クククッ、逃さねぇぜシェリー   作:きりりん

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20話

 

 

 

あれから少し時間が経ち計画の第二段階が無事に成功し、スパイたちからの報告を受け思った通りの結果に満足していたところにウォッカから連絡が入った。内容は「世界中の傘下にしたヤツらが次々に逮捕されてるらしいんだが何か知らないか?」という事だったので、それは俺の采配でそうなってる事を伝えてやる。

 

「お前なんでわざわざ情報を流した?兄貴が怒っても知らねぇぞ」

 

「ククッ、トカゲの尻尾を差し出してネズミ(スパイ)たちが警察機関の中心部に食い込むことができるなら安いものだ。そして捕まったヤツらは何も情報を持っていない。それにこうしておけば出てきた後に()()()しても疑われにくくなるというわけだ」

 

「それならそれをなんで言わねぇんだ?」

 

「これはただの仕込み段階だからな。わざと捕まえさせているのも何の情報も持っていない傘下の人間だ。わざわざ報告するまでもない事だと思ったんだが、ウォッカは何を気にしているんだ?」

 

「例の研究がうまく進んでねぇから兄貴がお冠なんだよ。そこに傘下とはいえ各国で逮捕者が出てるなんて聞けばピリピリしても仕方ねぇだろうが」

 

「そりゃ悪かったな。だがその心配は無用だと伝えておいてくれ。計画通りだと思ってくれて構わん」

 

「わかった。兄貴には伝えとくが、これからはちゃんと言っておけよ」

 

ふむ、研究がうまく進んでなくてジンがピリピリしてるのか。むしろイライラピリピリしてない時ってあるのか?まぁ傘下の組織構成員たちが各国で次々に逮捕されればイラッとしても仕方ないか。その原因俺だけど…すまないウォッカ。

 

しかし研究の進捗はあまり良くないようだな。こっちもシェリーが急かされてないから研究はしててもそこまで進展があるわけじゃないし…そろそろ材料を投下してあげようか。

 

教えてもらった服部平次のアドレスに『何をお土産として持っていったのか』を聞く内容のメールを送り、しばらくして返ってきた返事を見てからシェリーに声をかけ一人でスーパーにパイカルを買いに行く。

パイカルを購入してしまえば後は状況を整えるだけ…なんだが、どうやってシェリーに風邪を引いてもらおうか。こんな事ならこの前風邪気味になったときにパイカル飲ませるべきだったか…もったいない事をしたのかもしれないな。

 

風邪と同じような症状にするために思いつくのは、大量の冷水をかける…ただの幼児虐待だ。寒いところに放置する…ただの(以下略)。直接「風邪引いてくれ」って言う…意味がわからんよな。ジンの名前を出してみる…シェリーがただ青ざめて震えるだけだが、ある意味似た症状か?うーん…なかなかいいアイデアが思いつかない。

 

もし俺が「風邪引いてからパイカル飲んだら一時的に元の姿に戻れる」って言ったところで何の確証があって言ってるんだってなるのは目に見えてるし、こういうのは実体験があったほうがすぐに信じられる。ただ口で説明したところで理解してもらえないのは簡単に予測できるだけに難しいな。

 

この際風邪と同じ症状を引き起こす薬を阿笠博士に頼んで作ってもらうか?実際に作ってたんだからできないって事はないだろう。すでに一度超小型録音機を作ってもらってるわけだし、今回もきっとコナンくんは博士の背中を押してくれるだろう。

 

 

 

 

そしてコナンといえば、俺には予てより疑問に思うことがあった。

 

それは工藤新一がコナンとして活動するための地盤の事だ。なぜ毛利探偵事務所なのか……仕方がなかっただとか、状況的に都合が良かったとか、そういう運命(物語)だったとか言い訳はあるかもしれない。だが、そこにコナン…いや、工藤新一の意思がまったく介在していなかったのだろうか?

