地底人迷宮譚~迷宮を差し置いて遺跡に潜るのは間違っている~   作:筆記者カレル

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自分はスクロールバーが小さければ小さいほど嬉しくなる質の人間なのですが、そうでない方にとっては少々疲れる文章量(約二万字)だと思いますので、時間のある時に読むことを推奨致します。


白髪鬼と遅すぎた英雄

 

「……まずは心からの感謝を。危ないところを助けて頂きありがとうございます」

 

 手始めに処刑隊装備一式に身を包み、曇りなき正義の心を演出。

 しかし厚く垂らされた聖布は宗教的なイメージが強くなってしまうので、金のアルデオで輝きのワンポイント。ただでは退かないゾ☆という不退転の覚悟と黄金の意志をアピール。

 

「どうやってこの場に現れたかは気になりますが……いえ、詮索は無粋ですね。貴方がいなければ私もキークスも敵の手に掛かって命を落としていたでしょうから」

 

 そしてメイン武器を《仕込み杖》から素早く変更。安心と信頼の教会ブランド、《ローゲリウスの車輪》で気になる闇派閥(あのコ)に出血サービスしちゃえ☆

 もちろん勝負所では躊躇わず仕掛けを起動、その素晴らしい本性を露わにしてライバルに差をつけるんだゾ☆

 

「ヘルメス・ファミリアの団長【万能者(ペルセウス)】が、ロキ・ファミリアの【流血鴉(ブラッディレイヴン)】に協力を要請します。こちらの事情に巻き込んでしまうのは恐縮ですが、何せ相手は闇派閥(イヴィルス)。是非とも貴方の助力を……賜りたく……」

 

 うふふ。鉛の秘薬を咥えた処刑隊が突然飛び出してきたら、オリヴァス君びっくりするだろうなぁ。

 

 

「……あの、【流血鴉(レイヴン)】? 先程から何をやってるんですか……?」

「イメチェン」

 

 

 アスフィが少し目を離した隙に、カインの様相は一変していた。

 【流血鴉】の代名詞たる鴉羽の外套はいずこかへ消え失せ、その身を包むのは豪壮な聖布を背にあしらった戦闘衣(バトルクロス)。まるで闇派閥(イヴィルス)への当て付けの如き白装束だが、決定的に彼らと異なるのは頭に装備された輝く黄金の(ヘルム)である。

 

 三角。圧倒的三角である。それは紛うことなき黄金の三角形であった。円錐状の兜は一点の曇りもない黄金に輝いており、覗き穴(スリット)などは存在せず隙間なく頭全体を覆っている。

 

 加えて、手に持った武器も異様だった。

 いや、果たしてそれは武器なのだろうか。その姿を一言で表すならば「取っ手の付いた車輪」である。精緻な紋様が刻まれた重厚な木製の車輪には夥しい血の痕跡が見て取れ、確かにその重量を振り回せば相応の威力を発揮できるだろうが……武器と言うにはあまりに合理性に欠けている。殴打を目的とするなら(ハンマー)で良いではないか、とアスフィは強く思った。

 

「いえ、それよりも……【白髪鬼(ヴェンデッタ)】と、そう言ったのですか? しかしあの男は……」

「【白髪鬼(ヴェンデッタ)】オリヴァス・アクトは死んだ筈だと、そう言いたいんだろう? ボクもついさっきまではそう思ってたよ」

 

 だが、如何に仮面で素顔を隠そうとも血は正直だ。カインの前で血を流してしまった時点で、既にその遺志は狩人の掌中にある。

 カインは『スローイングナイフ』を実体化させると、最小限の動作でそれを投げ放った。まるで凶手か何かのような手際で投擲されたギザ刃のナイフが咄嗟に首を傾けた男の仮面を掠める。

 

 そして、その衝撃で白面が砕け散った。

 

「その、顔は……!」

「ほら、言った通りだろう?」

 

 仮面の下から現れた素顔を目撃したアスフィが愕然とした表情を浮かべる。生憎とカインは直接の面識はないが、流石に【白髪鬼(ヴェンデッタ)】の悪名については知っていた。

 

 オリヴァス・アクト。【白髪鬼(ヴェンデッタ)】の異名を取る、当時Lv.3だった冒険者。使徒と呼ばれる闇派閥(イヴィルス)の中でも高位の立場にあった者の一人らしく、数々の悪行を主導した存在としてその名を知られていた。

 あくまで知られて()()……過去の存在だ。七年前に起きた「27階層の悪夢」と呼ばれる、闇派閥(イヴィルス)主導で行われた大規模な怪物進呈(パス・パレード)によって数多の冒険者が犠牲となった事件……オリヴァスはその首謀者であったとされるが、彼自身もその渦中で死亡したことが確認されたという。

 

 それがただ生きていただけでなく、Lv.4をも圧倒する力を獲得している。あり得ない、とアスフィは震える声で呟いた。

 

「貴方に恩恵を授けた神は既に天界に送還された筈……その力はいったい……」

「恩恵か……下らん。私はもはや神に踊らされる人形とは違うのだ」

 

 オリヴァスは誇示するように腕を掲げる。つい先程カインに砕かれた、右腕を。

 

「そんな……!?」

「回復魔法もないのに、傷が治っていく!?」

 

 無惨に破壊された筋肉も、砕かれ圧し折れた骨も、まるでそんな傷など初めからなかったかのように元の姿を取り戻していく。アスフィとキークスに施された《聖歌の鐘》の治癒を思わせる、時間を巻き戻すかのような凄まじい再生能力だった。

 

「素晴らしかろう? これが私の新たな肉体……『彼女』によって与えられた至高の力だ!」

 

 胸の中心で輝く極彩色の魔石。それこそがオリヴァスが神の恩恵(ファルナ)の代わりに得た新たな力。

 魔石を核とし、また他の魔石を喰らうことで自らを強化する怪物(モンスター)の特性を兼ね備えた、全く新しい人類種──怪人(クリーチャー)。人間にあるまじき異常な再生能力は、まさに彼が尋常な生物の枠を逸脱した証左である。

 

 しかし戦慄するヘルメス・ファミリアとは対照的に、カインの方はこれといった反応を示さなかった。

 アルデオによって表情が隠れていることを加味しても、僅かにも動揺する気配を見せない姿はオリヴァスの目からしても浮いて見えた。少しでも隙を見せてくれればと考えていただけに、当てが外れたことに内心で舌打ちする。

 

「……随分と余裕だな【流血鴉】」

「まあ前例(レヴィス)を知ってるからね。怪人とやらの再生能力は身に染みてるよ」

 

 何せカインにとって怪人(クリーチャー)との邂逅はこれが初めてではない。Lv.5をも凌駕する肉体能力に、四肢の欠損すら時間を置けば回復しきる自己治癒能力。どれも驚くべき力だが、流石に二度目ともなれば驚きも薄れるというものだ。

 

「厄介なのは認めるけど、それだけだ。ボクの筋力なら十分ダメージを通せるし、その再生能力も無限じゃない。──死なない程度に破壊(バラ)して持ち帰るとしよう。地上に出ればモテモテだよ、キミ」

 

