やはりこの生徒会はまちがっている。   作:セブンアップ

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かぐや様は引き入れたい

 

「部活ってちょーくだらないですよね」

 

「…久々に話したと思ったらなんだそれ」

 

「久々ですか?比企谷先輩が風邪引いたのつい一昨日とかその辺の話ですけど…」

 

 そういやそうだった。そんな久しぶりでもないか。

 

「で、部活がなんだって?」

 

「いや、部活ってくだらないなって話です。部活の大事さは分かるんですけど、部活をしてない若者達は暇を持て余して非行三昧なわけで。最終的に妊娠してみんなでカンパですよ。精神的に未熟な子どもを社会から隔離するのに、部活は尤もらしい理由になりますからね」

 

「お前なんか部活に恨みでもあんの?」

 

「いえ特に」

 

 部に入って自分だけハブられたの?帰りに買い食いするイベントで自分だけ誘われなかったとかそういう類のでいじめられたの?

 

「…まぁ部活が善かって言われたら、個人的には分からんとしか良いようがない。例えばサッカー部に入部してるってだけで、なんかちょっとモテたりするだろ。あれ意味分からん」

 

「その気持ち超分かります。本気でやって、実績残してるんならそれで良いと思うんです。ただ大半は"俺達マジだぜ"って顔で仲良しごっこしてるだけなんです」

 

 おっとこれスイッチ入っちゃいましたかね。石上の青春ヘイトが始まっちゃいましたかね。

 

「…そういうの薄ら寒いって言うか。何楽しんでんだよって言うか。もっと必死こいてやれよって言うか。あーほんと…」

 

 積もり積もった憎しみを込め、石上はこう呟いた。

 

「全員死なねえかな」

 

 なんで生徒会室で反乱分子が誕生してるんだろうか。そのうち青春を謳歌出来なかった者達を集めて、悪の組織を作り上げていそうだ。反逆のカリスマになってそう。

 

「…まあ既にあるものに文句を言っても仕方がないだろ。それはさておいてだ。今日わざわざ呼んだのは、部費の予算案作成の件だ」

 

 会計係の石上の意見が必要になる仕事のため、わざわざ来てもらっている。

 

「寄付金も減少傾向になりつつある。部費も削れる部分は削っていかんといけなくなってる状況になる。俺はその辺の金管理は分からんからな。石上の意見が欲しい」

 

「そうですね……親の経理に触れている僕からすれば、この予算案は無駄が多いと言わざるを得ません。サッカー部の予算を大場に削りましょう」

 

「サッカー部の…。その理由は?」

 

「あそこ彼女持ち多いんですよ」

 

「えっそんな理由?」

 

 確かにサッカー部や野球部などのスポーツ部活には、彼女が多い傾向が何故かあるけど。

 

「同様の理由でバスケ部や野球部の部費も減らしましょう。1カップルにつき5万円くらい削りましょうか

 

「重課税かよ」

 

「幸福こそ1番の課税対象じゃないですか。幸せ税です」

 

「どんな暴君でもそんなとこに税金掛けてねぇだろうよ。私怨凄ぇなお前」

 

「えぇ、私怨です。ですが果たして、本当にそれは悪と言えるのでしょうか……?」

 

 まぁまぁな悪よ?風紀委員よりタチ悪いよ今の君。普段の伊井野に文句言えない立場に落ちてるよ。

 

「会長は分かる筈です。僕の気持ちが」

 

「お前の気持ち?」

 

 カップルが多い部活から腹いせに金搾取しようって魂胆じゃないの?

 と考えていると、どこからか紙芝居を取り出した石上。どこから出したそれは。

 

『今週の日曜日練習ないんだよね?久々に遊びに行かない?』

 

 なんか始まった。

 

『あー、ごめん!その日練習があってさ…』

 

『…最近、そればっかりじゃない?全然遊べてないよ』

 

『ごめん、大会も近いしさ。…それに俺、今サッカーに命懸けてるから!』

 

『テンマ……。私、テンマのこと応援する!』

 

『おう!ありがとう、アオイ!』

 

「くっ……ううぅぅ……!!」

 

 急に泣き出しちゃった。どの辺に号泣ポイントあるの?感情移入出来てない俺がおかしいのこれ。

 

「彼女居ることに今更なんの感情も湧きません。それ自体は許せます。でも彼女居るならデート行けよ!何彼女より練習選んでんだよ!!

