転生したら、敬愛する上官の部下にまたなった件について。PS.上官は精神的に参ってヘラってるんだけど、相変わらず可愛い。 作:元ジャミトフの狗
ちょっとリハビリがてらの短編です。
硝煙と血潮の匂いが入り混じった戦場。けたたましく鳴り響くは銃声と剣戟の調べ。足元には夥しい数の亡骸が所せましと転がっている。
「これで100人」
刀剣から滴る血液を振り払う。既に部隊はほぼ壊滅しており、その指揮を任された俺も今や風前の灯火とでも言うべき有様だった。対する敵兵の数は、ざっと見渡しただけでも優に百は越えている。
「畜生、死にたくねぇ」
喧しく喚き散らす兵士の首を圧し折りながら呟く。
口では生に執着するような発言をするも、請け負った任務は死んでもその任を全うせねばならない。死ねと命じられて、命を張れない軍人なんぞ物の役にも立たないのだから。
任務の名は後備え、或いは
「ああ、でも」
殿とは、死亡率の高い役割である。理屈は単純だ。本隊を守るために、後方から攻め立てる敵を食い止めねばならないのだから。しかもそれでいて援軍は望めない。これぞ正に貧乏クジ、死は免れないだろう。
しかし、しかしだ。守る対象が己が敬愛する上官とくれば、やる気も幾分か上がるというものだ。少なくとも、このなけなしの命を捧げるに値する任務である。遠い昔、戦国の世で歴戦の武将たちが不遇な役目である殿を『誉』としたのにも納得する。
「これで200人」
迫りくる弾丸と砲弾の雨を弾く。向こう見ずに飛び掛かる兵士は叩き切る。体はとうに限界を通り越しているが、それでも五体は驚くほど快適に動いてくれる。こういうのを火事場の馬鹿力というのだろうか。
「――――っ!!」
殴って隙を作り、斬って殺す。土を蹴って躱し、返す刀でまた殺す。傍から見れば舞にすら見える作業を百も二百も繰り返す。だが殺せど殺せど数は減らない。
近接武器の欠点。どれだけ上手く立ち回ろうとも、刀で殺せる人数は限られている。戦いが長引けば刃が潰れて切れ味も鈍る。数百年も昔であれば爆撃機がすべてを灰にしてくれたのだろう。しかしこの時代では特異点を迎えた超技術によって、そうしたボタン戦争という形式が廃れてしまった。爆撃機よりも戦車、戦車よりも銃器、そして銃器よりも刀剣が戦を支配するのだ。
故に、数は暴力に成り得る。最新の
「―――この、化物がぁっ!!」
威勢よく銃を乱射する敵兵士。だがその次の瞬間には首を切断され、物言わぬ骸と化した。
殺人にも手慣れたものだ。と言うよりも、殺しの技術を磨かなければ生きていけないのが戦場である。残酷なようだが、殺される方が悪い。
とはいえ、いくら化け物と揶揄されようとも。ナノマシンや強化外骨格といったオーバーテクノロジーをどれだけ身に纏おうとも。この身はどうしようもなく人間である。だから死ぬときは割と呆気なく死んだりするのだ。
「……痛っ」
既に左腕は機能不全、ぴくりとも動かない。ちょっと気を緩めれば小鹿の様に足が震えるし、視界もどこか霞んでいるような気がする。有体に言えば、死に体だ。
だが後備えの責は全う出来たように思う。
無線によれば大尉率いる大隊は包囲網を突破したらしい。後は当初の作戦通り敵将を打ち取るだけだが、それも最早時間の問題である。となれば、俺がここで踏ん張る必要はない。さっさと退却するに限る。その筈なのだが―――
「死ね、死ねよ! この糞野郎がっ!!」
名も知らぬ兵士から罵声を浴びせられる。
戦場の狂気がそうさせるのか、周囲を見渡せばどいつもこいつも血走った眼つきをしていた。戦意は燃え上がる炎の様に昂るばかりで。ともすればどうあっても、俺を生かして帰す気はないようだ。
「はは、流石にやり過ぎたか」