 ぶうん、と重々しい風切り音を上げて車輪を素振りする。風に乗って匂い立つような血臭が漂い、近くにいた獣人達は鼻に皺を寄せてカインから一歩離れた。

 だが何よりも彼らを恐れさせたのは、車輪から漂う血腥い気配ではなく、カインの総身から立ち昇る炎のように荒々しい戦意であった。闇派閥(イヴィルス)を象徴する白装束を目にした瞬間に発された凍てつくような殺気と比べれば幾分か落ち着いたものの、未だにその圧力(プレッシャー)は止まるところを知らない。

 

 最上級冒険者(Lv.6)から放たれる威圧は凄まじく、正直なところ、ヘルメス・ファミリアはオリヴァス以上に今のカインを恐れていた。何せ(ドラゴン)が隣にいるようなものだ。味方であるという点を差し引いても恐怖が勝る。

 だが、ヘルメス・ファミリアが感じている威圧など所詮は余波に過ぎない。その殺意を一身に浴びているオリヴァスは何とか不敵な笑みを保とうとしているようだが、口元の引き攣りを抑え切れていなかった。

 

「……凄まじい迫力だ。流石は闇派閥(イヴィルス)殺しの死神。聞きしに勝るとはこの事だな【流血鴉】。いや──【屍肉烏(キャリオン)】、と呼ぶべきかね?」

「っ、テメェ!」

 

 その二つ名がオリヴァスの口から放たれた瞬間、ファルガーは文字通り虎のような形相で怒りを露わにした。それ以外の面々も似たり寄ったりの表情で怒気を発している。

 何故なら、その二つ名は神々によって授けられた名誉ある称号ではない。アイズがかつて【戦姫】と呼ばれ恐れられていたのと同様、カインの【屍肉烏(キャリオン)】もまた忌み名……より直接的に言えば蔑称の類であったのだから。

 

「まあ、否定はしないよ。ボクは所詮“間に合わなかった”人間だからね」

 

 僅か三年でLv.6という高みへ至った最速記録保持者(レコードホルダー)。純粋な白兵戦能力だけに限ればロキ・ファミリア最強なのではないかと実しやかに囁かれる【流血鴉】を侮る冒険者などオラリオには存在しない。その才能をやっかむ声は多々あれど、悪し様にその力を罵るような者などフレイヤ・ファミリアにすらいはしないだろう。

 だが、彼は初めからそのように恐れられ、実力を認められていたわけではない。むしろ最初は相当に風当たりが強かったとさえ言えた。

 

「ボクがLv.2になり、闇派閥(イヴィルス)狩りを始めたのがだいたい五年前。ちょうどキミが悪さをしていた七年前……オラリオの暗黒期と呼ばれていた最後の時代から二年後のことだね。

 二年……長いようで短い期間だ。少なくとも七年前の傷が癒えていない人達にとっては短いと断言できる。そんな彼らにとって、突然オラリオにやってきて残党狩りを始めたボクはどう見えたことか」

 

 もはや後がなく、半ば自棄になっていた当時の闇派閥(イヴィルス)残党は方々で悪事を起こしていた。【疾風】を復讐者にしてしまう切っ掛けとなった事件などはその最たるものだろう。

 その厄介さは筆舌に尽くし難く、故にそれを積極的に狩った【疾風】とカインの両名には相応の称賛があった。……だが、好意的な声ばかりだったわけではない。

 

 かつて「死の七日間」と呼ばれる一大抗争があった。闇派閥(イヴィルス)が総力を挙げて秩序を転覆せんとした、オラリオ暗黒期を代表する大事件である。

 

 最終的にはギルドを中心とする全ての冒険者達の尽力によって鎮圧されたものの、その被害は目を覆わんばかりのものだった。正にオラリオ始まって以来最大の悲劇と言っても過言ではない出来事であり、発生した死傷者の数は都市内の墓地が溢れる程だったという。

 当時、「死の七日間」に関わった全ての冒険者が軒並みランクアップを果たしたと言えばその過酷さが伝わるだろう。誰もが命を懸けてオラリオの平和を守らんと立ち上がり、奮戦したのだ。今のオラリオの平和は、正にその時に生じた犠牲の上に成り立っている。

 

 翻って、その事件があった二年後にふらりと現れたカインは全くの部外者だった。伝聞でしか当時の悲劇を知らず、また犠牲の重みを知らない。何も知らず幸運にも平和の恩恵だけを享受している。

 とはいえ、それだけなら殊更に非難されるべきことではない。同じような人間はカイン以外にもいただろうし、何より大多数の人間はそれを誇りに思ってすらいた。「お前達が今感じている平和は、俺達が命懸けで守ったものなんだぜ」と。

 

 しかし全ての人間がそのように過去を割り切り、前向きに生きていけるわけではない。たった二年で大切な仲間を失った傷が癒える筈もなく、その価値を知らぬままに平和なオラリオを謳歌する人間に対し、鬱屈とした感情を向ける者も相応に存在していた。

 

 その複雑な感情の捌け口となってしまったのがカインであった。当時の彼には急激なランクアップの説得力を得る必要があり、誰の目にも明らかな戦果を求めていた。その手段として選んだのが闇派閥(イヴィルス)の残党狩りであり、神意と、何より狩人としての使命感と執念によって次々と残党を追い詰めていった。

 それだけならば何も言われなかっただろう。むしろ感謝さえされた筈だ。にもかかわらずカインに暗い感情の矛先が向いたのは、偏に彼がその力を示し過ぎたからである。

 

 たった半年でLv.2にランクアップする程の才能を見せつけ、その後もとんとん拍子で階梯を駆け上がり、破竹の勢いで闇派閥(イヴィルス)残党を駆逐していくその姿。一騎当千の実力で闇の勢力を払う様は、正しく英雄と呼ぶに相応しく──事実、()()()()()()彼は英雄と呼ばれ大いに称えられていたことだろう。

 カインは遅すぎたのだ。既に死に体となった残党を今更蹴散らしたところで、「死の七日間」で失われた仲間はもう戻ってこない。なまじその実力が本物だからこそ、どうしてあの時にいてくれなかったのだと……彼らは、そう思わずにはいられなかったのだ。

 

 また、カインには【疾風】のような同情に値する背景(バックボーン)がなかった。彼女は「死の七日間」においても正義の徒として奮戦したという実績があったし、何より闇派閥(イヴィルス)の罠によってファミリアを全滅させられたという()()()()()()()()が存在している。

 だが、新参者であるカインにはそれがない。闇派閥(イヴィルス)に大切なものを奪われたような過去もなく、ただ戦果欲しさに首級を挙げていくその姿は、悲劇のヒロインさながらの【疾風】との対比でより()()に映ったのである。

 

 優れた実力を持ちながら、肝心な時に居合わせなかった“遅すぎた英雄”。既に死に体であるのを良いことに、浅ましく戦果を求めて血肉を貪り肥え太る“屍肉漁り”。

 誰が呼んだか屍肉喰らいの血濡れ烏(キャリオン・クロウ)。故についたのが【屍肉烏(キャリオン)】という蔑称(二つ名)だった。

 

