※この話以降、「女体化」が含まれます。
ご存知でしょうが、読まなくてもpart13の結末にはなるので。
YOUたちは読んでもいいし、読まなくてもいいYOU。
もし読んでいただけるのならば、暫しの間お付き合いください(クラウチングスタート)
スタート ~ 最初の五日間 part1 / 贖罪
今日も今日とて地獄で死んだり生き返ってまた殺されたり~、の日だと思ったんだけど。
兄さんではない獄卒が突然俺に向かって言ったんだよね。
「お前は片割れと共に生まれることを望むか?」
そりゃ勿論。兄さんと約束したんだもの。今度の生では一緒に生まれると。
意気揚々と頷いた俺はいつもの
入れと言われたけど、何も無い。そもそも部屋なの?
不思議なことに幅も高さも認識できない、家具や装飾品も明かりも無いのに妙に明るくて扉が……、あれ入ってきた扉が消えてる。
獄卒は中にいない。何の手掛かりも無いが、中央にある一枚の紙を拾うことにした。
不思議なことに、俺が持つまでは白紙だった紙に文章が浮かび上がった。
『汝、罪を犯し、地獄にて永劫の苦痛を与えど其れは償いにならず』
「まぁそうだね。別に痛くてもだから何って感じだし」
『増して、獄卒となった片割れの刑罰を望む有様』
「だってそうじゃないと兄さんと会えないじゃん」
『――お前が片割れとの来世を望むのならば、その身の罪業を
「はぁ、罪業ねぇ……」
すると、俺の持っていた紙から光が溢れた。視界すら埋め尽くして、とにかく眩し――。
§
皆さんおはようございます。初めましての方は初めまして。
今日は絶賛大ヒット中である漫画『鬼滅の刃』のゲーム、『鬼滅の刃 ー烏兎之鬼録ー』のRTAをやっていきたいと思います。
(淫夢要素は)ないです。ホモの兄貴たちは大人しくブラウザバックしようね。
え? なんで動画上げてるのかって?
やだなぁ、宣言したじゃないですか。どこで宣言したかって? 茶の呼吸の動画上げた時ですよ~。
(番外編、RTA:茶の呼吸戦国全盛期無惨ソロ討伐【00:36:09】参照)
なのでしません。あれ以降誰もRTA走ってくんないし……(イジイジ)
ま、この後別のチャート作って走る予定ですけど。
パウチ赤ワインを吸血鬼みたいにチューチュー吸って終わりたいと思います。ほな、さよなら。
ほら、書いてあるでしょう? ということで走っていきます。
選択するモードは当然『一般隊士録』でキャラクリエイトをしていきます。ポチっとな。
今回のRTAではぁ……性別はあんま関係無いのでぇ、『女性』にしましょう。連続で『男性』ですからね、これで動画も華やかになることでしょう。
遊ぶ年代は『明治・大正時代』。炭治郎たちが活躍するこの時代だけ、システム改革によって『年齢』『全盛期』が追加されました。
そう、なんと……! 初期のランダム要素であるキャラクターの操作開始時期を選びつつ、原作通りの流れでの無限城へ突入する年齢を定めることが可能となりました!!!
スゲェ! というかもう普通に19○○年設定で良くね? 駄目です(公式くん)
ということで、『年齢』を『7』、『全盛期』を『25』としますが……。ぶっちゃけ全盛期の年齢まで遊びません!
ただこうすることで操作キャラクターが悲鳴嶼さんの二つ年下になる。
つまり、悲鳴嶼さん世代になれます。
引いては、原作開始時期から
名前を決めましょう。この前はちょいと捻ったナイスネーミング(激寒)ですが、今回は前々回のRTAで使ったキャラの名字を拝借します。
姓は『仏塚』。となると拝借元のキャラ名『文寿郎』を弄って『文子』とかにしたくなるんですが……。
名前は仏塚 吉子。略して『キチ子』で行きます。ヨロシク、キチコ。
見た目ですが……。今回は意図して童磨そっくりアバターで行きます。色合いも前回と同じで・す・が、身長は低めにします。具体的にはしのぶ姉貴より小さく。
胸も鉄壁の方が都合良いのでそうして……。ロリ童磨っぽい見た目になりましたね。
続いて『特徴』ですが、これは『筋肉密度異常』になるまで降り直します。
ステータス決めも何十・何百と振り直してぇ……。
体力(91/108) 根気(90/108) 筋力(96/108) 防御(92/108) 速度(98/108)
ッシャァ!!! オールステータス90代! これで確定!
