「ちょ、ちょっと待ってください!」
オールマイトとのワン・フォー・オールの秘密と、そこに突如介入した学友など、様々な事情で混乱する緑谷が制止の声を上げた。意気揚々とその場で衣装に着替えようとしていた高志朗もその手を止めた。
職場体験と銘打っているのだ、対
「【ワン・フォー・オール】を知った御舟くんと、僕は話したいです」
道着を着け、袴の帯を締めながら高志朗は口を開いた。
「ワン・フォー・オールのことも、お前さんが次代のオールマイトだということも、一切口外しない。そういう風に
「いや、それもそうなんだけど…」
高志朗の言葉に、何とも言えない表情で頬を掻く緑谷。しかしそうではない。他言しないのは当然のことだが、この大秘事に関して何の言及も無く平常心を保っていることが緑谷には不思議で堪らなかった。まして高志朗は、
「御舟くんは……」
「俺は驚いたぞ、お前さんが継承者であることに」
「…!」
「大いなる力には、大いなる責任が伴うと言う…そんな
一部報道では後継者を探す為とは言われていたが、まさかすでに決まっていて、更に自分の“個性”を譲り渡したとは誰も予想できまいよ、と高志朗は肩を竦めた。
「額面通りに捉えれば、オールマイトはグラントリノの叔父貴が自分にしてくれたことを、今度はお前さんに施そうとしているよな。過去をなぞろうとしているあたり、律儀というか……」
「教育向かねぇんだよ俊典は。俺がやったことを馬鹿正直に準えやがって、あの正義バカは」
「し、辛辣……」
「うーむ」
緑谷の遠慮がちな視線に何かを察した。すると袴を着け終えた高志朗は、刀袋から一振りの日本刀を取り出してそのまま鯉口を切った。
「まァ、俺も【ワン・フォー・オール】を知ったんだ。
「良いの!?」
「ああ」
「御舟くんの“個性”は僕も正直凄く気になっていたんだ運動量を増幅させる高エネルギー体を体に纏うことで超人的な動きを可能とする。ちょっと調べたけれどそれって中国武術の内功や外功に似たようなものだよねでもそうなるとどうして御舟くんの“個性”が【剣気】と銘打たれているのかが不可思議だったんだよ御舟くんの戦闘スタイルが日本刀を用いた剣術なのは分かるけれどそれで“個性”名が決まるわけでも無いしでも中には好みで“個性”名を決めているっていう人も世の中には居るみたいだし」
「……すみません、グラントリノの叔父貴、少し長くなります」
「みたいだな……よっこらしょ…だが気にしないで良いぜ。俺もちょっと早とちったからよ」
そう言うと、グラントリノは椅子にちょこんと座ったまま手を振って促した。
キラキラと期待の眼差しを向けてくる緑髪の学友に引き笑いしつつも、高志朗は話し始めた。
「俺の“個性”【剣気】は血筋によって引き継がれるものだ。それは一般的に知られる“個性”と変わりはない」
「基本的に個性因子は、血統で決まるんだよね。突然変異でまったく違う“個性”が現れることもあるみたいだけど……」
“個性”は親から子に引き継がれる。両親の“個性”を両方引き継ぐこともあれば、片親の“個性”を引き継ぐこともある。
「“個性”と体質を父母からそれぞれ引き継ぐ事例もあるようだから、“個性”に合わん体質は難儀するだろう。他人から貰った“個性”なら尚更……なぁ緑谷」
「あー…すごく、ワカリマス」
緑谷がどんよりとした笑みを浮かべた。
初期段階で激痛による行動制限に悩まされ、フルカウル習得後は許容上限8%の領域に指をかけたものの安定せず、意識していなければ5%に下がってしまっている時がある。
「ワン・フォー・オール本来の力を引き出すには、まだまだ道は長そうだよ……」
「譲渡されたのはいつ頃だ?」
「それが、中三の冬頃なんだ」
オールマイトから授けられてから半年も経っていないことに、高志朗は唖然とした。
「辛いな」
「言わないでぇ! でも、じゃあ御舟くんは幾つくらいで発現──」
言いかけた所で緑谷は、自らの苦い幼少期を想起させられ、言葉が詰まった。
医学上では四歳までには“個性”は現れるものだと訊かされたが、周りはすでに“個性”を持っている子供でいっぱいだった。
周りと比較して劣等感に苛まれる日々がそこにあった。
(御舟くんがこれなんだ、オールマイトの話に出た彼のお祖父さんもきっと相当な使い手に違いない。やっぱりだいぶ早くに発現したのかな?)