 

幼馴染の毛利蘭の父親がたまたま探偵事務所をしていたとしても、毛利小五郎が元刑事であり目暮警部たちと知己であったとしても、工藤優作と工藤有希子という両親までいるのならば他にもっと選択肢はあったはずなんだ。まして彼自身高校生探偵として新聞に掲載されるほどの活躍を見せている。それはコナンとなって事件解決する際に電話で目暮警部に指示を出したりできるほどの影響力だ。

 

そんな毛利探偵事務所や阿笠博士など周りを利用しているにも関わらず、確実に有利になるであろう両親などの力には頼らず、まるで自分の力だけで黒の組織をなんとかしようとしているかのような矛盾した行動だ。本人に聞ければ一番なんだろうけど、ここは近くにいる才女に意見を聞いてみるのもいいのかもしれない。もしかしたら俺の考えつかない理由を思いついてくれるかもしれないしな。

 

「なぁシェリー、ちょっと疑問があるんだが構わないか?」

 

「なによ?私が答えられる事なら答えるわよ」

 

「工藤新一なんだが、彼はなぜ毛利探偵事務所を拠点としたと思う?」

 

「…探偵事務所という場所が、事件を追いかけるのに都合が良かったという事ではないの?」

 

「本当に俺たち(黒の組織)を追いかけたいのならば、もっと良い方法があったのではないかと思ってね。東都にあるたかが一探偵事務所にそこまでの情報収集能力はないだろう?」

 

「確かにそうね。他には思いつかないけれど…案外大事な幼馴染の近くにいたいとか、そんな単純な理由かもしれないわよ?」

 

なるほどなるほど。俺の視点だとどうしても物語的の進展という要素も含めて考えてしまうが、それを除けばシェリーの言っている事も案外的外れではないのかもしれないな。

 

そしてこのシェリーの冗談めかした仮説を表現するに相応しい単語は俺の知識の中にあった。これまでのコナンの行動の中にヒントは散りばめられていたわけだ。ククッ、まさか俺が探偵まがいの推理をするとは思ってもみなかったが、どうやら俺にも探偵としての素質が備わっていたらしい。あえて言おう……謎はすべて解けた!!

 

 

工藤新一の性癖は『おねショタ』だったんだ!!

 

 

もちろんこれは推理だから逆の可能性もある。もしかしたら『おねショタ』じゃなくて『ショタおね』のほうなのかもしれない。さすがにこればっかりは俺にもわからないし、蘭ねーちゃんが攻めなのか受けなのかはきっとコナンにしかわからない事だろう。そして必然にも小さくなった工藤新一は、隠して胸に秘めていたはずの想い(妄想)を実現するべく動いていたと考えれば非常にしっくりくる。

 

後付の理由にはなるが彼の家には無数の本が貯蔵されており、その中に性的表現が含まれている本だってあるだろう。そして工藤新一の父親は小説家でもある工藤優作だ。つまり新一にも架空の物語を考える才能が受け継がれているかもしれないし、工藤有希子のメイクの腕は『描く』という才能として受け継がれているのかもしれない。その想像力と表現力(両親から受け継いた才能)を活用すれば、その想いを(薄い本)にすることだって可能だろう…彼の家の本棚の奥底にはそんな妄想を具現化した一品が眠っている可能性は高い。

 

それらが結果として、中途半端に新一の存在を匂わせるだけ匂わせておいて『会う事もできず寂しさの募る蘭ちゃんを眺める』という行為に繋がってしまったんだな。そしてそんな蘭ちゃんを励ますのはショタとなった工藤新一だ。しかしマッチポンプもここまでくれば大したもんだ。

 

最終的な結末は蘭ねーちゃんに「コナンくん、何も怖くないからね……」って優しく攻められる展開なのか、それとも「ごめんね新一……私もう……」って受け入れるほうの展開なのか……考えたらキリがないが…たぶんそういった展開を楽しんだ後に工藤新一に戻り、蘭ちゃんの後ろめたさを利用して二度楽しむというわけだな。

 

つまり工藤新一は俺とは方向性は違えど好物のためなら突き進める同類かもしれない。いや同類に違いない!シェリーの何気ない意見によって答えを得た俺は、後はそれを確信へと至らせるべく行動するだけだ。

一応阿笠博士にシェリーのための薬を作成してもらうっていう目的(建前)もある。重大なヒントをくれたシェリーに礼を言うと共に少し出かける旨を告げ、米花町にある阿笠博士の自宅へとやってきた。コナンくんに話したい事があるからと阿笠博士に江戸川コナンを呼び出すことをお願いしたところ、阿笠博士もすぐに連絡を入れてくれたようで今から急いでこちらに来てくれるらしい。

