朝、クラスに入っても誰も顔を合わせてはくれず声を掛けても無反応。
私の机の上には花瓶が置かれ、真っ白い花が一輪差してあります。
担任の先生も出席確認で私の番を飛ばし、プリントも用意してくれません。
他のクラスの子も、部活の後輩たちも、先生たちも、私を無視しします。
そんな生活が数日過ぎた頃、私は運命の出会いを果たしました。
初めましての方は初めまして、そうでない方はお久しぶりです。
Bleachの最終章「千年血戦篇」がアニメ化する話を聞き、今更感はありますが久しぶりに二次創作をすることにしてみました。執筆(タイピング)するのも懐かしく、どんな風に自分が書いていたか覚えていません。
なので至らない点、誤字脱字等があると思います。
その辺りは何卒ご容赦くださいますようお願い申し上げます。
では、本編をどうぞ。
いきなりですが、私はいじめを受けています。
朝、クラスに入っても誰も顔を合わせてはくれず声を掛けても無反応。
私の机の上には花瓶が置かれ、真っ白い花が一輪差してあります。
担任の先生も出席確認で私の番を飛ばし、プリントも用意してくれません。
他のクラスの子も、部活の後輩たちも、先生たちも、私を無視しします。
そんな生活が数日過ぎた頃、私は運命の出会いを果たしました。
「どうして、こうなったのかな……」
私は藤堂美咲、聖ステラ女学院中等部に通う三年生です。
前述の通り私はいじめを受けていますが、何も昔からこうだった訳ではありません。少し前まではクラスメイトとも仲が良かったし、成績も決して良いとは云えないながら試験で良い点を取れば先生から褒めて貰え、同じ部活の後輩からも慕われていました。自慢ではないけれど、陸上部の選手としてちょっとした有名人でした。
それが、ある日を境に状況は一変してしまった。
『へぇ、これが旧女子寮ねぇ』
『場所こそ知ってたけど、こうして見るのは初めてだよね』
『そんな無駄話してないで、早く入っちゃおうよ。巡回の先生が来ちゃうよ』
中等部最後の年、ゴールデンウイークの最終日に私はクラスでも特に仲の良い二人と一緒に裏手にある木造の旧女子へと訪れました。名目としては夏休みに計画していた肝試しに向けての下見をしに夜の旧女子に向かいました。
特に何かある訳ではなく、その下見は終わりました。
けれど、どうしてか連休明けから周囲の様子は一変してしまった。
『おはよー! みんな、元気にしてたー!?』
『それでさー、その人ったらね』
『へぇ、そんなことある!?』
『あ、あれ、みんな……?』
突如と始まった、集団からのイジメ。
もしや旧女子寮に立ち入ったことが原因とも考えたが、そこまでのことかとも思った。それでも直ぐに皆、元通りに接してくれると甘い考えを抱いていた私だったけど、それは一日二日を経て気が付けばもうじき五日になる。
誰にも相手にされない、誰にも見てもらえない。
ただそれだけのことが、どうしようもなく苦痛を伴うことを私は初めて知った。
好意の反対とは嫌悪ではなく無視であると聞いたことはあるが、他人に相手にされないということがどんなことを意味するのか。人間とは精神に異常をきたしていない限り、孤独では生きられないのだと理解した。
人の噂も七十五日と云うけれど、そんなの私には耐えられそうになかった。
何しろ物の三日で、私の気分は底辺にまで落ち込んでいた。
「今日は体育か……暫く動いてないなぁ」
あれだけ走るのが好きだったのに。
今となっては運動する気力すら不思議と湧き上がってこない。
それでも皆の後についていき、体育館の端っこで見学者の定位置に着く。
今日の授業は隣のクラスとの合同授業、混合チームによるバスケットボールだ。
「バスケ……みんな、楽しそう」
