チョコを作る日当日、どうやら以前一緒にクリスマス会をやった海浜総合高校と合同でチョコレートづくりをするようです。
「今日は声をかけてくれてありがとう。前回の事も反応が良かったから今後もアライア、ッ」
早速海浜総合高校の生徒会長の玉縄がいろはに声をかけますが何やら目線を少し下にやった瞬間なにやらフリーズします。
「どうしたの?」
そこにはいつも通りの笑顔を向けた真がいました。
「いや、今日は一緒に盛り上げよう」
そう締めくくると、玉縄はその場を離れていきました。
「何だったんだろうね!」
「そうだね~」
いろはと真は二人そろって顔を合わせました。
「(不思議だ。あの姉弟から、姉はともかく弟からも黒いオーラが出ているように見える)」
「お、恐ろしい」
「貴方たちは何をやっているのかしら」
そんな2人を側から見ていた八幡、結衣、雪乃はそれぞれ感想をこぼしました。
「ねぇ、チョコレート作りってこれだけなの?」
由美子が雪乃にチョコの作り方を尋ねます。カカオ豆から作ると思っていたのか、市販のチョコを溶かす作業に疑問を持っているようです。
「そうね。基本的にはそこから方に流し込んだり、生クリームを入れたりして作るものよ」
「ふぅ~ん」
雪乃の返答を聞いた由美子はおもむろにハートの型枠を見つめます。
「よし」
由美子は一つ頷くと視線をチョコに戻しました。
「真君は何を作っているの?」
「雪乃さん!あ、見ちゃダメ!」
雪乃は次に真の元に向かいました。
話しかけられた真は最初嬉しそうに振り返りましたが、すぐに自身が作っているチョコを隠しました。
「なぜ見てはだめなの?」
「ダメなの物はだめ!」
何故か頑なに製作中のチョコを見せようとしない真に雪乃は首をかしげます。
「そう、なら見ないようにするわね」
雪乃は何かを察しのか深くは聞かず別の生徒の確認に行きました。
ーーー
「なぜ、こうなるのかしら…」
「あれ~、おかしいなちゃんとレシピ通りに作ったのに」
雪乃は結衣の完成したチョコを見て苦い表情をしていました。
結衣の手元には黒いチョコのような何かが乗った皿がありました。
「おう、調子はどうだ」
そこに八幡がやってきました。
「あ、ヒッキー…」
そんな八幡に2人が何とも言えない表情で見つめます。
(由比ヶ浜がチョコレートづくりに失敗したってとこか)
「あん」
「あっ」
八幡は結衣の皿からチョコレートを一つ手に取るとそれを口に放り込みました。
「どう」
チョコレートを食べた八幡に不安そうに結衣が問いかけます。
「ぐっ、まずい」
「っう」
「でも」
八幡の言葉に結衣が悲しそうに俯きます。
「由比ヶ浜見たいな美人が一生懸命作ってくれたチョコってだけで、もらった男たちはよろこぶもんだ」
「それって、ヒッキーも?」
結衣は上目遣いで八幡を見ます。
「ま、まぁな」
八幡は結衣の上目遣いに頬を赤らめます。
「結衣さんも作ったんだ!僕も食べる!」
「あ、ちょっと」
自身のチョコレート製作が終わったのか、真が結衣たちの元まで来ていました。
更に、八幡がチョコレートを食べる様子を見ていたようで結衣のチョコを迷うことなく口に運びました。
「むぐ」
「真君、大丈夫?体調に問題ない?」
「ゆきのんひどい!」
チョコレートを口に入れて固まった真に雪乃が心配そうに近づきます。
「結衣さん、これ蜂蜜とコーヒー入れたでしょ!」
雪乃の心配を余所に真は結衣に頬を膨らませながら怒ります。
「え、だって蜂蜜は甘いし、コーヒーだって苦味をだした方が美味しそうだなと思って」
「むぅ~」
真は結衣のその発言を聞くと不満そうな声を出しながらその場を離れると材料を持って再度戻ってきました。
「結衣さんが料理得意じゃないのはお姉ちゃんから聞いてましたから、今日僕が直々に調理方法を矯正します」
「え、」
いつもと少し違う真に対して結衣が戸惑います。
「おい、一色なんかお前の弟君がなんかいつもと様子がおかしいぞ」
「何言ってるんですか、ウチの真がおかしい訳ないじゃないですか」
八幡が生徒会の仕事を終えて真の元に近づいていたいろはを捕まえて、真の現状について問いかけます。
