火埜翔織という異物によるHEROACADEMYだ   作:完全怠惰宣言

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「特別な気分」カップルネタです。
解らない人は調べてみましょう。
いやぁ、黄金週間前に何とか投稿できたよ。
ペラペラだけど。


上塩的愛愛物語

いつの世も「容姿が整っている」というのは武器である。

そんなこと、誰しも一度は思ったことだろう。

 

「ん?」

 

誰がどう見てもバチクソキレ散らかしてる爆豪であろう者が苺のショートケーキをパクつく火埜の鼻先に突き付けているのは爆豪のキャラに似合わなそうなファッションを専門に扱う雑誌の大人気コーナーであった。

爆豪の手に収まった雑誌のあまりのジャンル違いに何にそんなにキレているのかとクラスメートが全員集まってくるのはお約束というものだ。

 

「弁明させていただきたい」

「あぁん?」

 

見開かれたページを見た瞬間、まるでお手本のような土下座と弁明に入る火埜と怒りのあまり日本語を忘れかけている爆豪。

 

「いや、確かにそれは入試前の夏休みのだけど、その時期は爆豪家はおじさんの本家にお盆帰りしてたじゃん」

「おぉん?」

 

端から見るとカツアゲしているされている光景に写るそれは爆豪の怒りというか別の何かが含まれているのを周囲が感じ取れるほどだった。

 

「そもそも、入試とか関係無くちゃんとこの時期に告白してなかった勝己が悪いし、なんだったらこの時期はただの“幼馴染み”だったんだからオレ悪くないでしょ」

「オレノキモチシッテテコノシウチハユルサレナイ」

「わぁ、“これ”懐かしい」

 

そのページを見て嬉しそうに声を上げたのは緑谷だった。

その声に人間の可動領域を無視したように首を回して満面の笑みを浮かべる緑谷を悲しそうな顔で見る爆豪。

 

「し、静空、お前、やっぱり翔織のこと」

「ん?ち、ちちち違うから!!ボクが男の子として好きなのはかっちゃんだから」

 

「「「あああん」」」

 

何かに飛び火したように数人の男子が緑谷と爆豪の傍に近寄る。

そうすると必然的に緑谷が見ていた雑誌がフリーになり、残りの全員が件のページを目撃することになる。

そこには、今よりも僅かに幼い雰囲気の火埜と緑谷が写っていた。

ただ写っていただけでなく緑谷が当時の年齢からしたら破格のメロンと一緒に火埜の腕を抱き込んでよくよく手を見ると世間一般で言うところの「恋人繋ぎ」をしていた。

 

「(うわぁ、オレも茨といつか堂々とこうしたいなぁ」

 

騒動の外で上鳴の心から漏れた言葉。

過剰で過激なスキンシップがなりを潜めたことで年相応のお付き合いになった恋人を思い出しながら若干の羨ましさを滲ませつつ上鳴はその日の事を忘れていった。

後に彼はこの日の事を忘れたことを後悔することになる。

A組の天使ちゃんこと相澤壊理ちゃんがこの日はお泊まりに来ていたことを忘れていたことに。

季節は巡り、1年前の大事件によって秋でも容赦なく雨が降るようになった日本、そんな大雨が降っているある日、上鳴は1人でA組の非常食(お菓子、主にスナック類)を買いに来ていた。

弱いくせに賭け事をする峰田と上鳴は今晩こそはと意気込んで轟と口田にババ抜き勝負を挑んだ結果、某漫画の地下労働者の如く毟り取られてしまい結果、自分の財産(お菓子・夜食)だけでは足りずに肉体労働による返済となってしまったのである。

なお、峰田はAB組の廊下のワックスがけを行っているが雨の中の買い出しとどちらが良いかと聴かれたら迷うとこだが。

 

「(天気予報外れてやんの)」

 

今朝方みた天気予報では本日は小雨で時折パラつく程度という予報だったのだがとんでもないどしゃ降りであった。

 

「(しかし、番傘も良いもんだな。今度、轟にどこで買ったか聞こう)」

 

買い出しに行こうとしたところ偶々会った轟から渡された(結構高そうな)番傘は普段使っている傘よりも大分大きいからか雨に濡れることなく大量の荷物と共に歩いていた。

最寄駅を出てすぐに見慣れた後ろ姿があった。

 

「あれ?茨何してるの?」

「あ、電気さん」

 

まだ学生という身分であり、周囲の目もあるとインターン先のキャマバッカ事務所で叩き込まれた塩崎は行く度に淑女としてのレベルを上げて帰って来ていた。

もっとも、我慢の限界値を超えた時の上鳴の被害がそろそろ拙いことになりそうなのだが。

 

「実は先ほどコンビニで買い物をした際に傘を取られてしまいまして、もう一度買おうか止むまで待とうか迷っていたところです」

 

白いレースの上着が雨に濡れて下に着ている半袖のせいで塩崎の絹のような肌がうっすらと透けて見えている。

控えめに言ってエロイ!!と心の中で上鳴は思いながら恋人の思考にふける横顔と自分の番傘を見比べた。

 