「石田さん、お願い!」
ぼんやりと眺めていると、一人の女子生徒にパスが回る。
受け止めたのは、確か石田朔良さんという隣のクラスの子だ。隣のクラスなので詳しいことは知らないけれど、GW明けという微妙な時期に編入してきた子と聞いている。別に他校で問題を起こしたので転校してきた訳ではなく、どうやら東京から生活体験留学として一週間だけの編入らしいと同じ部活の子が話しているのを聞いた。
石田さんの見た目は、正に深窓の令嬢そのものだった。
腰まで届く艶やかな烏の濡羽色の髪に、理性的でいて氷のように冷たい瞳。背は他の子と比べてもやや高く、ピンッと背筋も張っているのでより高く見える。決して活発とは言えず、教室でも自分の席で静かにしているとか。あまり人付き合いが好きではないのか、いつも小難しい本を読んでいるらしい。
今日とて授業だからとチームに入っているに過ぎない。
だから、そんな子にパスしたところで。
「え……うそ?」
石田さんは軽々と3Pを決めてしまう。
相手のチームは誰一人として警戒しておらず、仲間ですら苦し紛れのパスでしかなかった筈なのに石田さんはシュートを決めて見せた。とても普段から運動を避けていた子とは思えない程、今のは鮮やかなシュートだった。
信じられなかったが、その後は彼女の独壇場と化した。
相手チームには運動部の子もいるのに、石田さんは相手からのスティールを軽々と避け、ドリブルで抜いて着実に点数を稼いでいった。そしてあっという間に上限である21点を獲得しきりゲームを終了させてしまった。
「い、石田さん、運動できたんだね?」
「元々運動は得意な方なの。前の学校に居た時も陸上部と文芸部を掛け持ちしていて、たまにバスケ部に助っ人で呼ばれたこともあるわ。けど、ここには一週間しか居ないから運動部に入るのは止めておこうと思ったの」
「そ、そうだったんだ」
石田さんの説明に全員が納得する。
確かにここはお嬢様学校ではあるが、運動にも力は入れている。
おそらく彼女ほど運動が出来るのならエースとして活躍するのも夢ではなかった筈なのに、たった一週間しか居られないのでは運動部に勧誘する意味もない。これだけの逸材が目の前にいるのにと運動部の子が視界の端で落ち込んでいる。
「思わぬ事実……あれ?」
石田さんに再び視線を戻すと、目が合った気がした。
まさかと思っていると、石田さんはそのままこちらに向かって歩いてくる。
「あっ……」
もしかしてと淡い期待を抱くも、石田さんは隣を素通りする。
ああ、彼女もまた私を無視するのかと落胆すると。
「放課後、図書館」
それはとても小さな声。
隣に居なければ聞き逃してしまうほどか細く、しかし確かな声量。
思わず振り返れば、彼女は既にクラスメイトたちの方へと向かった後だった。
追い掛けて問いかけても、おそらく石田さんはきっと何も答えない。
なら、私は―――。
放課後、私は図書館を訪れていた。
あれから色々と悩んではみたけれど、結局私は彼女と会うことを決めた。
やはり久しぶりに誰かに声を掛けてもらえて嬉しかった私は期待したのだ。
「……本当にいた」
図書室の奥、窓際の一人用の席に彼女は座っていた。
夕方の西日の差しこむ図書室、その一角で静かに本を読む彼女はとても美しかった。
ああ、絵になるとはこのことかと納得する。
「あの、石田さん……」
恐る恐る声を掛けるも無反応。
石田さんは淡々と、読書を続けている。
自分で呼び出しておいて無視するのかとムッとなり、今度は大きな声で呼びかける。
「石田さん!」
「図書室で大声を出すなんて他の人に迷惑よ。静かにして」
返ってきたのは、注意だった。
それはご尤もだけれど、と思いつつも反応があったことに喜ぶ。
