口下手なオタクがヒソカの兄に   作:黒田らい

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引き続き一坪の密林戦です。

よろしくお願いします。


密林には面妖生物【中編】

 数刻前森に落ちた大きな雷は、それ以降一度も見かけることはなかった。

 身軽さを取りせっかく集めてきた物資もほとんど置きっぱなしにしたジールは森の中に入っていく。

 

 細い獣道を走る足に小枝が当たる。一瞬しか見えなかった雷はおおよその場所しか示さないため、ジールは森の中心を目指して進むことしか出来なかった。

 

(イベント始まってるよな!?今から行って参加できるかは分からないけど、みんなで仲良くキャッキャウフフしてるんだろうなぁ……)

 

 イベント会場への道標もお助けキャラも居ないジールはがむしゃらに進むしかなかった。

 この間に攻略が終わってしまったらどうしよう等の不安を抱えながらも、その足は木々の合間を駆け抜けていく。

 

 誰かのオーラを探すことも考えたが、森全体にそれを阻む念がかけられているため探し出すことが難しかった。

 

 一人だけ置いていかれてしまい、ちょっと泣きそうになりながらもジールは必死に周囲を探る。

 まあ、可愛がっている弟からの信頼故の結果なのだが、戦闘面で問題無くとも精神的にダメージを受けていたジールは気づきもしないだろう。

 

 そして森に入ってから三十分程が経った所で、ジールは一際強いオーラが流れている部分を見つけた。

 

 走ってきた道からは逸れるが、何かのヒントは見つけられるかもしれない。

 そんな淡い期待を抱きながら低木を掻き分けてオーラの塊に近づくジールは絶に切り替えた。

 

 薄暗い森の中でぼんやりと光るものが見えてくる。さて、鬼が出るか蛇が出るか警戒しながら最後の低木を乗り越えたジールは、ハッと息を飲んだ。

 

 森の中にできた広場の中心には、葉の光る大樹が生えていた。

 

 まるで蛍が集まったような綺麗な光に目を奪われたジールは、一歩、また一歩と足を進めていく。

 そして大樹の隅々まで見える位置まで来た時に、ジールはその大樹の正体に気づいた。

 

「…………パチネッコか?」

 

 地面に腰を据えたような幹は、よく見ると大量のコードが集まって出来ている。多種多様な形と色をしているコードが集まって茶黒い幹のように見えているのだ。

 さらに先程まで発光していると思っていた葉っぱはパチネッコの毛玉部分が集まっているものだった。

 

 つまり、この目の前の大樹は大量のパチネッコが集まって出来ている見せかけの木ということなのだろう。

 

 絶を解き、ゆっくりと大樹に近づいていくジールはその声に反応して降りてきた一匹の毛玉に視線を落とした。

 似たような生き物がたくさんいる為、はっきりとは言えないが毛玉の色はジール達といた時と同じ黄色である。

 

 コロコロと転がるように移動してきたパチネッコは、ジールの足元までやってくるとその三角の耳を立てた。

 

「……君は、俺達といたパチネッコか?」

「パチッ!!」

「そうか、群れに戻れてよかったな。」

「パーッチ!」

 

 お辞儀をするように、とは言っても一頭身のパチネッコは全身を前に倒すようにしてジールへ頭を下げる。

 どうやら今までのお礼を伝えているらしかった。

 

 ひとまず一人目………一匹目を見つけることが出来たジールはホッと胸を撫で下ろす。

 一応ヒソカ達が森に入っていない可能性もあったので、こうして確信を得られたのは大きいだろう。

 

 しゃがみ込んだジールの手に擦り寄るように毛玉を押し付けるパチネッコは、嬉しいのか僅かな静電気を漏れさせている。

 

 少しピリピリする感触を楽しんだジールは、パチネッコを撫でながら残りのメンバーの行方を訪ねた。

 

「……ひー君達は見かけなかったか?」

 

 その質問の意図をしっかり汲み取ったのだろう。パチネッコはジールの手から離れると、コロコロと転がり広場から伸びる一つの道に向かって行った。

 

 そして道の入口でここだと主張するように跳ねるパチネッコはヒソカ達の現在地を知っているようだった。

 

「助かる。ありがとう。」

 

 跳ねるパチネッコを捕まえ、その頭を撫でたジールはそっと毛玉を大樹の近くに降ろす。

 

「また、会おう。」

 

 せっかく同族に合流出来たのだから一緒に居たいだろうと、パチネッコを返したジールはその一本道に足を踏み入れた。

 