 もう五年も前の出来事だ。残された者らの行き場のない嘆きの捌け口と、理由はどうあれ殺人という手段によって急激なランクアップを果たしたことへの嫉妬混じりの軽蔑。そういった冒険者達の暗い感情の発露から生まれたこの忌み名も、五年も経てばその由来は忘れられて久しい。今となっては【流血鴉】の称号の方が広く知れ渡っているし、【屍肉烏(キャリオン)】の名にしても侮蔑の意味ではなく純粋な畏敬の念によって呼ばれる場合が多いだろう。

 

 だが、今のオリヴァスは明らかにカインを貶める意図でその二つ名を呼んだ。だからこそ彼らは怒りを露わにしたのである。

 

 何故なら、カインが行った残党狩りは決して非難されるようなものではなかった。冒険者の中には自ら手を汚す覚悟を決めている者もいただろうが、誰もがそのように強くあれるわけではない。そも冒険者とは本来モンスターを討伐することを生業とする存在だ。彼らの剣は断じて人殺しのためにあるのではない。如何に相手が闇派閥(イヴィルス)とて、いったい誰が好んで同族殺しなどという罪の十字架を背負いたがるものか。

 そのような汚れ仕事を率先して請け負い、オラリオに残った最後の淀みを取り払ったカインを悪く言う者などいはしない。彼を【屍肉烏(キャリオン)】と呼ぶ者さえ、心の底ではそれが言い掛かりに過ぎないと理解しているのだ。

 

「まさにキミの言う通り、ボクは何もかもが遅きに失した。何故あと二年早く来れなかったのかと思わずにはいられないよ。もしそうなら『死の七日間』も、『27階層の悪夢』だって起こさせはしなかったのに」

(それは──)

 

 それは違うと。オラリオの暗黒期を知るアスフィだからこそ、彼女は声を大にしてそう言いたかった。

 あの七日間は、あの地獄は、たった一人の英雄の力でどうにかなるようなものではなかった。【勇者(ブレイバー)】も、あの【猛者(おうじゃ)】でさえ、大いなる運命の奔流に巻かれる一人の人間でしかいられなかったのだから。

 

 だが、カインは知っている。己が英雄ではないと、()()()()()()()()()()()()。心ばかりは人間であろうとしているが、事実としてその力はもはや人類の想像し得る範疇を超えているのだ。ひとたび狩人という肉の器を脱ぎ去れば、その悍ましい本性が露わになることだろう。

 だからこそ悔しくてならなかった。七年前のあの時に自分がいれば、真実()()()()()()()()()()()()()

 

「──だからこそ、ボクは闇派閥(キミら)を必ず殺すと決めている」

 

 その黄金の兜が示すのは、穢れに対する不退転の覚悟である。ヤーナムとオラリオでは“穢れ”の持つ意味は異なるが、世の汚濁を表しているという点においては共通している。

 そして、処刑隊は穢れの悉くを叩き潰す“輝き”の象徴。だからこそカインは鴉羽の外套を脱ぎ捨て、この装束を身に纏ったのである。

 

「鴉羽のマントは狩人狩りの象徴。それが意味するのは鳥葬であり、血に狂ったかつての仲間の遺志が、せめて天に届くようにという祈りが込められている。……キミら如きには過ぎた祈りだ」

「言うではないか。今の私は既に闇派閥(イヴィルス)とは袂を別っているが、かつて使徒の一人として悪行を尽くした身としては耳が痛い話だ。そこまで闇派閥(イヴィルス)が憎いかね?」

 

 耳が痛いなどという殊勝な言動とは裏腹に、オリヴァスの顔は嘲りに歪んでいる。

 とはいえ、実のところカインは闇派閥(イヴィルス)に対し憎悪のような感情は抱いていなかった。強いて言うならば同族嫌悪だろうか。そもそも狩人は獣を狩ることによって結果的に秩序を守っているだけであって、その存在は決して善性のものではない。結局は何かを破壊するという形でしか事を成し得ぬ狩人と、世に破壊と混沌を齎す闇派閥(イヴィルス)。果たして両者に何の違いがあるものか。

 

 だからカインが何よりも許せないのは闇派閥(イヴィルス)そのものではなく、彼らが語る理想とやらが成し遂げられた暁に訪れるものだ。きっと秩序(バベル)は崩壊し、地上には(モンスター)が溢れ返るだろう。そしてそれによって最も被害を被るのは、何の罪もない無辜の民草であるに違いないのだ。

 狩人とは決して善なる存在ではない。だが彼らは確かに獣を狩り、人々を悍ましい獣性から守護している。それだけが獣狩りの狩人が持つ唯一にして無二の誇り。光に背を向けた彼らに残された最後の人間性なのだ。

 

「ただ人のまま死にたいと願う病み人がいた。健気に家族の帰りを祈る童女がいた。……そんな彼らの願いと祈りは。人の尊厳は、冒涜の夜に悉く貶められ蹂躙された。

 許せるものかよ。獣など、ただの一匹とてこの世に存在してはならないのだから」

 

 その瞬間、食料庫(パントリー)の壁の一部が轟音を上げて吹き飛び。

 誰もがそちらに注意を向ける中、カインだけはそれを一顧だにせずその場から飛び出した。

 

「ッッ!?」

「余所見なんて感心しないなぁ!」

 

 仮に視線を逸らさなかったとしても、オリヴァスの動体視力ではカインの《加速》を見切ることはできなかっただろう。それ程の一瞬で距離を詰めたカインは、無防備を晒すオリヴァスの腹に蹴撃(ヤクザキック)を叩き込んだ。

 

「ガハッ……! この、調子に──」

「かったいなぁ。何その下半身、岩か何かでできてるの?」

 

 胃液を吐いて顔を歪めるオリヴァスだったが、その程度で済んでいるという事実が彼の尋常ならぬ肉体強度を示している。並の冒険者が《加速》の乗ったカインの蹴りを食らえば、良くて内臓破裂、悪ければ上半身と下半身が泣き別れすることだろう。

 レヴィスの身体は第一級冒険者すら上回る耐久を具えていたが、オリヴァスの下半身はそれをも上回る特別製だった。輪郭こそ人のものだが、その体組織は丸ごと異形のものに置き換わっている。

 それでもカインはお構いなしに蹴りを入れた。蹴倒したオリヴァスの腹に執拗に踏みつけ(ストンピング)を叩き込み、足と地面との間で弄ぶようにバウンドさせる。

 

「がッ、ごっ……ちょう、しに……乗るなァ!!」

 

 甚振るような攻勢に、オリヴァスは怒声を上げてカインを退けようと腕を振り回した。仰向けに寝転がった姿勢からでは碌に力も込められないだろうが、そこは流石に怪人(クリーチャー)の剛力。折り曲げた指を鉤爪のように振るい、易々とカインの戦闘衣ごとその身を傷付けた。

 

 ──傷付けて、しまった。

 

「があああああァァッ!!?」

 

 掠り傷程度の損傷部位から零れる鮮血。どす黒く温かいそれを身体に浴びたオリヴァスは、次の瞬間には喉が張り裂けんばかりの絶叫を上げていた。

 右手の先から肩口にかけて、カインの血が付着した箇所が戯画めいて捻れ曲がる。まるで肉体そのものが独立した自我を持ち、オリヴァスの意思に反して暴れ狂っているかのようだった。独りでに潰れ、捻れ、ひしゃげて襤褸屑さながらの有り様に変貌していく。