「良かった。石田さんは私を無視しないのね」
「無視?」
「そうなの! 私なんでかここ数日、みんなから無視されているの! 仲良かった子だけじゃなくて先生や部活の後輩も、みんなして私のことを見てくれないのよ! まるで、私が透明人間にでもなったみたいに!!」
「透明人間、ね……」
私の言葉に、石田さんは神妙な面持ちをする。
彼女は開いていた本を閉じると、じっと私の方を見つめてきた。
「あなた、自分が無視されるようになった理由は分かる?」
「……厳密には、分からない。ただ、ゴールデンウイークに旧女子寮に行ってからだから」
「旧女子寮? 貴方、あそこに踏み入ったの?」
「うん。夏に肝試しを企画していて、その為の下見をしに……」
「その時のこと、覚えている?」
「それくらい覚えているわよ。確か……」
口に出そうとして、言葉がでなかった。
確かに旧女子寮に入ったことは覚えているけれど、そこからが酷くあやふやだ。
一緒に入った友達と何を喋ったのか、何処を通ったのか、そしていつ別れたのかも。
「…………」
「その様子じゃ思い出せないようね」
「どうして、かな。私馬鹿だけど、記憶力には自信があったのに……」
「貴方には覚悟はある? 自分がどうして他人から無視されるようになったのか」
「……知りたい。私が何でみんなから嫌われたのか」
「分かったわ。けど今説明しても理解できないでしょうから、二十時に旧女子寮前に来て」
「旧女子寮? そこに何があるって言うの?」
「貴方が失くしてしまった物よ」
それ以上、石田さんは語らなかった。
私も約束の時間まで適当に本でも読もうかと思ったが、元より大人しく本を読むというのが苦手であったので普段は立ち入り禁止の屋上に忍び込む。そうして何をする訳でもなく、ぼんやりと景色を眺めれば時間はあっという間に過ぎ、気付けば太陽は地平線の向こうに沈み切り夜の帳が下りていた。
突然だけど、聖ステラ女学院は非常に土地が広い。
自然豊かな里山を、そのままキャンパスにした女子寄宿学校は百年という歴史を持つ。
敷地内には初等部から高等部までの三校舎、第一から第三まである体育館や同時に三つの試合が出来るテニスコート。二十万冊も蔵書された図書館に全校生徒が収容できる礼拝堂、三つの学生寮で構成されている。
そして件の旧女子寮は元々は中等部の女子生徒用の寮だった。現在は老朽化や耐震の観点から安全に問題ありと診断されたので、新女子寮が建てられてからは使われていない。異様な雰囲気を醸し出す古い建物。
その入り口の前には、既に石田さんが私を待っていた。
手には懐中電灯が一つと、何やら木片のようなものが握られている。
「あら、早かったわね」
「石田さんこそ、まだ約束の30分前だよ」
「私から待ち合わせ時間を指定したのだから、早めに来るのは当然よ。はい、これ」
そう言って、石田さんが何かを手渡してきた。
確認してみれば、それは神社でよく売られている何の変哲もないお守りだった。
「お守り?」
「ええ。保険だけど、ないよりはマシでしょう。ところで、貴方お腹空いてる?」
「え、うーん……少し空腹感はあるけどまだ我慢できるよ」
「そう、なら急ぎましょう」
石田さんが扉を開けて中に入り、私も続いて踏み込む。
一切灯りのない廊下には窓から差し込む月明かりだけが照らし、一歩踏み出すたびにギシギシと木が軋む音が静寂な通路に響く。ただそれだけで不思議と恐怖心が煽られる中、石田さんは平然とした様子で前に進んでいく。
いやな沈黙に耐え切れず口を開こうとした矢先、石田さんが話しかけてきた。
「そう言えば、どうして貴方はここに入り込んだりしたの?」
「え、それは肝試しのためだけど?」