(どうしてパチネッコは場所が分かるんだろう?途中まで一緒に行ってたのか??特別な生態なのだろうか、木の形になってるのも気になる。ちょっと調べてみたいな。)

 

 長く一緒にいたパチネッコとの別れは少し寂しさを感じたが、一生会えない訳では無いのだ。それよりもと、ジールは新たに判明したパチネッコの生態に興味津々だった。

 

 そして枝を避けながら歩くこと暫く。パチネッコに教えてもらった道を進むジールは、先程からちょこちょこと顔を出す生き物に視線を奪われていた。

 

 物音でジールの存在に気づいた動物達は勢い良くジールの方へ駆けてきて、ジールの姿を視認すると急停止するのだ。

 しかも、止まった後にジールと目が合うと人違いでしたと言わんばかりに気まずそうな表情をして、ゆっくり森の中へと戻っていく。

 

 最初は動物達の不思議な動きに警戒していたジールも五回を超えた辺りから、生暖かい目で動物達を見るようになっていた。

 

(なんかもう居た堪れないよね……、俺でごめんねって言いそうになるもん。表情の少ない昆虫みたいな奴さえ雰囲気でやっちまった感が伝わってくるんだから相当だよな。)

 

 四足歩行ならぬ六足歩行でこちらに駆けてきたイヌ科の生き物も、丁度ジールの顔を見てUターンをしたところだった。

 

 ピンと立っていた耳も垂れてしまっている。

 そして手を振って見送ったジールは気を取り直して辺りを見回した所で、木々の間から建物を見つけた。

 

 もしかしたら皆がいるかもしれないと考えて、ジールは焦る足を転ばないように進める。

 そして切り開かれた森の中で見つけたのは、趣のある洋館の半壊し焼け焦げた姿だった。

 

(おぅ……こんがり上手に焼けてんな。)

 

 元からこの形なのかは分からないが、ほぼ森の中心に建っているであろう洋館はなにかイベントに関わっている可能性が高い。

 

 警戒は怠らず、しかし湧き上がる好奇心は抑えずにジールはドアノブに手をかけ玄関の扉を開けた。

 

 その中は煤で黒く汚れており、綺麗だった洋館の跡は一部からしか見られない。

 

 館の中に居ないのか、吹き抜けになっている廊下から上を見上げた所でジールはバッチリ目が合った。

 

「あー!!!!!ジールだ!!」

「本当か!?」

「おっ!やっと来たか。」

 

 床の抜けている二階部分から顔を覗かせたノアは、玄関から入ってくる気配に気づき偵察に来たようだった。

 その後からつられるように顔を出したカイトやダッカルもジールの姿を見て喜んでいる。

 

 最後のダッカルの言葉については、置いていったくせに何を言っているんだと殴りたくなったが生憎二階にいるので届かなかった。

 

「…………拠点にいなくて驚いた。」

「それはごめんね!今からそっち行くから待っててくれ!!」

 

 申し訳なさが毛ほどの先しか無さそうな謝罪をしたノアは穴から顔を引っ込め、正面の階段の方へ回ってきた。

 

 そしてその後に付いてきたカイトとダッカルも、玄関に立ち尽くすジールの元へやってくる。

 やっと合流出来たことに胸を撫で下ろしたジールは、ふと首を傾げた。

 

「……ひー君は、」

「あー、ヒソカはこの館に入る時に後から行くとか言ってそれっきりだな。」

「そういえば見かけてないな。どこにいったんだか……。」

 

 思い出すように顎髭を撫でながら喋るダッカルは、最後に扉の向こうへ消えていったヒソカの話をする。

 あまり気にしていなかったのか、誰も居場所を知らないという三人にジールは頭が痛くなった気がした。

 

(……一番厄介なひー君が単独行動してるのかぁ。まじかぁ。)

 

 まあしかし、元を辿れば早く行きたそうにしていたヒソカを置いて物資調達に行った自分にも責任があるかもしれないと思い直したジールは一つ息を吐いて気持ちを切り替える。

 

「わかった。カードは手に入りそうか?」

「そう!!カード!多分イベントは始まってるんだぞ!」

 

 一先ず当初の目的を果たそうと、ゲームの進捗を尋ねればキラキラとした目でノアが森に入ったところからの流れを説明してくれた。

 なんでも雷が落ちた後に館の中を探索し一枚の手紙を見つけたらしい。

 

 姫が眠っていた棺桶の所に置かれていたそうだ。

 

「……見たのか?」

「これからだぞ!ジールもナイスタイミングだ。」

「後でそちらの話も聞かせてくれ。」

 