 

「ぐっ、ォ……おおォ」

 

 磯巾着(イソギンチャク)の触手めいて四方八方出鱈目に動き回る五指。骨が液状と化したかのように膨張と収縮を繰り返し、血を噴き上げながら捻じれ狂う腕。カインの血に対する拒絶反応と怪人(クリーチャー)の再生力の相克が、オリヴァスに想像を絶する程の激痛を齎した。

 

「何だ……私の身体に、何をした……!? 何らかのスキルによるものか!?」

「さあどうだろう? そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。どの道キミに教えてあげる義理なんてないわけだけど」

「ふざけおって……その態度といいその格好といい、私を虚仮にしているつもりかァ!!」

「うふふ、正体現したね。そのぐらい無様に激してる方がキミには似合ってるよオリヴァスくぅぅん!」

「ふざけるなァァ!!」

 

 目を血走らせ、激昂したオリヴァスは無事な左腕を振り被りカインに殴り掛かる。

 しかしカインはそれを避けようとしなかった。迎え撃つでもなくその場に佇み、懐から取り出した香膏壺(レキトス)のような容器を傾け、その中身を一息に呷る。

 

 果たして、オリヴァスが左拳に感じたのは肉の身体を打つような感触ではなかった。ましてやモンスターや怪人(クリーチャー)のそれでもなく、まるで鋼の塊を殴りつけたような硬く重厚な手応えが返ってくる。

 

「なっ……」

「鉛を殴った経験はおあり?」

 

 反動で砕けた左手を呆然と見るオリヴァスを嘲笑い、カインは遂に右手の武器を構えた。まるで大型馬車の車輪を二つ並べたかのような外観の、重く巨大な木と鋼の塊を。

 

「そいっ」

 

 軽い掛け声とは裏腹に、身の毛もよだつような豪風を上げて振るわれる《ローゲリウスの車輪》。それは両足の膝蓋骨を易々と砕き、あれほど堅牢を誇ったオリヴァスの足を関節とは逆方向に圧し折ってしまった。

 

「ぎいいいぃぃぃぃッッ!?」

「やかましい」

 

 足を砕かれる痛みに叫ぶオリヴァスの襟首を掴み、カインは再びその身を大地に叩きつける。そして虚空から銀の長剣を取り出すと、その切っ先を勢い良く腹部に突き刺し地面に縫い留めた。

 

「これ以上喋るなよ。どうせキミも、性懲りもなくオラリオを破壊するだの何だの下らないことを考えてるんだろう?」

「ギィ……わ、私を神の操り人形どもと同列に語るな……! 私は『彼女』のために、地上(オラリオ)を……っ!」

「同じだろうがよぉー、えぇ? 闇派閥(イヴィルス)の塵屑どもは皆そうだ。馬鹿の一つ覚えのようにやれ世に混沌を、やれ秩序を破壊するだのぎゃあぎゃあと。それしか言うことがないのかキミ達は。さも高尚なものかのように理想を語るけど、ボクから言わせればガキの癇癪と何も変わらない。邪道でしか生きられないならそのまま夜闇に紛れてせせこましく生きてれば良いものを、何でわざわざ光の当たるところに出てこようとするかねぇ。

 その上、言うに事欠いてボクがふざけているだと? ふざけているのはそちらだ獣どもめが。よくも悪夢(ボク)の前で混沌を語ったものだな!」

 

 そんなに混沌がお望みならば、宜しい。この獣狩りの上位者が直々に、底知れぬ太古の神秘、泥土の湖に泡立つ窮極の渾沌をご覧に入れようではないか──

 黄金の兜の下、狩人の双眸が邪悪な狂気を宿す。素顔は見えずとも、その禍々しく律動する感情の起伏の波は感じ取れたのだろう。オリヴァスの顔がはっきりとした恐怖に歪んだ。

 

食人花(ヴィオラス)ゥゥゥ──!! コイツを、この悪魔を殺せェェ────ッ!!」

 

「あの気色悪いモンスターどもはもういねぇよ」

 

 不機嫌さを隠そうともしない男の声が恐懼に駆られるオリヴァスの耳朶を打った。

 気付けば、オリヴァスは四方を冒険者達に囲まれていた。ヘルメス・ファミリアと二人のエルフ、そして銀灰色の鬣を揺らす狼人(ウェアウルフ)が半死半生の怪人(クリーチャー)を見下ろしている。

 

 カインを相手にしている間に、食人花(ヴィオラス)も白装束も一掃されてしまっていたのだ。その中心を担ったのは、カインを除けば最も隔絶した風格を漂わせる狼人(ウェアウルフ)……【凶狼(ヴァナルガンド)】ベート・ローガであることは疑いようもなかった。

 

「やあ、こんな所で奇遇だねベート……じゃなくてベートきゅん。アイズを追ってきたのかい?」

「おい、何で言い直した……いやそんなことより、そのアホみてぇな格好は何だ。ふざけてんのか?」

「えー……キミまでそんな心無いことを言うのかい」

 

 【剣姫】、そして【流血鴉】までもが現れた時点で想定できた事態ではあった。【凶狼(ヴァナルガンド)】、そしてその隣に控えているのは若き才媛と名高い【千の妖精(サウザンド・エルフ)】。いよいよオラリオ最強派閥の一角たるロキ・ファミリアが、地下迷宮で胎動する闇の勢力の気配を嗅ぎつけたのだ。

 便利に使っていた闇派閥(イヴィルス)残党の死兵は全滅させられ、まともに動かせる食人花(ヴィオラス)も既にいない。絶体絶命の窮地にオリヴァスが歯噛みしていると、【千の妖精(サウザンド・エルフ)】の隣に立つ黒髪のエルフが凄まじい形相を向けているのに気が付いた。

 

「オリヴァス……アクト……ッ!」

 

 その瞳に宿る並々ならぬ憤怒と憎悪……紛れもなく闇派閥(イヴィルス)の使徒【白髪鬼(ヴェンデッタ)】ではなく、オリヴァス・アクトという個人に向けられた激情であることは疑いようもなかった。

 

「……そうか、お前は『27階層の悪夢(あの計画)』の生き残りか」

「貴様……あれだけの惨劇を引き起こしておきながら、今日までのうのうと生きていたというのか!?」

 

 絹糸(シルク)のように滑らかで、黒真珠(ブラックパール)のように艶やかな輝きを帯びた美しい黒髪。そして穢れなき純白の装束を纏うエルフの麗人。

 彼女こそかつて【白巫女(マイナデス)】と呼ばれた、才気溢れるディオニュソス・ファミリアの団長であり──「27階層の悪夢」によって仲間を失い、今や【死妖精(バンシー)】の忌み名で呼ばれるまでに身を窶した、オリヴァスの計画の最大の被害者と言うべき少女だった。

 

「お前のせいで仲間はっ……私は!!」

 

