白兎が精霊に愛されているのは間違っているだろうか? 作:謎の人でなしZ
今回あのサポーターが登場します!
では、どうぞ!
ここはダンジョン7階層。僕ベル・クラネルは今日もいつも通りダンジョンに潜っていた。【豊穣の女主人】での事件冒険者の間で噂になっていた。詳しい所までは広まっていないようだったがこれはしばらく続きそうだ
ちなみに僕がダンジョンに潜るとき、ギルドでエイナさんにその噂について問い詰められたがうまく誤魔化した。神様に言うなと強く言われていたので
そんなこんなでダンジョンに来ているわけだが、少し前から僕だけではなく精霊たちもモンスターと戦うようになったのだ。なぜかというと、ずっと僕の中で見ているのは暇すぎるということで、ローテーション制で戦うことになったのだ。昨日はルナとリディヤだったが、今日はユキとティナである。現在は二人でキラーアントという蟻型のモンスターの群れを殲滅している
キラーアントは早く止めを刺さないと特殊な奇声を上げ仲間を大量に呼び寄せる。なので必ず一匹も残さず倒すことが冒険者の中で鉄則になっている。しかし彼女たちはわざと一匹を残し仲間を呼ばせ、皆殺しにし、また一匹を残し仲間を呼ばせるという悪魔も泣いて逃げ出すようなループを繰り返しているのだ
時には黒雷で焼き尽くされ、時には水の中に閉じ込めた後、凍らせ粉々に砕かれる。彼女たちの笑顔と笑い声はキラーアントたちにとって恐怖以外の何物でもないだろう。
そんな時間がしばらく続き階層内の全てのキラーアントがいなくなったのかもう出てこなくなった。残るのはおびただしい程の量の魔石だけである
ユキとティナはまだ暴れたりないといった表情でベルのもとに戻ってくる
「え~これで終わり~?まだまだ遊びたいよ~~~!」
「……中々に楽しかった。けどすぐに全滅してつまらなかった」
そんな彼女たちに苦笑いを浮かべながらベルは彼女たちの頭を撫でる
「まぁ、これ以上はさすがに他の冒険者の皆さんに迷惑がかかると思うし、今日はこれで帰ろう?」
「む~~お兄ちゃんがそう言うなら……」
「……私はまだ満足できてない。ちょっとゴライアスをサクッと殺ってくる」
「待ってユキ!?それはさすがにダメだよ!それに2日前に倒したから行っても会えないよ!?」
歩いていこうとするユキをベルは必死に止める。ゴライアスとは17階層【嘆きの大壁】にいる階層主だ。階層主は他のモンスターよりも格段に強く、本来なら冒険者たちが総出になって討伐するモンスターだ
しかし2日前、リンネとルナが17階層まで生きゴライアスを倒してきたのだ。動機はベルに褒めてほしかったかららしい。どうやって倒したのかを聞くとリンネの風で動きを止め、ルナが周りの地形を操作して串刺しにしたそうだ。運よく冒険者たちには見つからなかったが、見つかったら大騒ぎだ
その後、僕たちは魔石を集め地上に帰還しようとした。しかし帰り道の途中で誰かが言い争っている声が聞こえた。気になり声のした方に行ってみるとそこには一人のサポーターの少女と複数の冒険者がキラーアントの群れに襲われていた。ユキとティナが全滅させたのかと思ったがまだ残っていたらしい
もはや周りを囲まれていて逃げ道はない。助けに向かおうとした瞬間、僕の目にあり得ない光景が映る。
冒険者の一人がサポータの少女を蹴り飛ばし囮にしたのだ。蹴り飛ばされた少女はキラーアントの群れの前に躍り出る形になり、キラーアントたちの意識が少女に向く
その間に冒険者たちは逃げ去っていく。仲間であるサポータの少女を置き去りにして。僕は初めなにが起こったのか理解できなかった。サポータとは文字通り、冒険者のサポートをしてくれる者たちだ。手に入れた魔石や回復用のポーション、替えの武器等を代わりに持ってくれたり、モンスターの情報や弱点を教えてくれたりと様々な面で冒険者を支えてくれる。冒険者の一番の相棒といっても過言ではない
しかし彼らはそんな少女を囮にして逃げ去った。僕はそんな彼らに怒りを抱いた。それこそ今までにない程の。ユキとティナ、そして他の精霊たちからも怒りの感情が伝わってくる。だが今は少女を助けることが先だ。まだ襲い掛かってはいないが時間はないだろう。僕はユキとティナと一緒に少女のもとに向かった