 ウキウキと封筒を開けるノアの横で、こっそり耳打ちしてきたカイトはジールが何をしてきたのか気になるようだ。

 

 それに軽く返事を返しながらも、ジールの頭の中は先程説明された経緯の違和感でいっぱいだった。

 

(そのカエルモドキのポジションが怪しいだろ。そもそも森の主にさらわれた姫さまは何処のお姫様なんだ?あのグリードアイランド城の姫様か?ならこの森に住んでそうなカエルが助けたがってる理由は?騎士でも連れてくればいいだろ。

……それに森の中で姫様ポジションだったとしたら、なおさら森の主に攫われたなんて騒がないだろうし。どちらにせよ、カエルが怪しいのに変わりはない。)

 

 ヒソカもその辺に気づいてカエルモドキについて行ったのではないかと、ジールは思考をまとめる。

 

 ゲームの中に入れるという超体験のおかげで、比較的落ち着いていたジールだったがひとたび攻略が始まればテンションMAXになるのは当たり前だった。

 むしろ1周まわって冷静だったのが180°ほど回ってハイになっていると言っていいだろう。

 

 挙動不審な森の生き物も、パチネッコの役割も、何処かに行ってしまったカエルモドキもジールにとっては楽しいゲームの一部であった。

 

「あった!これだぞ。」

 

 そして皆に見えるように便箋を開いたノアは自信満々に読み上げる。

 

『拝啓、ワタクシを助けようとして下さった勇者様へ。

 

 お気持ちは大変嬉しいのですが、ワタクシはサバハ様に助けられる運命なのです。

 どうか勇者様はサバハ様を連れてきてください。』

 

(なにこれ、勇者様チェンジ申請されてんじゃん。ウケる……と言いたい所だが、この場合の勇者は俺たちだよな?)

 

 険しい表情をしながら読み上げたノアは、手紙の内容に唸っているようだった。

 ダッカルはさして気にしていないようで、どうするのかとノアやジールに指示を仰いでくる。

 

 さて、本来のゲームのシナリオではここで館の外にて待っているカエルモドキもとい、正体を隠したサバハと森の中を探索することになっていた。

 

 何処かにいる主を探し出す為、妨害してくる密林の生物を対処しながら森の中を歩き回るのだ。

 そして、途中でカエルモドキの正体に気づければそこから追いかけっこが始まるのだが……、既にジール達はゲームのシナリオからズレてしまっている。

 

 まあ言うまでもなくヒソカの行動が原因だろう。

 

『ややっ!それは大変ですな、私にも微力ながら手伝わせてくだされ。』

『私はこの森には詳しいですからな、サバハは密林からは出ませんし見つけられる可能性はありますぞ!』

 

 といった具合に、本来ならばイベントの説明役を兼ねているサバハがプレイヤーに親身になってくれ、正体がわかった時の驚きを提供するはずだったのだが、生憎とその流れはヒソカによって潰されてしまった。

 

 そうとは知らないジール達はこの後の動きをどうするのか、必死に相談しあっている。

 

「……そのサバハを連れてこないと話にならないだろう。」

「そもそもサバハとはなんなんだ。種族か?手紙の書き方からして特定の人物を指しているっぽいが。」

 

 カイトは新しく出てきた人物の名前に首を傾げている。

 案内役のカエルがいれば、サバハと森の主が同一人物だという重要情報を貰うことが出来たのだが、どうしようもないのが現状だ。

 

 ここで、サバハと森の主が同じ人物だと知ることで、攫った相手が運命の相手だと言って助けを求めている姫の手紙の矛盾もヒントとして与えられるのだが、それも全て無かった事になった。

 

 まあ、それら全てはヒソカが一足飛ばしに答えを当ててしまった故なので、攻略のヒントはもう要らないのかもしれない。

 ――ジールは是非とも欲しかったが。

 

「とりあえず、サバハを捕まえるまで姫の棺桶には触らないようにしよう!」

「まぁ、サバハ以外が助けにきたのが原因で雷が落ちたとも考えられるしな。」

「となると館の外を捜索するか?」

 

 あーでもないこーでもないと、手紙を覗き込みながら作戦会議に勤しむカイト達を見てジールはふと玄関の扉に視線をやった。

 

「……君達を連れてきたカエルはどこだ?」

 

 ここでジールは正規ルートでは正解の反応をする。

 その言葉にハッと顔を上げたノアも、姫の奪還を言い出したカエルモドキのことを思い出した。

 

