けんぷファー達のバトルに、よく巻き込まれる八幡の話。
お試しで書きました

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俺が代理戦争に巻き込まれるのは間違っている

 

 

 

 

 

また朝がきた。

日常という不快な時間を伴って。

 

こうして学校向けて歩みを進めているといつも考えてしまうのは、自分は果たして進んでいるのか逃げているのかどっちなのだろうということ。

 

 

 

「………逃げられたことなんざねーじゃねーか…」

 

 

俺を虐げ見下し忌み嫌う“家族(じごく)”と、暴力と暴言に堪え続けるだけの“学校(じごく)”。どちらにしろ、俺は逃げたことなんざなかった。逃げられるとも思わなかったからただ甘んじて受け入れ地獄と地獄を行き来する。

 

足を停めればいいのに今日も律儀に足を運ぶ。

 

理由なんてきっと、今この時、地獄と地獄の“移動(あいま)”にしか自由が、休みが得られないからなのだろう。虐げられていない、堪えていない今この時間だけに俺は自由に未来を馳せる。自分を慰め励ませる。そんな時間が、そんな時間しか好きになれない。この静かで一人きりの時間だけは………まぁ、地獄に垂れる蜘蛛の糸というか、一輪の花というか、最近は悪いことばかりでもないんだが…

 

 

 

 

バアンッ!!!!!!!!!!!

ギャリギャリギャリギャリ!!!!!!!!!!!

 

 

「………ちっ」

 

 

舌打ちをして俺は平穏な時間と別れを告げる。

まただ。この唯一の時間を邪魔されるのは今月既に6回目だ。

 

 

銃声と鎖の擦れ合う音に歩みを止めると一人の少女が現れる。

 

 

 

「まちがやれ!!!」

ワインレッドの光を弾くセミロングの髪をたなびかせて、まるで舞うように俺の前を横切る拳銃(・・)を携えたうちの制服を着た青いブレスレットの女子。

 

 

「…またあんたか…つーことは…」

 

 

 

 

「あら、また巻き込んでしまったわね比企谷君…」

そして右から聞こえた声に視線を動かせば腰まで届くかという美しい黒髪の内側から、プラチナブロンドの光を怪しく見せるモデル顔負けのスタイルの女が屋根の上から俺を見ていて、

 

 

 

 

「八幡!………ッ悪い…」

 

青い髪を後ろにくくったやたらスタイルのいい女子が苦々しく謝意を口にする。

 

 

 

 

 

 

「まぁ、あんたらもいますよね。えぇホント、相も変わらず巻き込んでくれますね三郷生徒会長…」

 

「ええ本当。申し訳ないわ…」

 

 

三郷生徒会長は鎖がついたクレイモアと呼ばれる小振りの西洋剣を手に持ち、憂いを帯びた笑みで謝罪する。

 

 

 

「そう思うなら俺の近くでドンパチすんのやめてもらえますかね?」

 

「そうね…また一般人を巻き込むわけにはいかないし、今日は休戦とするわ…」

 

「チッ!」

 

 

三郷雫がプラチナブロンドの光と短剣(シュヴェアト)をしまうと、赤髪の女子、美嶋紅音も(ゲヴェアー)を光の粒子に変え、赤髪からオレンジがかった茶髪にカチューシャと眼鏡をかけた内気な図書委員へと戻る。

 

 

「そ、その、ひ、比企谷さん…おはようございます…」

 

「八幡……」

 

 

怯えた表情の美嶋と、相変わらず青髪アップの瀬野が何か悔いるような顔で近づいてくるが……

 

 

「近づくな」

 

「「ッ!!」」

 

 

 

拒絶の声と視線で息をのんで足を止める。

 

 

彼女達のバトルの余波だろうか、中腹を削りとられたコンクリの電柱が美嶋を押し潰す勢いで倒れてきた。

 

「紅音ちゃん!」

 

 

 

バアッッッンッッッ!!!!!!!!!!!ガラガラガラ…

 

 

 

 

「いっつ…クソ…あーぁ」

 

「八幡………」

 

「け、脚で電柱を蹴り砕くなんて……」

 

 

間一髪電柱が美嶋の頭を砕くのを防ぐ事は出来たが、砕けた瓦礫の多くが俺目掛けて降ってきて、美嶋を庇いながら甘んじて瓦礫の雨を受け入れる。

 

 

「はぁ…てめーら戦闘種族だろ。ちっとは危機感持てば?」

 

 