 レフィーヤに心から美しいと称賛された美貌を凄絶に歪め、赤緋の瞳に燃えるような怒りを宿した彼女──フィルヴィス・シャリアは、射殺さんばかりの形相でオリヴァスを睨んでいる。

 その痛ましい姿を目にしたカインは、それまで絶えず発していた鬼気を収めた。この場でオリヴァスを裁く正当な権利を所有しているのは、自分ではなく彼女であると気付いたのである。

 

「好きにすると良い、フィルヴィス・シャリア。この男に止めを刺すのはボクではなく、キミであるべきだ」

「言われるまでもない……!」

 

 そう言いつつ、カインはしれっと《獣狩りの斧》をフィルヴィスに手渡した。獣の首を叩き斬ることだけを目的に作られた分厚い黒刃を目にしたレフィーヤは血の気を引かせるが、怒りのあまり周りが見えていない彼女はカインの存在にすら気付くことなく、ふんだくるように《獣狩りの斧》を手に取った。

 

「同胞の仇だ……死ね、オリヴァス・アクトォ!!」

 

 その憎き首を叩き落とさんと、フィルヴィスは断頭台(ギロチン)の如く《獣狩りの斧》を振り下ろそうとする。

 だがその血塗られた断頭の刃が向けられる刹那、最も恐るべき敵(カイン)が距離を置いた好機にオリヴァスの口元が邪悪な弧を描いた。

 

 

「今だ『巨大花(ヴィスクム)』! 私ごとで構わんッ、こいつらを圧し潰せェ──!!」

 

 

 食料庫(パントリー)の中心に聳え立つ石英(クォーツ)の柱。大空洞を支える大主柱に取り付いていた巨大な植物型モンスターの一体が、オリヴァスの声に応じてその巨躯を震わせる。

 巨大花(ヴィスクム)──そう呼ばれた全長30M(メドル)にも達する超巨大モンスターが柱から剥離し、自らの巨体を武器として冒険者達を圧し潰さんと自由落下を開始した。

 

「うっわマジか。シャリアちゃん、ちょっとストップ。そいつは後にして避難を……」

「後にしろ、私は忙しい!」

「あらやだこの子ったら怒りで我を忘れてるわ。狩人的にはグッドな盲目さだけど」

「フィルヴィスさーん!?」

 

 「散れ!」というベートの一喝で落下地点から退避しようとする一同だったが、フィルヴィスだけはオリヴァスに視線を固定したまま動かない。というより巨大花(ヴィスクム)の存在にすら気付いていない様子だった。その瞳には依然として怨嗟の炎だけが渦巻いている。

 美しき同胞が土壇場で垣間見せた視野狭窄(ポンコツ)具合にレフィーヤは顔を蒼褪めさせた。このままでは諸共モンスターの巨体に押し潰されてしまうだろう。

 

「しょうがないなぁ。貸し一つだぞシャリアちゃん」

 

 苦笑したカインは、ようやく(アルデオ)を外してその素顔を晒す。そして『獣血の丸薬』を頬張り、奥歯で勢い良く噛み砕いた。

 直後、烈火が弾けた──そう錯覚する程の熱量を雄叫びと共に吐き出し、カインは内なる獣性を爆発させた。幸いにも今の彼は啓蒙取り引きと脳喰らいの捕食攻撃によって、保有する啓蒙量が一桁を切っている。獣性を高めるにはこれ以上ない最高のコンディションだった。

 

 その咆哮を耳にした者達はその瞬間、誰もが巨大花(ヴィスクム)の脅威すら忘れて身体を硬直させる。それは驚くべき光景であった。数多の怪物(モンスター)を相手にしてきた歴戦の冒険者である彼らが、ただの雄叫びによって身を震わせ、剰え足を竦め立ち止まったのだ。

 彼らの身を竦ませたのは、たった一つの絶対的な真実……「あれと敵対すれば確実に自分は死ぬ」という、理屈を超えたところにある本能的な恐怖が故だった。

 

 巨大花(ヴィスクム)とカイン。比較することさえ烏滸がましい程の体格差がある二つの怪物が、遂に真っ向からの激突を果たす。

 普通に考えれば勝負になどならないだろう。大きさはそれだけで武器となる。象と蟻がぶつかれば前者が勝るのは歴然であり、罷り間違っても蟻が象を叩き潰すような不条理は起こり得ない。

 だが、ここにいるのは悪夢の化身。不条理の体現者だ。悪夢の巷においては街の上に海があり、遥か空の果てに深海が広がっている。ならば小が大を磨り潰す程度、当然のようにやってみせなければ面目が立たないというもの。

 

「オオオオオォォォォッ!!」

 

 ベートでさえ忘我に足を止める中、極限まで純化された獣性と原始の闘争心を渾身に込め、カインは《ローゲリウスの車輪》を一閃した。

 

 あまりに常軌を逸した極限の質量と極限の暴力が激突し、束の間世界から音が消える。一瞬耳が機能不全を起こす程の爆発的な大音量を発し──高きより低きに水が流るるが如く、小さき怪物が大なる怪物を一方的に吹き飛ばした。

 

「そんな、馬鹿な──」

 

 依然として地に縫い留められたままのオリヴァスが慄然と声を震わせる。

 いったい誰が信じられようか。特別なスキルや魔法も用いず、ただの腕力による一撃で……見上げるような巨大花(ヴィスクム)の巨体を、()()()()()()()()()()()()()()

 

『■■■■■────ッ!?』

 

 悲痛な金切り声が轟く。極彩色の長躯は盛大に地面を削りながら冗談のように転がり、壁面に激突することでようやく止まった。

 

 食料庫(パントリー)の中心たる大主柱から端まで、ゆうに100M以上はあった。そして巨大花(ヴィスクム)の体長は30M以上、重量に至っては想像すらできない領域にある。

 それ程の大質量を、それだけの距離動かすのに要する運動エネルギー。カインが車輪の一振りで発揮したそれは、もはや一人の人間に許されるような次元の力ではなかった。

 

「頭は冷えたかい、シャリアちゃん?」

「お前……いや、貴方は……」

 

 すぐ傍で弾けた尋常ならざる獣性の発露に、ようやく我に返ったフィルヴィスは愕然とした面持ちでカインを見上げる。

 灰色の瞳と赤緋の瞳が交わる。僅かに、灰の眼差しが細められた。

 

「ふぅむ……」

「あの……?」

「ああいや、失敬。噂に違わぬ器量良しだなって思ってたのさ」

「キリョウヨシ……?」

「美人さんって意味。それより、焚きつけておいて悪いけどオリヴァスの処遇は後にしよう。ちょっと状況が混迷としてきたみたいだ」

 

 カインは馴染みのある気配を察知し、きょとんとするフィルヴィスを尻目に明後日の方向に視線を向けた。

 するとまさにその瞬間、視線の先で大空洞の壁面が爆発する。衝撃によって飛散する瓦礫と共に吹き飛ぶいつかの赤髪の怪人(クリーチャー)と、開いた大穴に足を掛けて悠然と佇む【剣姫】の姿がそこにあった。

 

「【剣姫】!」

「アイズさん!」

 