 

「お、おう…。まあ分からんでもないけど」

 

「大事な彼女が居て!彼女より大事なものなんてあるってなんだよ!僕には何もないのに……」

 

 怒ったり病んだり忙しいやっちゃな。テンションの具合がジェットコースターばりだ。

 

「…まぁ、何。お前も部活に入ったら?インドアな部活ならまだ大丈夫だろ」

 

 俺は今でさえ面倒だから絶対に入らんけどな。

 

「生徒会との両立出来ますかね……?」

 

「難しいが出来んことはないんじゃねぇの?四宮と藤原もやってるみたいだし」

 

「へぇ……どんな部活ですか?」

 

「藤原はTG部だったな。前にわけ分からんゲームやらされた」

 

「あー……好きそうですもんね、そういうの」

 

「四宮は弓道部だ」

 

「弓道部…?」

 

 弓道部という単語を聞くと、石上はカラカラと笑い出す。こいつの心境本当どうなってんの。

 

「めちゃくちゃお似合いじゃないですか」

 

「?まぁ、四宮も弓道部も和のイメージが強いから確かに…」

 

「じゃなくて。弓道って、胸があると弓の弦が当たっちゃうんですよ。だから胸当ては必須で。なんならサラシとか巻く必要も出てくるんですよ」

 

「ッ!」

 

「でも四宮先輩のサイズならなんの心配もないじゃないですか。こんなですもん。こんな」

 

 と、自身の胸辺りを手を振る。まるで胸が無いことを示すかのように。

 それは結構なことなんだが、後ろやべぇんだけど。石上の後ろに四宮(暗殺者)いるんだけど。

 

「サラシ巻いてどうにかなるのはDカップまでらしいですよ。藤原先輩は確実にそれ以上あるでしょうから、弓道やった日には弦がビシバシですよビシバシ!こんなですもん、こんな!ははは!」

 

 と、今度は胸が大きいことを示すジェスチャーを。だが石上、後ろには藤原(ダークマター)がいる。あぁ、南無阿弥陀。

 

「石上くーん」

 

 普段と変わらない声色で、石上に声をかける藤原。その瞬間、石上は顔を真っ青にして後ろを振り向く。

 藤原は新聞紙をハリセンのように折りたたみ、グリップの部分を赤色のテープでぐるぐる巻きに仕上げる。即興ハリセンを仕上げた藤原は、ニパーッとした笑顔。

 

 そして。

 

「んんんッ!んんッ!!んんんんッ!!」

 

 藤原は怒り狂いながら、石上の頭に何発もハリセンを叩き込んでいく。叩き終えた藤原は疲れて肩で息をし、叩かれた石上は撃沈している。

 

「良かったですね石上くん。藤原さん、優しいから許してくれるんですよ。……でも藤原さん以外は絶対に赦さないでしょうねぇ…」

 

 死を悟った石上は急いで帰宅の準備を始め、そして。

 

「僕遺書を遺したいので帰ります…」

 

「お、おう…」

 

 石上、帰宅。

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 虫けら、もとい石上くんが消えた後、比企谷会長は書類を睨みながら私達に尋ねる。

 

「…で、お前らは部活帰りか?」

 

「えぇ。部費予算案が終わってなければお手伝いしようかと」

 

「悪いな。ただ、俺は部活やったことないから勝手が分からん。金管理に関しては石上に任せてたし、前年度の案から下手にいじると余計に面倒になるか…」

 

「あら、そうなんですか…」

 

 だったらうちの部に入れば……。

 い、いえ!そんなことを言ってしまえば、私が比企谷会長と部活をしたいみたいになっちゃうじゃない!

 

 でも、比企谷会長が入ってくれたら…。

 

『おぉ……真ん中当たった』

 

『お見事です、比企谷会長』

 

『次同じとこに当たるか分からんけどな。…つうか、くっそ暑いな今日』

 

 そういって汗をかく彼に、私がすかさずタオルを差し出して…。

 

『タオルどうぞ』

 

『お、悪いな』

 

 この感じ良い!

