ガールズバンドに青春を捧げる少女達は平穏な日常を謳歌していた。
しかし、そんな彼女達に忍び寄る魔の手が……。

そう! 時は来た!

集いしバンドは7組!

生き残れるバンドは1組!

勝ち残れば、オーナーの写真集が手に入る。


注)ガルパピコです

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羽丘女子学園 生徒会本部役員

羽丘女子学園 生徒会室

今日も今日とて、生徒会長と副会長はは書類仕事をしていた。

 

「ねぇ、つぐちゃん、なんか、るんっとすることやってよ。」

 

生徒会長の氷川日菜は言った。

彼女は今をときめく(かは微妙だが)アイドルバンドPastel✽Palettesのギター担当である。アイドルと生徒会長の両方をこなすのは本来難しい事なのだが、この少女は平然とこなす。言ってしまえば天才少女だ。

現にソシャゲをしながら副会長の3倍以上の速度で書類仕事をしている。

 

「え?嫌ですけど。」

 

会長の無茶振りをされたのは副会長、羽沢つぐみである。

彼女は幼馴染5人で組んだガールズバンドAfterglowのキーボード担当である。大いなる普通とも呼ばれるほど、(周囲の個性が強すぎるだけだが)特徴の薄い普通の少女である。

しかし、天才であるため良い意味でも悪い意味でも型にハマらず周囲を置き去りちする日菜に着いて行き、彼女のサポートをこなすことができる数少ない人だ。

 

「つ、つぐちゃんが不良になっちゃった! 生徒会に入りたての時はもっと素直だったのに!」

 

「……不良になんてなってませんよ。慣れただけだす。それに、ふざけてたら、これ、今日中に終わりませんから……。くじ引き作り」

 

数日前、日菜の提案で、なにか競技会的な事を行おう、という企画が立ち上がったのだ。競技会的な、というふわふわした内容だが、元々は体育祭や球技大会が身体的な競技なら、頭脳的なものを競う大会があってもいいんじゃないか? という考えから来たものだ。

はじめは囲碁、将棋、チェス、百人一首などを行うことになっていたが、日菜が種目はくじ引きで決めると言い出したのだ。

生徒一人ひとりから希望を募り、その中からランダムで決める。

ランダム競技会である。

 

「各クラス1つずつに、絞って貰えば良かったかなぁ」

 

つぐみは、アンケートに書かれた内容が学校で行っても問題ないかを確認して、くじ引き用の用紙に転写していく。

せめて、くじ引きの用紙に書いて貰えば良かった、と、今になって後悔する。

 

「でも、それだとるんってしないと思うんだよね。ほら、クラスで決めるとどうしても真面目な種目になると思うんだよねー。ほら、こういうのは無かったと思わない?」

 

そう言って日菜のみせるアンケート用紙には"チェスボクシング"と書かれていた。チェスとボクシングを交互に行うという謎の競技だが、確かにクラスで決めたらボツになる。

しかし、当初の頭脳的な競技会の要素が半分しかない。

 

「はは、確かにそうですね。でも、ボクシングって怪我人が出ません?」

 

「んー。そこは、ツグってどうにかならない?」

 

「ツグるの意味、違ってきてません?」

 

ツグるとは、Afterglowのメンバー内で"頑張る"ときう意味で使われていた言葉だ。つぐみが頑張っている様子から来ているのだが、最近ではよく分からない使い方をされている。

 

「でも、風船とか体に付けて割ったら負け、とかにしたら楽しそうですね。」

 

この案はつぐみ自身も結構良い考えな気がした。

 

「あ、それるんって来た! ねぇ、つぐちゃん。これからみんな呼んでやろうよ! ガルパ的に5人だよね!」

 

「やりまん! 明日はバラエティの収録があるんですよね? わけわからないこと言ってないで、お願いですから手を動かしてください。」

 

「最近のつぐちゃんが冷たい……。」

 

その言葉を無視してつぐみは作業を続けた。その様子に観念したのか日菜はソシャゲをアンインストールして作業に戻った。

 

「日菜先輩。麻雀、ポーカー、ブラックジャック。この辺はアウトですよね。」

 

「さすがに賭け事に繋がる系はまずいからね。ドンジャラならアリだとは思うけど……。花札は保留にして後で先生に聞いといて」

 

「はい、分かりました。」

 

何気にこれでいて仕事ができるのが氷川日菜という少女である。その後もなんだかんだでつぐみに的確な指示を出しながら作業をしていく。

 

「んー。つぐちゃん。るんってするBGMかけてよ。なんか、飽きてきた。」

 

「え? るんってする……。なら、ハロハピの曲なんてどうですか? 元気もらえると思いますよ。」

 

つぐみは学校の備品であるCDプレイヤーにスマホを繋げながら言った。

 

「良いね! じゃあ、えがおのオーケストラで」

 

日菜の指示に従い音楽をかけようとした瞬間、ダッダッダッと激しい足音が廊下から響き、ガラッと扉が開いた。

 

「会長! 助けてください!! 綾子が! 綾子が殺されちゃう!」

 