頭を振って髪に紛れた屑を振り落とし、唖然としている美嶋と瀬野を放置して歩き出す。

 

 

「けんぷファーは戦闘種族じゃないわよ。私達は戦うことを強制されただけのただの女の子よ」

 

「女?そいつが?」

 

三郷会長の言葉に俺が瀬野に視線を送り首を傾げると瀬野はモジモジとスカートの前で手を組んで照れた様子を見せる。マジで女みてぇになってんな…

 

 

 

「呼び名なんてどうでもいいですが、どうして俺があんたらの乱取りの皺寄せを受けなきゃいけないんですかね?ぼっちなら何やらせても良いと思ってるんですか?」

 

 

三郷雫。一応同級生にあたるが、向こうが生徒会長である以上立場は圧倒的に向こうが上だと認識しているので敬語を心掛ける。

 

 

「それよりも、どうして貴方がそんな身体能力を有しているのかが気になるわ。あの時も…。貴方も瀬野君とはちがった形でけんぷファーの関係者なのかしら?」

 

「こっちの質問には答えないのに質問ですか。ホントにぼっちは権利主張を認められねぇな…。まぁいつものことか…。教えてもいいですよ、大したことじゃないので」

 

 

俺が三郷生徒会長と相対していると、気になったのか美嶋と瀬野の奴もこちらを注視して俺の言葉を待っているが、やたらと視線をぶつけられることに苛立ちがあったのであえて最初に答えづらい質問を挙げてみる。

 

 

「当然、俺が学校内外においてどんな扱いを受けてるか。…ご存知ですよね?」

 

 

「………………」

「それは…」

「………ッ」

 

案の定全員が言葉を失くして視線を反らすが、都合の悪い時だけ目を背けるなんてことは許せない。だから俺はもう夏も近いというのに着込んでいた学ランから片腕を抜き、袖のボタンを外して其れ(・・)を露出させる。

 

 

()ろよ」

 

「「「ッッッ」」」

 

 

「カッターに彫刻刀…あとなんだっけ、あぁ…ライターで炙ったコンパスだったっけ…」

 

 

「………そんな…」

「八幡…!」

 

幾重にも傷を刻まれた腕。それを力を込めて指で撫でると指先に血がついた。

 

 

「とんだ図画工作だよな…なにを作るのかと思いきや、出来たのはこんな腐れゾンビだ。奴等の腕も大したもんじゃないよな…。あぁ、シャツの下も大差ないぞ」

 

 

Yシャツの襟に指をかけて自分で中を覗き込むと、もはや見慣れた傷物の肌がよく見え、自嘲してしまう。そんな俺を見て呆れたのか不思議なのか三郷生徒会長が難しい表情で問いかける。

 

 

「まるで、他人事のように語るのね。現状を変えようとは思わないのかしら…」

 

 

些細な、そんな些細な問いが………少し、俺の感情を逆撫でした。

 

「………あんたが、それを言うんですか?」

 

「ッ、ごめんな…」

 

「あぁ、いやこちらこそすみません。貴女は何も悪くはないのに当たってしまいました。俺ごときがすみません。平に御容赦を…」

 

 

 

俺の現状、その最たる起因である三郷雫生徒会長が視線を外して謝ろうとするのを遮り俺は言葉を連ねる。

 

 

「だから…どうか貴女が謝るのはやめてもらえますか?意味の伴わない謝罪なんて受け入れたくないので…貴女はなんも悪くないんだから…」

 

 

「………ッ」

 

「あぁ、話がズレましたね。さっき俺の現状については話しましたが、俺は生徒と家族から迫害を受けている。“いじめ”ってやつです。この世にいじめなんて存在しない。それらすべては犯罪と矛盾しないってのが俺の主義だが、今回は奴等と、あんたらの認識に合わせて“いじめ”と表現させていただきましょう」

 

 

袖のボタンを留めながら俺は喋喋と言葉を紡ぐ。言葉を連ねることで自分以外の人間の発言を許さない。ぼっちの悪い癖かも知れない。

 

 

「だが、そんなことは今に始まったことじゃなくてな…」

 

 

「へ?」

「八幡…」

 

「瀬野とは中学で別れたから知らないだろうけどな。それでもお前の見えないところで、小学校の頃からあったんだぜ?もとより俺は人からヘイトを集めやすくてな。誇らしくもないが、今更否定しようもない…。だから、小学生のころはまるで遊ぶように嫌がらせと暴力を受け、中学では他人へ好意を持つだけでそれを晒され嘲笑され暴言と暴力の的にされた…おもしろいだろう?」