ーーーー
(ああ・・・・・また同じことの繰り返し・・・です・・・か・・・どうして・・・どうして、リリはこんなめにあわなければいけないのですか)
リリルカ・アーデという少女は両親が【ソーマ・ファミリア】だった。なので必然的に入団させられている。リリは【ソーマ・ファミリア】を退団したかった。しかし退団には多額の金が必要なのだ。だからリリルカ・アーデは、毎回冒険者から盗みを働いている。それを抜きにしてもリリルカ・アーデは優秀なサポーターであった。他のサポーターよりも魔石を集めるのは早かったし、多くの荷物を持ち、モンスターに関する知識も豊富であった
しかし、冒険者たちはそんな彼女を知らない。むしろそれが当たり前だと思っている。なのでサポーターだからという理由で分け前を減らされることが常であった。このように囮にされたことも一度や二度ではない。そんな状況から彼女はいつもボロボロになりながら生還していた。誰も助けてくれず、たった一人で
リリルカ・アーデは冒険者が嫌いだ。自分勝手で下のものを見下し自分のためなら平気で他人を見捨てる冒険者なんていなくなってしまえばいい。けど、そんな日々ももう終わる。周りのモンスターはあと数秒後には自分を殺すだろう
(ああ、やっと死ねる。この地獄のような毎日を過ごさなくてすむんだ。清々する)
リリは心の内でそうつぶやく。やっと終われるのだと。無価値な自分の人生がもうすぐ終わるのだと。目を腕で覆い乾いた笑いをこぼす。もうすぐ訪れるであろう死を待ちながら最後に彼女は思った
(結局、誰もリリの手を取ってくれなかった・・・な・・・・)
誰も自分を必要としてくれなかった。道具としてしか見てくれなかった。誰もリリ自身を見ようとしなかった。助けてくれる人物がいなかった
しかし、だがしかし、これで終わってしまうならば願ってもいいのだろうか?ずっと昔から諦めていた助けを求めてもいいのだろうか?もしもそれが叶うのなら・・・・
彼女の頬を一筋の涙が伝う。求めても助けなど来はしないのに、最後に求めてしまったのだ
「たす・・・け・・・・て・・・・・・・」
「もちろん。任せて」
リリの耳にそんな声が届く。それと同時には優しく、温かい感触に包まれる。リリは驚き目を開けると、そこには白い髪に紅い目をした少年の顔があった。少年――ベルは襲われそうになっていたリリを寸前で救出した。いわゆるお姫様抱っこというもので。現在はキラーアントの群れの上空をジャンプで移動している
リリは混乱していた。自分が助けを求めたら耳元で優しい声が聞こえ、次の瞬間には抱き上げられ浮遊感を感じたのだ。そして目の前にはまるで、兎のような知らない少年の顔である。リリはそんな少年の顔を信じられないものを見るような目で見つめる
そんなリリの視線に気づいたのか、ベルは安心させるような笑顔でリリに語り掛ける
「大丈夫?ひどいケガはないみたいだけど・・・」
「あ・・・あ・・なた・・・は?」
「あ!僕の名前はベル・クラネル。冒険者だよ」
ベルはキラーアントの群れから離れた場所に着地しながらリリに答える。しかし、ベルの『冒険者』という言葉を聞きリリの顔は険しいものに変わる
「・・・なんで、リリを助けたんですか」
「え?」
リリを下したベルは、リリからそんな質問を聞かれた
「リリとベル様は赤の他人のはずです。そして初対面のはずです。そうですよね?」
「えーと、うん」
「ではなぜリリを助けたんですか!他人なら助けなくてもいいでしょ!?」
リリはベルにそう叫ぶ
(どうせこの人も同じです。他の人と一緒にリリを利用するだけ利用して捨てるに違いありません)
心の中でそう諦めながら
そんなリリにベルは・・・・・
「え?人を助けるのに理由が必要なの??」
「は?」
心底不思議そうに答える。リリはそんなベルの言葉に絶句している
「いや、助けるのに理由なんて必要ないいんじゃないかな?それに他人だから助けちゃいけないなんてルールも聞いたことないし」
「な、何を言って・・・」
リリはベルの言葉を理解できなかった。ではなぜ目の前の少年は自分を助けてくれたのか?