「それは聞いたわ。ではなく、どうして旧女子寮を肝試しの舞台に選んだのかを聞いたの。あまり詳しくはないけど、こういった物はお墓に行くのが定番じゃないのかと思って。だから、どうしてなのかと気になって」
「そっか、石田さん知らないんだ? 噂の怪談話」
「怪談話?」
立ち止まった石田さんが怪訝そうな表情を浮かべる。
この手の怪談話というのは大抵の学校で一度は耳にしたことがあるけれど、この聖ステラ女学院の噂は他とは少し違っていた。だからこそ、私は友人たちと話してここを肝試しの舞台にしようと決めたのだ。
「この旧女子寮って古いわりに、確りしてると思わない?」
「……そうね。廊下は軋みこそすれ、今にも壊れそうという感じではないわね」
「私も先輩から聞いた話なんだけど、ここで事件が起きたらしいの」
私は誇張せず、聞いたままに石田さんに話をした。
実はこの旧女子寮では、十年ほど前に女子生徒が変死する事件が起こった。被害者には外傷のないまま突然死を迎えた者もいれば、まるで獣か何かに襲われたような者も混じっていた。何処からかガスが漏れているのかと調査するも成果はなく、もしや不審者が忍び込んでいるのではと警備員が巡回するが見付からない。それどころか警備員にまで被害が及び、当時の学校長も異常事態が起きていると理解した。
そこで学校側は藁にも縋る思いで霊能者に依頼をした。
霊能者曰く、この建物には悪霊が棲みついている。祓うことは出来ず、例えこの建物を使わずとも悪霊は外に出てきて犠牲者を増える一方だと。しかし封じ込めることは出来るので、以降は決して誰も踏み入れさせないよう指示した。
「――以降、この旧校舎は誰も立ち入らなくなった」
「成る程、そういうことね」
石田さんは納得した様子で頷く。
けれど、彼女の表情は先程より少し険しくなったように見える。
「話は変わるけど、ここのことは何か思い出せた?」
「えっと、あの日は……そうだ、今と同じように入り口から入ってきたんだ」
この旧校舎は三階建ての洋館だ。
今いるのは玄関の次の小さなホールを抜けた先の廊下、左に行けばリビングとDK、右に行けば浴室と幾つかの部屋がある。二階にあがる階段は廊下の左右どちらにもあるが、三階の物置部屋には右側の廊下からしか行けない。
あの日、私たちは肝試しのルートを決める為に全ての部屋を回った。
「一階から?」
「一階から全部。三階の物置まで順番に見て回ったけど」
「道中、何か変なものはなかった?」
「なかったと思うけど……ああ、でも二階で何かあった気がする」
思い出せはしない。
けど、二階で確かに何かを見つけたという記憶はあった。
「なら、そこに向かいましょう」
私たちは二階へと上がった。
幸いにも一階の廊下に館内図の描かれた間取り図があったので、それを手に二階の部屋を片っ端から見たけれど何も見つけられず、ただ歩き回っただけに終わり、私たちは二階で一番広い書斎で一休みすることになった。
「結局、何も見つからなかったね」
「そうね……」
「けど確かに二階だった気がするんだけどなぁ……石田さん?」
見れば、彼女は何やら図面と睨めっこをしている。
暫く図面を眺めていたと思ったら、まるで何かを探すように書斎を見回す。
「やっぱり、この部屋変だわ」
「変って、何が?」
「間取りがおかしいのよ。一階と二階で部屋の広さが違う。具体的に言えば、二階が狭い」
見せられた図面を確認すれば、確かに彼女の言う通りだった。
一階のリビングに対し、この書斎は三分の一ばかり狭く作られている。記憶ではこの建物の外壁は一階も二階も同じになっていたので、この差が生じるのはおかしいことになる。つまり、それが意味することは。
「隠し部屋がある?」
「そういうことね。部屋の向き的に………あったわ」