 

待っている間に阿笠博士と少々世間話をしていたら、息が切れるほどに急いで来てくれたらしいコナンくんがやってきた。すぐに本題を出すのもアレなので、この前会った時の事を聞いてみたが、やはり警察の結論は予想通り心臓発作になったみたいだな。よかったよかった。

 

「それで……オレに話しておきたい事ってのは何なんだ?」

 

「ククッ、そう警戒する必要はないさ。そうだな……これは俺と君が実は似た者同士だったということに気づいたからなんだが、きっとこの話を聞けばきっと君も理解してくれるだろう」

 

「似た者同士だと?そんなわけがねーだろうが!」

 

「まぁ話を聞きたまえ。確かに一見すれば我々に接点はないように思えるかもしれない…だが、よく考えてみてほしい。だんだんと認めたくない事実(実は君がおねショタフェチだということ)が見えてくるんじゃないかい?」

 

コナンくんは随分とこちらを警戒しているようだ。やはり黒の組織の一員でジンの部下というところが引っかかっているんだろう。これが実は組織に潜入しているスパイだったみたいな立場なら変わってくるんだろうけど、残念ながら俺は正真正銘の組織の人間だからな。だが今日は組織の人間として来たわけじゃない。ちょっと君の嗜好を確認するだけの簡単な世間話だから気軽にしていてくれ。

 

「ああ、気に入らねーが確かに共通点はあるな。で、()()がどうしたってんだ」

 

「(自分の性癖を)理解できたようで何よりだ。(声豚)(おねショタ)には方向性(嗜好)の違いはあれども、その本質は同じようなもの(性癖)……つまり我々はその点においてわかりあえるという事だと思わないか?」

 

「思わねーな。どこまでいってもオレとオメーは交わることはねーし、オレはオメーらと違って犯罪を犯すつもりはねー!」

 

コナンの言う犯罪を犯すつもりはない……つまりこれは『ショタだけど本当は高校生だから合法だ』ということか!やるな工藤新一…自分の状況を利用することでその性癖を満たすだけでは飽き足らず、合法的におねショタを成立させていたとは……マッチポンプなところまでは読んでいたが、まさか合法ショタという抜け穴まで用意しているとは恐るべし。

 

流石に高校生探偵であり本編の主人公だ。こちらが言いたい事をきちんと理解し、穴がないように自分の状況を利用した理論武装までしていやがる。だが交わることはないとは随分な言い方じゃないか?俺は『おねショタ』だろうと『ショタおね』だろうと理解があるつもりだが、彼にとっては自分の性癖こそ至高で他は邪道とでも言うつもりか。やはり他の嗜好を受け入れられないのは若さ故という事かもしれないな。

 

「ふむ……(おねショタ以外の性癖を)認めたくないのか存外頑固だな。確かに君はそう思っている(同い年だから合法)かもしれないが、俺からすれば大して変わらない(結局おねショタ)と言っておこう……そしてそれはシェリーも例外ではない。何せ彼女もまた同じような(ロリBBAと呼ばれる)状況だからね。無論望んだわけではないんだが……」

 

「あたりめーだ!灰原をオメーらと一緒にするんじゃねー!」

 

「確かに君の言う通りシェリーがそういう(ロリBBAな)扱いを受けるのは不本意だろう。だが何を言ったところで()()である事に変わりはない。それは君だって理解しているだろう?」

 

俺はシェリーをロリBBA枠だとは思ってないけどさ。客観的に見たら成人女性が小学1年生の女児の見た目してるんだぜ?本人に言ったら激怒するだろうから言わないけど……これはもうどう考えてもロリBBAだろ?いくら本人は成人女性だからといって、もし俺があの姿のシェリーに手を出したらどう考えても犯罪だ……いや出さないけどさ。そういう意味では確かに俺とコナンは相容れないのかもしれない…俺には無理だもん。

 

「くっ……灰原がそうなったのはオメーらが原因だろうが!」

 

「何を言っている?アレ(ロリったの)は(俺の忠告を聞かず勝手にアポトキシンを服用した)シェリーの自業自得だろう……まぁ今はそんな話をしたいわけじゃない。工藤新一くん、君なら自分の置かれた状況(私欲に塗れた現在)を理解できると思っていたんだが、それでもまだ認められないのかな?」