「で、ではなぜリリを助けたのですか!?」
「助けて、って聞こえたから」
「!!?」
リリの絶叫にベルは即答する。リリはベルの言葉に身体を震わせる
「僕はリリの助ける声が聞こえた。それだけで十分だよ。リリを助けるには」
リリは涙を流した。そんな優しい言葉は生まれてからかけられたことがなかったから
リリは涙を流しながらもベルに反論しようとする
「ヒック・・・あ、あなたに・・・グスッ・・・・リリ・・・の、な・・・・エグッ・・・なにが・・・・わか・・・るって・・・・・」
「うん、僕はリリになにがあったのかなんて分からない。リリが一体何を背負って何に苦しんでいるのかなんて・・・・・けど僕はそれでもリリを助けたかったんだ。だから教えてくれないかな?リリのこと。そしてリリが何を背負って何に苦しんでいるのかを、さ。頼りないかもしれないけどこう見えて僕結構強いんだよ?」
リリの顔はもう涙でぐちゃぐちゃになっている。しかしベルはリリと目を合わせながら笑顔で語り続ける
「だから僕を頼ってくれないかな?僕一人だけじゃない。僕の仲間たちも君のことを助けたいって思ってる。リリ、僕たちに君を救わせてくれないかな?絶対に力になるよ」
それがリリの限界だった
「う、うわああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!!!!!!」
リリは泣きながらベルに抱き着いた。そして塞ぎこんでいたものを吐き出すようにベルの肩で泣き続けた。ベルはそんな彼女を抱きしめ、背中をさすりながら頭を撫でた。その温かさにリリはまた涙が出てきた
7階層には少女の泣き声が木霊していた。しかしそれは決して悲しみの涙ではない。ずっと望んでいた、自分を救ってくれる人に出会えた、歓喜の涙である
しばらくしてリリは泣き止んだ。ベルの肩は涙と鼻水でぐちゃぐちゃだがこれで彼女が安心してくれたのなら安いものだ。すると、ちょうどキラーアントの群れの殲滅が終わったのかユキとティナが戻ってくる。
リリは驚きベルの背中の後ろに隠れたが、ベルの仲間と紹介すると緊張気味に自己紹介をしていた
その後はリリと一緒に地上に帰還した。地上に戻るまでの間にリリは自分に関する全てを話してくれた。自分にはお金が必要だったこと。お金のために盗みもやっていたこと。そして【ソーマ・ファミリア】のことも。それを聞き僕も精霊たちも激しい怒りに襲われた。こんな少女をここまで追い詰めるなんて到底許せるものではなかった。確かにリリは盗みをした。しかしその原因はほかならぬ【ソーマ・ファミリア】である
地上に戻りギルドで魔石の換金をおこなった後、リリと【ヘスティア・ファミリア】の
しかし、問題は残っている。どうやってリリの退団金を用意するか、である。リリ自身もずっと溜め続けてきたがそれでも目標の3割程度らしい。どうするかと頭を悩ませていると・・・・
『あ!お兄さん私いいこと思いついた!!』
ルナがベルの中で大声を上げる。ベルはルナの突然の大声に驚きながらもルナに尋ねる
――ルナ?なにかいい案を思いついたの?
『うん!ないなら用意すればいいんだよ!!』
――いや、用意するっていっても僕たちじゃとても・・・・
『?私一言も自分たちで用意するとか言ってないよ?』
――え?じゃあどうやって?
『私たちじゃ無理なら他の人たちに任せればいいんだよ!!』
――で、でもそんな人なんていないんじゃ・・・・ま、まさか!
そこでベルは気づいた。ルナが誰に頼もうとしているのかを
『うん!あの
ルナはベルの中でまるでいたずらを思いついたような子供のような顔をしていた
しかし、ベルにはルナが小さい角と翼と尻尾の生えた小悪魔に見えた
いかがでしたか?
もう少しリリを救うために続きます
次回もお楽しみに
出来るだけ早めに更新したいと思います
おやすみなさい
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