敵兵も人の子である。仲間を殺されたら憤慨するし、仇討ちに燃える。ましてやその仇が瀕死の重体とくれば、そりゃあ無理を押してでも殺したいだろうさ。俺だってそうする。
「―――っと」
がくりと、膝が落ちそうになった。
一瞬の硬直。その隙が許されるほど、戦場は甘くはない。
凶弾が額に吸い込まれる。脳裏をよぎったのは、たった一人の女性である。
もし次があるのなら、その時は自分の想いを彼女に告げたい。自然とそう願っていた。
「―――いや、次なんて、
★
死を覚悟したが、前世みたく自覚はしていない。だから目が覚めるというごく普通の動作に、何ら疑問を持つことはなかった。ただあるがままを受け入れ、静かに瞼を開ける。
「……ん、ああ」
不意に額を触れた。何やら硬質のプレートが埋め込まれているようで、触り心地はあまり宜しくない。率直に言って異物感を覚える。
だがコレのお陰で死を免れたという事は分かる。意識が途切れる寸前に、頭から何かが飛び散っていた気がするし。だから俺がこうして生きているのは、奇跡という他ない。担当医にはどれだけ礼を尽くしても足りることはないだろう。
生を実感したところで鉛のように鈍重な身体を起こす。
すると小さな息遣いが聞こえた。はてとそちらに視線を移すと、彫刻かと見紛うほどの美人さんが足を組みながら就眠している。
ラウラレンティア・ゲッテンハイム。俺がこの世で最も敬愛する上官である。或いは意中の人とも言う。
「そうか、そうか」
ほうと安心のあまり息をつく。
彼女が生きていることに。そして、それは即ち作戦は成功したという事だろう。その証拠に――
「少佐、か」
肩の階級章を見やれば、彼女が昇進していることが分かった。なんなら真新しい勲章も身に着けている。過酷な激戦を潜り抜けた末に、英雄的な活躍を成した女兵士。メディア部門の連中が黙ってなさそうだ。
「……出世しなければ」
少佐の階級章を見ながら漠然と思う。上官が昇進して少佐となった。それは結構。喜ばしいことである。だがこれからも彼女の副官として活動するには、俺自身も相応の階級に身を置かねばならない。
なんせ今の俺は准尉、一介の士官候補生だ。さっさと士官過程を熟して尉官の階級を得なければ彼女に置いていかれてしまう。今更他の指揮官に下る気は毛頭ない。となれば昇進は割と急務だったりするのだが。
「―――なんだ、起きていたのか。良い夢は見れたか」
俺が将来の展望に思考を巡らしていると、いつの間にやら少佐は目覚めていた。俺が「はい」と頷くと彼女は「そうか」と言葉を漏らす。その表情は深い安堵の色を帯びていた。
「問題は」
「はい。お陰様で何も」
信じがたいことに、俺の身体は十全以上に動作する。腕も足も培養した代物を移植したのだろうが、まぁ動くのであれば何でもいい。今回ばかりは本社のハイテクに感謝感激である。
「生きてて良かった」
「互いに」
「何を言う。お前たちが守ってくれたんだ」
面と向かって言われるとこそばゆい気持ちになる。なんというか、生きてて良かったと思うし、命を張った甲斐もある。しかし―――
「私の部隊は」
「お前以外は全滅した」
「…そうですか」
意識が明確に残っていた時点で俺の部隊は壊滅していた。故に彼女の宣告も分かり切っていたし、先の問い掛けも単なる確認に過ぎない。殿を引き受けるとはそういう事だ。ただ分かっていても、心は濁る。
「お前には悪いが、告別式は既に終えている。すまないな」
「いいえ、少佐殿が謝るような事では」
俺は間髪入れずに言葉を返す。しかしそうなると疑問が残る。
「私は一体どの程度の期間眠っていたのですか?」
「まるまる一月だ。このお寝坊さんめ」
「これはとんだ失礼を」