――ステータスの上限突破してないって? ソーナンス。
ご存知『筋肉密度異常』は甘露寺蜜璃ちゃんの特徴であり、この特徴もまた『生まれつきの痣』と同じく上限突破型タイプなのです。
単純に上限突破兼速攻討伐ならば『生まれつきの痣』こそ至高ではありますが、こと今回のチャートにおいてはデメリットが多いので却下だ!
薄っすら察しているとは思いますが、『筋肉密度異常』もデメリットがあります。それはスタートしてからお教えしましょう。
初期技能は『薬学』です。今回のチャートにおいて核を為すスキルでござい。
さぁ、ここで初期ステータスをドドン!
仏塚 吉子 性別:女 特徴:『筋肉密度異常』
ステータス
体力(91/108) 根気(90/108) 筋力(96/108) 防御(92/108) 速度(98/108)
技能
薬学(30/100)
ちょっと薬学に詳しくて筋密度が異常な童磨似の女の子が出来た所でスタート。
――すると思っていたのか?
ここでまた『明治・大正時代』選択時のみ出来るシステムをご紹介します。
その名も――『鬼連れモード』
本編での炭治郎・禰豆子の様に、本編に登場した鬼を選んで旅が出来るさいつよIFモードにございます。
このモードを使えばあら不思議! 鬼連れ獪岳も兄上も簡単に出来てしまいます!
ただし……、ぶっ壊れモード故に原作通りチャート勢からはゴミ箱ポイポイされており、何故か走者が誰もいません。あれれ~、おかpeople?
なので私が日本&世界一位の記録になります。俺がオンリーワンだ。
何故こんなチャートを走ろうと思ったのだ?
……悲鳴嶼女神、おれ、思ったんですよ。
原作通りチャートを走る度に……、六太が死んでるじゃないですか。
まだケンケンパで足も開けないような幼子が……、チャート進める度に死んでるんだぞ?(映画オリジナルでの情報)
お父ちゃんの死をまだ受け入れられず悲しんでいる幼子が、その悲しみを乗り越えて大人になることもなく……無慈悲に殺されとるんやぞ?
実に許せん! 故に
なので出ないキャラクター多めチャートとなっております。主に柱メンバーとか炭治郎世代とか。
そしてこのモードで道連れにするは童磨! キミに 決めた!
鬼の中でも稀有な氷属性持ち故に最強冷蔵庫となる鬼と共にキチ子は歩むのだ!
薬リスト100%鬼舞辻無惨人間化エンドチャートをな!!!
ふぅ、ということで鬼連れモード・童磨版にした所で……。
この下にある『最初の五日』にチェックを入れておきます。これは救済でもあり鬼畜でもありフレーバーでもあるチュートリアルシステムです。
これにチェックしておくと、大体鬼によって生活が滅茶苦茶になる前の幸せな五日間を追体験出来ます。お慈悲~。
まま、やってもらうことがあるから入れたんですが……。
ほな、そろそろスタートです。
§
光が消えた時、彼の視界は真っ暗だった。
(……何か体に違和感が。重たい?)
彼、童磨は瞼を開いた。それは見覚えのある天井、の気がした。前にも見たことがある……。
童磨は体を起こした。その時、体の違和感は確実なものになっていた。
(手が小さい。頭も重い……。もしかして、体が縮んでいる? あの光に包まれてから? 時間……、はあって無い様なものだったか)
冷静に状況を整理しながら、彼は情報を求めて――寝かされていた布団から起き上がる。
(部屋の内装にも見覚えがある。これは……、改装する前の、極楽教かな?)