 

「……ああ、何を言われようと認めるわけにはいかねー。オレは胸を張ってあいつらといるためにも堕ちるわけにはいかねーんだ」

 

認めてしまうと堕ちるとまで言うのか……蘭ちゃんをショタ好きに堕とすのではなく、工藤新一でありながら江戸川コナン(合法ショタ)として蘭ちゃんに手を出さないと自分が堕ちる判定になるなんて……ここまでくると蘭ちゃんが可哀想になってくるな。

 

きっと蘭ちゃんはノーマルだと思うんだ。なのに工藤新一の性癖のせいで曇らされて、着々とそこへと向かう道を歩かされている。それを悪いとは言わない。俺も様々な手段を用いているし、お前が言うなと言われても仕方ないのは自覚している。だからこそ共通点があるという事を伝えたかったんだが、彼の自分の性癖こそ至高(他のジャンルは認めない)という信念は崩れなさそうだ。

 

「やはり相容れないか…残念だが仕方がないな。それでは話はここらへんにして、ここへ来た本題に入ろうか」

 

そこまで貫くのならば同好の士を得るのは諦めるしかない。これ以上は得るものもないだろうし、さっさと阿笠博士に薬を作ってもらってシェリーの待つ隠れ家に戻ろう。作って欲しい薬について説明し、どれくらいで作成できるのかを合わせて確認していたらコナンくんから当たり前の質問が飛んできた。

 

「おい!まさかその薬を灰原に使うんじゃねーだろうな!?」

 

「ほう?よくわかっているじゃないか。その通り、この薬はシェリーに使用するものだ」

 

「それならオレが代わりにやってやる!だからもうこれ以上アイツに手を出すな!」

 

「(代わりにやるって、もう免疫できてるから無理じゃね?)残念ながら君ではシェリーの代わり足り得ないな」

 

「てめーらが何を企んでるのかオレにはまだわからねー…だが、灰原を自由にする気がないって事だけはわかった」

 

自由にする…か。そう言われると前世にあった少年誌(ジャ○プ)の世界征服が野望な高校生のマンガを思い出した。そのマンガ(B○Y)では確か悪役がヒロインの先生を誘拐してこんな感じの事を言っていたな。

 

「クククッ、シェリーは今も自由にしているさ…

 

  『()()』自由にな

 

だがそうだな…これは仮定の話なんだが、シェリー(合法ロリ)蘭ちゃん(おねショタ)だったら君はどちらを選ぶ?」

 

まぁ実際は研究したり紅茶飲んだり読書したりとそれなりに自由にしています。外出に関してだけはさすがに好きにさせるわけにはいかないけど、そこはシェリーも納得の上だから問題ない。

 

しかしここで俺の脳内では『なんでコナンは、今も隠れ家で元気にしているシェリーを返せだのなんだの騒ぐんだ?』という疑問が湧いた。俺はきちんとシェリーを保護していると伝えているし、シェリーの研究の手伝いとしてコナンから血液をもらったりとお使いもしている。つまりコナンのこのセリフはシェリーの身を案じて()()()()という事だ。そしてその疑問に対する答えがコナンの口から出た事で確信を得た。

 

「どっちかなんて選べるわけねーだろ!」

 

「ほう、(まさか両方味わいたいとは)君は随分と強欲だねぇ…」

 

やっぱりと言うべきか、まさかと言うべきか……コナンは蘭ちゃんだけではなく、シェリーまで狙っていやがるのか……

 

こいつの本性は蘭ちゃんが本命であるにも関わらず、ただ結ばれるのでは満たされないからとコナン(幼児化)で合法的におねショタしようとするようなヤツだ。そこにシェリー(合法ロリ)が現れた事によって逆バージョンも味わってみたいという事だったんだ。自分が幼児化するだけではなく、相手が幼児化している状況すらも楽しむとは……わかっていた事だったが、さすがの俺でもコナンの嗜好は理解できない。