茶化すような彼女の言葉に、思わず苦笑いを浮かべる。だがなるほど、己が身体がこれ以上なく愚鈍なるはそのような事情があったからか。
「――よくぞ、よくぞ生き抜いてくれた」
気づけば、少佐は目尻に涙をため込んでいた。その感極まった様子を見て、俺は少なからず面食らう。
「……今でも、私は思うのだ。もっと他に良い方法はなかったのかと。貴様らに死ねと命ずる以外に、何か別の選択肢があったのではないかと」
本当は言葉にするつもりなど無かったのだろう。しかし少佐は、ラウラレンティア・ゲッテンハイムは口にせざるを得なかった。後悔を、己の無力を。誰かの所為にすれば少しは楽になるだろうに、彼女にはそれが出来ない。
ああ、だから俺は彼女を愛おしく思うのだ。現実では合理性の塊の癖して、その本質は何処までも純粋で甘っちょろい。まったくもっていじらしい。
「あの地獄の様な状況において少佐殿は最適な指揮を執られたと、小官は愚考します」
だが、そもそもな話だ。我々が無数の敵部隊に囲まれたのは、諜報部の過失に端を発する。敵部隊数、布陣、兵装。事前に知らされた何もかもが誤りだった。もはや敵に対する幇助を疑うレベルの仕事ぶりに、怒りを通り越して呆れを覚えた記憶がある。
そんな最中にあって、少佐は俺たちを切り捨てることで作戦を成功させた。果たしてそれを悪と断じる事が出来るだろうか。
「合理を突き詰めれば、幾許かの犠牲は必然的でした。そして兵の仕事は命を懸けて作戦を遂行することです。故に貴女は、そして我々は立派に自らの職務を成し遂げた。私はその事を甚く誇りに思います」
心の底からそう思う。戦場は狂気に満ちている。誰もが死ぬ可能性を孕み、それ故に文字通り必死の覚悟を持って殺し合う。
裏を返せば、戦場は純粋と言える。そして生き残った者は死者を弔う事が許されるのだ。誰かの意志を受け継ぎ、誰かの未練を代わりに履行することが出来る。
「後悔も、己が無力も、口にすることは決して罪ではありません。ただ我々大人はそれらを呑みこみ、糧としなければならない。分かりますね」
問いかけると、少佐は「分かっている」と頷く。軍帽を深く被り直したから、彼女の表情は窺い知れない。だが想像はつく。
なんだか懐かしい心持になる。いつの日か、彼女がまだ新米の少尉だった頃の話だ。ちょっと腕が立つからと、中々に生意気だった彼女を兵士の先達として何度諭したことか。今でこそ立派な指揮官だが、昔はかなりのやんちゃ坊主だったのである。女性を坊主呼ばわりするのも失礼な話だが、そうとしか表現できないので良しとする。
「……昔を思い出した」
「はい。私もです」
「フタジ、お前にはいつも世話をかけるな」
「貴女のためならいくらでも」
軽口のつもりで、しかし本心からの言葉を贈る。すると彼女は途端に顔を赤らめる。
「そう、か。それは、なんだか、嬉しいな。うん、すごく」
その笑顔が何よりも尊く見えた。
やはり俺は少佐の事が心底好きなのだと、改めて思った。だって死の間際で思い浮かんだのは、彼女の顔だった。あろうことか告白すればよかっただなんて、そんな小さい未練を抱えたまま死にかけたのである。
「少佐殿、結婚を前提にお付き合い願います」
故に、そのような世迷言を口にする。してしまった。
もはや無意識の域だった。ただ胸の内にあるのは、もう二度と後悔をしたくないというただその一心のみ。こうして生きて再開してしまったら、自らの欲求を発露しない訳にはいかなかった。
「――え?」
当惑する少佐。無理もない。俺も頭がおかしくなっている。勢いだけでこんな告白をしている。恥を知れ、この愚図が。
「も、申し訳ありません。今のは――」
「うるさい」
がばりと、強い衝撃が腹部に走る。