何故、という疑問に紙面に浮かんだ文字を思い出す。
(
童磨は腕を組んだ。罪状としては殺生・邪淫・妄言辺りを裁判にて言われたが、
それはつまり、罪を認識していないのと同じ。困ったな、と彼は思うのだ。
(自覚出来ないものを自覚しなきゃいけない。で、えーっと、償うのもどうしたらいいんだろ? その辺りの模索を含めての計らいなのかな?)
ひとまずやらなければならない、とやる気を起こしてはいた。――兄とした約束の為に。
自身の方針を定めた童磨だが、障子の向こうに人影が見えた。
「入っても大丈夫?」
知らない声だ。ひとまず童磨は笑顔で「どうぞ」と答え、開かれる戸から見えた人物に言葉を失った。
癖のある黒い髪。茫洋とした色の無い瞳。幼い顔つきに、線の細い体。
「弟、気分はどう?」
「にい、さん……?」
彼の言葉に、『兄さん』と呼ばれた子供は少し思案し、首を傾げた。
「姉さん、ではなくて?」
「……えっ?」
姉さん!?
事態を飲み込めなかった童磨は――突如として激しい頭痛に襲われ、体は再び熱を上げ始め気を失った。
§
はーい、よーいスタート(RTA)
キチ子は童磨そっくりアバター兼鬼連れモード中なので、憎き宿敵を『神の子』と崇める両親の子供として生まれております。恐らく双子か、姉か妹か。
あ、会話からして上or双子ですね。最初の関門もオールクリアです。妹でしたら再走なので注意。
さーてこの“最初の五日間”でやる事は以下の三つ。
・童磨の好感度を80に上げる
・極楽教の神になる
・両親の仲を修復する
力尽きました……!(スヤァ)
とはなってはいけません。五日間でこの三つを達成しなければ本題の
まず童磨そっくりアバターにおける恩恵が此処で発揮されます。そっくりアバターですと確定で肉親設定が生えます。
他人だと大抵好感度0スタートなのですが、肉親の場合は確率で20~50の値になります。今回は34。まぁまぁええんとちゃう?
感情乏しきガキとお話したり遊んだり極楽教の教義を変更するだけで好感度80達成は簡単どぅえす。所詮はガキ……、百戦錬磨たるキチ子の人心掌握術には勝てんよ。
次点の(極楽教の)神となると両親の仲の修復は一緒ぐらいに達成できます。
まず一日目、両親と信者共を集めて裏山のビッグ石の元に行きます。それを持ち上げます。演説を行います。
たったこれだけで極楽教創立者・信者共にキチ子の力に恐れをなして『神』と崇める様になります。そして教義変更!
オラッ! 辛い事はしなくていい訳ねぇだろうが!
動け! 働け! その脆弱な肉体と心を鍛えろ!
スパルタの語源となった国も賛同してくれるTHE・肉体派♂な教義を掲げると皆さん体を鍛え始めます。すると童磨(ショタ)からの好感度が固定で20上がります。これで54となりました。
続いて両親の関係修復です。
童磨母は常日頃から信者の女と遊ぶ童磨父の事をよろしく思っていません。最初の五日間スタート時点で両親の関係は破局間近の殺害スグソコ←new!です。
地雷原で走り回る童磨父は当然ながら鈍感っつうか。そもそもこの宗教自体、彼が楽する為だけに作っただけなので童磨母からどう思われようが関係ないんですねクォレガ。
父親は純然たるクズで母親はそんなクズに入れ込んだ頭わるわる(?)系女子。
奇妙なことにこの新興宗教夫婦の元にめちゃんこ珍しい色彩持ちかつ高IQのガキンチョが生まれてしまう訳ですが……。
アーカワイソ! なんとかしないと!