 分断されたきり行方の知れなかった仲間の姿を認め、歓声を上げるルルネ。レフィーヤもまた探し求めていた憧れの人の無事を喜んだ。

 

「ぐっ……まさかレヴィスまでも……」

 

 一方、オリヴァスは更なる絶望に打ちひしがれていた。食人花(ヴィオラス)巨大花(ヴィスクム)も【流血鴉】には通用せず、唯一の恃みだったレヴィスでさえ【剣姫】の前に敗れた。巨大花(ヴィスクム)はあと二体残っているが、ただの一撃でそれを打ち破った相手に対し戦力の逐次投入など愚策でしかない。

 万事休す。オリヴァスの胸を諦観が支配する中、駄目元で残る巨大花(ヴィスクム)を暴れさせようかと考えていた時……視界の端で、吹き飛ばされた最初の一体が僅かに身動ぎしたのを彼は見逃さなかった。

 

「ふ、くく……そうだ、『彼女』に選ばれ種を超越した我々が負ける筈がないのだ……」

 

 まず前提として、巨大花(ヴィスクム)食人花(ヴィオラス)が成長しきった果てに至る上位種である。両者は起源を同じくするモンスターであり、故に種としての特性は共通するところが多い。

 例えば魔石の位置。例えば強い魔力に反応する習性。例えば──打撃に対する強い耐性。

 

 巨大さはそれ自体が攻撃力であり、同時に防御力でもある。如何にカインの腕力が馬鹿げていようと、その攻撃面積は人間大の範疇に止まる。単純な物理法則の帰結として、カインの攻撃範囲では急所にまで手が届き難いのだ。

 加えて、《ローゲリウスの車輪》が打撃武器である点も有利に働いた。確かにその凄まじい衝撃は巨大花(ヴィスクム)の芯まで届きダメージを刻んだが、威力の大部分は打撃耐性を有する外皮によって散らされ、魔石(いのち)にまでは至らなかった。

 

 つまり、瀕死でこそあれ巨大花(ヴィスクム)はまだ生きている。

 そして生きているならば、たとえ死の間際にあろうとも巨大花(ヴィスクム)はオリヴァスの命令によって動き続けるのだ。

 瀕死の巨大花(ヴィスクム)では、たとえ不意を衝いたとて【流血鴉】の相手にはならないだろう……だが【剣姫】ならば──

 

「せめて【剣姫】……『アリア』だけでも『彼女』への手土産としよう! 巨大花(ヴィスクム)──!」

 

 上位種(オリヴァス)から下位種(ヴィスクム)へと絶対命令が下される。その瞬間、既に動けぬものと思われていた巨大花(ヴィスクム)が悲鳴のような咆哮を上げながらアイズへ躍り掛かった。

 

「アイズさん!」

 

 無事な方の二体という見え透いた手札ではなく、瀕死である最初の一体を見えぬ爆弾という切り札として使う、下位のモンスターに対する絶対的な命令権を有する怪人(クリーチャー)ならではの一手である。その土壇場の策は幸運にもオリヴァスの味方をし、カインやベートが反応するより速くアイズに牙を剥いた。

 しかし、オリヴァスにはある誤算があった。アイズが既にLv.6へとランクアップを果たしているという、この場においては最も重要な情報の欠落である。

 

「──【目覚めよ(テンペスト)】」

 

 ぽつり、と囁くように紡がれる超短文詠唱。レヴィスによる制止の声が上がるより早く、“風”の封印は解き放たれる。

 

 そして、破滅の渦が全てを終わらせた。

 

「──な、」

 

 一瞬だった。たった一手で全ての片がついてしまった。

 それは木の葉が風で巻き上げられるが如く。巨大花(ヴィスクム)という空前絶後の巨獣は、いつものようにデスペレートを包み込んだ(エアリエル)の魔法による一閃で、呆気なくその身を散華させたのだった。

 

「なぁ……っ、なぁぁぁ……!?」

 

 全く言葉にならぬ、支離滅裂な呻き声だけがオリヴァスの口から零れ出る。

 さもありなん。天から地に向けて振り下ろされた暴虐の嵐は、巨大花(ヴィスクム)の巨体を頭から足元の地面ごと真っ二つに両断したのだ。

 それはさながら天下る神罰の嵐、裁きの巨剣。果たしてこれ程の魔法が、その実ただの付与魔法(エンチャント)に過ぎないなどと誰が信じられよう。

 

 【流血鴉】という恐るべき悪魔の力を目の当たりにしたからこそ、その衝撃は測り知れなかった。それよりレベルで劣る筈の【剣姫】が、よもやカインに匹敵……否、それ以上の破壊力を発揮するなどと。そんなこと、未だアイズをLv.5であると思っていたオリヴァスに予想できる筈もなかったのだ。

 

「ばッ……化け物どもめ……っ! 【流血鴉】といい【剣姫】といい、ロキ・ファミリアの冒険者は化け物揃いか──!」

「あっ、こら!」

 

 その瞬間、恐慌を来したオリヴァスは跳ね上がるように身を起こすと脱兎の如く逃げ出した。原形を留めぬまでに捻れた腕の痛みも忘れ、脇腹を貫く剣すらそのままに死に物狂いで治りかけの足を動かす。

 当然ながらそれを見逃すカインではない。如何に怪人(クリーチャー)の身体能力と火事場の馬鹿力が併さろうと、古狩人の加速を振り切れるものではない。

 

 カインは逃げるオリヴァスに追いつき、右手を手刀の形にして構えた。

 

 一方、オリヴァスが逃げる先にいたのは赤髪の怪人(クリーチャー)レヴィスだった。満身創痍の彼と異なり、五体満足である彼女は多少の余力を残している。

 恐怖と焦燥に駆られながらも、辛うじて冷静さを残す思考の一部を猛回転させ、オリヴァスはこの場における最適解としてレヴィスに縋った。()()()無事にこの窮地を脱するためには、彼女に残るその僅かな余力こそが最後の頼りであると。──緑色の瞳に潜む、剣呑な光に気が付かないままに。

 

 レヴィスは走り寄るオリヴァスに向き直り、右手を手刀の形にして構えた。

 

「に、逃げるぞレヴィス! 残った巨大花(ヴィスクム)を暴れさせ、我々はその隙に──」

 

「逃がさないよ」

「悪く思うな」

 

 ──そして、オリヴァスの背と胸に同時に手刀が突き込まれた。

 

「ガハァッ!?」

「おや」

「む」

 

 獣の爪のように悍ましく折り曲げられたカインの手が背の肉を突き破って体内を掻き回し、剣のように鋭く尖らせたレヴィスの手刀が胸筋を貫いて体内に侵入する。奇しくも同じ攻撃方法でオリヴァスを貫いた両者は、それぞれ内臓と魔石を体外に引き摺り出した。

 

「な……ぜ……」

 

 激しく前後されたオリヴァスは、カインの内臓攻撃(ヴィセラル・アタック)とレヴィスの魔石奪取(ハート・キャッチ)による甚大なダメージにより呆気なく灰となって消滅する。

 そしてその場に取り残されたカインとレヴィスは、まるで図書館で同じ本を取ろうとして手が重なってしまった男女のような気まずい表情で互いに目を逸らした。

 