「そうだ!あいつならサバハの事も知ってるんじゃないか――――おーい!おまえ、って居ない!!!!」

 

 元気よく駆け出したノアは、玄関の扉を開けたところで大きな声をあげた。

 

「俺が来た時は既にいなかったぞ。」

「あぁ?カイトは何処に行ったか知ってるか?」

「いや、俺もヒソカと一緒に扉の外に立っていたのを見たのが最後だな。」

 

 肩を竦めながら首を横に振ってみせるカイトも、カエルの行方は知らない。

 そのやり取りに、ジールはヒソカがそのカエルモドキと戦って殺してしまったのではないかと考えたが、流石に生きているだろうと思い直した。

 

(後は、ひー君が何に気づいて館に入らなかっただが……こればかりは聞かなきゃ分からないな。案外、一人でラスボスを見つけて独り占めしてるかもしれないが。)

 

 ふむ、と現状の把握を済ませたジールはパッと顔を上げ、三人に視線を向けた。

 ゲームの中に来てから何度か行動を共にしてきたカイトやノア達はジールの冷静さと判断力には信用を置いている。

 

 何かわかったのか、次の行動が決まったのかとジールの顔を見返すその視線には熱が篭っていた。

 

「ひー君を探そう。きっと大物を捕まえてるハズだ。」

 

 ジールは、ゲームの攻略にヒソカを探すのが一番の近道だと判断した。

 一人で行動しているヒソカを心配しての決断ではない。別に心配していない訳では無いのだが、それよりもヒソカが持っている謎の豪運でヒントを握り潰している気がしてならないのだ。

 

(まあ本人が人生エンジョイし過ぎてラッキーボーイに見えるだけかもしれないけど……。)

 

 兄としては順調に攻略しているというより、戦闘を楽しんだ副産物で攻略を進めているヒソカのイメージが強かった。

 

 ジールから端的に告げられた三人も、異論は無いようである。

 半分、ヒソカならやらかしかねないという勘で決定したジールだったが、カイト達も全員が合流するのは戦力的にも有効だと判断したようだった。

 

「よし!なら皆でヒソカを迎えに行くんだぞ。」

 

 意気揚々と再び玄関の扉を開けたノアは、気合いを入れるために右手を高く掲げた。

 その後について行くダッカルにも異論は無く、背中に荷物を背負い直すとゆっくりと歩き始める。

 

「ジールの方は何があった?」

「……後で話すが、パチネッコと会った。」

 

 最後に館を出たジールは、訪ねてきたカイトに短く返事をした。

 その言葉を受け、パチネッコを一等可愛がっていたカイトは目を大きく見開いてく。

 

 先程、説明された流れではジール以外パチネッコとは会っていないかった。元々の森へ入る目的がパチネッコだったのもあり、カイトはその所在を気にしているようだ。

 

「なら早くカードを手に入れてゆっくりパチネッコに会いに行かないと。」

 

 一層気合いを入れたカイトも、カード獲得に乗り気なようだった。

 

 木々に覆われた空を確認しながら、進む方角を確かめているノアとダッカルは出てきたジール達に手を振る。

 どうやらヒソカがどっちに行ったのか、兄の勘を頼りたいらしい。

 

 覚えている限りの道と方位が描かれた簡易的な地図はダッカルが地面に描いたものだ。

 指先の器用さは無いが、こういったことは出来るのかとジールはダッカルの意外な特技にひっそり感心していた。

 

 それを覗きんだジールは自分が通って来た範囲を除外し、じっくりと周囲を観察する。

 そして玄関前に立っていたことを加味して、走り抜けし易い向きを絞った。

 

「……北から探そう。」

「了解したんだぞ!!」

「ほいよ。」

 

 ダッカルが枝で森の四分の一を囲う。

 未だに正体も分からないサバハも探すのだ。例え外れたとしても次を探せばいいだろうと気楽に構えていた面々は、捜索から数時間であっさりと見つかったヒソカに肩透かしを喰らうことになる。

 

 

 

 

 

※※※※※※※※※※

 

 落雷から暫く。サバハと名乗った巨大なカエルを追っているヒソカは、想像以上の相手の身体能力に笑みが止まらなかった。

 

 ちなみにヒソカはサバハが森の主だと名乗ったことを忘れてはいなかったが、目の前の魅力的な状況にそんなことは頭の片隅へと追いやられてしまっていた。

 

 ジール達にとっては残念なタイミングで、最高の相性の良さを見せつけたヒソカはサバハの嘘を見抜き、一人美味しい時間を過ごしているのだ。

 

