃん、開けてみて」

「あ、ああ」

 

 突然の事に少し驚きながら俺はプレゼントを受け取り、それを丁寧に開けた。すると、中から出てきたのは、俺の誕生石が嵌め込まれたペンダントだった。

 

「これ……」

「実は私も同じ事を考えてたの。何かプレゼントをして、それをきっかけにして話をしたいなって。それで思い付いたのが、お兄ちゃんがプレゼントしてくれたブレスレットと同じところが出してるペンダントだったの」

「そうだったのか……ふふ、兄妹揃って似たような物をプレゼントするなんて、やっぱり俺達は気が合うんだな」

「ふふ、そうだね」

 

 雪羽と一緒に笑い合い、それを見守る義光達の優しい視線を感じていたその時、テーブルの上に置いていた携帯がブルブルと震えだし、俺はそれを不思議に思いながら携帯を手に取った。見てみると、画面には幸斗の名前が表示されていた。

 

「電話か……なんだろう? もしもし……?」

『あ、雪凪か。今、何してた?』

「何って……義光の家でクリスマスパーティーしてたけど……」

『そっか。妹さんとは話せたか?』

「……ああ、お陰さまでな」

『それなら良かった。それで、本題に入るんだけど、今外に出られるか?』

「外……出られるけど、何かあるのか?」

『ふふ、まあな。とりあえず、外に出たら空を見てみろよ。きっと、驚く事が待ってるからさ。それじゃあな』

「あ、ああ……」

 

 そして、幸斗からの電話が切れると、雪羽は不思議そうに話しかけてきた。

 

「誰からだったの?」

「幸斗からで、なんでも驚く事があるから、外に出て空を見てみてくれって」

「空を……一体何があるのでしょうか?」

「わからない。でも、とりあえず出てみようぜ」

 

 その言葉に雪羽達が頷いた後、俺達は一度外に出て空を見上げた。すると、幸斗の言う通り、空にはとても驚く物があった。

 

「……え? 空を何かが動いてる……?」

「……あれ、もしかして……(そり)とトナカイ? それに、橇に誰か乗ってる……」

「橇とトナカイ……え、まさか……」

「私達が見ているのは、まさかサンタクロース……ですか?」

 

 そのサンタクロースらしき何かはトナカイと思われる動物が牽く橇に乗って雪が降る中を飛んでいき、やがて彼方へと飛んでいった。

 

「……なあ、今のって本物のサンタクロース……だったのかな?」

「わからない。でも、もしそうだとしたらすごい事だと思う……」

「そうですね……ですが、この件は少なくとも幸斗達以外には話せませんね」

「そうだね……話しても信じてもらえなそうだし……」

「だな……でも、最高のクリスマスプレゼントを貰った気分だな」

「うん、そうだね……私、今夜の事は絶対に忘れないと思う」

「……ああ、俺も」

「もちろん、私もです」

「私も」

 

 そんな事を言って笑い合った後、雪羽は俺を見ながらにこりと笑った。

 

「お兄ちゃん。改めてメリークリスマス」

「……ああ、メリークリスマス、雪羽」

 

 胸の奥から沸き上がってくる暖かい物を感じながらもう一度笑い合った後、俺達はクリスマスパーティーの後片付けをするために家の中へと戻っていった。

 

 

 

 

「……ん」

 

 窓から射し込んでくる朝日を感じ、俺は目を覚ました後、ゆっくりと身体を起こした。そして、相変わらずの冬の寒さを感じながら枕元の携帯に目を向けた。

 

「7時か……ふあ、せっかくの冬休みだし、もう少し寝てても──」

 

 その時、部屋のドアがとんとんとノックされ、俺は「どうぞ」と声をかけた。すると、ドアを押し開けて雪羽が入ってきた。

 

「お兄ちゃん、そろそろ起きないとお母さんに怒られるよ?」

「そうかもしれないけど……やっぱり寒いっていうか……」

「冬なんだから寒いのは当然でしょ。ほら、つべこべ言ってないで早く起きる」

「……わかったよ」

 

 そう言いながら俺はしぶしぶベッドから体を出した。あの日、雪羽はすっかり俺と仲良くする事への抵抗感を無くしたのか、その翌日から朝に起こしに来たり、俺が何かをやっていると何をしてるのかと訊きに来たりするようになった。

 

 まあ、前みたいに話せるようにはなったから、嬉しい事は嬉しいよな。

 

 そう思いながら俺が枕元に置いていた誕生石のペンダントを首に掛けると、それを見た雪羽の顔は嬉しそうな物に変わった。

 

「よく似合ってるよ、お兄ちゃん」

「ありがとう。お前だって、そのブレスレットよく似合ってるぞ?」

「ふふ、ありがとう。さあ、早く朝ご飯を食べて、義光達と遊びに行こう」

「……そうだな」

 

 また妹と仲良く話せるようになった事に嬉しさを感じながら返事をした後、俺はこんな毎日がいつまでも続いてほしいと思いながら部屋を出て、雪羽と色々な話をしながらリビングへ向けてあるきはじめた。




いかがでしたでしょうか。皆さん、様々なクリスマスを過ごされているかと思いますが、そんな中でも少しでも楽しんで頂けたら幸いです。
そして、今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので、書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。
それでは、また別の作品で。

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