二日目は教祖権限を使用します。父親の部屋に行き、ここで話しかけます。
父上♡ 可愛い娘とお話しましょ♡
「どうしたんだい、吉子」
と、定型文しか話さないクソ親父botですが、めげずに二十一回話しかけますと。
「父と話したいのかい? 分かったよ」
ボス戦に突入します。
ここで二十一回話しかけてボス戦フラグが成立することを察する事が出来なかった人は炭治郎視点柱稽古編で冨岡兄貴を再起させるイベントで百回以上話しかけて取れるトロフィーをもう一回取りに行きましょう。
トロフィー取得条件がおかしいこのゲームにはこうして隠されたフラグが日の目を見ないまま埋もれていることも多々。これはその一つと言えるでしょう。
裏の森に
お父さんとのお話が真剣勝負になるのは当たり前ですね?
この関門を突破するには最低でも全ステータス90越えでないと難しいんですよ……。それに初期ステが高ければ高い程技能に成長点回せますから。
「受け身ばかりでは倒せないよ」
隙が無い動きに叩き込みつつ一つずつ解説していきましょう。
まず、童磨の父親がこんな強者ヅラしているのか、からです。結論から述べるとオトナノジジョウです。
最近の製作陣
例えばですが、炭治郎一家スタートであれば鬼化時に日光耐性獲得フラグ+日の呼吸獲得フラグを最初から所持とか。
胡蝶姉妹一家スタートであればキャラクリ時点でスキルに表記が無くてもスタート後に薬学技能付与(一律30/100)とか。
こうした細か~い調整が入ったことでそっくりアバターチャートもRTAに多く取り入れられるようになりました。今まではそっくり主とイベントが発生するだけのカス要素でした。
では、この点で行くと童磨こと極楽教陣営の利点はどうする?と製作チームで意見が割れました。
継国家や素流道場はハッキリ武器に出来るものが分かっていますが、極楽教スタートの利点ってなんだよ(哲学)と考えた制作チームの答えがこれです。
父親に設定を盛っておくペコ^^
殆ど既存の刀キャラの戦闘モーションですが、一つだけ固有のものがあります。はいこれ。
童磨父が刀を顔の横に構えたらすぐガードです。その後すぐ自キャラの前に瞬間移動かつ首を狙った一閃が放たれます。
クゥ~ン⤵ これってぇ……、どう考えてもガチで
人の心とか……無い? あ、はい(極楽教関連のイベントを流し見しながら)
明記はされませんけどクォレは人斬り関連のお仕事してましたね……。間違いない。腐っても元鬼殺隊では無いでしょう。
鬼殺隊以外で人斬り、および頸斬りに詳しいご職業って……(察し)
ですが同属性で童磨ソロ討伐を成した我の前には石ころに過ぎません。ちゃちゃっと叩き込み、ハイヨロシクゥ!(戦闘終了)
「……分かったよ。なるべく家族になれるよう、私も頑張るから」
この斬り合いを制すると童磨父が童磨母からの
童磨父が童磨母と話す様子をスキップしながら童磨の好感度が+10、合計64になりました。
これで二日目を終わります。いやぁ~、いい仕事しました。
この戦いで何の技能が得られたかは後でお見せします。
三日目、今日は弟とたくさん遊びましょう!
教義変更をしたので軽い朝礼の後、極楽教の神の時間は
朝と昼は外に出て信者のガキンチョたち(本命)を交えて裏山でかけっこ、虫観察、キチ子は薬草採取、川べりで石飛ばしなど。
あぁ~^ これからの長いRTAに灯る唯一の希望の光ィ~^^
でもタイムが大事なのでスキップ――、右枠に本動画を移してノースキップしたものをお流しいたします^^
夜になったら部屋遊びや両親とのコミュタイム。父親が積極的に話しており、それにつれて母親も笑顔になってます。
こんだけで好感度87っすよwww チョロwww
四日目、極楽教にやってきた迷える羊ならぬ豚ァ!共がちゃんと鍛えようとしているのを見つつ、ここで組織のトップになったら出来るコマンドを紹介しましょう。
現状、キチ子が極楽教の
教義が『体を鍛えろ!』なので麓の街などで『指南相手の募集』を行います。
すると~、おお、いました。
他にも「水橋」、「風辺」など、五大呼吸+霞・花などのメジャー呼吸たちの一文字が入ったNPCは呼吸の育手たちです。
彼等は日銭の為に指南相手の募集を掛けると付属設備の道場で呼吸術を教えてくれます。もしかして鬼殺隊の隊士の練度が低い理由って……。
今回のチャートでは岩の呼吸が欲しかったのでジャストタイミングです。岩山堂くんを登用し、キチ子も学ぶことにします。
メインで扱う呼吸ではないのですがキチ子は小柄故に重量アップが必須なのです。
フンッ! フンッ! フンッ! よし習得!(1/100)
さぁ運命の日の五日目!