早速、石田さんが何かを見つけた。
彼女は書斎の入って右側の壁の一角を見つめており、そこには書棚の一つが置かれている。何事かと近寄ってみれば、書棚の右の床板には何かを擦ったような跡が残されている。これはよく映画なんかで登場する。
「仕掛け書棚?」
「みたいね。そして――」
石田さんが書棚に手をかけ、跡のある方に引っ張ると書棚が簡単に動いた。
そして、その奥から現れたのは、壁と同じ色で塗り潰された扉。本来取っ手があるべき場所にとってはなく、代わりに指を引っ掛けられそうな窪みがあった。その隠し扉の向こうを、私は確かに覚えていた。
「成る程、書棚で隠していたのね……って、待ちなさい!」
石田さんの制止を無視し、私は走り出していた。
隠し扉を開け放って向こう側の部屋に入ると、部屋には目もくれず奥のクローゼットへと一直線に向かう。いや、正しくはクローゼットに偽装された階段を駆け上がって三階の屋根裏部屋へと駆け上がった。
屋根裏部屋は薄暗く、光源は天窓から差し込む月明かりのみ。
木箱などを避けて慎重に奥へと進むにつれ、自然と呼吸が荒くなってくる。
「はぁっ、はぁっ……この先に」
「待ちなさい」
進もうとする私の肩を、誰かが後ろから引っ張った。
ぎょっとして振り返れば、そこには急いできたと思しき石田さんがいた。
「い、石田さん!」
「勝手に先に進まないでほしいわね。それで、思い出せたの?」
「わ、私、あの日に―――石田さん、後ろ!?」
それは突然だった。
気が付けば彼女の背後の暗闇に何かが潜んでおり、私が叫んだのとほぼ同時に石田さんの体はそれにより殴られて壁際の木箱に突っ込む。あまりの出来事に唖然としながらも、私は目の前のそれに身を震わせていた。
石田さんの落とした懐中電灯を手に取って照らせば、三メートルにも及ぶ全身が緑色の巨躯をした真っ白な仮面を付けた怪物がいた。その胸にはぽっかりと大きな孔が開いていて、向こう側の景色が見ることが出来た。
「ひっ、ば、化け物……!」
「んあぁ? 誰かっち思えば、あん時ん小娘じゃなかか! 食べられに戻っちきよったか!」
「な、なにを……」
後ろに後ずさると、何かが足に当たった。
何かと思って懐中電灯の明かりを向ければ、それは一部が白骨化した人の遺体だった。
「ひぃっ! 人の死体!?」
「懐かしかやろ。友達ん顔ばみるんは」
「えっ、友達って……もしかして、みっちゃん?」
見覚えのあるアクセサリーを付けた遺体。
一緒にここを訪れた友達のみっちゃんがつけていたお気に入りの腕輪。
それを目にした瞬間、私の脳裏にあの日の記憶がフラッシュバックした。
「そ、そうだ。あの夜、私たちはここにきて、そして……襲われた」
あの日、私たちは旧女子寮を訪れた。
一階から順番に巡り、二階の書斎で偶然にも隠し部屋の存在に気付いて中に入った。そしてこの屋根裏部屋に入って探索していたら、みっちゃんが身体を引き裂かれて宙を舞った。素人目にも致命傷なのが分かり、混乱しながらも私とこんちゃんは逃げ出した。下の階に降りたところでこんちゃんが犠牲になり、私は背中を引き裂かれながらも建物から逃れることが出来た。
「そん通りだ。わしの殺したばい。久しぶりん魂魄に我慢でけんかった!」
「け、けど! 私はここにいる! まだ死んだとは!」
「己ん胸ばちゃく見てみろ」
言われて視線を落とせば、胸には何故か鎖があった。
それは私の胸から垂れ下がっていて、どうして今まで気付かなかったのだろうか。
「こ、これは……」
「そいは因果ん鎖っち言うて、人間ん肉体っち魂ば繋ぐ鎖だ! あん夜、傷付いたにしゃは魂だけっちなっち逃げやした。食い逸れたっち思ったの、にしゃは戻っちきよった。そいも新しい餌ばつのうて!!」