「【剣気】の発現は十二歳と決まっている」
「じゅっ……十二!? 普通は四歳くらいまでには発現して……それ以上は望み薄だって……!!」
「そこが他の“個性”と違う、そして【ワン・フォー・オール】とも違う所だ。それに、十二歳に至るまでやらなくてはならんことがある」
十二……十二……と固まる緑谷に構わず、高志朗は話し続ける。
「十二歳になるまで、剣の修練を積み重ねること。加減は知らん、ただ愚直に無心に取り組んだ。そして愚直に無心に取り組んでも発現しない代も存在した……俺の御祖父とかな……」
「そんな……!」
この個性社会、“個性”を望む人間は多く居る。そんな中、生まれてから十二年間もの間“無個性”かもしれないという怖れを抱えて生きていかなければならない。高志朗も発現前は卑屈になりかけて、その度に猛稽古で無理矢理その気持ちを吹き飛ばしていた。
緑谷は、高志朗の持つ剣の凄まじさを体育祭で見ているし知っている。だからこそ息を呑んだ。
「そんなに頑張っても、必ず発現する保証は無い“個性”……!」
「これも御祖父から聞いた話なんだがな……剣術ではなく、肉体…主に筋力を鍛えた次期継承者が居たが、一切発現しなかった。やはり、剣術でなければならなかったのだ」
「その…御舟くんのお祖父さんは…無個性なんだよね……?」
自身もそうであったように、緑谷はそう反芻した。高志朗は瞑目すると、やがて言い辛そうに吐露する。
「ああ、御祖父は無個性だ」
「……そんなに頑張ったのに、どうして!」
「────」
顔を上げると──思わぬ反応に目を見開いた。
緑谷が、悔しそうに拳を自身の膝に打ち付けていたのだ。そして見よ、涙まで流しているではないか。
まるで己のことのように憤る緑谷に、高志朗はハっと重大なことに気づいた。おそらく無個性の家族を持った彼だから気付けたことだ。
「お前さんも、御祖父と同じ無個性だったんだな……。そして、オールマイトから【ワン・フォー・オール】を譲り受けた」
「……!」
緑谷は、涙で濡れた目元を腕で拭った。
祖父・陣七が、天を仰いで洩らした言葉を、高志朗はいまでも憶えている。
『星が、違うたか』
──天運、我を見放し給うた。
「────人事を尽くして天命を待つ。昔の奴の口癖だったな、そういや」
グラントリノが離れた場所でそう呟いた。
修練に修練を重ね、限界も超えた先にあるものが勝利とは限らない。
御舟家にとって、【剣気】という“個性”は、現れた時から神様のような存在だった。それは発現した後でも変わらない。
捧げるのは
要求してくる対価が人生を剣に捧げることだからだ。
救いがあるとすれば、前払いでも後払いでも構わないことだろう。滞納した先にあるものはやったことが無い為分からない。
「……俺は星に恵まれた。だからやるんだ」
刀を腰に差し、木太刀を背負い、御舟の家紋が刺繍された羽織りを翻した。
「御舟の家をいままで以上の盛り立てて行く。そのためには、御舟の武を示す必要がある」
「お前たちがある程度戦えることは、体育祭の動きで解った。あー……えーと、ヒーロー名!」
「“デク”です!」
「“剣客・御舟”。“御舟”でお願いします」
一日目の職場体験学習。高志朗、緑谷の二人は、グラントリノ引率のもと山梨県という地方から東京方面への新幹線に乗り込んだ。
これからの流れ等細かなことを移動中の車内で打ち合わせると言う。
「おう、高志ろ…御舟と、デク。これから一週間は
「えぇ!? 僕、まだ心の準備というものが……」
「宿はどうしますか叔父貴。それとも日帰りですか?」
「行く気満々!? しかも泊まりって……冗談、だよね?」
「え? 野宿でも全然有りだが」