と言ってもやる事は満たしたのでこの日でするのは二つ。まず教団内にある高価な装飾品を売りに出します。壺とか要らないんで出しちゃいましょう。
色々漁ると……ふむ小刀。これは拝借しておきます。小柄かつ携帯可能な武器は持っていて損はありません。
ファッ!?
おい待てい、この後必須級の高級薬素材が何故こんな新興宗教に収められているのかゾ?
これは幸先が良いですね。これは売らず懐に入れておきます。皇族方ぐらいしか持てないガチの貴重品っすからね……。
思わぬ幸運に舞い上がりますが、他にも無いか探って……無かったので余分な物を
稼ぐべきは金よりも成長点。幸い、極楽教には確定で薬学技能が幾つかプラスしてくれる『薬学・初級編』の本がありますので、それを優先して他薬学技能関係の本を読んでおきます。
そうして五日目も終わります。
さぁこれで準備は整いました。ここからが鬼連れモードの本番です。
この後もリセポイントばかりのデスチャート。
――――――ついて来れるか。
馬鹿野郎
§
高熱から覚めた童磨は今一度状況を振り返った。先程の熱はどうやら今までこの肉体で生きていた
その中で見た万世極楽教――、その前身である極楽教の内情も、両親の関係もかなり異なっていた。
ここでの童磨は、本来ならば兄である存在――文寿郎の弟として生まれた。
だがしかし、文寿郎は兄ではなく、姉。女性として生まれ落ちた。
名前は
その中で吉子は両親の召使と言われても変わり無い扱いを受けて育った。
生まれた双子の、色彩の豊かな子を『神の子』と崇め、両親と双子の片方が崇め、奉仕するという態勢。
引き離される前までは姉にべったりだった前の童磨は気を病んで姉に泣きついた。――それ以降、極楽教に変化が訪れた。
まず童磨が『神の子』ではなくなった。姉が『神』となって教義を変更した。
『辛い事はしなくていい』という教義によって集まった信者たちの反発は当然あった。
何よりもこの宗教を作り上げた両親は姉の行動を許さず諫めようとしたが、――姉の身に秘められた尋常ならざる怪力を目の当たりにすることによって黙った。
『貴方方が日々苦しい思いをするのは、肉体を鍛えていないからです』
『肉体を鍛えれば、それに伴い魂も強化されていくもの』
『その場で泣き暮れるだけならば体を動かしなさい。己の体を強化し、この世の理不尽を解決できる手段を増やしなさい』
『辛い事も悲しい事も貴方方がどれだけ正しく生きようが訪れるのですから。それに立ち向かう手段を覚えなさい』
――大の大人が二十人いても持ち上げられないような巨石を持った姉の言葉には、人が従うに値する説得力があった。
今や極楽教は体を鍛える為の修行寺になっていた。
童磨は記憶を振り返りながらぽかーんと口が開くのが分かった。当時の童磨も何が起こっているのか理解に苦しんでいた。
極楽教の実権も姉が握ることとなり、幼いながら経営に携わっている。
まず、それが一つ目の相違点。二つ目は年代だ。
童磨が生まれたのは後世において江戸時代と呼ばれる年代。文明開化の気風漂う明治の世に生まれてなどいなかった。
(本来だったら兄さんは死産……。いや、元々は俺が死ぬ筈だったのを、兄さんが助けてくれた)
ふと、双子として生まれるか、一人だけ生まれるというのは――母体の栄養状態によって左右されるのではないか。