「餌って……まさか石田さん!?」
「あん娘は美味しそーだ。霊力も強かのごたぁやしな」
「あ、あんたは何なのよ」
「わしか? わしはなぁ――」
「そいつは虚、現世を荒らす悪しき霊体よ」
そこへ殴り飛ばされた石田さんが姿を現した。
こんな化け物にやられたのに、彼女はまるで無傷といった様子でいる。
「石田さん!」
「にしゃ、わしんこつば知っちいるんか? そいに、なして無傷なんや」
「不意をつかれたけど、あの程度の攻撃じゃ私に傷一つ付けられないわ」
「なんだっち?」
「先程の問いに答えてあげる。私は滅却師、お前たち虚を滅ぼす者よ」
「滅却師? 聞いたこつもなかな」
「別に知らなくていいわ。お前はここで消えるのだから」
そういって、石田さんは何かを取り出した。
それは入り口のところで見かけた、木片のような代物だった。
「そげなちんけな物で、一体どげんするっち言うんだ!」
「見ていれば分かるわ」
そういって彼女は不敵に笑った。
すると、石田さんの周辺の空間から光の粒子のようなものが木片へと集っていく。やがて何かの形を形成していき、出来上がったのは月明かりに反射する武骨な鉄の塊――拳銃となって彼女の手の中に納まっていた。
「な、なんだそいは!?」
「霊子兵装、これが私の武器よ」
「このっ!」
虚は腕を振りかぶったけど、石田さんの方が早かった。
銃口から放たれた光は一撃の下に、虚の巨大な体の上半分を消し飛ばした。
(ああ、綺麗だなぁ……)
場違いにも、私は石田さんの姿に見惚れていた。
人間は非現実的なことが目の前で起こったら呆然とするのかと理解した。
「大丈夫?」
木片へと戻ったそれを仕舞い、石田さんが話しかけてくる。
それから彼女は事情をすべて話してくれた。
今年になって新しくなった学園長は、ここを取り壊すために悪霊退治の専門家を呼び、そこで派遣されてきたのが石田さんだった。そして奇しくも私の遺体が校舎の傍で見つかり、警察の調査が入った為に暫く身動きが取れずにいた。そんな折に彷徨う私を見付け、魂が限界に近いと察して行動に移したらしい。
「そっか、やっぱり私死んでたんだ」
誰も私を無視していた訳じゃなかった。
私が魂だけの存在になっちゃったから、誰にも見えず聞こえもしなかった。
あの白い花も、いじめなんかじゃなくて私に手向けた弔花だった。
「これから私、どうなるのかな? 天国、それとも地獄に行くの?」
「いいえ、貴方は案内人によって昇華される。苦しみはないと聞くわ」
「そっか。ねぇ、石田さんはこれからどうするの?」
「役目は終えたから、また東京に戻るわ」
「……石田さん、また会えるかな?」
「いずれ、私もそっちに行く時が来るわ」
「そっか……」
そして石田さんは帰っていった。
私は一人校舎の屋上で待っていると、やがて黒い着物を着て刀を帯刀する少女が現れた。
少女の手により、私は死後の世界――尸魂界へと送られることになった。
長かった悪夢が、ようやく終わった。
如何だったでしょうか?
拙い文章ですが、気に入っていただけたでしょうか?
漫画も手元にはなく、Wikipediaを活用しながら書いています。
もし原作と違う部分があった場合は、申し訳ありません。
因みにタイトルの「Rettung der Seele」は「魂の救済」という意味です。ネットの翻訳を使っているので合っているか、実のところ知りません。作中の博多弁のところもネット翻訳を使っているので、これじゃあ意味が違うや伝わらないがあるかもしれまんせん。
最後に今回は私の作品を読んでいただきありがとうございます。
もし縁があったのなら、また私の作品を読んでいただけたら幸いです。
では、クリック? クラック!