「いやなに照れてんだ! そんな空気じゃねぇだろ今は!?」

 

 至極常識的なツッコミがベートから放たれる。ハッと我に返った両者はほぼ同時に動き出した。

 急いでその場から離脱しようとするレヴィスと、慌てて車輪を振るうカイン。僅差で速く動いたのは赤髪の怪人(クリーチャー)だった。恐るべき衝撃で大地を抉る車輪の激突音を背に、彼女はオリヴァスから奪った極彩色の魔石を飲み込んだ。

 

 途端、レヴィスの身体能力が急激に上昇する。カインとアイズ以外ほぼ全ての人間の動体視力を振り切り、彼女は大空洞の奥へと疾駆しながら叫んだ。

 

巨大花(ヴィスクム)()()()()()!! 枯れ果てるまで力を絞り尽くせ!!」

 

 怪人(クリーチャー)であるレヴィスは、オリヴァスと同様に極彩色のモンスターに対する絶対命令権を有している。巨大花(ヴィスクム)は粛々とその命令を受諾し──

 

 そして、()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「……ちょーっとマズいかな、これは」

 

 色を失い沈黙する石英(クォーツ)。そして食料庫(パントリー)が鳴動し、内部を覆う緑壁から次々と食人花(ヴィオラス)が生産され始める。

 壁から、地面から、そして天井から……続々と姿を現す大小様々な食人花(ヴィオラス)。未成熟な個体も含め、瞬く間に大空洞を満たす極彩色の怪花の総数は千を超えた。そしてその増加は止まる気配がない。

 

「まさか、自らの命を糧に強制的に咲かせているのですか……!?」

「それもデカブツ二体分の魔力だ……数千程度じゃ利かねぇ、万を超えるぞ……!」

 

 アスフィとベートが冷や汗を流す。

 それは第一級冒険者をも脅かす数の暴力。文字通り万軍に迫る食人花(ヴィオラス)による怪物の宴(モンスター・パーティ)であった。

 

「アイズ、レヴィスも宝玉も今は捨て置こう。彼らだけではあっという間に呑まれて終わりだ」

「……わかった」

 

 アイズは一瞬だけレヴィスが消えていった方角に目を向けるが、すぐに目の前の大群に向き直った。

 流石の怪人(クリーチャー)も【流血鴉】と【剣姫】の二人掛かりは分が悪いと踏んだのだろう。惚れ惚れするような鮮やかな逃走ぶりだった。

 

「く、来るぞォ!」

「ムリムリムリムリだって! 数が多いにも程がある!!」

 

 ヘルメス・ファミリアの団員達から悲鳴が上がる。一体だけでも十分な脅威なのに、それが万に迫る大群となって現れたのだ。彼らの絶望は察するに余りある。

 

(まずい、彼らの体力は既に底が近い……このままでは士気の維持が……!)

 

 アスフィは色を失った表情を並べる団員達を見て焦りを募らせる。ロキ・ファミリアという望外の援軍の存在でさえ、眼前に広がる絶望の前に霞んでしまっているのだ。

 ちら、とこの場の最高戦力たる二人のLv.6を横目に見る。アスフィの目から見て、カインもアイズも常なく表情を引き締めているが、そこに絶望や焦りの色はない。つまり彼らにとって、この怪物の宴(モンスター・パーティ)は然程の脅威ではないのだ。

 

 その事実がはっきりすれば彼らも士気を取り戻すだろう。逆に言えば、それで取り戻せなければ勝てる戦いも勝てなくなる。その最悪の事態を回避するべく、アスフィは敢えて大声を発してカインに問いを投げた。

 

「【流血鴉(レイヴン)】! 貴方達の力でどうにかできますか!?」

「うん? まあ、これでも第一級張ってるからね。このぐらいならボクとアイズがいれば──」

 

 ふと、そこまで言い掛けてカインは口を噤む。視線を動かせば、どこか他人事のように事の成り行きを見守っているレフィーヤの姿が映った。

 刹那、カインの脳裏で様々な思考(打算)が巡り始める。彼らはわざわざ危険を冒してこんな所まで来たのに、事件の首謀者の片方には死なれ、たった今もう片方には逃げられた。このまま得られる筈だった戦果を得られぬまま帰還するというのは、何とも業腹な話ではあるまいか。

 

 せめてここまでの苦労に見合う経験値(エクセリア)ぐらいは頂戴しなければ割に合わない。カインは何かを言おうとしたアイズの口を手で塞ぎ、満面の笑顔でアスフィに向き直った。

 

「いや、ボクとアイズの力だけじゃこの数は厳しいな! キミ達にも頑張って貰わないと!」

「何で今一瞬口ごもったんですか???」

「やだなーアスフィちゃんったらお茶目さん! 常識的に考えてたった二人であの物量をどうにかできるわけないじゃないか!」

「アスフィちゃん!?」

 

 不満そうにもごもごと口を動かすアイズの抗議を無視し、カインは笑顔でアスフィ以下ヘルメス・ファミリアの奮起を促した。疲労の極致にある彼らの顔が先程までとは別の意味で絶望に染まる。

 

「勘弁してくれよ【流血鴉】ぅ! もう体力も武器もボロボロなんだよぉ!」

「んもーしょうがないなぁルルネちゃんは! そんなキミ達にはとっておきの狩り道具プレゼントしてあげよう!」

 

 つい、と指揮棒(タクト)を振るように指を動かす。その直後、呆然とする冒険者達の前で形なき遺志が次々と実体を得た。

 

 虎人(ワータイガー)の青年、前衛戦士のファルガー・バトロスには《ルドウイークの聖剣》が。

 ドワーフの女性、エリリー・ビーズ。そしてヒューマンの青年、ゴルメス・レメシスの壁役(タンク)両名には武器の代わりに『鉛の秘薬』が。

 小人族(パルゥム)の戦士、ポックとポットのパック姉弟(きょうだい)にはそれぞれ《ノコギリ鉈》と《ノコギリ槍》が。

 エルフの青年、中衛のセイン・イールには《獣狩りの曲刀》が。

 犬人(シアンスロープ)の少女、ルルネ・ルーイ。そしてエルフの女性、スィーシア・リーンの軽戦士(スピードアタッカー)両名には《慈悲の刃》が。

 猫人(キャットピープル)の女性、鞭遣いのタバサ・シルヴィエには《仕込み杖》が。

 狸人(ラクーン)の青年、双曲剣遣いのホセ・ハイエルには《落葉》が。

 ヒューマンの青年、キークス・カドゲウスには『火炎瓶』や『時限爆発瓶』など各種投擲アイテムが。

 ヒューマンの女性、後衛リーダーのネリー・ウィルズには《貫通銃》や《ガトリング銃》など迎撃に適した遠距離武器と各種弾薬が。

 小人族(パルゥム)の魔導士、メリル・ティアー。それを守るサポーターのドドン・ドルドンには……少し迷った末に《湖の盾》が。

 

 そしてアスフィの前に『スローイングナイフ』と『祭祀者の骨の刃』が現れ、ヘルメス・ファミリア構成員全十五名に狩人からの贈り物が与え(押し付け)られた。

 