 

 生徒会では藤原さんや石上くんが居ますが、弓道部は現在私だけ!そこに比企谷会長が入れば……!

 でもどうしましょう。私から誘えば私が比企谷会長と部活を共にしたいと思われてしまいそう。それに第一、比企谷会長部活しないって言ってますし。

 

「だったらうちの部に入りませんか!?」

 

 そこに藤原さんが比企谷会長を勧誘。

 

「比企谷くんが入れば4人用ゲームが出来ます!」

 

「結構です」

 

「え〜!なんでですか〜!?」

 

 この女は悉く私の邪魔をする。やはり1番最初に処すのは彼女かしら。

 だが残念ね。比企谷会長はそんな誘いには乗らない。部活には入らないって言っていたし。それにその理由は。

 

「めんどいし」

 

 部活をするのが面倒だと断るこの人の意志は揺らがない。貴女で勧誘出来るのであれば、私が最初から誘っている。そうほくそ笑む。

 

 ですが、やはり比企谷会長と1度くらいは。

 

「比企谷会長。何も部活動に入れと言うわけではありません。生徒会の視察として、体験してみるのも良いのではと思います」

 

「…まあ、間違いじゃないな」

 

「ですので、視察を含めた体験をするのであれば、予算の変動が大きい運動部に行くのが合理的ですよ」

 

 比企谷会長が面倒だと思っているのは、部活に入ればそのままずっと居ること。ですが生徒会の視察として体験入部をするのであれば、数日ちょっとだけで済む。

 後は予算変動が激しい運動部を勧める。比企谷会長の性格からして、誰も知る人が居ない、かつチームプレーを主とした運動部には入りにくい。入るとすれば、個人競技の部活動。

 

 ここまで誘導すれば、後はもう時間の問題です。

 

「いえいえ、うちは別です!すぐ新しいゲーム買うから金食い虫なんです!」

 

 くっ、まだ抗うのこの子。

 というか大体部活としてそれはいかがなんですか?実績も残していない部活動に支援するお金なんてありませんよ。

 

「それはどうなん?」

 

「お金の使い方もなってない部活動に視察を行ってもなんの成果も得ることが出来ません。ここは素直に、運動部を選ばれた方が…」

 

「え、俺これなんの選択してんの?」

 

 ?勿論、比企谷会長が入部……もとい、視察する部活を何にするかですが?

 

「比企谷くんはゲーム好きですよね?でしたら、TG部が1番合うと……ん?」

 

 藤原さんが比企谷会長を説得していると、藤原さんのポケットからスマホの着信音が。スマホを取り出し、電話に出る。

 

「もしもし?はい、はいはい……え、ほんとですか〜!?そういう事でしたらすぐ戻ります〜!」

 

「?どうした?」

 

 通話を終えた藤原さんに比企谷会長が尋ねる。

 

「どうやらTG部に新しいゲームが届いたんですよ。その名も、"フンフンフ〜ン♪…ん? 魔導村!?"です!」

 

「なんて?」

 

「こうしてはいられません!今すぐそのゲームをプレイしに部室に戻りまーす!」

 

 奇妙な名の遊戯が届いたとのことで、藤原さんは勢いよく生徒会室を飛び出して部室に戻って行った。

 

「あいつ本当嵐みたいだな」

 

「全くですね」

 

 藤原さんが消えたところで、私は勧誘を再度試み始める。

 

「比企谷会長。先程の部活の件ですが……」

 

「弓道部だっけ。入部はしねぇけど、部費予算案の作成のために知っといた方が良さそうだからな。体験だけでも良いなら、参加させてもらうけど」

 

「ほ、本当ですか!?」

 

「お、おう。ていうか、お前らがしつこく勧誘してきたんだろ。何その反応」

 

 確かにお誘いはしていましたが、まさかこんなあっさり参加していただけるとは思いませんでした。比企谷会長が参加するとなれば、まずは比企谷会長専用の弓道着に弓、矢など諸々用意しなくては。