確かにこいつが言った通り俺たちはわかりあう事も交わることもないだろう。あとシェリーをコナンに近づけるのは違う意味で危険だという事がわかった。顔を見せてやるくらいならシェリーの気分転換になるかもだしいいんじゃね?と思っていたが前言撤回だ。無闇に近づかせるなんてもってのほかだったわ。それがわかっただけでも収穫だったし、そろそろ切り上げてさっさと帰るとしよう。

 

薬についてはコナンくんからもお願いしてくれたので無事に阿笠博士から風邪と同じ症状を引き起こす薬を手に入れることができた。コナンくんがあそこまで特殊性癖(ド変態)だったとは予想外中の予想外だったが、一応近い内に研究成果をあげると約束して隠れ家へと戻ってきた。これから遠くない未来で起こるだろう事態に心を痛めつつ何もできない事を蘭ちゃんに心中で謝っておく。

 

戻ってきてすぐにリビングで寛いでいるシェリーに風邪薬とパイカルを渡し、効果を確かめるために服用することを勧めてみた。

 

「ただいまシェリー」

 

「おかえりなさい。欲しいものは手に入ったのかしら?」

 

「ククッ、勿論だとも。そして今日はシェリーにお土産がある。まずはこの薬を飲んでみてくれ」

 

「なによこれ?なんの薬?」

 

「なに、少しばかり風邪のような症状になる薬だ。そしてこっちは見ての通り酒だな。わざわざシェリーのために用意したんだ。早速試してみてくれ」

 

「風邪のような症状?しかもお酒まで…酔わせて薬の効きを早めるという事?わざわざこんな薬を飲ませるなんてどういうつもり?」

 

「日頃研究を頑張っているシェリーへの労いだ。さぁグイっといってみよう!」

 

「ねぇ、せめてきちんと説明してくれないかしら」

 

「百聞は一見に如かずと言うだろう?自分で体験してみないとわからない事もあるということさ」

 

というか風邪になる薬だって説明したのになんで説明しろって言うんだ?それに元の姿に戻るってのは説明するよりも体験させて驚かせたいよな。薬とお酒飲まされて最後には身体が伸びるわけだから考えただけでも「それなんて拷問?」って感じがしないでもないが……シェリーの顔色が悪いのはこれから何が起こるかなんとなくでも感じるものがあるのかもしれない。子供は勘が鋭いとか言うし、これから辛い思いをするっていうことはなんとなくでも感じてるんだろう。もしくは女の勘のほうか?

 

だがここで大事なことを1つ思い出してしまった。確か工藤新一が小さくなるとき、服は小さくならなかったはずだ。そして体が小さくなっても服が大きいならまだいい。

もし今シェリーが元の大きさに戻ったら…悪役が爆発四散する世界の世紀末な救世主みたいに着てる服がビリビリ破れないか?あれ?そういえば最初にパイカルで元に戻った工藤新一って制服になってなかったっけ。シェリーも元に戻ったらなぜかちょうどいいサイズの白衣とか着てるんだろうか?

もしそれならいいが、どう考えても服が破れるよね。いろいろ見えちゃうかもしれないよね。

 

…さすがにそれはダメだろ。だが大人用の女性服なんて隠れ家に用意してないぞ。

 

「シェリー、やっぱりストップだ」

 

「…なによ?ちゃんと言われた通り飲むから待ってて」

 

「悪いが少し足りない物を思い出したから先に買い物に行こう」

 

「あなたが早く飲めって言ったんでしょう?そんなの後でいいわよ」

 

あ、渡していた薬を飲んじゃった。自分から飲んじゃったなら仕方ない。しばらくしたらシェリーの顔に赤みが増し風邪の症状が出始めてきたようだった。さすがにリビングにいるのもどうかと思ったのでシェリーを抱っこして部屋まで運んでやり、ベッドに寝かせてからついでにパイカルを飲ませてみた。

 

どれくらいで作用し始めるのかわからないけど、このままだとシェリーが変身(?)するところを見ることになってしまう。貴重なシェリーの変身シーンを眺めていたいという気持ちはあるんだが、後から「…へんたい」とか言われたくないので出ていくほうがいいだろう。

 

 

 

……いや待て俺。これはチャンスじゃないのか?最近は外に行くこと(サブキャラ達を狙う事)が多くてシェリー(大本命)が近くにいるからと、いつでも声が聞けるからと高を括ってるんじゃないか?そうじゃないだろ。