「馬鹿者、小娘を勘違いさせて楽しいか」
その返答はあまりにも予想外だった。勢い任せの吐露によって、どうしようもない程の責任が生まれてしまったのだ。故に、もう引き返せないのだと悟る。
「勘違いなどではありません。決して」
「そうだな。お前はよく冗句を言うが、人を傷つける冗談は絶対口にしない。そうだろう?」
俺も彼女もどんな顔をしているのか分からない。少佐は俺の胸に顔を埋めて、そのままだ。俺の胸は馬鹿みたいに早鐘を打ちまくっている。だから、少し恥ずかしい。
「もう一度、言ってくれないか」
ラウラレンティアは言う。最後通告、或いは逃がさないという意志を感じた。
「勿体ぶった言い回しはできかねます。故に手短に」
「かまわん」
「好きです。愛しています。結婚してください」
「はう」
何やら可愛らしい鳴き声が聞こえた。だからという訳ではないが、俺は彼女の頭をさながら猫にそうする様に撫でる。
「返事は如何に」
「む、この期に及んで断ると思うのか」
「可能性としてはあり得るかと」
「意地悪」
口を尖らせ、頬を膨らませる事の何と愛らしい事か。彼女が元から有する凛々しい顔つきが、
「これは失敬。それで?」
返事を催促すると、恨めしい目つきのまま彼女は体を起こす。そしてこちらに吸い寄せられるように、その端正な顔を近づけて―――
「これが答えだ。満足か?」
初々しい口づけ。たった一度の小さなキス。羞恥で朱色に染まった頬。それが彼女に出来る精一杯だと理解できるから、どうしようもない程の幸福で満たされる。
「はい。本当に、幸せです。少佐殿は――」
「プライベートでは相応の呼び方がある筈だ」
先の仕返しと言わんばかりの様子で告げる。実際、俺に対する報復としてはこれ以上ないくらい効果的だった。
なにせ、今更階級以外で呼びかける事に抵抗を感じる。それこそ名前でなんて。暫しの思考の後、己の導き出した結論はなんとも情けない代物だった。
「……ラウラ、レンティアさん」
「なぜ敬語になる。お前の方が年上だろうに」
「僅かに、羞恥が勝ります」
「どうだか。つい数年前は随分な呼び方をしてくれたじゃないか」
一体いつの話か。確かに彼女が新任少尉だった頃に、俺は指導役として相応の仕事をしてきた。具体的に言えば「糞餓鬼」だの「阿婆擦れ」だのと。およそ妙齢の女性、しかも上官を呼ばわるにはあまりにも不適格な呼称だった。しかし同時にそれは現場で叩き上げられた軍人としての責務、指導官としての役割を果たすためでもあった。
だから、うん。そういう意味で言えば、後悔はなくとも後ろめたさはある。当時は何度「あ、これは嫌われたな」と思った事か。
「……すまない、冗談が過ぎた」
「しかし」
「聞け。昔は多少なりとも憎らしく思っていたが、今はこれでも感謝しているんだ。未熟だった私を見捨てず限界まで扱き、最後まで面倒を見てくれたお前がどれだけ得難い部下だったか。今なら分かる」
望外な評価だった。そして彼女が指揮官として、人間として成熟した傑物になったのだと今更ながら理解する。その事実が嬉しい反面、一抹の寂しさを覚えた事に驚く。心境としては、巣立つする子を見送る肉親とでもいえば良いのだろうか。
「そんな顔をしてくれるな。抑えが効かなくなる」
慈愛に満ちた表情。しかし頬を撫でる手つきが妙に淫らだ。つい先程まで、接吻の一つで頬を染めていた者とは思えない程に。
「キスの一つが限度だった生娘が良く言いますね」
「構わんぞ」
何が、とは聞かなかった。ただ俺が墓穴を掘ったのだという事は分かる。
「お前のためなら私は何だってしてやれる」
何かが変わった。彼女の纏う雰囲気が、もしくはその大きく見開かれた目つきが。まるで何かの病を患ったかのように、少佐を取り巻く空気が重くなる。