 

「では明日の放課後、弓道場に来てください。準備の方はこちらが用意しておきますので」

 

「え?いや、体験入部の人のための道具一式とかあるだろ。俺それ使うし」

 

「全て粉々になってるので無理です」

 

「全て粉々」

 

 あのような使い古された物を使わせるわけにはいきません。比企谷会長には専用の物を用意せねばなりません。早坂にも手伝うようにしてもらいましょう。

 

 ふふふ、明日が楽しみです。

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 翌日。放課後、比企谷会長が弓道場にやって来た。

 

「弓道場なんて初めて来たな。興味が無さ過ぎて知らんかった」

 

「これを機に、弓道を嗜んではどうでしょう?」

 

「いや、体験だけで良いわ。普通に部活すんの面倒だし」

 

 流石は比企谷会長。面倒なことに対しては一切妥協しない。

 ですが貴方がここに誘い込まれた時点で、既に私の術中にはまっている。昨日の、藤原さんが所属するTG部に奇妙な名の遊戯が届いたのは偶然じゃない。

 

 私が比企谷会長を部活に誘う時点で、藤原さんも便乗してくるのは分かっていた。比企谷会長に弓道部、TG部の2択で迫れば、比企谷会長は迷った末にTG部を選ぶ可能性が高い。どちらを選ぶというのであれば、ゲームを知っている方を選ぶ可能性が高いから。

 しかしそんなのは許されない。だから勧誘の話を出したと同時に、ある仕掛けをした。それがTG部に新しいゲームを届けること。

 

『なんか福引きで当てちゃったんですけど』

 

『?何かしら、それは?』

 

『どうやらゲームソフトみたいですね。でも私もかぐや様もこういうのはしないので、比企谷くんかTG部にでも渡しておきましょう』

 

 偶然にも、以前早坂が福引きでゲームを当てたとのこと。それが今回の仕掛けのポイントとなった。この手の遊戯はあまり詳しくありませんが、TG部がこれを届けられたとなると放置するとは思えない。部員も藤原さんに何か一報を入れる筈。新しいゲームが届いたとなれば、藤原さんは嬉々として勝手に消え去る。

 

 結果、1択だけが残るということになる。

 

「ふふふ…」

 

 弓道の用意といいゲームソフトといい、今回も早坂の尽力無くしては成立しない策だった。流石は私の近侍。

 

「なんで笑ってんのお前」

 

「いえ、特には。それよりも、これが比企谷会長の弓道着です。あちらに男子の更衣室があるので、着替えて来てください」

 

「お、おう…」

 

 互いに弓道着に着替え、その後再度、更衣室から弓道場に出る。制服や体操服ではない、弓道着を纏った比企谷会長がそこに居た。

 

「よく着替えれましたね。手こずると思ってたんですけれど」

 

「これでも時間は掛けた方だけどな。スマホで説明見ながら着替えたわけだから」

 

 それにしても、比企谷会長の弓道着が似合う。

 これにその後、肌脱ぎしてしまったら。半端に見えてしまう比企谷会長の綺麗な白い肌に、服の上からでは見えづらい、意外と引き締まった筋肉。その露出された状態で私が手取り足取り教えていく。

 

「はぁ……はぁ……」

 

「え、何。息荒くして怖い」

 

「い、いえ、お気になさらずに。それでは弓道を初めて行きましょう」

 

「お、おう」

 

「基本的に右手で弓の弦をかける……つまり引っ張るということになります。ですが良い矢を放つには、一連の動作が必要になります。ということなので、左を曝け出してください

 

「曝け出すとは」

 

「肌脱ぎと言います。左肩から左胸の下辺りまで見えるように。この動作も弓を射る前に必要なことなのです」

 

「お、おう…」

 

 そういって、ぎこちない動きで私の指示に従う。少しずつ露出していく比企谷会長の肌と筋肉が、私の心臓の鼓動を早くさせる。

 露出しているのは少しだけ。それに男性の肌脱ぎなど、弓道を行う上で必要になる動作。今更男性の肌ごときに動揺する私ではない。

 