 しかし、全てが上手くいっているわけではなかった。

 

 一向に縮まらない距離と、止まる気配の無い獲物にヒソカはどうやって相手を戦闘まで持っていくかを考える。伸縮自在の愛(バンジーガム)を仕掛けようにも、相手の俊敏さによって避けられてしまうのだ。

 トラップとして使うのにも、先回りが出来ない現状では有効な手段とは言えない。

 

(あっ、また抜けた♦)

 

 それに、なんと言ってもサバハから分裂するように出ていくカエルモドキの正体が気になるのだ。

 

 ヒソカが追いかけ始めてから直ぐと、今目の前で横に逸れていったモノで二体目である。

 初め、サバハの陰がブレたように見えたヒソカは自分の目を疑った。

 

 しかし視覚の不調は無く、本当にサバハの姿がブレて分かれたのである。

 通り過ぎる木々の葉を全て持っていくような超スピードでサバハを追いかけているヒソカは、真横に逃げたサバハの分身(仮)を追える程の急転回は出来ない。

 

 仕方なくサバハから分かれた分身(仮)を見送り、本体の追跡に専念する。

 分身(仮)が抜ける毎に全体のオーラ量が減っているのが分かるが、それでも一から念獣を作った程の減少ではなかった。

 

(面白そうな仕掛けだ♥どんなタネなんだろう♠)

 

 そもそも二足歩行をして言葉が話せる点から魔獣だと判断していたが、念を使える魔獣に会うのは初めてだった。

 今までに無い体験に是非とも戦いたいと音符を飛ばすヒソカは、開けた場所で止まったサバハに胸を踊らせる。

 

 待ちに待った瞬間だと、期待を寄せるヒソカは穴が開きそうなほどサバハを見つめていた。

 

「中々いい足をお持ちのようですな。」

「ありがと♣︎キミも見かけによらず素早いよね♠」

「光栄ですぞ。さて、今回のゲームの説明をしても良いかね?」

「ゲーム?戦ってくれないのかい?」

 

 交わされる会話を楽しみながら、ヒソカはサバハの話に首を傾ける。

 

「ルールは簡単じゃ。私を含めた三体のサバハを同時に仕留めればよい。……まあ鬼ごっこといったところですな。」

 

 ローブをバサりと広げながら高々に宣言されたルールにヒソカはスっと顎を引いた。

 

「これはボク一人だと難しいね♥」

 

 チラリと背後に探るような視線を向けたヒソカは、また正面の相手に目を向ける。

 

「素早い判断。姫を助けるのに相応しいですな。さて、ヒソカ殿はどうするおつもりか?私一人を追いかけたとて無意味ですぞ。」

 

 横に広く開いた口は楽しそうに歪められた。

 目の前の主も久しぶり――いや、初めての客に胸を躍らせているようだった。

 

 その期待に応えるように、手元のトランプを弄るヒソカはニヤリと笑みをみせる。

 油断なく双方が向き合った空間に緊張の糸が張る。

 

 互いが相手の挙動に神経を注いでいるように見えるだろう。

 

 その次の瞬間、挨拶代わりに投げられた短剣がサバハのローブを飛ばした。

 

「ナイスタイミングだね、兄さん♥」

「……待たせたな。」

 

 後ろを振り向くことなく、短剣の持ち主に挨拶をしたヒソカの機嫌はひどく良かった。

 

 ヒソカの背後から現れたジールに気づいたサバハは大きく目を見開く。短剣の掠ったその腕の傷はみるみる塞がっていくが、本人はそれどころでは無いようだ。

 

 ジールによって崩された緊張は仕切り直しといわんばかりに、また三人の周囲を囲った。

 

「他の三人は何処にいるんだい?」

「……愚問だな。」

 

 事前に策を弄し、万全の準備で望むことを好むジールが姿を現したということは、答えはひとつだろう。

 

 同時刻、ノアとダッカル、カイトはそれぞれ別の場所でサバハの分身と対峙していた。

 

 

 

 

「今から『一坪の密林』入手作戦を再決行する。」

 

 




美味しい所を持っていくヒソカでした。
次回は一坪の密林戦【後編】です。
話のパート分けが偏ったので次の話は長くなると思います。

ここまで読んで下さりありがとうございました。
感想、評価、ここすき等励みになっています。

ジールとヒソカが行く場所(今後、協専からの仕事で行く順番の参考にします。)

  • 大きな街の時計
  • 地底海
  • いやがらせの館
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