「この想いは、本当は墓場まで持っていくつもりだった。だって相手にされないと思った。それこそお前にとって私は単なる小娘に過ぎないんだと、お前に相応しい人間は私ではないんだと。そう思っていた。思い込んでいた」
春を謳う鳥の様に、万感の想いを吐露する。
「あはは、でも違った。お前はこの甲斐のない、人殺ししか能のない女を好いてくれた。それが本当に、たまらなく嬉しい。この争いの絶えない血みどろ世界で、こんなにも尊い感情があるのだと。ならもう、自分の気持ちを偽る必要がないじゃないか。うん、だからね。私はお前のためなら何だって出来る。ふふ、違うな、何でもしてあげたいんだ。だって私の身体も心も、ぜんぶお前だけのものになったのだから。そうだ、フタジ、お前が望むので有ればキス以上の事だって――」
眼前の女性はひたすらに言葉を紡ぐ。それは究極の奉仕とも言うべき宣言であり、また幼児が両親と逸れた時の様な必死さがあった。
元々、彼女は精神が決して強い部類の人間ではなかった。正確に表現すると、ストレスの発散が少々不得手であった。故に休暇中に酒を酌み交わす事で己が愚痴の聞き手となり、自惚れでなければ彼女の心労の捌け口を引き受けていた。多分、今まではそれで十分だったのだと思う。
しかし遂に限界が訪れた。言いようのない焦燥感が彼女を蝕む。その原因を、当事者たる俺はほんの少しだけ理解できる。
「ああ、これはすまない。どうも興奮してしまったらしい」
我に返ったのか、それとも一頻り言葉を紡げて満足したのだろうか。どちらでもいい。俺のすべきことに変わりはない。
「謝罪の必要はありません。寧ろ、謝るべきなのは私の方でしょう」
顔に疑問符を張り付ける少佐、やはり愛らしい。だが、純粋だからこそ思いつめる。そして彼女を追い詰めたのは、他でもない俺が為した不徳によるものだろう。
「貴女の想いに気づけなかった己の愚鈍をお許しください。しかし、その上で一つ忠言が」
「……何だ」
「何も与えるだけが愛ではありません。私も貴女と同じように、自らを捧げたいのです。だからそうですね。俺にしてほしい事、実はあったりしませんか?」
恋はするもの。愛は与えるもの。前世において、母は俺にそう説いた。
だがそれは少々不公平だ。恋をしたのであれば、相手にもしてもらいたい。愛を与えたのであれば、相手からの愛を期待したい。そう思う事は果たして間違いか。道理の話をするのであれば、母の言葉はこの上なく正しい。
しかし人間の心情というモノはままならないのだ。
「……ラウラと、呼んでほしい」
戸惑いがちに彼女は、ラウラは告げる。そういえば、この話が拗れ始めたのは名前の呼び方からだったか。
「はい、ではこれからはラウラと。もちろん私的な時間でのみに限りますが」
「構わない。あとは、抱きしめてほしい」
「はい、苦しくありませんか」
「もっと強く」
ラウラの要求に、一つ一つ丁寧に応える。華奢な様に見えて筋肉質な身体を、要望通りに強く抱擁する。その拍子で、彼女の軍帽が床に落ちた。これで彼女の顔がよく見える。
「俺からも、一ついいですか」
「なんだ。なんでも言ってくれ」
「キスしましょう」
また君の顔が朱色に染まった。感情を言葉で表現することは難しいが、表情は感情を雄弁に語る。だからホッとする。少なくとも悪感情を抱いていない事だけは分かるから。
「目、閉じろ」
「いやです」
「バカ」
二人は幸せなキスをしてハッピーエンド。それは死がふたりを分かつまで続くだろう。だから、これこそがとある俺たちの幸福な結末だった。
という事で、今回の話は1話で生きることを諦めなかった主人公のIFルートでした。