 

 

クククッ、どうやら俺はいつの間にか日和ってしまっていたようだ。

 

 

初心を思い出したからにはここで退くという選択肢など存在しない。さぁシェリーよ、俺に変身シーンを魅せてくれ!苦しむシェリーを眺めてニヤニヤするというのは客観的に見たら少々趣味が悪いが、一応ベッドに寝かせてあるしちゃんと掛け布団(自主規制)もかけてある。

あ、せっかくだし元の姿に戻るシーンを録画しておくのも良いな。ちょっと地下室で録画機材を持ってくるか。

 

 

 

 

 

地下室へと向かい、ゴソゴソと探してお目当ての三脚とカメラを持ってシェリーの部屋に戻った俺は目の前の光景にショックを隠せなかった…

 

 

「…なによ?この姿(宮野志保)はあなたも知ってるはずでしょ。あとあまりジロジロ見ないでほしいんだけど…」

 

「ああ、すまなかった。シェリーのその姿を見るのは久しぶりだからな」

 

一時的だろうけど今目の前にいるのは宮野志保だ。布団から顔だけ出してジト目で俺を見ている宮野志保だ。つまり俺はせっかく録画しようと思ってた変身シーンを見逃すという失態をやらかしてしまったわけだ。今度阿笠博士のところに行ったら超小型高性能カメラも作ってもらう事にしよう。

 

つい凝視してしまったわけだが、別に厭らしい意味じゃない。それはそれとして俺の頭の中では「どうやったら薬の効果とはいえ伸び縮みするんだろ?」という疑問が浮かんでいるだけだ。

 

もしかしてアポトキシンってのはゴムゴムのギアサード効果なのか?それとも中国的な場所の山奥にあるゴム人間が溺れて死んだと伝えられている伝説的な泉の効果とかだったりするのか?こればっかりは結果を知っててもマジでわからんな。

 

「あなた、()()()()()を知っていたの?」

 

「…以前工藤新一が元の姿に戻ったことは伝えただろう?とはいえ俺も全部を把握しているわけじゃないから、限りなくその状況を再現することでシェリーでも同じ事が起こらないかと思ったわけだ。当時の江戸川コナンと同じ体調にするために薬で風邪の症状を引き起こし、大阪からの土産として渡されたであろうこの酒を服用させてみたというわけさ」

 

「そういうことは先に言ってくれないかしら……」

 

「だが口でどれだけ言っても信じられないだろう?俺も研究者じゃないから科学的な見解で説明できない以上、もし言ったとしても『風邪を引いてこのお酒飲めば一時的に元の姿に戻れるかも』とかその程度になる。そんな話を聞かされてもシェリーだって信じなかったはずだ」

 

一時的にとはいえ元の姿に戻る方法を知っていたのは事実だが、シェリーに説明したように俺に言えるのは何の根拠もなく方法だけを伝えるという事しかできない。荒唐無稽な言葉を聞いてそれを信じるなんてできるはずもないし、俺だって原作知識がなければ信じなかっただろう。

だがこれでシェリーは実体験をもって信じることができるし、これからの研究も捗ることになるだろうから悪い話ではなかったはずだ。

 

「…ねぇ、1つお願いがあるんだけど」

 

「どうした?」

 

「その、服がね。この姿(宮野志保)のサイズの服がないのよ…」

 

「だから先に買い物に行こうと言ったのに…サイズも趣味も合うかわからんが適当に買ってくるから待っててくれ」

 

男1人で成人女性の服を買うということが、子供服を買うのとは全然違うってことをシェリーはわかってるんだろうか?いや服ならまだいい。下着とかどうすればいいんだ…いつぞやのケーキバイキングで取り残されるのより精神的にキツイってことをちゃんと理解しておいてもらわないと困るな。

とりあえず急いで店へ向かいそれっぽいサイズの女性服一式をいくつか見繕って購入し、隠れ家へと戻ってきてシェリーに渡して着替えるのを待っておく。何せ測ったわけでもなく見たわけでもない以上、少々大きめとかならまだいいが小さかったら買い直さないといけない。

 

「……ねぇ、服を着たいんだけど」

 