1人の少女が部屋に飛び込んできた。

少女はかなりテンパっているようで、綾子という女子生徒が殺されてしまう、と、言っているだけだ。

その様子につぐみと日菜は目を合わせた。

 

 

 

 

日菜とつぐみは住宅地から離れた、家も通行人もいない倉庫街を走っていた。ここは倉庫街と言っても、完全に廃墟に近いため不良の溜まり場となっている。そのため、日菜達も含め大体の人たちはあまり近づかないようにしている場所だ。

 

「奈々美ちゃんの話によると、あそこの倉庫街にいるようです。」

 

奈々美とは生徒会室に飛び込んできた少女のことだ。彼女は他校の生徒に連れ去られた友人、綾子を助けて欲しいと生徒会に飛び込んできたのだ。

その綾子というのがクセ者で、喧嘩っ早く、以前、奈々美がカツアゲされている現場を目撃した際に相手を全員ボコボコにしてしまったそうだ。それが原因で過剰防衛として警察沙汰に、元々素行の悪い生徒だったこともあり停学処分となってしまった。

綾子もやりすぎだが、事情も事情なのだから学校側の対応としてどうなのだろうか、というのもあるがこの物語とは関係ないため割愛とする。

しかし、本日、カツアゲの時にボコボコにされた生徒が仲間を連れて綾子を連れて行ってしまったそうだ。

本来なら、警察や教師に連絡すべきなのだが、停学中に事件なんて起こしてしまったら今度こそ退学になってしまう。それ防ぐ為に教師ではなく会長とはいえ一生徒である日菜を頼ったという。

 

「いた……。つぐちゃん、隠れるよ」

 

倉庫街を進むと、バットやメリケンサックなどの武器を持ち黒いセーラー服を着た数十人の女子高生がジャージ姿の少女を囲っていた。スマホで奈々美から貰った写真と見比べると、ジャージの少女が綾子だと分かる。

 

「はっ! そんなもんなのか? こちとらまだまだ余裕だぞ!」

 

綾子は全身の至る所から血を流し、ふらふらになりながら吠える。周囲には気絶した黒いセーラー服の少女が数人倒れており、彼女がこの人数相手に奮闘していたことが伺えられるが、それでも限界に来ているのだろう。

 

「行こう。つぐちゃん」

 

バレないように声をひそめながら日菜は言うとつぐみは頷いた。

 

「ですね。けど、生徒会が暴力というのは……。それに、日菜先輩の場合、芸能人ですから……。私1人で……。」

 

「んー。ガルパじゃまずないガチの喧嘩だもんね。バレたら千智ちゃんに怒られちゃうよね。ばったら、これだよ。」

 

「また、分からないことを……。って、コレは?」

 

日菜が手に持っていた小さなバックから取り出した物を見てつぐみは微妙な表情となった。

 

 

今にも倒れそうな綾子を見下す様に見ながら、黒いセイラー服の女子高生の1人がニヤリと笑った。

 

「ハハ、脱げ、そして土下座しろ。それなら手を引いてやる」

 

その言葉に他のセイラー服の女子高生たちはクスクスと馬鹿にする様に笑う。しかし、綾子はそんな様子にクククと笑った後、「ぺっ」と口に溜まった血を吐き出した。

 

「誰が土下座なんてするか、ハッ!くだらねぇ、カツアゲなんてする野郎に土下座なんてしねぇ!」

 

「野郎じゃねぇよ。じゃあ、死ね」

 

1人の女子高生が手をあげると、女子高生達は一斉にゆっくりと綾子に向けて歩きだした。それぞれ、釘バットやメリケンサック、バールなどの武器を持っている。普通に考えて、絶体絶命。

負け確定だ。

 

「ハハ、面白えぇ」

 

綾子はそう笑うと拳を握った。

 

その時、

 

「そこまでだ!!!」

 

静止する声が倉庫街に響いた。

黒いセイラー服の女子高生達も、綾子もその突然の声に動きを止めそちらを見た。

そこには、虎をモチーフにした覆面をかぶった少女と、ウサギをモチーフにした覆面をかぶった少女がいた。どちらも羽丘の制服を着ており、スカートの色から虎が3年生、ウサギが2年生だと分かる。

 

「あ? なんだ? ふざけてんのか?今は取り込み中なんだよ。どっかいきな」

 

リーダ格の少女は気怠げに手を振るが、その言葉を無視して虎の覆面の少女は指を指す。

 

「大勢で1人を囲むなんて卑怯者め!そんな行為、私たちが許さない! あたしは虎の力を宿す戦士、タイガーマスク!」

 

そう言いながら、人気(かどうかは分からないが)アイドル丸山彩の様なポーズをとった。そして、それに続いてウサギの覆面を被った少女が続ける。

 

「わ、私は、ら、ラビットマスク!」

 

「2人揃って!」

 

「「タイガーアンドバニー!!」」

 

その瞬間、周囲に沈黙が流れた。

誰も彼女らのことを知らなかったのだ。

しかし、リーダー格の少女は知っていた!