「いや、なんか変なスイッチ入っちゃってるんじゃないのあれ」
「あ~、あれは頑固モードですね」
「頑固モード?」
「真の中で何か譲れない事柄が起きた場合に、意地でも自分の意思を貫き通そうとするんですよ」
「なにそのモード、自分が間違ってたりとか思わないのかよ」
「いや~、真を舐めてもらっちゃ困りますよ。あのモードになった真が間違ってたことなんて今までなかったんですから。おおかた、由比ヶ浜先輩がチョコレートのレシピをガン無視して真が再指導しようとしているってところじゃないですか?」
「凄いな、その通りだ」
「家族の事なら当然です」
いろはは胸を張り渾身のどや顔を見せます。
「違う!そこは生クリームだけでいいの!」
「でも、これ入れた方が美味しくなりそうじゃん?」
「だったら食べてみてよ」
またしても結衣が何か余計なものを入れようとしていたので、真が小皿に取り分けてから結衣の入れようとしていたものを混ぜて、スプーンですくい結衣の口元に差し出しました。
「さぁ!」
「っ、あむ…まずい」
「むふ~、でしょ!」
なぜか、まずがっている結衣を前に真が胸を張ります。
「「出来た!!」」
その後、なんやかんやで無事にチョコレートが完成しました。
「凄い、これ私が作ったんだ」
「えへへ、おいしそうだね!」
「あむ、おいしい私が作ったとは思えない」
「本当だ美味しい!」
「なら私もいただこうかしら」
「あぁ、本当なら真は私と一緒にチョコレートを作って、指に着けたチョコをあーんとかしながら作っていたはずなのに」
「お前本当に変態みたいになってるぞ」
「シスコンの先輩に言われたくないです」
和気あいあいとしている後ろでいろはは、結衣達の事を恨めしそうに見つめていました。
「はい、どうぞ!」
真はそういうと、雪乃にチョコレートを一つとると口元に持っていきました。
「えっと、いただくわね」
雪乃は少し戸惑いながらも真の手から直接チョコレートを食べました。
「美味しいわね」
「へへん、私だってやれば出来るんだから」
「うん!!」
「ふふ、そうね」
結衣の発言に真は笑顔で雪乃はくすっと微笑んで同意しました。
「そこは私のポジション!」
真の手から直接チョコレートを食べた雪乃にいろはが羨ましそうな目線を向けます。
「どうせ家でもよくやってるんだろう。今ぐらい良いじゃねえか」
「それはそれ、これはこれですよ」
「あ、おねえちゃん!」
「どうしたの真」
「変わり身早いな」
先ほどの態度から一変すぐに万遍の笑顔になりました。
そんないろはに真は抱き着きました。
「特に用事はないけど、お姉ちゃんの仕事終わったみたいだから!」
ぎゅ~「これからはずっと一緒だよ」
「?何当たり前のこと言ってるの?」
「ぐはっ」
首を傾げながらの真の発言がクリーンヒットしたのかいろははその場に蹲ります。
「あれ、お姉ちゃん?」
「真君、あなたのお姉さんは今は少しそっとしておいた方がいいわ。ほらあっちに行きましょう」
「え、」
雪乃が後ろから真の肩に手を置くとそのままいろはの前から遠ざけようとします。
そんな雪乃に真は少し戸惑ってしまいます。
「私の作ったチョコレートもあるわよ」
「行く!!」
雪乃の言葉を聞いた真はすぐにその場を後にします。
「う、うへへ。ずっと一緒ってことはそれって実質夫婦ってことでそれってあんなことやこんなことを」
その場に取り残されたいろはは妄想の世界に旅立っていました。
「はい。あ、あ~ん」
「あん、おいしい!」
「ふふ、喜んでくれたようで何よりだわ」
雪乃は真に自身のチョコレートを食べさせて上げていました。
「なんかゆきのん前のデスティニーランドに行って以来真君にデレデレだね」
「あれは真君が凄いんだと思うぞ。あの姉にしてあの弟ありってところだろ」
「あの姉?あの弟?」
言葉の意味が理解出来なかったのか結衣が頭を傾げます。
「まぁ、一色って一年制の中で猫かぶって男子にモテモテだろ?それと同じで真君もってことだ」
「え、真君のあれ演技なの⁉」
「いや、流石に真君のあれは演技じゃないと思うぞ。演技だったら俺も怖い」
そういって二人だけの空間を作り出している雪乃と真に目線を向けます。