そう思ったが、これは関係無い思考だ。
三つ目は両親。童磨に教祖の座を譲り渡した数年後に父親は母親に殺され、彼女は服毒自殺をする。
そうなる筈の両親の仲が良好そうなのが気になった。童磨が仲を取り持とうとして、――結局頭が悪いのでその行動を理解せず破滅していった二人が。
まるで本当の夫婦の様に睦まじい。
(明治の年に生まれた極楽教……。兄さんは姉さんで、両親の仲が良好……)
文寿郎……ではなく吉子においても気になる事はある。
だがこれは、本当に気になる事であって、童磨が比較しようもないもの。
「弟、目が覚めた?」
「う、うん。もう大丈夫」
「病に大丈夫は無い。体の熱は下がったみたいだけど、頭痛や体に痛みがある場合はすぐに言ってね」
「ありがとう。姉さん……」
ここは、あったかもしれない世界なのだろう。
兄が姉として生まれ、童磨は神の子ではなくなり、身を寄せられる肉親がいるこの世界。
元々の童磨からの記憶は幸せというものに溢れていた。信者の話を聞かず、同年代と疲れるまで遊びつくして。甘えたい時には姉に甘えて。
とても幸せな世界だった。それを
熱から回復した童磨を神の子ではなく、遊び相手の子供として求められることが。年相応に振舞える場所がこんなにも息がしやすかっただなんて。
また明日ねと遊ぶ約束をして、色んな事に胸を躍らせて姉に話す時間が大切に思えた。
だが、幸せというものが、薄氷を軽く踏むかの如く簡単に壊れるのだと。
如何に儚いものということを。血の臭いと共に訪れるものということを。
――この時になって、初めて理解した。
§
今日の天候は曇りだった。空を厚みのある鈍色の雲で覆われて、日の光一筋も差さない。
肉体が人間に戻った現在、日光など気にせず元気いっぱいに遊び回りたい童磨としては不服だが遊べるならいいやと楽観的に考えていた。
童磨がこの身体で目覚めてから数ヶ月が経つ。楽しいと時間が過ぎる体感も早い、新たな気付きだ。
話し相手を求めて部屋を出ると……。異臭が鼻についた。
(異臭……。いや、違う。これは……。昔の俺は、これで味の良し悪しを判断していた)
――血。血の臭いだ。
「なんで……?」
この時期の極楽教で刃傷沙汰など――、いやもう此処の極楽教は彼の知る極楽教ではない。そもそも、そんな出来事が起きる筈もない。
宗教内での争いは今の教義でも反するもの。そして、信者たちも望んで争う体質ではない。
何かが起きているのは間違いなかった。
「童磨ぁ、いた!」
「良かった!」
「興子、一郎……」
寺院で引き取った二人の孤児が童磨の姿を見つけて駆け寄った。
「どうしたの。何か起きたのかい」
「えっとね。お母上に言われて来たの。寺院から出ろって」
「急いで、急いで!」
二人が童磨の背を押すので仕方なく寺院の裏口を目指す。走りながら、胸の鼓動が悪い意味で落ち着かなかった。
「理由は聞かされてないんだね?」
「うん、黒い髪の男の人が来て、急に皆静かになって……」
「……皆あの男に殺された」
きょう子の曖昧な言葉に一郎は冷たい事実を被せた。ひ、と少女が息を呑む音が響く。
「俺は、知ってる。最初、あの男が皆に向かって何かをして、ばったりと倒れて……殺されたんだよ。血がたくさん、出てた……。お母上様も、俺たちを庇って殺された……」
「そんな……」
(男……?)