「し、四宮…?顔怖いんだけど。顔っつか目が特にやべえ」

 

 この後、比企谷会長に寄り添って弓道を教えていく。彼の肌が私と密着して。特段何もおかしいところは無い筈なのに、呼吸を荒げてしまう。

 

 一旦息を整えましょう。このままでは、とんでもない雌犬になってしまいます。

 

「ま、まずは、両足を開いてください。両足60度が基本角度です」

 

 私は動作を1つ1つ説明していく。比企谷会長はおばつきながらだが、確実にその動作を行っている。その動作は弓構えに入るところまで進む。

 

「では、これから正確に弓を射るための本格的な動作をお伝えします。ですが口頭で聞き取り、実践するのは難しいでしょう。ですのでまず、私が比企谷会長の手と足を取って、弓を射るところまで行います。異論は認めません」

 

「なんでそんな高圧的なの?」

 

「何故って、比企谷会長と私で弓道の頂に向かうためですよ?そのために基本動作はしっかり覚えなければいけません」

 

「これ体験だよね?俺いつから弓道部入ったの?違うよね?」

 

「それでは始めましょう」

 

「聞けよ」

 

 私は比企谷会長の背に密着。後ろから、比企谷会長の左腕に私の左腕を添えて、また右腕も同様に私の腕を添える。

 これほど密着したのは初めてかも知れません。しかも、比企谷会長の硬い筋肉が私の左腕の中に。

 

「え、ちょ、四宮?」

 

 いつまでも触れていたい。この感触を誰にも渡したくない。藤原さんにも早坂にも、風紀委員の女にも。この方にここまで密着出来るのは私だけ。

 

「お、おい四宮、早く教えてくれん?さっきから人の左腕ペタペタ触ってんの?いよいよ恥ずかしいんだけど」

 

「恥ずかしい?何が?弓を射るためには必要なことですよ?さぁ、続けましょう

 

「怖い怖い怖い怖い」

 

 比企谷会長は失礼にも、その場から逃げ出そうとする。しかし弓道で鍛えた私の握力と筋肉を舐めないでください。彼の両腕を力強く握りしめ、逃げ出さないよう引き止める。

 

「逃げないでください。しっかりと、丁寧に教えますから」

 

 それはもう、骨の髄までしっかりと。貴方は私の教えなしに生きれなくなるほどに。比企谷会長は、これから私だけに……。

 

「そいっ」

 

 すると突然、私の後頭部に衝撃が。鈍器で殴られたような痛みはないけれど、それなりに痛く感じる。比企谷会長と私が共同作業を行っている最中に、邪魔をするのはどこの輩だ。憎しみと殺意を込めた目で振り向くと。

 

「何やってるんですかかぐや様…」

 

「早坂……周囲を警戒しておいてと言った筈だけれど?」

 

 私を後ろから叩いたのは、近侍の早坂。手に持っていたのは、ハリセンだ。

 

「かぐや様の考えなんて手に取るように分かりますから。まさかここまで暴走するとは思いませんでしたけど。ていうか鼻拭いてください、鼻」

 

「へ?」

 

 私は手で鼻に触れる。その時に、何かの液体に触れた感触が。確認すると、赤い液体が付着していた。

 

「お前、鼻血出てるのに気づかなかったのかよ…」

 

「鼻、血…?」

 

 その血を見て、私は目覚めた。早坂に叩かれる前まで、一体私は何をしていたのだろう。比企谷会長にあれだけ密着して、執拗に彼の腕に触れて。

 

「どんだけ興奮してたんですか…」

 

 早坂が呆れながら言う。

 このまま早坂が来なければ、私はずっと比企谷会長の腕を…もしかしたら、それ以外のところに触れていたのかも知れない。そんなの、そんなの……。

 

 比企谷会長が好き過ぎて、好きな比企谷会長の露出した肌に興奮した雌犬になるのでは!?

 

「し……」

 

「し?」

 

「死にたいので帰りますぅー!!」

 

 私はそう言って、一目散に弓道場から去った。

 

「…石上みたいなこと言って帰ったぞ」

 

「ていうかあのまま帰らないで欲しいんだけど」

 

 

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