 

 

「「「………」」」

 

正直、笑えない…三人ともそんな顔をしていた。だがこいつら感情は関係ないので構わず続ける。

 

 

「だからといって、それを他者にぶつけるほど馬鹿じゃない。というか普通に勇気がない。マジ恐いし。だからまぁ、俺はガキの頃から森やら山やら入ってその鬱憤をぶつけてた。物言わず、動きもしない物に八つ当たりだ。拳が破けても木々を殴った。脚が折るまで岩を蹴って、折れた脚でまた岩を蹴り続けた。怪我も痛みも、無視してたらいつの間に当たり前になってそのうち治ったらしくてな。…現状への不満と破壊衝動だけはいくらでも溢れてくるのに、未来への希望なんざ一切なかったからな。自分を殺すつもりで壊して壊して壊して壊し尽くした、物を、木を、岩を、自分を」

 

 

「そんなことを続けていたら、暴力を浴び続けていたら、精神より先に身体が壊れた。いつの間にか身体が大事なモンを捨てた」

 

 

「生存本能…かしら」

 

「かもな。もしくは防衛本能かも知れませんね。人は、自分の身体を守る為に肉体の能力を能力の80パーセントをセーブするらしいが、いつの間にかそのセーフティが吹っ飛んだ。自分の身体を壊しながら何かを壊し続けていたら、壊すことだけにやたらと優秀になっちまった…」

 

 

俺は足もとに落ちていた人の頭ほどもある瓦礫を軽く踏み砕く。

 

これは俺が長年隠していたことだ。ただでさえ他人からヘイトを集める俺が、人を壊すことに長けた力を持っていると知れたらどうなるものは火を見るより明らかだった。

 

 

「そこにきて中学でのあの事件と、そして高校を入学してアレがあった…これについてはもう説明は要らないだろ?そんでますますストレス発散に余念がなくなって、この程度はもはや当たり前だ」

 

 

「「「………」」」

 

 

 

 

「はぁ…まぁそんなところです。話はそれだけです。理解出来ました?」

 

長々と語り終えて俺はため息をこぼす。

てかそろそろいい時間だな。迫害を受けているとはいえ成績態度としては優秀と評価されている身としては遅刻は避けたいところだ。

 

 

 

「時間なんで、そろそろ俺は行きますね。あんたらと違って、俺には遅刻を揉み消す権力も味方も…まぁ、それはいいか…」

 

 

学ランに袖を通しボタンを一番上以外すべて留め、スクールバックを持ち直して歩き出す。

 

 

「それじゃさようならっす」

 

 

 

「待ってくれ!八幡!」

 

「ん?なんだ瀬野」

 

歩き出してすぐに瀬野に呼び止められ、足を止める。

 

 

「どうして、今まで何も言ってくれなかったんだよ八幡!俺達幼なじみだろ!?相談でも、助けてって一言でも言ってくれれば…」

 

 

「くれれば…?言ったらどうなるって言うんだ?お前が俺を助けるのか?お前は、俺に助けられることを強制するのか?」

 

 

「きょ、強制って…そんな…。でも、俺は八幡にいつも助けられてきたし、だから俺も八幡を…」

 

 

「女のお前に言われても釈然としねぇな。…それに、俺はいつも自分の都合と気分に従って動いてるだけだ。お前を助ける為に行動したことはない、全部お前の気のせいだ」

 

 

「そんな…」

 

「ひ、比企谷さん、そんな言い方はナツルさんに…」

 

 

ショックを受ける瀬野の味方をしたかったのだろう。俺の学ランの袖を掴もうと手を伸ばす美嶋を、

 

 

 

 

 

「触るな」

 

 

 

 

「「ッ」」

 

 

 

 

俺は、拒絶する。

 

 

 

 

 

「今ある生活を、これ以上荒らしたくないだろ?必要以上に俺に関わるな」

 

 

「「………………」」

 

 

「それでは…」

 

 

「比企谷君」

 

 

「………」

………はぁ。今日はよくよく足を止められる日だ。俺は不満を込めて三郷会長を見る

 

 

「多美子先輩の…こと、なのだけど……」

 

三郷会長が、言葉にいない唯一の知り合いの名を口にする…。美嶋と瀬野が「誰のことだろう」と首を傾げている中、まるで憚られるように、口にするのを恐れるように言葉を紡ぐ姿に、俺は予感する。

 

 

 