廊下を走る中で異臭はきつくなっていく。不気味な程に寺院は静まり、自身たちが走る足音や息しか聞こえない。そう思ってしまうぐらいに、何も動きが無い。
二人に急かされるがまま走っていた童磨の足が止まった。
「ねえさん、は……?」
「……それは」
「お前の姉とはこれのことか?」
子供の声ではない、落ち着き払った神経質そうな男の声が空間を裂いた。
振り返る童磨の足元に転がってきたのは人の身体。――今や、その黒い羽織を背負うのはただ一人。
『神』と崇められるようになった姉。
床に打ち付けられ、呻き声をあげ、僅かに息をするその者の体は血塗れだった。か細い呼吸が誰の目にも“瀕死”であることを悟らせた。
「貴様が神の子とやらか。……なんだ、毛色が違うだけではないか」
「む、ざんさま……」
知らずの内に男の名前を呟いてから、童磨は口を手で覆った。
――彼の前で名前を言う事は禁忌に等しい。それを知っていたのに、
それは……、何故?
「一度も会った覚えも無いが、私の名を口にするか。――良いだろう」
童磨の左右から血飛沫が飛ぶ。子供らの血潮が白橡の髪を汚し、体を強張らせた。
迫る男の手が子供の頭に突き刺さる。その場の誰もがその速度を視認し、対応することの出来ない異常な身体能力。
暗闇の中で縦長の瞳孔をした紅梅の目が無感動に見下ろした。体中が熱いというのに、急激に冷えていく。
「貴様は使い物になるかどうか、見物だな」
――そして、再び、熱く、全身を激痛が襲う。
頭から手を離した男は崩れ落ちる子供に微塵の興味を示さず去っていった。
後に残るは悶え苦しむ少年と、瀕死ながらも生きている少女。
気絶していたらしい少女が僅かに目を覚ます。「どう、ま」と呟く。
高熱で魘されて、
体中が作り変えられる痛みは終わりを迎え、此処に人ではない生物が生まれようとしていた。
(――美味しそう)
頭から血を流す。その血が美味しそうだと思う。香しい匂いに感じる。彼女から滴る血を勿体ないと思う。
少年が少女を見つめる目は、肉親ではなく食材へと変わっていた。
身を変じさせた事によって消耗した体が、お腹が空いた、飯を食わせろと叫ぶ。
童磨は躊躇いなく目の前の“食べ物”にかぶりついた。
舌から伝わるのはこの上なく美味しい、血肉の味だった。
(え、あれ……?)
今、己は何をしていた?
無惨様に鬼にされ、――姉を食べなかったか?
足が止まった童磨を心配して、
(血が、臭く感じる。俺は、
夢にしては現実味があって、生々しい。身体が鬼へと変じた激痛の残滓が残っている様に、童磨の聡明な頭には先程見た夢が明瞭に思い出せる。
自身は鬼になって、姉を食らったと。そしてその血肉の美味しさも。
「ねえさん、は……?」
「……それは」
「お前の姉はこれのことか?」
既視感と同時に体が強張る。足元に転がらされたのは瀕死の姉。
――それで気付く。
(……繰り返して、いる?)
童磨は顔を上げた。そこには鬼の首魁たる男がつまらなさそうに彼を見下ろし、そしてこう言った。
「貴様が神の子とやらか。……なんだ、毛色が違うだけではないか」
どういうことだろう。彼が考えている間に、全ての物事は終わった。
二人の子供は殺され、童磨は鬼になり、足元にいた姉を食べ物として食らいついた。
そこで、また、彼の意識は――覚める。
(…………ああ、そういう、こと)
二回、三回、四回と童磨は繰り返して――何故戻るのかという理由に気が付いた。
(俺が鬼になって姉さんを食べる度、
『――お前が片割れとの来世を望むのならば、その身の罪業を
――最初からそうだった。
これは、俺の犯した罪を振り返る為だった。
俺に、罪の何たるかを知らしめる為の。
罰というものだ。
§
――×××回目。
――××7××回目。
――××××××××回目。
駄目だった。一体何度戻った? やり直した?
食欲が、体がどうしても血を求める。何度だって近くに転がる姉の身体に食らいついた。
……美味しかった。とても、美味しかった!