「うおっ、何もない所から武器が!」

「何これ趣味悪ィデザインだな」

「この武器どうやって使うんだよ!」

「俺一応怪我人なんだけど……はいもう治ってますねスミマセン」

「このアイテム何?」

「すみません【流血鴉(レイヴン)】、この刃に塗ってある薬液について詳しく」

 

 団員達から上がる感謝の声(ブーイング)を華麗に受け流し、一通りの武器を配り終えたカインはレフィーヤに視線を向ける。そっとフィルヴィスの背に隠れようとしていた妖精の少女はびくりと肩を震わせた。

 

「レフィーヤ、今からパーティの中心はキミだ。ボクとアイズ、ベートの三人は援護に徹する。ヘルメス・ファミリアと【白巫女(マイナデス)】と協力し、キミの最大火力で食人花(ヴィオラス)の群れを殲滅するんだ」

「……おい、何勝手に仕切ってやがる。そんな七面倒臭ェことしてる暇あるなら俺が──」

「はいベートきゅんシャラップ」

「ぶごばァ!?」

 

 この期に及んで悪態を吐こうとする【凶狼(ヴァナルガンド)】の鼻先で、カインは容赦なく『匂い立つ血の酒』の栓を開ける。噎せ返るような血臭が目の前で爆発し、ベートは目に涙を浮かべてその場に引っ繰り返った。

 

「わ、私がパーティの中心……!?」

「この中で最も火力の高い魔法を撃てるのはキミだからね。ボクの秘儀もアイズの風も、一点突破の破壊力には長ける一方で広範囲をカバーするのには向かない。そして今この場で求められているのは、まさに高火力・広範囲を兼ね備えたレフィーヤの大魔法なのさ」

 

 確かに嘘は言っていない。複数戦が苦手なカインは元より、アイズの切り札(リル・ラファーガ)もまた対単体を想定された一点集中型の魔法だ。いずれの真価も強大な個との戦いでこそ発揮される。

 とはいえ、“苦手”だからとて“できない”とは限らない。この程度のモンスターの群れならば、たとえヘルメス・ファミリアを庇いながらでだってどうとでもなるだろう。しかしその事実について、カインは全く悪びれることのない笑顔で口を噤んだ。

 

 別に意地悪する意図があってこんな無茶ぶりをしたわけではない。これは言うなれば後輩の成長を願う親切心だ。レベルの暴力に物を言わせて強引に事態を収拾することはできるが、それではレフィーヤにとって何のためにもならない。わざわざ24階層くんだりまで来て、そのまま何もせず帰ったのではそれこそ徒労だろう。

 

「……仕方ありません。Lv.6の庇護の下、安全に経験を積めるのだと前向きに考えましょう。

 総員、方円陣形! 【千の妖精(サウザンド)】が詠唱を終えるまで何としても陣を死守しなさい!」

「ひえぇ、マジかよアスフィ!」

「つべこべ言わない! 今回の冒険者依頼(クエスト)を受けたのはあくまで我々ヘルメス・ファミリアです。このまま余所様におんぶに抱っこで終えたのでは眷属の名折れ! それが嫌ならば意地を見せなさい!!」

 

 【万能者(ペルセウス)】の覇気の籠もった一喝により、ようやく覚悟を決めた一同は各々が与えられた武具を手に陣形を組む。

 一度腹が据わってしまえば後は早かった。元より彼らの連携力は中堅ファミリアとしては破格のものがある。一同はベートでさえ感心するような一糸乱れぬ動作で陣を形成、レフィーヤを中心に厚い防衛網を展開した。

 

「あわわ……」

「大丈夫だ、ウィリディス。お前のことは私が守る」

「ふ、フィルヴィスさん……!」

 

 最後の意地で気炎万丈の構えを見せるヘルメス・ファミリア。そこはかとなく百合の香りが漂う麗しき二人のエルフ。二組が戦闘態勢を整えたのを確認すると、カインは既にやる気十分なアイズと何故か死にそうになっているベートに微笑んだ。

 

「よし、それじゃあボクらも始めようか」

「うん」

「ぉぉぉ……てめぇカイン、後で覚えてやがれ……!」

 

 【凶狼(ヴァナルガンド)】の怨嗟の声は華麗にスルー。カインは車輪に手を添え──一息に仕掛けを起動。《ローゲリウスの車輪》に秘められた素晴らしき本性を露わにした。

 

 金属製の軸を中心に重なる車輪が二つに分かれる。果たしてその内側より溢れ出したのは、汲めども尽きぬ怨念の奔流であった。

 響き渡る号泣と悲鳴は、車輪にこびりついた夥しい血痕の主達のものであろうか。それは醜悪異様なる不定形の怨霊の姿を取って乱舞し、車輪を取り巻くように渦巻いている。

 

「ふふふ、怨霊達の(こえ)が聞こえるかい? 聞こえているならもうすぐだ。

 ──お前もそうなるんだよ、モンスターども!」

 

 噴出する瘴気は、かつて処刑隊によって壊滅の憂き目にあったカインハーストの貴族達の成れの果てである。そして憐れに叫ぶことしかできぬ怨霊と化したそれらも、憐憫の感情とは無縁な狩人にとっては有用な武器の一つに過ぎず。情け容赦なく、カインは怨霊の住処となった車輪に血晶石を捩じ込んでいた。

 奇しくもそれは、今まさにイズでリヴェリアと対峙しているであろう脳喰らいから獲得できる血晶石……物理乗算神秘加算の血晶を搭載した、いわゆる悪名高き「加算車輪」である。カインは《加速》を乗せたステップと共に乱回転する車輪を突き出し──一体の食人花(ヴィオラス)()()()()()

 

 打撃に耐性があろうと関係がない。仕掛けを起動し怨霊を解放した《ローゲリウスの車輪》は、物理一辺倒だった変形前とは打って変わり神秘の属性を帯びる。当然ながら神秘に対する耐性などない食人花(ヴィオラス)に為す術などなく、絶叫する怨霊の餌食となって次々とその身を砕かせていった。

 

「ヒャッハー! モンスターは一匹残らず潰して潰して潰して、魔石ごと纏めて塵に還してやるぜー!」

「……やっぱり一人でも問題ないんじゃないですか」

 

 援護に徹するなどと言っておきながら、いざ変形したらこの始末。一人で全ての食人花(ヴィオラス)を粉砕せんばかりの勢いで駆け回るカインを見て、アスフィは呆れたようにため息を吐いた。

 

(とはいえ、一人も欠けず帰還できそうで何よりです。これで18階層の酒場に残してきたボトルも、無事空にできそうですね──)

 

 アスフィは一度死にかけた身とは思えぬ堂々たる威厳を纏い、次々と仲間へ指示を飛ばす。

 たとえ疲労の極致にあろうと【万能者(ペルセウス)】の指揮に衰えなし。ファミリアの団長に相応しい辣腕を披露するアスフィの表情は、全身に圧し掛かる疲労を感じさせぬほど明るかった。

 




とんだ地雷青おったな(怪物の宴(モンスター・パーティ)の対処の大部分をヘルメス・ファミリア(ホスト)に丸投げするカインを見ながら)
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