「ああ、サイズが合うかどうかわからないが着てみてくれ。とりあえず今は急場を凌げればそれでいいし、それだけじゃ足りないだろうから後でまた一緒に行って買い足せばいいだろう」

 

「そうじゃなくて、服を着たいから部屋を出てほしいんだけど…」

 

薬の効果なのか恥ずかしいのかわからないが、相変わらず布団から顔だけ出して少し赤くなっているシェリーにそう言われて気づいた。

サイズが合うかどうかを心配していたが、それ以前に着替えるところに居合わせるほうが問題だったか。リビングにいることを伝えて部屋を出て、インスタントコーヒーを淹れながら待つことしばらく…まぁサイズピッタリとは言わないが出かけても問題なさそうな感じの格好のシェリーが戻ってきた。

 

「待たせたわね。それで、どうして突然こんな(元の姿に戻す)事をしたのか教えてもらえるのよね?」

 

「ああ、シェリーの研究も()()待ちだっただろう?だから研究を進めるための材料を用意しただけさ」

 

「確かにそう言ってたけど…つまり、あなたはこの研究を早く進めろって言いたいの?」

 

「そういうことだ。どちらにしてもシェリーも工藤新一も元の姿に戻るには研究を進めるしかあるまい?そしてその研究過程は俺にとってもいろいろと使い道があるんでな」

 

「ねぇ……もし私がそれを断ったとしたら、お姉ちゃんを殺すとでも言うつもり?」

 

シェリーはたまにこういう試すような言い方をするよな。研究者の話し方としては仮定を出して得られた答えから次を考えるってのは間違ってないんだが、組織でもそれをやってたとなるとなぁ…

俺としては別に構わないが、ジンとかにもこの言い方をしてたんだとしたら名前を出すだけであの怯え方も当然かもしれん。シェリーが今みたいな聞き方をしたら、たぶんジンなら「そんなに姉の死体を持ってきて欲しいのなら今すぐ用意してやる」とか返しそう…シェリーもそれ聞いて焦って撤回してより怖がるようになりそう…予想なのに明確にイメージできるわ。

 

とにかくそんな話し方をする必要はないって事は言っておいたほうがいいかもしれないな。

 

「シェリー、そう試すような言い方をする必要はない。シェリーをこの隠れ家に連れてきてから、今現在に至るまで何もしていないのだから答えなんてわかっているだろう?」

 

「…それもそうね。確かに元の姿に戻るために研究することに文句はないわ。ただ、1つだけお願いがあるの。あなたの言う通りに研究を進めるし偽りなく報告する代わりに、これを悪用しないって約束してくれないかしら。私は薬の研究をしていたのであって、毒を作ってるつもりはなかったのよ」

 

「ふむ……まぁいいだろう。俺はシェリーの研究成果を悪用しないと約束しよう」

 

元の姿に戻る事を実体験したから、これで研究が捗るだろうと思っていたら悪用するなと条件を出してきた。俺はシェリーがこの隠れ家に来てから研究した事によるレポートなどは外部に流したりしていない。逆に組織の研究施設での研究成果などは俺がこっそり持って帰ってシェリーに渡したりしている。つまりシェリーからしてみれば、俺に悪用しないと約束させれば大丈夫だという考えなんだろう。

 

今まではシェリーの俺に対する好感度なども考えていたしこれからもその方針は変わらないが、これから始まる計画のためにはこの研究レポートを隠れ家で眠らせておくわけにはいかないんだ。揚げ足を取るような話だが、あくまでも俺は『悪用しない』だけで『流用しない』とは言っていない。研究結果がとある組織とかに流れていくかもしれないし、そこから色々と利用されるかもしれないが…まぁバレなきゃ大丈夫だろ。

 

 

ひとまず話し合いも一段落し、シェリーにパイカルと阿笠博士に作ってもらった薬を渡しておく。俺が欲しいのは進んでいる過程であって完成された成果ではない。組織の研究者たちが出せていない内容であればそれでいい。

そんな考えをしていたら組織の連絡用の携帯が鳴った。ウォッカがまた何か用事でかけてきたのかと思ったが、電話してきたのはジンだった。そして開口一番思わぬ名前を聞くこととなった…

 

 

 

 

「どうやらベルモットがテメェに興味を持ったようだ」

 

 

 

 

 

 

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