「これダメだ本気の目だ! でもそういう逞しさもヒーローには必要なのかな……?」
「染まるな染まるな。まったく良い教育してるぜ、あの
若者二人のやり取りを見てグラントリノが笑い出した。
この御舟高志朗という男に帰巣本能は無い。眠るならばどこでも眠るし、食糧さえあれば何処にでも
緑谷自身も、ある投稿動画で高志朗が
超常黎明期という激動の時代を生きた
「始めは東京23区周りを巡回する。次に東京都下…なかなか忙しいからな。ちなみに宿はちゃんと取るから安心しんさい」
「ほっ…」
「承知」
緑谷も安堵の息を零し、高志朗は木太刀を看始めた。
「……」
そんな二人を眺めるグラントリノの思惑は別にあった。
両人とも、体育祭で見せた実力を実戦でも発揮できるのなら、とある案件にも着手できる可能性がある。
発見できるかどうかは不明瞭だが、やってみる価値は十二分にあると判断した。
「──保須にも行くぞ」
「!」
「……いま其処は、多くのヒーローが混在していますが良いのですか?」
保須市で真っ先に思い浮かんだのが、かのヒーロー殺しだった。現在、インゲニウムが同地で襲撃され再起不能にされてから、プロヒーローによる警戒態勢が厳重に敷かれている場所でもあった。
「構わん。他のプロヒーローとの連携も、職場体験の一環だ。その辺も、ちゃんと勉強して行け」
所変わって、爆豪勝己の職場体験先。
────“ファイバーヒーロー”《ベストジーニスト》。
現在はベストジーニスト自ら、爆豪と立ち並んで街の巡回パトロールに従事していた。
「先日の保須事件に感化された
「あァ……!」
「唐突だが、質問だ。パトロールは
「
「…違う。答えは、我々の存在を示し、市民たちに安心を与えることだ。守る者と守られる者との、信頼関係を築くことができる」
「けっ、ご機嫌伺いかっつの。んなもん、俺のヒーロー像に──」
「あれベストジーニストじゃない!?」
「ホントだ! お仕事頑張ってくださいー!」
爆豪の言葉を遮った女子高生の黄色い声援に、ベストジーニストはジェスチャーで応える。慣れたものだった。
無言クールな受け応えに、しかし声援はさらに倍になって返って来る。
信頼関係…安心を与える…それを実践してみせたベストジーニストは、やはり上位に位置するスーパーヒーローの一人だった。
“矯正”することが彼のヒーロー活動。ゆえに、爆豪の体育祭での唯我独尊ぶりを見て、彼を指名するに至った。
「ケッ!」
(いまはこの強い気持ちが、ヒーローになることへ向けられている分には良いが……もしそうでなくなったとき)
「あっ、この人知ってる。前にテレビに出てた人だ!」
「あァ?」
「なんだっけ?」
女子高生の次は男子小学生だ。今度は爆豪に向けられている。声援とは少し違うようだが。
「思い出した! 準決勝で怖いサムライにやられてた怖い顔の人だ!」
「……っ!!!! っだとゴラぁ……!」
「ひっ……」
「うわぁぁぁぁんやっぱり怖いよぉ!」
「……さっき言ったことをもう忘れたのか。きちんと対応しなさい」
「ちっ!!」
(この子もそうだが、あの優勝者の彼にも同じことが言える。騎馬戦では良いチームワークを張れていたようだが、最終種目では画面越しからでも伝わって来る程の非情な気配……さてどうしたものか)
「あのクソサムライはいつか必ず潰す! 必ずだ!」
「「「わぁぁぁぁぁぁん!!」」」
「もう止さないか、バクゴー」
(ギャングオルカ、エッジショットにホークス。……ミルコに到っては
子供を泣かす爆豪を見て、小さく唸った。
その後、号泣してしまった小学生たちにベストジーニスト自らフォローを入れて事なきを得たという。
────“バトルヒーロー”《ガンヘッド》
