甚爾も悟もいない毎日は「暇」の一言に尽きた。指折り数えれば、二人がリタの山に出入りするよーになってからもう十五年以上。知らぬ間に二人の存在はリタの毎日に欠かせないものになっていた。
「暇だわー」
口に出すくらい暇だったから、リタは漫画を読んだ。だってほら魔法は想像力あってこそだからウン他人の作り出した想像を参考にして新しい魔法を作ったらいーじゃない?――って自分で自分に言い訳して月刊少年ジ◯ンプを寝転がって読み、びびびっと天恵を得た。
「魔砲ほしい」
銃はロマンだし魔法も(一般的には)ロマン。ロマンとロマンを掛け合わせればこれこそ男のロ・マン。
とゆーわけでリタは倉庫に仕舞いこんでた銃をいじり回し、いかに魔砲っぽい銃を作るかって研究をだいたい二年――しかしリタが思うよな魔砲は未だ作れなかった。
誰しも合う合わない、向き不向きとゆーやつがある。研究や開発が得意な魔道師ならまだしも、リタは理論より感覚派の魔道師なのだ。まず理論の構築から行き詰まり、どうにかそれらしいものを作ったはずがあれもこれもと詰め込もうとしたせいで魔法式がスパゲッチーコード化してたとゆー壁にぶち当たり……一歩進んで二歩下がる一日一本三日で三本と迷走を繰り返し、そしてロマン武器製作を諦めた。合わないことするもんじゃないね。
で。いじり倒した拳銃やらライフルやらを物置に放り込んで、『近々L様が伏黒家のベビーとして爆誕してしまう問題』をどうしたもんかと考えてたところに悟から「かめは◯波か螺◯丸を撃てるような道具くれ」とゆー依頼。リタは悩んだ――魔砲製作で七転八倒した記憶はまだ新しい。
断るか?――いや、断るのはなんか
ひんひん言いながら素材を用意して、L様の爆誕問題から目を逸らしながら加工して、どーにかそれっぽいのが完成した時には三ヶ月近くが過ぎていた。
「もう二度とこんなの作らないからね……もう本当に無理。どんだれ頼まれたとしても絶対作らないわよ」
「あんがとなリタ。きっと傑も喜ぶぜ!」
「人の話聞いてる?」
良い子の悟くんはウンウン頷いた。悟くんだってちゃんと分かってるのだ――これを作るのに三ヶ月も掛かったってことは、リタはあんまりこーゆー工作が得意じゃないんだろう。
その螺◯丸グローブの納品からの一年は瞬く間に過ぎていった。
山に住人が増え、リタは過度のシャブ吸いによる消化不良でダウンそして復調。京都や大阪ではスーパーサイ◯人がかめは◯波ならぬよなおし波を乱発し、東京ではゴ◯ドマーズが「(相手の攻撃を)避けないんじゃない、避ける必要がないのさ」とイキってアニメーターの作画コスト削減に取り組んでる。ゼロスはリタの身代わりとしてL様の生け贄にされながらもスレイヤーズ世界とこちらの世界を行き来して情報収集やらなんやら。まるで坂を転がり落ちるボールのごとく、何度も跳ねながらぐんぐんと時間の流れはスピードをあげていき、そして。
悟が高専を卒業してすぐの夏、シャブラニグドゥの魂の欠片を持つ者が新たに見つかった。スレイヤーズ世界では既に成人扱いされる十七歳の少年――名前はリオーノ=インバース。自他共に認める天才魔道師だとか。
二千年前にシャブラニグドゥの欠片を二つも消滅させたリナ=インバースのヤバい姉の子孫か父方親族の子孫だろう。リナ=インバースはガウリイ=ガブリエフと結ばれたため彼女の子孫はガブリエフ姓を名乗っている。
報告書を見下ろしインバースの文字をなぞる。歴史は繰り返されるのか。ここに来てドラまたの家系が壁として現れたのには理由があるのでは。
リオーノ=インバースの持つ欠片を取り込んだら、リタは七分の三になれる。だけど彼と関わることでレゾやルークみたく消滅する羽目になったら……リオーノ=インバースの持つ欠片は後回しにするか? 先に北の魔王から欠片を取り込んでしまって、リオーノ=インバースに押し負ける可能性を叩き潰してから動くべきか。それとも残る一人の欠片の持ち主が見つかるのを待つか。だがその最後の一人はいつ見つかる? 五年後? 十年後? もしかすると三十年後とかになるかもしれない。
既に欠片の持ち主だと分かっているリオーノ=インバース、いつ見つかるとも分からない残る一人、北の魔王。一番楽に欠片を取り出せるのは北の魔王だが、北の魔王には竜王による監視がついている。北の魔王を取り込んでしまえばこちらの動きが感付かれてしまう――
この世界に生まれたL様はどんどん成長している。甚爾や恵と関わりこの世界の様々なことに触れ、二人とこの世界への執着心を日ごとに肥大化させている。
これがどーゆーことかってゆーと、さっさとL様を混沌の海に戻さないとヤバいってことだ。残された時間はそんなに長くないだろう。期限はそう、分かりやすく区切ろう。L様が十歳になるまで。
「ゼロス」
リタはぎゅっと目を閉じた。どれもハイリスク。ならば、まだ可能性のある方に賭ける。
「リオーノ=インバースは捕獲しなくても良いわ。だけど竜王の目が届かないような場所で足留めしてちょうだい――傑には私から伝えるわ」
無事リタは腹痛に沈み、これでシャブラニグドゥの魂は七分の三。竜王はそれぞれ四分の一だから各個撃破できるならリタが優勢だが、竜王二人や三人を一度に相手すればリタが負ける。
もう一人シャブラニグドゥの欠片の持ち主が現れれば七分の四、そして最大にして最古の覚醒者レイ=マグナスを取り込んでしまえば七分の五。最低で七分の四、できるなら七分の五――そうすれば、スレイヤーズ世界に混沌を呼び戻すことができる。
それから数年――
「許せないよねぇ……過剰防衛は悪なのか? 力に振り回される少年を導いてこその大人なんじゃないのかい? 君たちもそう思わないか」
そんな陰湿な行為がこの世で一番大嫌いな男は、長い黒髪を金色に染め上げながら呟いた。ラスボスか秘密結社のリーダーみたく大物感に溢れている。
彼が報告書の束をぱさりと一枚板のテーブルに放れば、成人した塾生らが「はい、塾長」と声を揃える。
九年前は二桁しか
「ならば我々は大人の義務を果たそうじゃないか。……革命を始めよう」
塾生に通知が回る。もちろんそれは、葵にも。
| <ミレニアム塾生(9) ? ✆ ≡ |
今日 部長 塾長から↑確認と回答たのんます 18:07 ゆきのんラブ 俺ら未成年だから今回の件に関係ないのでは ボブはいぶかしんだ 18:31 花田 正義の題目の下暴れられると聞いて 18:37 花田 あ、おちんぎんは出ますか? 18:38 達也 @花田 嫌だわこの人またお金の話ばっかり 18:41 花田 間違えた おち◯ちんは出ますか? 18:42 ✿Kana✿ はなだしねきえろかす @部長 確認しました。サポートならいけます 18:45
既読319:01 高田ちゃんの個握と被るようなら不参加で
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偉大なるタグの魔道師・紅葉煉瓦先生に感謝――ッ!
私事ですが結婚することになりました。しかしどこに住むか等で揉めまくっており前途は多難です。執筆速度アップは期待できません。有り難うございました。