もうちょっとこう…ヤンデレ力を強くしたかったのですが、まとまりませんでした…。
アシタカを村から放逐し半年。
エミシの村にある社では嘗てのように――アシタカに沙汰を告げた時のように重く苦しい雰囲気が漂っていた。
「「「「……」」」」
「はぁ……」
村長衆の面々が思い詰めた表情で顔に影を落とし、巫女であるヒイ様がため息を吐きながら呆れ顔で石を弾き呪(まじな) いを行う。
「……う、うぅ……」
ただ以前の状況と違うのはアシタカが居た場所に、顔をパンパンに腫れ上がらせ青タンを幾つも作り、所々に巻いた包帯に血を滲ませ、小さなうめき声を上げながら横たわる次期村長候補――アシタカの後任にあたる男が居る事であった。
「……ふぅ」
「ヒイ様……」
「結果は、結果はいががでしたか?」
石を弾くのを止め僅かに天を仰いだ後、何度目かのため息を吐いたヒイ様に村長衆が声を掛けた。
「少なくとももうこの近辺には居ないようだ。私達の手を離れて自由の身となったと呪いで出たよ」
「やはり……」
「遅かったか……」
「手遅れならば追跡――ゴホン、捜索隊は引き上げさせるしかあるまいか」
ヒイ様の言葉に落胆した様子で互いの顔を見合わせる村長衆の面々。
「全く……あれから半年。ようやく皆落ち着いてきたというのに厄介な事をしてくれたねぇ」
そんな男達をよそ目にヒイ様は眼前に横たわる男を感情の無い瞳で睨みつけ呟く。
「も、申し訳……うぅ……」
軽蔑と失望が入り交じる侮蔑の視線を浴び、男は縮み上がりながら言葉にならない声を漏らした。
「お前が嫌がるカヤを無理矢理手籠めにしようとさえしなければこんな事にはならなかったものを」
「全く。アシタカに続いてカヤまで失う事になろうとは……此度の始末はどうするつもりだ」
「そもそもカヤはヒイ様の跡を継ぎ村を導く巫女となる事があの一件の後に決まっていただろうに、何故こんな事をしたのだ」
「うぅ」
怪我で息も絶え絶えな事など知ったことかとばかりに周りから次々に飛んでくる叱責にうめき声を上げるだけの男。
「さてはて、どうしたものだろうかね」
そんな哀れで愚かな男から視線を外し、最側近である村長衆の数人と膝を突き合わせながら密談を始めるヒイ様。
「カヤはもう村には戻らないのでしょうか?」
「いや、全てはあの娘の選んだ道次第。良き方に転べば自らが最も欲した物を得て華々しく凱旋、良くない方に転べば最も欲した物の一部だけを得て消え去る」
「最も欲した」
「物を……」
ヒイ様が導き出したカヤの進退に対しての呪いの結果に村長衆は互いに視線をぶつけ合う。
「それはつまり……」
「アシタカだろう」
「やはりか……」
「アシタカがおらんなってからのカヤの奇行の数々……あれは見ておれんかった」
「まさかとは思いますが、此度の一件カヤが?」
「ないとは言い切れぬのう、何せ手際が良すぎる」
「後腐れなく出ていく為にあやつに自分自身を襲わせたと?」
「「「「……あり得るな」」」」
言葉を積み合わせて行くうちに何故か楽しげな表情を浮かべて出歯亀精神丸出しでヒートアップしていく村長衆数人。
「こうなってくると結果が楽しみじゃ」
「全く。しかし、アシタカはあれでモテるからのう。カヤが見付けた際に別のおなごと一緒におったりなんてしたら……グフフ」
「この目で見たかったのう……修羅場」
「あやつも案外スケコマシじゃからな、呪いなんぞ片手間に片付けて別のおなごも一緒に連れ帰ってくるやもしれぬぞ」
先程までとは一転して和気あいあいと言葉を交わす長達。
「まぁアシタカのことじゃ、なんとかするじゃろう」
「うむうむ。しかし……何はともあれ」
「「「「アシタカも大変じゃ」」」
皆、思う事は同じなのか遠い目で彼の者へ思いを馳せたのであった。
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「えーっと、こっちかな?兄様に続く道は」
「フフフ驚くだろうなぁ、兄様」
「会えたら兄様嬉し泣きしてくれるかなぁ……」
「半年以上会ってないし、ギュッと抱き締めてくれちゃったりして」
「でも心配だなぁ……」
「呪いで占ったら兄様の周りに薄汚い牝犬と穢らわしい雌狐が擦り寄るだろうって出たし」
「他にも有象無象のゴミ虫共も集るだろうって」
「でもでも大丈夫だよね?私の小刀と一緒なんだし」
「それに私に会えないからって例え気の迷いをおこしていても私が目を覚まさせてあげればいいだけだし……」
「フフフッ、待っていてね兄様。すぐにカヤが参りますからね」
「フフッフフフッ、フフフフフフ……」