麗日お茶子の職場体験先。
「基本は犯罪の取り締まりだよ。逮捕協力や人命救助等の貢献度を申告。そして専門機関の調査を経てお給料が振り込まれるよ。基本歩合だね」
(喋り方、かわいい……)
「公務員に近いって聞いたことあるんですけど、歩合なんですか?」
不安そうに訊いて来る麗日に、ガンヘッドはマスク防具で覆われた厳つい風体に似合わぬ高音で答える。
「枠組みではね。成り立ちから何まで公務員とは違うよ。でも、歩合にも最低賃金は存在するから、元々貰える給金とそれに上乗せで歩合分が乗るシステムなんだ」
「へー!」
「でもだからって、何の活動もせずにいたらそこは公務員──国からの注意は免れないよ」
ヒーローになれば必ず貰えるお給料……! と奮起する麗日が、ガンヘッドの言葉に表情に険を戻す。
「そこはもう! ……でも、やっぱりそういうのってあるんですか?」
法律でそう定められている以上、そしてヒーローも人間である以上過ちは有る。ガンヘッドは腕を組んで考え、やがて指を立てた。
「結構ぐいぐい来るね、ウラビティちゃん」
「すみません、話の腰を折るようなことをして……」
申し訳なさそうに謝る麗日に、ガンヘッドはにこっと笑った……雰囲気を出した。
「とんでもない。むしろ、そういうところを気にする学生さんってあまりいないからさ、びっくりしただけだよ。
そうだね、うん……確かなところで、各地に構えているヒーロー事務所が、ここ三年で急激に減ったね」
「お仕事をしなかったからですか……?」
「結果的にはそうなるね。知り合いの話では、何でも物凄く強い中学生が来て、訓練とは言えコテンパンに伸されちゃって…それで自信を喪失して事務所を畳んだっていう、それが立て続けに……ちょっとした事件だったよ。今年になってからその道場破りめいた行為はぱったりと止んだけど────と、話が脱線しちゃったけど、これくらいかな」
八百万百の職場体験先。
────“スネークヒーロー”《ウワバミ》。蛇のような髪というか、蛇が髪の一部となっている女性ヒーロー。妖艶な雰囲気を出している美女で、その立ち姿はヒーローというよりも、カメラレンズを意識したアイドルだ。
「そうね、あとは副業が許されてる。公務に定められた当時は一部で相当揉めたとも聞くけど。市民からの人気と需要に後押しされた名残ね────というわけで、これからCM撮影なの、付き合ってね」
楽屋で化粧をするウワバミに対し、八百万は困惑した様子だった。
「アイドルの真似事を……?」
「真似事ではないわ。ヒーローは人気稼業でもあるの、ただ険しい顔して街中を巡回するだけじゃ、市民の心を掴むことはできないのよ?」
「な……なるほど」
むむむ、と考え込む八百万。“万象ヒーロー”《アルス・マグナ》という名を背負ってするには、不満とまでは行かないが首を傾げる活動内容だ。
困っている人を救うという彼女の原動力に水を差すおこないだった。
すると、ウワバミは不安そうな、不満そうな複雑な表情をしている八百万を見て優しく笑んだ。
「大丈夫、心配しなくても撮影はすぐに終わらせるわよ」
「あ……いえ、そのようなつもりは……申し訳ありません」
「ううん、私だって貴女の活躍を見てなかったわけじゃない。その歳であの機転と度胸は誰にでも出せることじゃない。まぁ、可愛いと思ったのは事実だけどね」
「……! か、かわい……い?」
八百万とて、体育祭ベスト8。上鳴の電撃を完璧に防ぐ機転と、氷を使う轟に火炎放射器を撃つ度胸を持っている。
「撮影後は、パトロール。
「はい!」
「ではこれより、合同訓練をおこなう。よく来た、と言ってやりたいところだが──」
某港、海岸沿い。ここには二つのヒーロー事務所が集結していた。