「だったらよ」

 

雄英高校までの道すがら、顔を赤らめモジモジとしながらもどこか浮つきそうな顔をしている塩崎。

その反対には今週あったことやインターン先でのことを嬉しそうに話をする上鳴。

言うところの相合い傘である。

轟が貸してくれた番傘が大きかったのもあり2人とも濡れることなく帰れているのだが無意識に濡れないように傘の中心にくるように動いたため2人の肩は触れそうで触れないそんな位置にあった。

 

「あの、あなたさ、じゃなくて電気さん?あの、これは」

「あのままにしたら茨が風邪引いちまうだろ。帰る先がほぼ一緒なんだからいいじゃん」

 

そう言うと上鳴は人を安心させるような笑顔を浮かべる。

塩崎にとって上鳴を好きになった経緯こそ異常であったが、現在に到るまで様々なことがあった(主に上鳴の貞操の危機が108回ほどあった)。

そんな暴走しがちな自分という重い女を受け止めてちゃんと好きと言ってくれた隣の思い人の横顔を塩崎は静かに眺めていた。

 

「すいませ~ん」

 

そんな2人に掛けられる声があった。

 

 

夜になり、週末と言うこともありABクラスが揃って同じ寮にいる。

今回はA寮に来ており大人数でのカレーパーティとなっていた。

 

「カレー、カレー、中辛がオレは好き♪」

「私は甘口で、あなた様トッピングはどうされますか」

 

学校内ということもあり呼び方がいつも通りになった塩崎とAB料理スキル上位者達による様々なカレーにテンションが上がっている上鳴。

なお、「素手での接触厳禁!!」とか「食べたい人は誓約書にサインを」とか「爆豪専用」とか書かれている寸胴鍋に毎回か果敢に挑んで毎回舌が死ぬ物間・切島・鉄哲は始まったばかりと言うことで普通のカレーを食べている。

 

「お、今日のニュースやってるじゃん」

 

自作のトマトハヤシライスと鱗の作ったカレーまんをお替りした火埜が付けっぱなしのテレビに気が付いたようだ。

 

「いやぁ、今日の雨は凄かったな。上鳴君も罰ゲームとはいえ買い出し大変だったろう」

 

緑谷と麗日合作の家庭的なカレーを食べながら飯田が上鳴に声を掛ける。

 

「ん~、そうでもなかったかな」

 

何やら思い出したらしく顔をニヤけさせながら上鳴は再びカレーと向き合う。

 

「ん、あれって上鳴と塩崎じゃね」

 

突然の秋雨に関するニュースが流れる中、瀬呂がいらんことに気が付いてしまった。

それは、雨が降り続く午後、ニュースでは突然の雨を特集するために外でのインタビューが流されていた。

 

『仲が良いですね』

『そうでしょ、自慢の彼女っすよ』

『で、でんんきさささん』

 

いつもなら、そんなこと言ったら即Go to Bedな未来しか待っていないような発言をする上鳴とそんな彼氏の発言に周囲の目もあるためか顔を赤らめてワタワタする彼女。

 

『しかし、こうも突発で雨が降られると大変でしょう』

 

インタビューをする女性アナウンサーが上鳴にマイクを向けると上鳴はキョトンとした顔をして何かを考えるように左上を向く。

 

『いや、でも』

 

その視線が塩崎に向けられ恥ずかしそうにうつむく彼女の姿を慈しむような笑顔で見守り、頭の中の気持ちが言葉にできたのか、上鳴が口を開いた。

 

『こうやって、合法的に距離が近づくなら恋人といる時の雨も悪くないかなって、特別な気分に浸れてオレは好きっすね』

 

そのセリフに思わずひゃーと声を上げてしまうアナウンサーと反対に、自分の顔を限界まで下げて照れた顔を隠そうとする塩崎。

ニュース映像が切り替わるのとほぼ同時にその場にいた全員の顔が件の2人へと向く。

 

「いや、あの、これは、そう、いえ、ちがうのです、いえ、ちがわなくて」

 

そこには顔を真っ赤にして呂律が回らず目がぐるぐると回って混乱している塩崎と。

 

「いや、まぁ、うん本心」

 

顔を真っ赤にしながら覚悟を決めた上鳴がいた。

そこからは一気にお祭り騒ぎ。

根掘り葉掘りみんなが質問し二人を困らせ、暴走スイッチが入った塩崎が上鳴を茨で拉致すると猛スピードで自室へと逃げ込もうとしていた。

それを追うABクラスの中で美味しそうにカレーを食べ続ける火埜とその姿を面白そうに見ている爆豪が残った。

 

「“この騒ぎ”、梅雨の時の仕返しか翔織?」

 

爆豪はすました顔で45皿目のカレーを完食した幼馴染に少し笑いをこらえたような顔を向ける。

 

「さぁ、なんのことやら?オレはただ面白そうなニュースのネタを提供しただけだし」

「くっは、陰険」

「陰湿じゃないだけましでしょうが」

 

上鳴の貞操は心操と相澤によってなんとか守られたようであった。

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