「篠宮先輩ですか………かれこれ、1年近く姿を見てないですね…。そういう、ことっすか…」

 

 

不吉を。訃報を。

全身の毛穴が開き冷気に襲われる錯覚を覚えながら、三郷会長から一挙一動を観察する。否定を、首を横に振ってくれることを願って。

 

 

「………」

彼女はいつもの冷静な表情を、その美しい顔立ちを苦悩と悔恨に歪めながらーーーーーー

 

 

 

 

 

首を縦に降った。

 

 

 

 

 

 

 

「 」

 

 

 

 

 

 

 

世界から音が消えたような気がした。

世界が時間の流れを喪ったように何もかもが静止して見え、全身から血と脈を奪われるような喪失感に襲われながら立ち尽くした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうか」

 

 

やっと、振り絞るようにやっと出た言葉は、そんな感情の伴わないような、ひどくつまらない言葉。

 

 

俺は三人に背を向け学校(地獄)へ向け歩きだす。

 

本当に、何の救いも失くなった地獄へ向けて。

 

 

 

 

「馬鹿みたいだ。俺も、あの人も………」

 

 

自嘲するような言葉は、自分が生きているのが疑わしいほど冷たかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

比企谷八幡

星鐵学院男子部3年。総武中で奉仕部に所属。修学旅行をきっかけに俺ガイル勢とは疎遠となり、虐めにたえながら卒業。(アンチではなく、あくまで関わりを無くしただけ)。卒業後は家族以外には伝えず星鐵学院に入学。家から遠いので早朝に家を出て誰にも会わないように登校していた。

 

星鐵学院に入学してからは平穏に暮らしていたが、2年の時に赤のけんぷファーに襲われボロボロの三郷雫を救うも、それを目撃した一般人に「比企谷八幡が三郷雫を襲っている」と誤解され、中学時代の悪い噂も相まって学校内外でほぼ全校生徒から苛めを受けるようになり、家族からも冷遇されるようになった。それからしょっちゅうけんぷファー同士の争いに巻き込まれる。

 

 

雫本人も謝罪とお礼をしたいと願っていたが、二人の接触を見られるとさらに悪化、また“けんぷファー”のことが露見しかねないと考えた当時3年の篠宮多美子が八幡に接触。お互い相談など重ねているうちにそれぞれ心を通わせ両思いを理解していたが、各々の問題(けんぷファーとして戦うこと、広まった誤解といじめ)を独力で解決したら改めて気持ちを確かめ会おうと約束していた。

 

 

 

 

瀬野ナツル

星鐵学院男子部2年。青のけんぷファー。八幡とは小学校の頃からの幼なじみだが八幡が虐めを受けていることに気づかなかった。中学は別で高校に入学して1年先に入学していた八幡の現在を噂で知る。八幡はそんなことをしないと思いつつも、八幡が巻き込むことを恐れて避けられているので何も出来ないことに罪悪感を感じている。

 

けんぷファーになって戦闘中に八幡と邂逅した際、すぐに幼なじみの瀬野ナツルだと見破られて嬉しくもあったが、八幡の素っ気ない対応が悲しかった。

 

 

美嶋紅音

星鐵学院女子部2年。青のけんぷファー。ほぼ変更点なし。瀬野ナツルが比企谷八幡を気にしているのを知ってはいるものの、若干噂に躍らされ怖がっていた。倒れてくる電柱から助けられてもいまだ恐怖が勝る。

 

 

三郷雫

星鐵学院女子部3年生徒会長。赤のけんぷファー。2年の頃、一人で下校中に青のけんぷファーに襲われ大怪我を負うも八幡に助けられ気を失ったところを一般生徒に目撃され、望まないまま八幡の悪い噂の起因となってしまった。怪我の具合がひどくおよそ2週間の入院することになり、見舞いにきた篠宮多美子に相談していた。助けられた時から気を失う瞬間にみた八幡の姿を忘れられず恋慕に近いものを持っていたが、篠宮多美子が八幡について嬉しそうに話すのをきいて諦めかけていた。

 

多美子亡き今、どうにか自分が謝罪と八幡の現状を変えたいと思ってはいるものの、けんぷファーであることを隠しながら誤解をとく方法を考えている。現在でも、自分に興味を持たずやたらとけんぷファーの戦いに巻き込まれる八幡が気になっている。

 

 

 

 

 

 

多分続かない




けんぷファー見てて書きました。二期やらないかな…。アニメしか見てないので多分続かないです。そもそも需要あるかな…

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