妖夢は前に出した左手に白楼剣、上げた右手に楼観剣を持つ。
磨弓は右半身を引いた中腰になり、右手に立てるように埴輪棒を持ち、倒した左手を前に出す。
妖夢は左足に体重をかけ、足を浮かせないように距離を詰める。磨弓も同様にして詰め、両者間の距離およそ一メートル。
先にしかけたのは磨弓、埴輪棒による踏み込み突き。妖夢は後退して避け、伸ばされたままの磨弓の右腕にたいして白楼剣で斬り上げる。磨弓は後ろに跳躍して避けようとしたが、右足に絡んだ半霊がそれを阻害した。やむなく上身を反らして斬り上げを回避する。次に楼観剣による逆袈裟斬りが繰り出されたが、磨弓は前に出て全力の当て身をかます。そのまま左手で妖夢の首を掴み、額で妖夢の頭を打つ。とてもシンプルな頭突き。妖夢の額は裂け、たらりと血が垂れ出す。
妖夢は頭を揺らしながらも右足の蹴りで突き離し、力任せに楼観剣で唐竹割を繰り出す。磨弓は右に避けるが、妖夢はやや無理やり気味に右薙ぎ、逃げる磨弓を追う。とっさに左腕甲で受け止めいなし、斬られることこそ無かったものの、全力の一撃に吹き飛ばされる。
転がりながらも磨弓はすぐに体勢を立て直し、最初とほとんど同じ状態に戻る。違うのは、妖夢は額から血を流し、磨弓は左手の指がうまく動かないことだ。そして睨み合いの中で、妖夢が楼観剣を落とす。故意か出血によるものか、磨弓には判別がつかない。次の挙動を警戒する。すると、妖夢は躊躇いもなく楼観剣を蹴り飛ばす。磨弓が埴輪棒で弾いた瞬間に、妖夢が近寄り右手首を捕る。流れで右腕を斬り落とすつもりであることを察した磨弓は、裏拳で妖夢の右腿を打つ。一瞬妖夢の体勢が崩れたが、それと同時に右手首を引かれ、磨弓の体勢もすこし崩れる。その隙に、白楼剣が磨弓の右肘から下を斬り落とした。
磨弓は左足で妖夢を蹴り上げ、右足の回転蹴りで胸を打った。またしても両者間にある程度の距離がひらく。妖夢がいくつか咳き込んだ。右腕を切り落とされ、左指が自由に動かない磨弓は、自分に残された武器が無尽のスタミナであると考えた。そして、妖夢のスタミナ切れ、あるいは集中力の途切れを狙う戦法に切り替えた。
妖夢も磨弓の意図を察し、呼吸を整えた。深呼吸の音が静かに鳴ったあと、妖夢は右手に白楼剣を持ち替えた。そしてまだ乾いていない額の血を拭う。
ゆらりと、妖夢は前のめりに傾く。倒れる勢いをそのままに磨弓に近寄っていく。磨弓は次の一手が右手の斬り上げしかないことを理解した。そして妖夢がこれを最後の攻撃にしようとしていることも。
故に磨弓は右手、ひいては右肩を注視した。どのタイミングで繰り出されるかを見極めるために。妖夢の右肩に力が籠もったのを感じた。次の一歩でくる―と磨弓は解った。
だがその前に。妖夢の左手から、幾つかの血雫が飛ばされた。先程、額の血を拭ったときに握ったものだ。反射行動が存在しない磨弓はそれをまともに喰らう。目に僅かな血が入り、引き起こされたエラーによって視界がブラックアウトする。
白楼剣が身体を裂く感触を、最後に磨弓は感じた。
果たして白楼剣は埴輪を斬れるほど切れ味がいいのだろうか。
妖夢が勝ったのは個人的な解釈によるものなのであしからず。