この街周辺、具体的には羽丘女子学園の最寄駅から2駅以内に時々出没する謎のヒーローの存在を知っていたのだ!

 

「き、貴様……。まさか! 噂じゃなかったのか! やれ! コイツは後だ! おかしな覆面から片付けろ!」

 

その叫びを聞いて女子高生は一瞬戸惑ったが、一斉に覆面の2人に飛びかかる。その状態で虎の覆面の少女はわざとらしく腕を組みながら一歩出る。

 

「死ねぇぇ!!」

 

虎の覆面の少女に釘バットが襲う。他にもバールやメリケンサックなど凶悪な武器が次々と襲い掛かる。誰もが次の瞬間、彼女がボロボロになるだろうと予測した。

 

だが!

 

(るんってする場所は……)

 

虎の覆面の少女、いや、氷川日菜は冷静だった。冷静に、それでいて直感的に、周囲の状況を一瞬にして把握する。

そして、一歩、釘バットを振るう少女の懐へと飛び込む。そこから、バットの持ち手を両手で掴み、捻り、引っ張り、ドンッと激しい踏み込みと共に右端で鳩尾へと一撃を加え数メートル吹き飛ばした。

合気道の"剣取り"と八極拳の"震脚"の組み合わせだ。

この一連の動作は全て一瞬で終わらせたため、周囲には唐突に衝撃音と共にバットを持っていた少女が吹き飛び、日菜の手に釘バットが出現した様に見えた。

 

「チェぇええ!ストぉおおおお!!」

 

一閃。一瞬。

瞬く間に日菜を周囲にいた敵は居なくなった。

 

「え?」

 

日菜から少し離れたところにいた少女達は理解が追いつかなかった。

たとえアスリート相手でも()()()()()()()で囲めば一撃くらいは当てられそうなものだ。しかし、一撃も与えられず、それどころか数メートル、数十メートルと、こちらはギャグ漫画のように吹き飛ばされる。

まるで、理解できない。 

 

いや、理解出来るわけがない!

 

氷川日菜は天才なのだ!

 

幼い頃、日菜は姉である紗夜と共にさまざまな習い事を転々としていた。

理由は紗夜は努力家で負けず嫌いだったため、どの習い事でも一生懸命に頑張ったが、日菜はそんな努力をお構いなしに、持ち前の才能だけで紗夜を追い越した。その事実が怖く、紗夜は習い事を変え、今度こそは、と意気込むが、日菜は(慕うがゆえに)紗夜の真似をして同じ習い事をはじめて紗夜を追い抜いた。その繰り返しがあったからだ。

 

しかし、この期間に恐ろしいことが起きていた。 

 

日菜は習い事の講師、師範の実力を超えてしまっていたのだ!

 

柔道、空手、合気道、古武術、古流剣術、オセロ、将棋、囲碁、英会話、水泳、etc(エトセトラ).……。

 

日菜は転々としてきた習い事、およそ全てでトップクラスの実力を身につけている!

そんな規格外に勝てるわけがない!

 

「クソ! あっちだ、あっちのウサギを殺れ!」

 

その叫び声に従い、数名の女子生徒がウサギの覆面……、いや、羽沢つぐみへと襲いかかる。彼女は慌てて構え、そして、普通に倒した。

 

そう、つぐみは!

 

普通に強いのだ!

 

「これで終わりだね。」

 

「はぁ、はぁ。お、終わった……。」

 

全ての敵を倒した日菜はホッとしたように息をついた。つぐみは息絶え絶えにだ。そんな様子に日菜はつぐみの背中をさすりながら座り込んでしまっている綾子に話しかけた。

 

「大丈夫? 助けにきたよ。」

 

「た、助けに? あんた達はなんなんだ? 見たところアタシと同じ羽丘みたいだけど」

 

「は、はい。奈々美ちゃんから頼まれまして、」

 

つぐみがそういうと、綾子は首を傾げた。

 

「奈々美? 誰だそれは……」

 

「え? 友だちじゃないの? ほら、停学になる原因になったカツアゲで助けた羽丘の生徒だよ。」

 

日菜のその言葉に綾子はさらに難しい顔をした。

 

「何言ってる。アタシが助けたのは、月ノ森の生徒だ。えっと、なんだっけ? 最近ネットで有名な……。モロヘイア?みたいなバンドでボーカルやってる真っ白?みたいな名前のやつだ。」

 

「あ、Morfonicaの倉田ましろちゃん?」

 

「あ、そう、そいつだ。」

 

つぐみはそう助け船を出すと、綾子は激しく同意した。その様子に嘘をついているようには見えない。ならば、奈々美とは何者なのだろうか?

しかし、その答えは分からなかった。

 

 

「やっぱり、彼女達も能力者(ピコ)だった。」

 

日菜達の様子を倉庫の屋根から眺めている少女がいた。何を隠そう日菜達に助けを求めた奈々美だ。

彼女は楽しげにニヤリと笑った。

 

 

 

 

 




次回、ポピパレンジャー

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