其れを求めてまた俺は鬼になる度、姉を食べる。人の肉を食らう。血を飲む。
許されない意味は分かる。その状態も理解はする。だが納得は出来ず、憤りが生まれる!
(――駄目だって分かってるのに。堪えなきゃいけないのに、どうしても抑えが効かない)
食べたい。お腹が空いた。頭の奥まで啓いた万能感。血と肉の
「はぁっ、ァッ……。グゥ…………ッ……!」
――こんな食欲を、俺より幼い鬼が克服出来ただなんて、おかしい。
食欲、肉体から発せられる三大欲求。それに抗ってまで家族といることを望んだというのか?
唯一日光を克服した、人を食べなかった鬼。――それ自体がおかしい。
誰だって家族に対する親愛は持ち合わせているだろう。でも、彼女と同じ様に家族への親愛を持ちながら鬼になったものだって、食欲に抗えずに家族を食らう。
(……じゃあ、何?)
彼女と抗えない鬼の違いは何なの? 親愛の深さが違うとでもいうの?
それとも体質? 元々鬼の才能があるとかないとか?
でもそんなのって――。
(理不尽じゃないか)
誰であろうと家族は食べたくないんだろう?
この世界で俺の家族は皆が本当に笑顔だった。両親の頭の悪さは変わってない。
でも、あの二人の末路が刺して自殺する終わり方だけじゃないということは、分かったんだよ。
極楽教の信者だって、――人が変われるって、知ったのに。
「…………ぃや、だ」
嫌なんだ。生まれて初めて、心の底から嫌と思った。
理不尽だと思った。どうしてと思った。食べたくないと思った。
「ァ…………、っ、け……て……」
食べたくないよ。家族を食べたくない。
でも抑えが効かない身体が、姉さんに手を伸ばす。舌が、俺の何回と繰り返して刻まれた記憶を読み取って、姉さんの味を想像して、涎を出す。
霞む姉の目が……、見開くのが、見えた。
「た、べ、たく…………、なぃ……」
お願いだから止まってよ。俺の身体なんだから言う事を聞いてよ。
なんで聞いてくれないのかな。自制が効かないってほんっとうにどうしようもないんだ。
(だからって……)
意地だ。俺は初めて、みっともなく、計算も無く、たった一つの意志だけを込めて体を動かした。
少しだけ身体が自分の思い通り――、自らの腕に、齧りつく。
不味い。自分の血は不味い。姉さんの方がとても美味しい。美味しい。
浮きそうになった歯を力づくで腕に押し付ける。噛む、噛む。噛むことだけに集中する。
俺は俺の腕を噛む。噛まなきゃいけない。――今、少しでも意識を離したら。
噛む、俺の腕を噛む。噛む、嚙む、嚙む、噛む。
噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む噛む
(あ、いしき……が)
――また、駄目だったの?
嫌だ。嫌だな……。もう、嫌だな……。
最初、自身に跨り食らいつこうとした少年は、突如として自身を食い千切る勢いで噛みついた。
くぐもった声で何かに抗っている。頭上から落ちてきた涙に触れた。そこでようやく、停止していた思考が追いついた。
「嫌だ」
少年の頭を殴ると気絶した。
怪我は見当たらない。――男に貫かれた傷はすぐに再生していた。
「助けて」
息を整える間に、少女は着ている着物の袖を裂いて頭のある傷口に巻き、止血をした。
「食べたくない」
倒れた少年を抱えて外に出た所で、一度寺院に戻る。もう、誰も彼もが死に絶えた。
必要なものを持った所で泣いたまま眠る体を抱える。
「分かったよ。それが願いね?」
月も雲の向こうへと姿を隠す暗闇。先の見えない道へと、二人は歩んでいく。
自分であのエンディング書いてた時から納得いかなかったんですよね。
ハピエンになるのにはミソギって必要だと思うんスよ、パイセン。
それで、ええ、まぁ、はい。
この話でストック尽きました。