「この訓練に付いて行けない者は、トップヒーローになることなどできんと思え! 分かったか底生生物共ォッ!!」
「サーイエッサー!!」
────“
「おいおい巻き込んじゃ困るぜ、フロッピーはうちの体験生だ、ギャングオルカ」
“海難ヒーロー”《セルキー》ゴマフアザラシの風体のプロヒーロー。こちらは蛙吹梅雨の職場体験先である。
プロヒーローは
日本の警察機関に術科特別訓練員と呼ばれる者たちがいる。それらは、対人戦闘を主軸とした逮捕術を含めた武道を一つ選び、日常的に訓練している。実は機動隊員の多くはこの特別訓練員から輩出されているのだ。
超人社会となった現在、その存在意義が危うくなっているのは憂うべき実情だが、こういった武闘派のプロヒーローたちに教科書とされているのもまた事実だった。
「“合同”訓練だ。例外は無い」
「そんなだから子供に泣かれるんだぜ? 本当は大好きな癖になぁ」
「……貴様のあのわけの分からぬポーズよりは全くマシだ」
「何だとぉ!? あれやるとバカ受けなんだぞ!?」
ゆえに、シャチとアザラシといったような、水生動物の“個性”を持つ者同士が“水練”と称して海で合同訓練をすることもある。
「あれ、確かA組の蛙吹? 奇遇だな……こんなところで同じ雄英生に会うなんて! 今日はよろしくな!」
「ケロ、B組の拳藤ちゃんね、こうして話すのは初めて……よろしくお願いするわ!」
お互い頭同士が言い合いを始めたので、その隙に自己紹介を始めた。
すると照れくさそうにしていた拳藤に、蛙吹が話し掛ける。
「凄いわ拳藤ちゃん。ギャングオルカって、プロの中でも上位に入るヒーローよね、ケロ!」
「正直、体育祭の成績に見合ってないって分かってるけど、素直に嬉しかった!」
『ヒーロー科入試主席の貴様が、なぜ体育祭で成績不振に陥ったか分かるか!? 答えろぉっ!』
『わ、分かりません……』
『声が小さぁいっ! 分からなければ「ノーサー!」だ! さあ言え!』
『のっ、ノーサー!!』
ギャングオフィスでの一幕を思い出し、表情をげんなりさせる拳藤。
「初対面は滅茶苦茶怖かったけどな……!」
「ケロぉ……噂に偽り無しということね」
ギャングオルカはシャチの姿にスーツを着た、ヒーロービルボードチャートの上位に君臨する、戦闘だけならばベストジーニストに比肩する実力派だ。
ちなみに、
「今日は水練だ。海での活動が如何に困難か教えてやる!」
『サーイエッサー!!』
「船長、私たちも頑張りましょう!」
「おう当たり前だフロッピー────頑張ろうねっ☆」
(か、可愛くない……!)
(…かわいいわっ!)
「行くぞ、
「ガキが、格好付けてんじゃねえ!」
二日目の夜。東京都心、グラントリノ一行。
「てェっ!!」
「い゛っ!?」
総髪の侍が、ナイフを持って襲い掛かってきた
不意の強打に堪らず得物を取り落とした次の瞬間には、
────胴体が上下に別たれたと錯覚する激痛である。
「ぐっがぁぁぁぁぁッ!! 痛でぇあぁぁぁ!!」
「──普通は痛いで済まないんだが……つくづく俺は
「ぐぇっ────……!」
地面でのた打ち回る
俄かに、がく、と意識を手放す。
「鋼鉄と化す
「すみません、叔父貴」
「お、追い打ちはえぐいよ、御舟くん……」
総髪の侍は、御舟高志朗だった。引きつった笑みでそう言う緑谷に、高志朗は失神している
「この
「でも周りドン引いてるよぉ……!」
「なんだと? 馬鹿な」
「まぁ、難しいと思うが、お前の課題は手心だな……難しいと思うが。デクは逆に手心を加えすぎだな。相手が大人しくなるまで何回殴るつもりだ、お前は!」
「は、はい! 精進します!!」
「次ぃ行くぞ! 今度は渋谷だ!」